※この作品はR-18です。

愉悦の記録(Fate/Zero)   作:間宮卓郎

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その4 アルトリア・ペンドラゴン

 サーヴァントは夢を見ない。見るとすれば、それは魔力の授受という形で繋がったマスターの夢。だから、クラス・セイバーのサーヴァントであるアルトリアが見ているそれも、彼女のマスター・衛宮切嗣のものであるはずだった。

 ……いや、切嗣は死んだ。アインツベルンの城へと乗り込んだ際の戦闘で、致命傷を負い。だから、その夢はまた別の誰かのもの、ということになる。

 おそらくは、相当に性質が悪い輩のもの――

 淫夢であった。永遠に終わることが無いかのような、いやらしい、熱く、苦しい悪夢。アルトリアは犯されていた。武人としての名誉も誇りもなく、ただの女として無惨なる強姦を受け続けている。

 自分が辱めを受けている他人の夢を、横から見ている感じではない。アルトリア自身が男に組み敷かれることを「体感」させられていた。

 たしかに夢だという自覚はあり、それでいて、肌を引っ掻かれても、乳首を鬱血するほど抓られても、その痛みで目が醒めることはない。匂いを嗅げ、風や雨の音を聞き、膣内を熱く太いモノで擦りつけられる喜悦に奮え……まるで、実際の出来事のような現実感をもって感じさせられている。

 精神の凌辱を強いられていた。

 男は容赦なく、冷酷に、アルトリアの性感、嗜好を探り出し、そこを確実に、的確に突いてきた。幾度となく膣内へ射精し――疑うまでもなく、それは彼女を貶めるため、傷つけるため、狂わせるための情交であった。

 淫虐は、いつまでも終わる兆しを見せない。その中でアルトリアもまた、獣のように荒々しい肉欲に塗れ、次第にその願望のみで心を支配されてゆく。強引に身体を奪ってくる男を自ら受け入れ、自虐的な悦楽を望む女になりさがってゆく。

 

 さあ、本当の自分を解放するのです。偽ることなく、隠すことなく、ありのままの姿で愉悦を求めなさい……

 

 夢は、アルトリアにすべての理想、希望、願いを捨て、ただ情欲に溺れるよう促していた。それは、甘美な誘惑。退廃的でありながら魅力を感じさせる、抗いがたい悪意。

 絶望――

 

 

「ん…………っふ……ふ、ふざけるなあっ!」

 絶叫とともに、アルトリアは目を醒ました。同時に、周囲に殺到していた、何か良からぬ存在たちの気配が一斉に飛び退く。

「はあ、はあ、はあ、はあ……」

 涎を手で拭い、何度も咳き込みながら、激しい呼吸を繰り返した。

 危ないところであった。目醒めた途端、内容は忘れてしまったが、ひどく淫らな夢だった気がする。肉体がまだ官能を欲して、衝動的に腰が奮えてしまっている。

 なんとか覚醒できた。あと、もう刹那、淫欲に囚われた時間が長かったなら、アルトリアはそのまま悪夢の世界から脱せなかったことだろう。いや、まだ、まったく安心できない。夢での出来事は覚えていないが、敵の精神攻撃であったことは直感していた。早く、この場から退避しなければ。どこか、安全なところへ。

 アルトリアは俯けに膝を立て、立ち上がろうと腕で床を突っ張った。だが、体力が消耗し尽くしている。上半身を起こすことが、どうしても出来なかった。まともに目を見開くことさえできない。それでも彼女は、現在、自分が置かれている状況だけでも早急に把握しようと、思い出し、考える。ずきずきと痛む頭を酷使する。

 キャスターの討伐失敗、ライダーの離脱、アイリスフィールの拉致など様々な要因により聖杯戦争の進展そのものに先行きが見えなくなり、切嗣がドイツに戻り城から彼の娘・イリヤスフィールを連れ出す作戦を立て、しかしその切嗣が死に、彼のサーヴァントであるアルトリアも現界できなくなって……そう、彼女は現世から消えたはずではなかったか。

 それでは、ここはどこだ?

 悪臭が鼻腔を突く。処刑場か、屠殺場か、あるいは戦場か、とにかく酷い臭いの場所であった。サーヴァントとなった英霊は、魔力が尽き現界が維持できなくなると、聖杯に取り込まれるという。すると、こんなところが聖杯の中だというのだろうか。

 臭いのは周囲だけではない。アルトリア自身もまた、ぬるぬるとした粘性のある液体に塗れ、きつい臭いを肌に染みつかせていた。

 そこで、ぞくり、とした。自分の掌が、直接胸元に触れたのだ。そう言えば、やけに肌寒い気がする。まさか、と思いつつ肩から太腿まで両手で触って確かめると、やはり……ブラジャーとショーツの手触りしかない。アルトリアは、下着しか身に着けていなかったのである。

「く……これは……あぅううっ!」

 予期せぬ刺激で、一気に淫欲の熱気がぶり返してくる。何者かが、彼女の尻肉を撫で上げたのだ。その力加減はむしろ弱すぎるくらいであった。それでも、雷が落ちたかのような痺れに、尻がわななき、疼く。アルトリアの肉体を狙う浅ましい欲望だけは、引き締まった桃肉を通し過敏に伝わってきた。性欲に駆られた男でしかありえない接触の仕方――しかし、彼女の尻をつるりと撫で、べたつく感触を残したものは、明らかに人間の手ではなかった。

「…………あ……ああ、あ」

 不気味な人外の凌辱から、身を守らなければならなかった。今すぐ、抵抗しなければ、それを否定……拒絶しなければ。下着を穿いているということは、幸いにも、いまだ貞操は無事ということだ。

 だが、熱くなりたがろうとする気持ちを抑えつけ、懸命に呼吸を整えながらアルトリアが立ち上がろうとした時、再び何かがその脚に巻きつく。

「くうっ!?」

 がくがくと脚を震わせながら、何とか両目を開いた。そこは屋内のようで、光源に乏しくあたりは薄暗い。だが、彼女を襲うその異様なモノは、はっきりと瞳に映った。

 触手、としか言いようのない物体だった。蛞蝓のような質感で伸び縮みし、ぬるりとした肌触り。子供の腕ほどの太さもあるそれが、蛇のようなおぞましい動作でアルトリアの太腿を這い登り、螺旋を描きながら股間に忍び寄ってゆく。

「は……あっ、ああん! うぅううん!」

 振り払うことはできなかった。襲いかかる触手は、1本ではなかった。前後左右、天井や床からも、数え切れないほどの肉縄がアルトリアの裸身に打ちつける勢いで殺到してゆく。抵抗する暇もなく、彼女は全身を、粘液滴るそれらに拘束されるしかなかった。

「お……の、れ……」

 手足を、腰を、首筋や頬を、蛇などよりもなお男の陰茎に近い形質と熱さを持つ、ただし大きさは桁違いのモノたちによって、撫で回される。無意識のうちに背筋が伸びあがり、尻肉が引き締まり、膣口が熱くなっていった。堪らない刺激が身体中を走り抜けてゆく。アルトリアは、その卑猥な戒めから抜け出そうと藻掻いた。

 触手は皆、巻きついてはくるが同時にぬめりのある体液を分泌しているため、よく滑る。1本1本の束縛する力はあまり強くはなかった。しかし、数があまりに多い。いくら、すり抜けてもきりがなく、そのうちにアルトリアの身体は数十本の触手によって持ち上げられ、足が床を離れた。こうなると踏ん張りがきかず、ますます脱出は困難となった。

 だが、この触手群から逃げられたとして、どこへ向かえばいいのだろうか。出口を求めて見回すが、とにかくそこは、異質で、醜悪な空間だった。

 一言で言えば、何か、得体の知れない巨大な怪物の体内のごとき様相である。人工の建築物ではけっして有り得ず、生物を思わせる赤みがかった床や壁や天井。直線を描くところはどこにも見当たらず、巨大な洞窟か採掘場のように空洞全体が丸みを帯び、形もいびつであった。そして、あらゆるところが無数の、巨大な体毛を思わせる、植物とも動物ともつかぬモノで覆われている。アルトリアを襲う触手もまたあちこちの壁や床から生え出しているように見えた。

 逃げ場のない、魔界にでも迷い込んでしまったかのような怖れが、アルトリアの心をも締めつけてゆく。

「よもや、万全を期して施した私の術が破られるとは……」

 身体の自由を奪われ、暴れ悶えるアルトリアの耳に声が聞こえてきた。夢の中でも聞いた気がする、悪い意味で忘れがたい声。鼓膜に粘りつき、低くくぐもって、いやらしく脳裡に響く。

 声の方角に向くと、その男はすぐ傍に立っていた。触手群の陰になって見えなかったのだ。

「はあ……はあ……キャスター!」

 どす黒い瘴気を纏い、奇怪な青いローブ姿。悪魔に魅入られた者特有の鬼相を浮かべている。かつて、ジル・ド・レェと名乗ったことがあり、アルトリアのことをフランス救国の英雄ジャンヌ・ダルクと誤解している男。未遠川の決戦以後、魔術的一体化を果たした巨大な海魔ごと姿を消したクラス・キャスターのサーヴァントに間違いなかった。

「愚かしいことです……女としての歓喜に満ちたあの夢から、まさか目醒めるとは」

 キャスターは嘆息した。

「貴女の理想を求める心が、私の魔術を凌いだのでしょう。しかし、この期に及んでなおも抵抗することに、何の意味があるのです。貴女のような女は、この淫獄の中で、快悦に浸る姿こそが相応しい」

 その勝手な言い草にアルトリアは顔を顰めた。

「わ、私にこんな……はあ……仕打ちを行なうということは、どうやら貴様、ご、ごか…誤解を……はあ、はあ……私と……ジャ、ン…………ん……」

 憎まれ口を叩いてやろうとするのだが、うまく言葉が出てこない。触手群の蠢きのせいであった。数十本の太く長い肉蔦がかわるがわる、忙しない動きでアルトリアの肌を撫で擦っている。

 危険な興奮に駆られかけていた。

「貴女と、我が聖処女ジャンヌは別人……過ちは、すでに正されました。また謀ろうとしたところで無駄と知りなさい。偽者め、クロード・デ・ザルモワーズめ! 聖処女の名を貶めた罰を受けるのです!」

 アルトリアの言葉に、キャスターは声を荒げた。クロードとは、ジャンヌ・ダルクが処刑されて間もない頃、史実にて出没した偽者なのだが、アルトリアがそれを知る由もなかった。

 それに、触手群が這い回る都度、信じがたいほど甘美な痺れが背筋に走り、いちいち返答できる状態でもなかったのだ。感じてしまうのを避けるため、淫猥な魔物たちを刺激しないよう、声を抑え、なるべく身動きしないでおく必要があった。アルトリアが悶えれば悶えるほど、触手の這いずりは活発化するらしかった。

「ここは……あ、あ……の未遠……ぐっ……」

「左様。我々が今立っている場所とは、私があの未遠川にて召喚せし巨大なる海魔、その体内に相違なし」

 キャスターは即答した。

「これこそが我が城! 我が肉体! 外部より無限の魔力を吸収し、サーヴァント単体にて現界可能! それが今の私です。聖杯の術式への介入も果たし、魔術のみならず、様々な情報、あらゆる知識を瞬時に見つけ出し、会得することが可能となりましたあ!」

「何が……無限の魔力だ! 聖杯戦争とは無関係な……ん!……みん、しゅ、を……はあ、あ……糧にしているだけ……んうっ! あんん!」

 怒りに満ちたアルトリアの声が、甲高く裏返った。それは甘い喘ぎとなって、キャスターに、そして触手の群れへと沁み渡る。

「んん……なぜ」

 焦燥と戸惑いの呻きが、アルトリアの唇から零れる。そして、その断片的な言葉のみで、キャスターは彼女の心中を察してみせた。

「剣や鎧を呼び出すつもりですか? 無駄ですよ、貴女の力は制限してあります」

「なん、だと……」

 激怒と羞恥の間で揺れていたアルトリアの顔に、明らかな動揺の色が浮かぶ。

「この空間は半ば、私の固有結界と化しているのです。それに、今の私は聖杯の術式をある程度制御できますゆえ。その程度のことは、造作もないのですよ」

 得意げに笑うキャスターから目を逸らし、アルトリアは歯噛みした。

 たしかに、先ほどからすでに何度も、試みていたのだ。宝具であるエクスカリバーや魔力で編まれた銀色の鎧、あれらを装備したなら、こんなものは窮地でもなんでもない。しかし、いくら念じても、青い戦闘用ドレスさえ現界しない。

 今しがたのキャスターの言が真実なら、完全に手詰まり。絶体絶命の状況である。

「はあ、はあ……そん……な…ん……くうううううううっ!」

 アルトリアが、激しく悶える。内腿や脇腹、首筋を一度に強く擦られたのだ。身体の感じる部位を探り出されてゆく。そして、あの鼻汁に似た生温かい分泌液を塗りつけられ、念入りに擦り込まれてゆく。するとアルトリアの女体が真っ赤に火照りかえり、ますます刺激に対し敏感になってしまうのである。

 意外にも、布地の感触を嫌うのだろうか、ブラやショーツの上を通る触手はない。ただし、そういった箇所は尖り気味の先端を用いて小突いてきた。上下とも水色の薄布に包まれた両乳房や股間、臀部のいたるところを10本以上の先端が常につついている。優しいとすら思える強さで、しかし弱いところ、嫌がるところを調べるように、間を空けず、偏執的に。

 アルトリアが身に着ける下着は、まだ聖杯戦争が本格的に始まる以前、アイリスフィールから買い与えられた物であった。英霊となる以前、アルトリアが生きた時代の同等品と比べ小さく、精密な縫製で身体にぴったりと合い馴染む。

 ブラのカップは乳房を半分覆う程度、ショーツも面積が狭く、特に後ろは尻の割れ目をかろうじて隠すだけで、臀部は丸出しに近かった。身体の女性的な部分を覆い隠す衣類というより、着飾り目線を誘うための装飾品の役割に近い代物に思えた――アルトリアとしては、もっと服としての機能性が高い物のほうが良かった。

 しかし、アイリスフィールによると今の時代ではこれが標準で、女性ならばみんな着用しており、アルトリアが望むような形のものは手に入らないらしい。

「あう……あっ!? あ!」

 硬くなった乳首を突かれ、アルトリアが小さく喘いでしまうと、触手の動きに変化が生まれた。乳首を突いた触手は手ごたえを感じたらしく、同じ場所を執拗に狙いだす。他の触手もこぞってそこへ群がってゆく。必死に身を捩り、躱そうとするがすぐに数で圧倒されてしまう。

「んうううぅううううううっ! あ、ああーーーーーーーあっ!」

 声が殺せなくなってきた。強烈過ぎる快感の痺れに、アルトリアの理性が臨界を迎えつつあった。

「しかし、随分と、男好きのする下着ですねえ」

 その時、虚を突く言葉がキャスターの口から発せられた。

「え……」

「……大きさといい、意匠の凝らし方といい、この媚びよう。貴女自身の趣味とも思えませんが」

 キャスターは続けた。顎に指を当て、腑に落ちないといった顔つきで、まじまじとアルトリアのブラを凝視する。

「さて、どこの男に選ばせたのですかあ?」

「な!?」

 不躾な問い掛けが、純真なるアルトリアの心に衝撃を与えた。

 そんな馬鹿な。たしかに、黒いスーツとともに受け取ったこの下着を初めて目にしたときは、扇情的に過ぎるという印象を持った。だが、アイリスフィールは「今の時代の女なら誰しも穿く程度の、ありふれたデザイン」と……彼女に限って、そんな……そこまで考えてアルトリアは「はっ!?」となった。

 そう言えば、アイリスフィールはあの時、着替えの時、この下着を身に着けたアルトリアを見て、こう言っていた。

「あら、思ったより似合うのね。意外だわ」

 思ったより……ということは、アルトリアには似合わないかもしれない物を、あえて用意したことになる。その理由とは……手違いか、いや……衛宮切嗣!

 そこに思い当たった瞬間、アルトリアの脳裡に猛禽のごとき俊敏さで、あらぬ妄想が襲いかかってきた。

 

「ははははっ、いや、真面目な話、ああいうカタブツには、このくらい大胆なヤツが、案外しっくりくるのさ」

「んもう! いくら何でもこれはキワドすぎよぉ。彼女、絶対に穿かないわよ」

「いやいや、そこをアイリが、ちょっと背中を押してやればいいじゃないか。彼女ももう少し色気が出てくれば、僕もこれから仲良くできるかもしれないし……君だって、その方がいいだろ?」

「どういう意味? そんなことなら、私、協力しませんからね。マスターのフリだなんて、私にできるわけないし」

「ゴメンゴメン、今のはほんの――あ、こっちの方がいいかな」

「ちょっ……やだあ! もう、切嗣、まじめに選んでるの?」

「なに言ってるんだ? 僕はいつだって、至って真面目さ」

「うふふっ!」

「あはははは!」

 アルトリアに着せる下着を、店頭で選ぶ最中の睦まじい夫婦の図――

 

「……………」

 アルトリアは絶句していた。かたく口を引き結び、思い詰めた表情で。

「………くっ!」

 そして突然、両腕を振り回し、脚をばたつかせ、険しい形相で触手を強引に振り解こうと暴れはじめる。

 そんな彼女のブラジャーに、キャスターはそっと手を伸ばしていった。

「触るな!」

 アルトリアに怒鳴られると、すぐに引っ込め、困惑したような表情を浮かべて一歩後ずさる。

「…………ふふふふふ」

 だが、そこでニンマリと笑うと、キャスターは自分の手の甲をアルトリアに見せつけた。するとそこには、赤い紋章のような痣が刻まれている。思わず我が目を疑うアルトリアだったが、どうやら、間違いないようだ。

「令呪だと……」

 アルトリアは混乱した。

 サーヴァントを召喚するためには、その前に聖杯からマスターとして選ばれる必要がある。選ばれた際、その魔術師の手には火傷のような痛みとともに赤い痣が出現する。それが令呪である。

 つまり、喚び出されたサーヴァントの手にあるはずのないものなのだ。

 キャスターは、さらに恐るべき事実を告げる。

「言っておきますが、この場から逃げ出すことなど絶対にできません。現界できなくなり、聖杯へ取り込まれる寸前だった貴女を再びサーヴァントとして復活させたのは、この私。つまり、私は貴女の新たなるマスターなのですよ――いささか申し遅れましたが。で、その際、召喚の呪文を多少いじりまして、貴女が宝具を使用することが出来ないようにしたのです」

「そんな……」

 今度こそ、目の前が暗転するほどの絶望を感じた。

 サーヴァントは、マスターからの魔力供給によって現し世にその身を保っている。衛宮切嗣亡き今、一旦消失したアルトリアが再び現界を果たした理由は、キャスターの説明以外には考えられない。

 キャスターが聖杯からマスターとして選ばれたのは、魔術的に不正な手段を用いてであろう。だが、彼から魔力供給されているのなら、アルトリアはもうキャスターには逆らえないということだ。

 それに令呪には、自分のサーヴァントに対し3回まで、強制的に命令を遂行させる力がある。キャスターがアルトリアに隷属と淫虐を望むのであれば、それを受け入れるしかない……

「馬鹿な、そんなことが真実なものか! 再契約には、サーヴァント側からの同意も必要なはず。貴様が私のマスターなら、すでに私が、それを承諾したことになるではないか」

 アルトリアのそんな悲鳴に近い反論を、キャスターは事も無げに一蹴する。

「承諾したではありませんか。あの、夢の中で」

「夢、だと……」

 淫夢の中で承諾したというのか、官能に喘ぎながら。だが、アルトリアにはそれを思い出すことすらできない。

「嘘だ……嘘――んうううううううううっ!」

 両乳首から強烈な快感が生じ、アルトリアの身体が大きく跳ねた。武人向きのなだらかな胸の谷間に侵入した触手が這い上がりながらブラジャーを捲り上げ、剥き出しになった乳首に他の触手の先端が巻きつきはじめたのだ。そこを重点的にきつく責めあげ、アルトリアの淫欲を際限なく炙っていこうとしてくる。

 さらにショーツも先ほど激しく暴れたせいでずり下がっており、露わになった尻の割れ目、そして肛門に幾多の触手が群がってゆく。

「あ……や、やめ……あ……あっ!」

 これまで、あまり激しくされていなかった、女の身体の中でも特に感じやすい部分に責めが集中し、凄まじい勢いで嬉しさが暴走する。ぎりぎりで堪えていた、気持ち良くなりたいという気持ちに文字通り拍車がかからなくなり、騎士としての理性と誇りを守り抜こうとする気持ちが逆に圧迫されてゆく。

「あん! う……やめろ……やめろぉおおっ!」

 なんとか、叫んだ。叫べただけであったが。

「あうう……うぐ……あ…………あっ、あ! あ! あ! あ!」

 触手の愛撫を躱すのは、責めによる堪らなさがきつ過ぎる時だけとなった。あとは為されるがまま、ただ蹂躙されるのみ。抗いたいという気力が根こそぎ奪われてしまった。さらに、彼女自身の性への渇望、恥知らずな衝動と興奮がそれを抑圧してしまっている。

 触手群の蠢きが、アルトリアに姿勢を促していた。胸を突き出し、背を反らせ、両脚を大きく広げ……身体を差し出す意志を示す姿勢である。その体勢を取っていれば、堪らなさを軽減できることを教えこむつもりのようだった。アルトリアの肉体が、欲望と期待に打ち震えながらそれを覚えこんでゆく。

 心は、まだ戦う気持ちを残していた。しかし、身体は異形の者達に完全に隷従してしまっていた。伝説の騎士王は、いまや腹心の部下たちだけでなく、自分の身体にまで叛旗を翻されてしまったのである。

「あ……や…やぁ……ん! あ! ああっ! あんん!」

 すすり泣くような声をあげつつ、アルトリアは思った。

 エクスカリバーだ、あれさえあれば、あれさえ、呼び出せたなら、こんな……ヤツらは――と。だが、必勝を約する彼女の宝具は、いくら念じても右手に現れない。当然である。そうなるよう、召喚される際に制限を掛けられたのだから――いや、アルトリアは自分の右手の中に、握り慣れている物を感じた。

 信じられぬ心地で、それを見る。たしかに、それは聖剣エクスカリバー。彼女の愛剣であった。

 アルトリアは必死でそれを振り上げ、群がり、辱め、彼女を玩具のように扱っていた周囲の触手どもを一太刀のもとに斬り伏せる。そして返す刀でキャスターに斬りかかっていった。

 彼女は雄叫びをあげていた。だが、その声は自身の耳にも届かない。世界から音が消えていた。目に見えるものも、キャスターの鬼相だけしかなかった。

 覚悟! と、叫びながら、迷わずそれに斬りつける。脳天から唐竹割りに、その醜悪な顔を真っ二つにしたのだった。だが――

「ふふふ……どうやら、また夢を見られているようですね」

 叩き割られた顔が、にやりと笑った。

「無理と言っているでしょう。貴女は逃げられません、永遠に」

 嘲笑うキャスターに、アルトリアの2撃目が加えられる。心臓を突き刺した。だが、哄笑は止まらない。さらに、3度、4度と斬りつける。だが、キャスターは平然と笑い続けている。

 アルトリアは、それでも剣を振り続けた。焦燥と恐怖が、停滞を赦さない。キャスターを斬り刻むのを止めたとき、再び、自分は……そんな確信が彼女を急き立てる。それでも、じわじわとそれは近づいてくる、背後から。

 駄目だ、もっと速く、強く剣を振るわなければ。もっと……もっと! そうしなければ、私は――

 

 再び、我に返ったとき、目を開けると、事態はさらに悪化していた。

 アルトリアは依然、触手群に囚われたままで、もちろん聖剣も手にはない。彼女の、牝の身体は変わらず熱く火照って、牡肉による嬲りに歓喜し続けていた。

 汚らしい音を立て、赤い肌から粘液が糸を引く。爪先から、頭の天辺で収まり悪く跳ね上がる金色の一房まで、大小様々な太さの肉縄によって隈無く縛り上げられ、愉しみ尽くされている。

 両方の乳首が触手の先端から生える極細の、蠢く糸のようなモノできつく、幾重にも縛られ、尻穴にも太い触手がすでに深く侵入していた。通常なら、激痛に悲鳴をあげるはずの状況である。にも拘らず、全身が痙攣するほどの強い快感しか感じない。涙が出るほどの歓喜しか、心になかった。

 頬が緩み、自然と表情が弛緩する。なんとか困り顔を作ろうとするが、うまくいかなかった。内心が、微塵も隠せなくなってしまっている。

「気を抜いてはなりませんよ。お尻に力を入れておきなさい。その者たちは限度を知りませぬゆえ、いくらでも入ってきてしまいますよ」

 そう言うキャスターは、アルトリアの陰唇に、自分の陰茎を押し当てていた。両脚を抱え、大きく股を開かせて、濡れそぼった肉豆に自分のモノを擦りつけている。

 アルトリアは従順に、それを実行した。何も考えられなかった。言われたから、それをしただけだ。肛門の、括約筋に力を篭める。それ以上、後ろの穴に触手を潜り込ませないために。

「はあ、はああ……ぐ……あううううううっ!」

 むしろ、締めつけた瞬間、さらに触手は侵入してきた。ずるずると素早く、強引に30センチほども。凄まじい喜悦が尻に生じ、彼女の肉体はそれを覚え込んだ。

 肛門から、力が抜けなくなった。

 嬉しい……笑顔が、隠せない。

「あ……あ……」

 キャスターはまだ、焦らしを続けていた。彼の頭で直視は出来ないが、擦られているだけでも分かる、まともな形の男根ではない。人外の形状――肉太で長さも軽く3倍。病的な細かい突起に覆われている。亀頭のエラの形といい、怪悦を有しているのは想像に難くない。身体に挿し込まれたなら最後、どこまでも狂い悶え、正気に戻ることは2度とないだろう。肉壺の奥底から溢れ出る、彼女の愛液が勢いを増す。

 アルトリアは上半身で身悶え、懸命にキャスターの耳許に自分の唇を近づけてゆく。そして、熱い吐息を吐きながら、精一杯の媚びを秘めて言った。

「早く……」

 慈悲を懇願する、哀れなる奴隷の掠れた声色を用いて。

 瞬間、膣内に嵐が巻き起こる。

「ひ……あああ! ああーーーーっ、あ! あ! ああ、ん、あ、あ! あ! ああ…あああああああああああああああっ!」

 思った通りであった。期待通り……そう、まったく想定していた通り、騎士としての誇りも、人間としての理性も完全に吹き飛ぶ。これぞ、愉悦であった。

 予感を感じた。ここも、通過点。まだ上があるはずだ。もっと、高みが。アルトリアの心は、いつまでも頂点を目指し、かけ昇ってゆく――

 

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