……たまに、理性が戻りかけることはあった。流されてはいけない、この熱さ、心の奥底までもたっぷりの汗で溶かされ、泥のようになっている気持ちを冷まさなければ。そう思い、身体をだるく、頭を重くさせ、どうにも落ち着けない焦りのような感覚――今まで感じたこともない奇妙な感情を取り除こうと、その原因を自分から遠ざけ、抵抗しようと身体を動かす。
「あうう!」
すると直後には、心臓が止まりかけるほどの強烈な衝撃が、凛の敏感な部分に襲い掛かってくる。それは高熱にうなされる彼女の全身を一瞬で駆け巡り、手足の指の先から脳髄までも完全に痺れさせてしまう代物であった。不思議と痛みは感じないが、しばらく息ができなくなり、死んでしまいそうな苦しさと恐怖があった。
抵抗どころか、身動きひとつ許されない。受け入れるしかなかった。無心で、夢中で感じるしかない。股間を全力で開き続け、女の最も敏感な一点が、擦られ、捏ねられ、吸われて苛められるのを。
理性を眠らされた凛の中で、奇妙な感情は際限なく、膨らんでゆく。もどかしい、焦燥感。堪らない、今すぐ欲しい……そんな衝動である。凛にはそれが何なのかがよく分からない。
だが、彼女自身には未知で不可解であっても、その身体を弄ぶ者には明確に理解できていた。欲する物を眼前にちらつかせておきながら、ぎりぎりのところで与えようとしない。少女が戸惑い、苦しむ様を愉しんでいる。その悪意ある態度に、凛はますます堪らなくなってゆく。
とにかく、熱い。目を開けてもいられない。凌辱されはじめてから、かなりの時間が経過している。いや、ほんの10分ほどなのかもしれない。時間の感覚が麻痺している。
そろそろ、気持ち悪かろう。下着を脱ぐがいい。
誰かが、そんなことを言った気がした。
うん……
誰かが、返事をして、頷いた。
凛は、自分の手足が動かすように促されているような気がした。導かれるまま、脚を上げ、手で何かを掴む。それが、股間をねっとりと気持ち悪く包み、熱くさせている原因だと気づき……あとはよく分からない。ただ、いつの間にか、先ほどまでに比べると涼しくて気持ち良い状態になったのは確かだ。
あらためて、股間を開いた。敏感な部分がひりつき、獣じみた、荒々しい気分に駆られてしまっている。そこに再び刺激が加えられることを、ねだらずにはいられなかった。
「はん……っ!?」
刺激は後ろから襲ってきた。肛門を撫で擦られたのだ。先ほどまでも、尻肉を摘ままれたりはしていた。だが、そんな不潔な場所を、まさか触られるとは――
「や、やだ……はううううぅーーーん!」
それどころか、一気に指を挿し込まれた。前と同じように、後ろの穴もすでに熱く湿りきっている。何の抵抗もなく奥まで侵入し、いくら尻の筋肉を引き締めようと、その抽送、指による責め苦をまったく妨げることは出来なかった。咀嚼音のような汚らしい音が、尻の中から鳴るのも止められない。
急速に、正気が回復した。凛は目を開き、自分の身が置かれた現状を確認する。
「し、下着……」
ショーツを穿いていなかった。言峰綺礼は剥き出しになっている彼女の性器を間近で眺め、尻穴に指を挿入していたのである。
「今さらどうした、凛? 先刻、自分で脱いだのを、もう忘れたか」
何でもないことのように、綺礼が言った。
「あたしが……」
いや、朧げには覚えている。たしかに、自分で脱いだはずだ。しかし、それは有り得ない、あってはならないことであった。高潔なる遠坂家の娘が、下衆な男の前でみずから下着を脱ぎ、性器を露わにしてしまうなど何かの間違いでなければならなかった。
否定しなければ、今すぐ逃げ出さなければ。
「ん……ん」
凛は仰向けに寝たまま、いまだ黒ニーハイを着けたままの片脚を立てた。もう片方の脚は掴まれていて動かせない。だから、いやらしい行為を続ける綺礼の頭を自由が利くほうの脚でそのまま跨ぎ越すようにして股間から外すつもりだったのである。彼女の肛門からは、恥ずかしい音が鳴り続けている。
「は……は、あぅん……」
内腿の肌が凌辱者の髪で擦れ、そのこそばゆさに声が洩れた。太腿で男の頭を押し離そうと試みる。しかし、脚はわなわなと震えるばかりで、力が入らなかった。両手でも押してみるが、やはり同じだった。
「嘘……」
性感を刺激され続けたせいで、欲情が高まり過ぎている。股間の刺激から逃れようとするのを、肉体が拒絶してしまう。股間を少しでも閉じようとすると、凄まじいストレスと疲労を感じる。
凛自身の本能が、綺礼を望み、欲している状態になっている。
「嘘……よ……やめ…て。今、すぐ……んあ」
淫核に生温かい湿ったものが当たり、凛は押し黙った。綺礼の舌先であった。この凌辱劇がはじまってから、彼女はずっとその感触を味あわされ続けている。先端が、ほんのわずかに触れただけだったが、性器全体がひどく悦ぶのを感じた。充分に濡れそぼっているはずなのに、それでも濡らされることを欲していた。綺礼の唾液を塗りつけられて、興奮し、嬉しがっている。
だが、それは脅しなのだ。尻穴責めに対して抵抗すると、ここにまた勁を撃ち込むぞ、という。あの衝撃は苛烈すぎる。今度こそショック死してしまうかもしれない。
「く……ああ……ああん……」
そんな恐怖を凛に植えつけ、従順にさせることに綺礼は成功していた。彼女が身体を強張らせるのをよいことに、10代の少女の肛門を欲望のままに愉しんでゆく。
凛が抵抗をやめると、綺礼は淫核から舌を離した。尻の奥への摩擦を、途端に激しくさせる。
「やっ!? き、きたない……綺礼……そこ……あ……ふ……っ……んん!」
得体の知れない激情に駆られ、凛の息が荒くなる。頭痛が急に酷くなった。というより、全身の熱い痺れが脳に達してしまっている。頭の中が痺れ、茹って、何も考えられない。
身体が、綺礼に、もっとされたがっている――違う。もっとされたいという思いが、心の底から湧き上がってくる。今まで、ずっと御預けを食わされていたものが、やっと許されようとしていた。
「はあ……はあ……お尻……お尻……が……」
気持ちいい、と言い掛け、凛は口を噤む。乱暴に指で抉りまくられてはいるものの、我慢すべき痛みはまったくなかった。
「ん? 尻がどうした、凛」
よく通る、苦味のある声が鼓膜を震わせ、凛は顔をしかめた。
「ん……は……」
「苦しいのか?」
苦しくはない。熱いというだけで、むしろ許容しがたい、凄まじい快感を堪えていた。
「はあ……あふ……」
「苦しいだろうな。無理矢理にこんなことをされて、悦ぶ女などいない。苦痛に悶えるお前の姿を見るのは、とても愉快だぞ、凛」
「ふ……はあ、はあ……ん……あ……」
「前のほうも、クリトリスが充血し、硬くしこって随分と辛そうだな。だが、後ろのほうは……私としては、もう少し強く締めつけてくれるほうが好みなのだがな」
それを聞いた瞬間、凛の尻肉がきつく引き締まった。
「んん……」
「ククク……いいぞ。これが限度か? もう少し頑張ってみろ」
言葉責めの声が、耳に気持ち良過ぎる。心を直接に犯されている気分がした。
「はう……」
「尻が……どうした、凛? 言ってしまえ。少し楽になるぞ」
綺礼が、堕しにかかってきた。凛は歯噛みした。
「…………くっ」
これ以上、この男の言葉を聞いては駄目だ。変えられてしまう。屈辱と蔑みを与えてくる男に、ただ従うだけの女にされてしまう。
「ふ、言わぬか。この10年間で、お前もそれなりに、精神的にも成長したということだな。だが、それでは奪われるだけだ」
「はあ……はあ……はあ……」
「それでいいのか?……そうだ、凛、服を脱げ。お前の素肌を、胸を私に見せてみろ。そんなに汗だくでは、暑くて敵うまい」
「はあ……あ……ん」
たしかに、暑かった。身体の熱さと汗で全身が蒸れている。衣服が肌に張り付き、むず痒い感じだ。
「お前の魅力で私の心を奪ってみせろ。私を、手に入れてみせろ。どうした、脱がんのか? もっと肝心な部分がこの状態であるというのに、そういう努力は意味がないぞ」
「はあ……あっ……!」
ほんの一瞬だけ、また淫核に舌先のかすかな感触。凛の咽喉を、明らかなる歓喜の声が突いて出てしまう。
「ほら、凛……」
「ん……ふ……」
「そうか、ふむ。まだ、そこまで大人になりきれぬか」
そう言ったきり、綺礼は喋らなくなった。
「……は……あ……っ」
突然の静けさに、凛の胸が痛んだ。切なさを感じた。なぜだろう、今の綺礼の科白で、心に蓋をされた気分だ。逃げ道を塞がれた気がした。
「大人……」
熱い吐息で、呟く。我慢しなければ、大人……愉しめれば、大人……いやらしいことを恥ずかしがらず、身を委ねることができれば、大人……
「あ……あん……ぐ……んあ……あ、あ! あ! あ!」
そして、声が止まらなくなった。本気で気持ち良くなければ、女がけっして口に出来ない類の甲高い声。
綺礼の尻穴を責める指が、さらに速くなる。
「や、ん……やだ、綺礼! やめて! あ……頭が、頭の中がぁあ……変に……ああん!」
強いられている性的な快楽が、凛の脳が許容できる限界を超えつつあった。これ以上はまずい。危険だ、と頭の痛みが教えてくれている。腰を捩り、脚で藻掻き、尻の穴を苛める手を掴み離そうと試みる。
淫核に舌先が触れた。少しでも抵抗すると発勁をほのめかし、威圧してくる。反射的に抵抗を止めると、またさらに綺礼の指の動きが激しくなった。凛の直腸を熱と刺激で破壊しようとするかのような暴虐。
「やぁん! や……いやあ! 壊れる、綺礼! 早く……あん! あ、あ……このままだと……やめ……早く! お願い……あ! あ! あ……あ! あ!」
「イくのは初めてか?」
「やめて……」
「ふ、初めての絶頂が、後ろの穴とは」
嘲りの笑みとともに、尻への責めがさらに加速する。淫核への責めはない。あくまで、肛門への刺激だけでイかせるつもりか。
「やめて! これ以上は、もう! んん……駄目ぇ! 駄目…なの……あ! あ! あ! あ!……うあああああああああああぁーーーーーんっ!」
性的快楽が限界を超え、凛の理性が灼き切れた。
「…………あ……ああ」
まるで殴られたかのような鈍痛を頭に感じた。そして、なぜか罪悪感も。お父様、ごめんなさい、ごめんなさい……と、凛は何度も心の中で繰り返す。
今のが、イったということか。身体を弄られることで、内面を引き裂かれたショックは大きかった。
達した。性的快楽による絶頂を迎えてしまった。凌辱なのに、相手が綺礼なのに、しかも尻の穴を責められて……
「大丈夫か、凛」
麻薬のような心地良さをともなって、綺礼の声が心に沁み入ってくる。凛の頬に、涙が伝い落ちた。
「頭が、頭が痛い……」
呻く凛の肛門から、男の指が抜け出てゆく。
「じきに治る。案ずるな、次からはもう快楽しか得られぬ」
「魔術回路が……灼けて……」
勝手に口から零れ落ちる譫言に、綺礼が苦笑した。
「馬鹿な。こんな程度のことで、魔術回路が壊れるなどと。しっかりしろ、遠坂家の当主が、そんなことでどうするのだ」
凛は、泣きじゃくるばかりであった。綺礼からの慰めなど、筋違いもいいところだ。それでも、その優しい声に自分の心がほだされてゆくのが情けなかった。
「……母さんは何処? 母さんにも、こんなことをしたの」
やっとそれだけ口にすると、綺礼は彼女の下半身から身を起こした。
「お前のお母上には、もっと酷いことをした」
「どうして!……あ」
凛の広げられた両脚の間に膝立つ綺礼が、ズボンの革ベルトを緩ませた。軽い金属音を奏で、ベルトとズボンがずり落ちる。凛の股間が、また大きく開かされた。
綺礼は黒いブリーフを着用していた。その真ん中が大きく盛り上がっているのを目の当たりにして、凛は目を背けた。
分かってはいるつもりだ。
たった今、これ以上にないほど、逃げ出さなければならない瞬間に直面していると。見なくとも分かる。綺礼が、おもむろにブリーフを脱いでいるのが。
だが、動けなかった。肛門責めで強制的に絶頂を迎えさせられたショックは大きかった。ここで綺礼に逆らうと、立ち直れないほどの心の傷を負わされる気がしていた。
「ああ……」
興奮が冷め閉じかけていた陰唇に、綺礼の熱く猛った肉棒がじかに押しつけられ、凛は戦慄を覚えた。
分かっていた。
なにも、凛に性虐を加えたいだけで、この男はこんなことをしているのではないことを。綺礼自身が気持ち良くなってこその、この凌辱なのである。今度は自分が達する番というわけだ。
「んん……!」
頭の中が再び、熱く痺れてきた。綺礼の言う通りだった。堪えきれないほどの痛みが、逆に快感へと変わってゆく。性器が潤み、すぐにでも訪れるであろう破瓜の予感にわなないている。
「とうとう、アレが人としての機能を完全に停止してしまってな。それで私自身の無聊を慰めるための、代わりのものが必要になったというわけだ」
子宮への入口を硬い肉で擦りながら、綺礼の顔が、淫核をしゃぶっていた口が凛の眼前に迫ってきた。
アレ? 人としての機能……違う意味に取りかけたが、凛には思い当たるものがあった。それはつい最近、身につけたばかりの魔術知識であった。
「……ホムンクルス?」
「ほう、よく分かったな。アインツベルンによって作られた小聖杯を運び、時が来るまで破壊されぬよう守る役目を負い、その為に生み出された女だった。その女の消滅によって現れた、あの黄金の杯は、すでにこの遠坂邸のある場所に設置を終えた」
思わず聞き逃しそうになるほど、何気ない口調であった。しかし、綺礼が口にした、にわかには信じがたい言葉に凛は驚愕した。
「聖杯!? お父様がずっと求めていた、あの聖杯がここにあるというの?」
「ああ、遠坂家永年の悲願は成就したのだ。この、私によってな」
強張った凛の頬を、綺礼の舌が舐め上げる。
「あん……人の家の何処に、断りもなくそんなものを……」
「いいや、ここはお前の家ではない」
「……は?」
ぎくり、とした。察しは、すぐについた。遠坂家が代々所有してきた遠坂邸が当主である凛のものではない……その言葉が、何を意味するかを。父の遺言により、綺礼が後見人となったときから不安はあったのだ。こんな男に財産管理を任せて大丈夫なのだろうか、と。だが、実際に綺礼によって語られた内容は、凛の予測の遥か上を行っていた。
「手続きには、意外に手間取った。だが、何とか法的問題を解決し、3年前に私は再婚したのだ――お前の母とな」
「なっ!?」
「世間では今も遠坂葵と呼ばれている、お前のお母上だが、厳密には言峰葵と呼ぶのが正しいのだ。まあ、私自身にも彼女が妻という実感はないが、少なくとも戸籍上はそうなっている。その際、遠坂家の財産はすべて、葵を通して私の名義に変えてある。もちろん、この屋敷も現在の所有者は私だ」
「待って、だとしても、あたしの相続権が――はうっ!」
「つまり! お前の実母の夫である私は、実質、お前の養父ということになる」
残酷な宣言とともに、凛の淫核を、男根が強く擦り上げた。
「ん……ふざけんじゃ、ないわよ。返して……母さん、この家……何もかも、返して……返せ!」
「…………」
精一杯の、凛の恫喝に、綺礼は無言で答えた。表情を消したまま、熱く硬い肉棒の先を、彼女の柔らかい肉の穴へと照準する。
差し迫った危機に、凛の顔に明らかな怯えが走った。
「……やっぱり、許して……それ、だけは……」
いつになく、か細い声で懇願する。綺礼の口許に、邪悪な笑みが広がった。
「痛いぞ、覚悟したほうがいい」
「嫌ぁ……あ!……ん……くうううううう……い、痛……!」
そして、綺礼は入ってきた。凛の身体の裡側へ、まだ1度も使われたことのない肉壺へ、薄膜を破り千切って。無理矢理に押し入ってきた。
遠坂凛が、処女を失った瞬間であった。
「む、無理よ……そん、な……痛い! 痛ぁい!」
痛みは、たしかにあった。太いものを狭い穴に捻じ込まれ、苦しくもあった。ごりごりと抉られ、穴が拡張されてゆく感じだ。肉体が他人によって加工されてゆく屈辱感と恐怖があった。だが、少しも経たないうちに、彼女にとって予想外の事態が起きる。
「ああ……あ?……ああ……あ……」
先に肛虐により達していた為か、散々に発勁を撃たれた後遺症か、すでにすべてを奪い取られていた過酷な現実を突きつけられたせいか、処女喪失の肉体的苦痛は、すぐに治まってしまったのである。代わりに、年若く瑞々しい肢体を駆け巡ったのは、生物としての性的な幸福感――牝としての圧倒的な喜悦。
「あ! あん! ん……く……はあ、は、ん……くああああ! うああああああああああああああん!」
潤みきった膣壁を熱く激しく擦られ――凛の口から溢れ出たのは、言い訳の余地のない歓喜の嬌声。快悦の中でしか出すことのできない、嬉しさの喘ぎ。彼女自身の意志に反し、それが止まらなくなった。
「凛、お前とて年頃の娘だ。まさか、こんな初体験を望んでいたわけではあるまい。たとえば学校などで、気になっていた同年代の男子がいたのではないか?」
「はあ、はあ、はあ……あ……はうっ……あ……つっ……あ! あん! あ! あ! あ……あ! あ! あ!」
堪らない。腰から下が甘い痺れに満たされ、それは背筋を伝って、上半身にも広がってゆく。
気持ち良過ぎるのが、心にきつい。
「ところがどうだ。これが現実の味だ。父を殺され、母を、財産を奪われ、挙句に身体まで奪い尽くされ……そう言えば、妹も奪われてしまっているのであったな、お前は」
「ああん! ああ! あ! あ! あ!」
激痛を、予感していた。憎むべき男に身体を滅茶苦茶にされるのだから、当然、痛く、苦しいものであるはずだと、そう思っていた。
だが、現実は違った。綺礼の速い一突きごとに、喜びが湧いてくる。股を開かされ、性器に太い男根を挿入されているというのに、なおかつ、熱く硬いそれで膣内を擦られ、掻き混ぜられているというのに。
とても、快感だった。
「しかし、お前には、そんな理不尽に対して抗うすべはない。お前にはただ、こうやって、奪われて苦しむ姿を無様に曝し、私を愉しませ続けることしかできないのだよ」
「あ! う! あ! うぁ……ああぁーーん! あん! あん! あ!」
淫らな声を止めることもできず、聞かせ続けてしまっている恥辱。凌辱者に対し、立ち向かう意志は捨てていないはずなのに、顔の表情までも制御できない、表面上は恍惚に浸り、屈従したようにしか見えない危険な状況。
乱れ狂っている凛に、綺礼が囁く侮蔑の言葉の意味など理解できなかった。だが、その甘やかに響く声が耳から入り込み、執拗に脳を蕩かせようとする。
「さあ、また暑くなってきただろう。いい加減、上着くらい脱いだらどうだ?」
「うあ……はぁん……あう……あーー……あ! あぁっ! あ!」
「お前のその声も、男を虜にするためのものだ。私を誘惑してみせるのだ、凛。お前から何もかもを奪った私から、取り返すのではなく、逆に私の全てを奪い取るつもりでな」
「あ! あ……あ……」
突き込む速さと強さが、少し緩んできた。敏感な部分への、ぬるっとした感触が逆に強まり、また別の快感が湧いてきた。
言葉責めもいい。耳に……堪らない。
「そうだ、では、こうしよう……凛、今すぐ服を脱げ。さもなければ、お前の子宮に私の子種が注がれることになる」
子宮……この単語に、朦朧とする凛の意識が反応を見せた。
「あん……」
「ほら、凛? 望まぬ妊娠などしたくなかろう」
妊娠……そうだ、綺礼の子を孕むわけにはいかない。
「嫌……中は……駄目……」
卑劣な凌辱者の子供を産むことになるかもしれない危機を悟り、緊張で、背中がぞくり、とした。
「仕方ないのだ、お前は脅されている。だから脱ぐのだ、本意を捨ててな」
仕方ない……脅されているから……
「ああ……嫌ぁ……あん……」
艶かしい声とともに、凛は赤い上着から脱ぎはじめた。手先が痺れているせいで、その動きはひどく緩慢であった。それでも、着ているものを次々脱ぎ終え、汗だくの火照った肌とショーツと揃いの深紅のブラジャーが露わになった。
性器への責めは続いている。汚らしくも、心地良い音が股間から生じている。
「うぁあん……あふ……ぅ……はあ、はあ……ああ……」
赤い布地に飾られた胸元に、それなりに鍛えて引き締まっている腰に、強烈な官能を感じた。視線が当たっている。肌に、突き刺さっている。
愉しい……愉しまれている。
自制しなければ……止めさせなければ。自分が自分でなくなってゆくのを感じる。実感できるほどに、今までの自分から、変えられてゆく。
「続けろ、凛」
「はう…ん」
囁かれ、凛は悔しさに泣きながら、ブラのカップを捲り取るようにして引き下げてゆく。顔を逸らし、目も開けていられなかったが、それでも綺礼の視線が胸元に注がれていることは、相手の呼吸音や頭部の位置を探って感じ取ることができる。
恥ずかしさに手が震え、乳房を曝け出す決心がなかなかつかなかったが、綺礼は焦らしのように受け取ったのかもしれない。少しずつ、少しずつ胸の谷間を見せてゆき、やがて左右の乳首が見え始めると――
「あんっ!」
凛はひときわ甲高い声をあげた。
綺礼は彼女の両手首を掴み、一気に下ろさせた。思わぬタイミングで両乳房を剥き出しにされてしまった凛は、綺礼の手を振り解こうと藻掻いた。だが、男の手は彼女の手首を固定したまま、微塵も動かない。
乳房を、隠すことができない。見られている。観賞されている。
「触られもせぬうちから、硬く尖っているな。大きさといい、色といい……いい乳首だ」
「あ……あ……」
下世話な評価をされるが、押さえ込まれた腕は上がらなかった。股間に陰茎が挿し込まれているのだ。感じてしまって、力など出せるわけもなく、すぐに疲弊して腰を捩るくらいしかできなくなった。すると、綺礼はそれを待っていたかのように、抵抗する気力を失った凛の、左右の乳首を交互に舌先で堪能しはじめた。まるで、味の違いを比べているかのように。
「な、舐めちゃ……駄目ぇ……あ……はあ……もう……お願い……」
淫核にしていたように、舌先で擦られ、転がされ、舐めしゃぶられる。とても、美味しそうに。
「んあう……く……くああああああああ……」
右の乳首を強く吸われた。綺礼は、興奮して我を忘れている凛を存分に愉しみ尽くすつもりだ。
「こういった時、抱き締め合うと気持ちいいぞ」
凌辱者にそそのかされ、凛は衝動的に腕に力を篭めた。だが、両手首を掴まれているのだ。抱きつけるはずもない。
「ん……綺礼……」
我慢し難いもどかしさに、凛は身体を揺すった。綺礼の鼻先で、両乳房が揺れる。
「ほう、生意気にも、ちゃんと揺れるではないか。なかなかいいぞ。もっと見せてみろ」
「綺礼ぃ……」
綺礼の、その嘲弄を含んだ態度に、怒りと憎しみが沸き起こってくる。凛は、乳房をさらに揺らした。
さらに、揺らす。何度も、綺礼の目の前で。
「綺礼……あ……綺礼、綺礼……き、れい……」
揺らす都度に、気持ち良くなってきた。それを綺礼に見られているのが、堪らない。
「きれい……綺礼……ああん……きれい、きれい……」
相手の名前を呼びながら揺らしていると、それに合わせて、綺礼も肉棒を激しく突き込みはじめた。
「きれいぃぃ! あん! きれい! ああ、きれい! ああん! あ! あ! はあん……あ! あ! あ! き、れ……あっ! あ! きれい! きれい!」
気持ち良くする為に、名前を呼んでいた。それは、気持ち良くなる為でもあった。
「そろそろ、行くぞ、凛」
耳許で囁かれ、うっとりと、凛は頷く。
欲しい、と思った。心の底から、綺礼のを、中に……
「きれい……んんう……うあっ! あ! あ! あん!」
激しすぎた。肉体が砕けそうな勢いで、容赦なく突いてくる。
「あ! あ! あ! あ……あ! あ! あっ! あっ! あっ…………綺礼……あ……あああああああああああああああああああああああああっ!」
また、頭の中を、まばゆい閃光が真っ白に染めた。凛が官能の臨界を極める寸前、綺礼は「ハッ!」という掛け声と共にとどめの一撃を突いていた。瞬間、脳天まで突き抜ける衝撃が身体を擘く。
「はあ、はあ、はあ……あん……はあ、はあ……ああん……」
まともに達したのは、これで生涯2度目である。
「ふぅううううううう……」
綺礼は、長く息を吐いている。
正常位で男と同時にだからか、1度目とは比較にならないほどの、いやらしい気分で凛は全身が満たされていた。幸福感を否定できない。綺礼に対し、頼もしさすら感じる始末であった。
「あっ!……ん」
唇を奪われる。してみたかった。こんなキスを。綺礼の舌は、凛の唇の弾力を確かめた後、遠慮なく口の中へと入り込んできた。舌と舌とが絡み合う……
「ん……ぷはっ」
そこで、凛はキスを中断した。急に怖くなってきたのだ。
中に出された……膣内に、綺礼の精液を。下半身は痺れていて感覚が鈍いが、間違いないだろう。まだ、決まったわけではないが綺礼の子を妊娠するかもしれないという、リスクを負ってしまった。
「どうした、辛そうな顔になったぞ、凛」
心底愉しげに、綺礼は笑っている。だんだんと、凛に平常心と絶望が戻ってきた。
「……どうして……何で、あたしや、母さん……あんたにとって恩義あるお父様の家族に、こんなことができるの」
震える声で、凛は言った。口惜しさで目眩がしそうだった。
「こんなこととは、セックスのことかね?」
「……綺礼」
「ふ、そう睨むな。今や親娘同然の関係とは言え、別に血が繋がっているわけでもない、問題なかろう。お前に、私の子宝が授かってもな」
いつもと変わらぬ調子で、事も無げに綺礼は答える。
ごくり、と凛の咽喉が鳴った。
「あたしの父は遠坂時臣、ひとりだけよ。10年前、聖杯を手に入れるため戦い、この冬木を怪物から守ろうと挑んで、その戦いの最中、死んだ――」
「いや、それも違う」
うんざりしたかのような、綺礼の表情であった。
「え……? あ、あなたが10年前、私に言ったことでしょ!? お父様は、未遠川に現れた怪物を退治しようとして死んだって、たしかに!」
また、否定された。今まで、当然のこととして信じていたことを、覆されてしまう。凛は必死だった。懇願に近い気持ちで綺礼に問いかける。
「凛、人の話は、もっとしっかり聞くものだ。いいか、10年前のあの時、私はお前にこう言ったのだ。時臣は私に遺書を託し、万全の支度を整え、大海魔を討伐に向かった、その矢先、命を落したとな。時臣はこの屋敷の中で殺されたのだよ――私によってな」
この期に及べど、綺礼は、やはりまったくいつも通り、教え諭す口調で凛に答えた。
「嘘……」
「事実だ。時臣師は当時、最強のサーヴァントを従えていた。そして場合によっては、令呪を使い切る覚悟であの怪物を誅戮せんと臨んでいたのだ。私によって殺されてなければ、怪物は速やかに倒され、その後の大惨事も未然に防がれたであろうなぁ」
「…………」
実父の殺害を告白されたというのに、押し黙り、無表情に、身動きもしない凛を余所に、綺礼が着ていた神父服の上着を肌蹴た。鍛えられた胸板を露出させ、それを凛の両乳房の上に重ね、ゆっくりと押し潰してゆく。10代の乳肉の感触を、じかに味わいたかったようである。
そして、2度目のキス。胸と同じく、唇も重ね、舌を凛の口腔へと挿し込む。
凛は噛み付いた。父親の仇だ。遠慮は必要ない。噛み切るつもりだった。
「ん……ぐ……」
しかし、綺礼の舌はまるで極めて硬質のゴムのように、凛の歯を微塵も喰い込ませない。気功を用いて、硬くしているのだ。同時に、顎に全力を注ぐあまり、疎かになった両手の指1本1本が、綺礼の指に絡め取られてゆく。2人の両掌がぴったりと重なり合い、いわゆる恋人繋ぎの状態となった。
「ん……うぐ……く……う」
長時間の性虐によって疲労していた凛の体力的限界はすぐに訪れた。彼女の顎から力が徐々に抜けてゆくと、綺礼の舌が動きを活発化していった。舌の付け根、舌の裏側、臍、口蓋……口の中のいたるところを、凌辱者の舌先が擦り、舐め上げ、くすぐり、いやらしい性技を施してゆく。
為す術も無い凛はただ涙を止め処なく流し、痼らされた乳首を胸板で擦られ、淫核にまで喜悦を生じさせられるのを甘受するしかなかった。そんな彼女の股間を、さらに突然の強烈な快感が襲う。
「んんんんんんんんんーーっ!」
綺礼が、挿入された肉棒で激しく擦ったのだ。喘ぎながら、凛は悟った。まだ、自分の子宮に、精液が注がれてないことを。下半身が痺れ、感覚が鈍っていたために気づけなかった。恐らく、発勁による効果によって。
綺礼は自らはイかず、凛の絶頂に合わせて男根の先から気を撃ち込んだだけだったのだ。
「ん、ん……ん! んう……ん! ん! ん! ん! ん!」
抽送が、本格的に再開された。凛のプライド、理性を打ち砕こうとするかのように、彼女の柔肉が硬く太い肉棒によって強く、深く突き込まれてゆく。今度こそ、膣内に射精するつもりなのは明白であった。
妊娠させられるかもしれない……凛は戦慄した。だが、それは弱い恐怖だった。前回ははったり、今回こそ本命。いよいよ、危機が差し迫ったというのに、うまく、怖れることができない。
恐怖には鮮度がある。先ほど感じた膣内射精は発勁による錯覚だったが、それでも彼女が感じた恐怖自体は紛れもなく本物であった。2度目では1度目より怖れの度合いはどうしても低くなるのである。
そして、その減退した度合いだけ、抑え込まれていた牝の悦び――性的な快楽を求め、貪りたいという欲望、孕ませてもらえるという嬉しい気持ちが大きくなっていった。
「ん……ん……」
覚えさせられた、覚えたての性の愉悦が、また凛を狂わせる。
気持ちいい、気持ち良くなりたい……大人の女の証、肉悦を求める心。それが綺礼によって、急速に目醒めさせられてゆく。大人にさせられてゆくのをたしかに感じる。
「う……」
互いに互いの舌を擦り合い、吸い合い、指先を絡めた手をしっかりと握り合う。
一時的な感情に決まっていた。しかし、綺礼の巧みな愛撫、技巧により、凛は心の箍を締めることができない。どこまでも劣情の悦びに身を委ねてしまう。
「ん、ん、ん……ん! ん……う……ん! ん! ん! ん! ん!」
快感が、止まらない。激しく突き込まれる綺礼の肉棒を下の口で懸命に咥え込み、絡みつく。だが、凛の奥から分泌される愛液が高速で摩擦する動きを妨げさせず、綺礼の腰は止まることなく、亀頭が膣壁を心地良く滑り刺激する。
「んん……ぅんんっ!」
綺礼の腰はさらに大きく動き、凛の深いところまで陰茎の先が届くようになった。すると、密着していた胸と胸とが次第に剥がれはじめる。乳房への刺激が薄れた。凛は細い腰を浮かせ、綺礼の胸板を追いかける。乳首が、良い具合に性器への刺激に合わせて擦れだした。
「ん! ん! ん! ん! んん! ん! ん! んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんっ!」
股を限界まで広げ、背を仰け反らせ、綺礼の欲望を、凛は全力で受け止めた。熱くねとつく精液が、子宮へとたっぷりと注がれる。さらに口の中から脳天に向け、舌先から発勁を撃たれた。
凄まじい、快感、興奮、衝撃、歓喜……
牝として、これ以上ないほどの絶頂感、愉悦に、凛の意識が一瞬掻き消えた。
「…………うんん……ぅ」
もう、駄目だ。間違いなく、今度こそ孕む。産まされる……そんな予感に囚われた。
「ん……はあ、はあ、はあ、はあ、はあ」
唇が、解放された。2人の唾液が混ざり合ったものが、口から長く糸を曳いた。自分の吐息を聞いて、改めて凛は絶望する。愉しそうにしか聞こえないのだ、誤魔化しきれないほどに。いや、それを言うなら、もっと以前からそうだったかもしれない。しかし、綺礼は気づかない振りをしていて……
行為を終えた直後だというのに、また昂ぶってきた。身体が、早くも渇きを覚えている。気持ち良くなりたい、ヤりたい……欲情に歯止めがかからない。
もっと、欲しい、綺礼が。他の男に同じ事をされたとしても、ここまで感じられる自信はない。
「うあん!」
固く握り締め合っていた両手も解かれ、綺礼が身を起こそうとして、凛はその胸元に抱きついた。涙を流し、必死に頬ずりしながら、「くぅん……」とまるで犬のような声をあげる。相手の顔を見ようとは思わなかった。侮蔑に満ちた眼差しで、邪悪な笑みを浮かべているに決まっているからである。