あの地下下水施設のように、石床には赤い魔法陣が描かれていた。
ここは、冬木教会地下の一室。
ここは、魔法陣の上に置かれた、木椅子の、それに座る男の……
「ああ……」
アイリスフィールは、椅子に座る言峰綺礼の、その上に跨っていた。2人とも全裸で、互いの性器は交接していた。
彼女は、動けと命じられ、同時に腰を強く掴まれ、動けなくされてしまっている。動きたい、腰を動かしたいという衝動だけが際限なく高まってゆく。
そのもどかしい気分に堪えながら、アイリスフィールは綺礼の胸元に指を滑らせていた。もう片方の手は、自分の乳房に軽く添えられている。
「んぅん……」
寂しげな声を出しながら、彼女は乳房を揉んでいた。ふくよかな柔肉の下部を2本の指で表面を撫でるように、弱い力で。
「んん!」
突然、指に力を入れ、乳房を絞りつけてみせる。表情にも手を抜かない。努めて辛そうな顔をしながら、じわじわと絞り上げてゆき、指先が乳首に達するとそこを乱暴に捩じった。
捩じっていきながら、顔では逆に気持ち良さそうな悪戯めいた微笑を浮かべ、綺礼を見つめた。
腰を束縛していた力が緩んだ。
「あぁ……あ……あん……」
途端に、アイリスフィールは歓喜の喘ぎをあげ、下半身を蠢めかせはじめた。綺礼の掌に、汗まみれの彼女の肌がぬめり、心地よい摩擦を生じさせる。
長い銀髪を振り乱し、アイリスフィールは惜しみなく腰を振りたくる。彼女の子宮の中は、数限りない凌辱の末、すでに綺礼の牡液に満たされている。それだけでなく、受精した子種も、いくつも誕生して内部を漂っていた。
そんな受精卵の1つが壁に貼りつくのは時間の問題で、今すぐにでもありえる状況であった。
「あ……あ……」
そこが、聖杯戦争の監督役である言峰璃正の教会であることは、聞かされたので知っている。気を失ったところを運び出されたのだ。そして、場所を移されたところで、彼女の扱われ方に変わりはなかった。ただ淫欲を満たすためだけの道具としての役割を負わされている。
「ん……ふう……あ……っ……あ……」
薄明かりの中、人造の女は夫の宿敵に熱く抱きつき、その顔や頭に頬ずりをし、耳許でか細い、悦びの吐息を聞かせ続ける。綺礼の両手は彼女の腰と尻を支えているだけである。強姦しているはずの側は微動だにせず、されている側のみが身体を跳ねさせ、己の中に挿し込まれた男のものを愉しませる。いや、明らかに彼女のほうがこの淫虐を愉しんでいた。
もはや、魔術によって強いられているのか、彼女自身の感情なのかも分からない衝動――理性の届かない心の奥底から湧き上ってくる救いのない劣情が浅ましい行為へと駆り立てる。
気持ちいいのだ、この状況が。造られた魂を呪縛されているというだけでは説明のつかないほど強い、隷従への願望、快感。人ならざる魂を持つおぞましい男に所有されていることに、人ならざる女の肉体が呼応し、悦びに打ち震えてしまうのである。
アイリスフィールの心は、いまだに夫・衛宮切嗣のものであった。しかし、身体は、そんな彼女の意思を踏み越えて言峰綺礼を求めている。
「あ…………!!」
その時、彼女は唐突に察知した。怖れていたことが、自分の身に起こるべくして起きてしまったことを、ホムンクルスである彼女の機能が伝えてきたのだ。
「ん……ふう……」
アイリスフィールは腰を止めた。綺礼が、彼女の頬を撫で、髪を払う。
「どうした?」
「妊娠しました……」
額と額を擦り合わせながら、アイリスフィールは甘く報告した。
「ほう」
「たった今……はあ、はあ……子宮壁に、着床しました……間違いありません。綺礼、あなたの子です」
夫に対する裏切りが、これで確定してしまった。もう、後へは退けない。綺礼が、彼女に堕胎を許すはずがない。どうしようもない恥ずかしさに目を開けることも出来ず、ただ男の顔を手で触れ、撫で回した。
目許、口許を指先でなぞる。綺礼は、笑っていた。
アイリスフィールの背筋に、ぞくりと悪寒が走った。
「で……気分はどうだ? 衛宮切嗣の妻よ」
耳触りの良い声が、アイリスフィールの鼓膜を犯す。
「お前の最愛の夫にとっての、最悪の敵に、孕まされたわけだが……何か感慨があるのではないか……ん?」
「…………」
返しようのない問い掛け。それは、予想通り、期待通りのものでもあった。
「随分と、嬉しそうだな。正直、幻滅を禁じえぬ」
「そんな……そんなことは」
「アイリよ……お前が愛しているのは誰だ? 偽りない気持ちを答えてみろ」
綺礼が、強く抱き締め、挿入されたものを軽く動かす。熱く硬い感触が彼女の膣内をぬるりと擦る。
「衛宮……切嗣。私の、夫……」
答えながらアイリスフィールは、次にあるはずの命令による、心の痛みに備えた。
「ふふふ……安心した。どうやら、まだ正気を保ってはいるらしいな。では、それを踏まえた上でお前に命じる。次からは、先ほどのような問い掛けには『言峰綺礼』と答えよ、よいな」
「嫌ぁ……はあ……はあ…………はい」
最低だ、最低すぎる。そして、やはり思った通りの仕打ち。なぜか、分かってしまう。
ああ、けっして、こんな男と心が通じ合っているわけではない筈なのに。
「では改めて問おう。お前が愛しているのは誰だ、アイリよ?」
「……言峰綺礼」
「そんなぞんざいな言い方があるか。衛宮切嗣に問われたときのように答えてみよ」
「ああん……言峰……綺礼……私の、最…愛の…………ああっ!」
ついに、熱い気持ちに堪えられなくなり、アイリスフィールは腰振りを再開した。奉仕ではなく、自分が満足する為に、夢中で綺礼の肉棒を貪りしごく。
聖杯の現界が近づくにつれ、アイリスフィールの肉体は衰弱し続けている。しかし、この男――言峰綺礼との行為であれば、いくらでも力が湧いてくるらしい。
「あ、あん…あ、あ……んぐ……あ、ん、あ……ああ! あ! あぁん!」
その力を捻じ伏せるように、強引に唇を奪われ、乳房を揉みしだかれ、尻肉を引っ掻かれる。アイリスフィールはそういった愛撫にも舌を吸い合い、頬を擦り合い、抱き締め合って応えてゆく。
切嗣の許へは帰れない。その覚悟は出来ている。今、すべきことは、この男の心を奪うこと。
だが……駄目。自分自身が愉しんでしまう。
「あ! あ!……あ、あ、あ、あ!……ん、んんんんんんんんんんんんっ!」
綺礼の射精と同時に、アイリスフィールは絶頂に達した。
「はあ……はあ……はあ……ああ……ん……ふ……」
たっぷりと出させた。この憎らしい男に出させてやった。その量に充足した気分を満喫しながら、アイリスフィールは綺礼の両頬に手を添え、彼の顔をじっと見つめた。魔法陣の赤い光が体力を回復させるまで、少し時間が掛かる。そのひとときを見つめあって過ごしたかったのである。
「愉悦を感じるか?」
「…………」
綺礼の問い掛けに、アイリスフィールは頷いた。
「牝の魔性だ。どんなに嫌な相手でも、憎い敵でも、逃げられぬ状況とあっては、その男を受け入れてしまう。そして、自分が愉しんでいる姿を見せつけることで、男の魂を奪おうとする。ククク……まあ、その程度では私の魂を奪うことなどできんがな」
蔑み、嘲笑う綺礼の言葉を、アイリスフィールは聞いてなかった。
唇に唇を重ねたかった。舌と舌とを絡ませ合いたかった。だから己の情欲が赴くままに、うっとりと顔を寄せてゆく。だが、凌辱者はそんな彼女の頭を押し下げ、それを拒んだ。
「あん……」
そのままアイリスフィールを自分の上から床に下ろすと、彼女の顔に股間の性器を押し付ける。綺礼の指図を待たず、アイリスフィールは精液まみれのそれを口に含み、舐めしゃぶりはじめた。
舌を突き出して男根の竿に滴る白濁の液を拭い取り、亀頭を咥えて優しく擦りあげる。自分の指についた液も、一本ずつ、根元まで口に挿し込んで舐め取っていった。
そうしている間に、綺礼はアイリスフィールの口の中で、太さと硬さを早くも回復する。火傷しそうなほど熱くなったそれを、彼女は自分の乳房で挟みつけた。
「ああ……」
憂鬱そうに喘ぎながら、慰めるように撫で擦る。そして熱を冷まそうとするかのように、息を何度も吹きつけた。
「大きく、形の良い胸だな、アイリ。それは誰のものだ?」
「衛宮……いえ、あなたの……言峰綺礼のものです……」
「よく理解しているではないか。ふ、もっと悔しそうにしてもよいのだぞ。それとも、そんなに私が気持ち良いのか?」
綺礼の理不尽な言葉を、アイリスフィールは無視した。胸の中の彼は、さらに熱さと硬さを増してゆく。
「ん……」
精液の迸る先端の穴やエラの部分を舌先で小突き、徐々に、強めに小刻みに舐め擦ってゆく。これまでの経験から、それがこの男の好むやり方であるのが分かっているのだ。上手くなる必要はない。常に探っていけばよいだけだ。言峰綺礼が感じる方法を。
「フハハハハハハッ! 無様なものだな、綺礼よ」
その時、この2人きりの地獄に、頭上から無粋な声が降り注いできた。この部屋の地上への扉は天井近くにあり、一種の吹き抜け構造となっている。おそらくは、床から階段で昇らなければならない、その扉の近くに立っている男の声。
綺礼の従えるアーチャーのサーヴァント、ギルガメッシュの声であった。おおかた、また小遣いの少なさに不平を言いに来たのであろう、とアイリスフィールは憶測した。それより……燃える。こんな恥じるべき有り様を見られていることに、らしくもなく神父としての綺礼が動揺しているのを感じた。つぶさに彼の、陰茎の震えに。
ふふ……
心の中で小気味良い気持ちに浸りながら、アイリスフィールはそれにしゃぶりついた。深く頬張り、口腔にて熱しながら、舌による愛撫を続けてゆく。よりいやらしく、より意地悪に――
英雄王ギルガメッシュが立ち去った後も、淫虐の宴は続いていた。
まず、シャワールームにアイリスフィールを放り込むと、魔法陣のある部屋に戻り、手早く用意した。
撮影の用意である。三脚つきビデオカメラ、撮影される映像を確認する為の、テレビ、そしてライトアップするための照明スタンド。それらを設置し、配線してからシャワールームに戻り、水浴びをし終わったアイリスフィールをまた連れ戻す。
衛宮切嗣の所在は不明のため、アインツベルンの城にいるユーブスタクハイトに送りつけるビデオレターの撮影だ、と趣旨まで説明してから、またしゃぶらせた。
「ん…………んん……」
綺礼のものを咥えている口許を照明でまぶしく照らし、テレビで確認しながらビデオカメラの位置と高さを微調整してゆく。吸っている音がクリアに入るほど、なるべく至近に、ピントもくっきりと合わせる。
さすがに恥辱を感じるのか、アイリスフィールの閉じられた目からは涙が溢れていた。
「ん……ぷは……」
いったん、口から抜き出し、臭いを放つ唾液まみれの性器の根元を彼女の鼻先に押しつけた。それは、下から舐め上げよという合図であった。
「ん……う……」
熱く、大きく、裂けんばかりに怒張した綺礼の男根を、アイリスフィールは泣きながら口を大きく開け、舌を限界まで伸ばし、裏筋を下から上へ一直線に舐めていった。
その屈辱感に満ちた悩ましい様子に、並ならぬ愉悦を覚えた綺礼だったが、しかしまったく、充足を感じなかった。まだだ。こんなものでは済まされない。この女を使って、もっと強烈な愉悦を得なければという衝動が止められないのである。
さすが、あの衛宮切嗣が溺れただけはある、と綺礼は今になって、幾ばくか後悔の念を感じていた。
まずい予感が、日増しに強くなる。錬金術の最高峰・アインツベルン家がその目的で造り出した究極のホムンクルスである。男の性癖を探り取り、男の性感を探り出す能力にかけては生身の女など、その足許にも及ぶまい。
こうやって舐めしゃぶらせている時にしてもだ。咥えたものに舌を這わせる、その強さ、タイミング、擦り方をあっという間に覚えてゆく。いくら顔色や態度に気をつけ、探られまいとしても、綺礼が実際に感じはじめた時にかぎって、アイリスフィールはその上品な顔立ちに似合わない淫猥な笑みを目に浮かべるのだ。
その目を見ると、猛烈な欲情が襲ってきて、綺礼を性獣へと変えてしまう。
この女の気持ちを少し冷まさせなければならない、と思った。言峰綺礼に対する嫌悪感、あるいは精神的な距離感を持たせなければ、彼女を隷属させることにならなくなる。彼の魂のほうがむしろ、アイリスフィールの造られた心の中に取り込まれかねない。
まだ、とっておきの映像があるにはある。セイバー陣営の武家屋敷の土蔵にて、久宇舞弥と切嗣が愉しんでいるところを使い魔の足に取り付けた小型カメラで撮影したものだ。しかし、現時点では、この映像を目にした彼女の反応が未知数すぎる。
切り札は最後に取っておきたかった。
「……色々と思案してみたんだが」
とりあえずの策として、考えていた言葉を浴びせてみることにした。彼の下半身を口で奉仕するアイリスフィールの頭や耳を撫でながら、言い聞かせるように問い掛けた。
「私たちの行為の結晶――子供の名前なんだが、イリヤスフィール2というのはどうだ? 私はとても気に入ったのだがな。男でも女でも、これで命名しようと思うのだが……お前はどう思う、アイリよ?」
彼女が懸命に口腔でしごいていたものを唇から出してやり、綺礼はその答えを待った。
「……素敵」
熱い吐息とともに、アイリスフィールはそう言った。
「何!?」
思わず狼狽える綺礼に、優しい眼差しで、涙のあとが残る紅い頬のまま、彼女は言葉を続ける。
「私を傷つけることに、本当に……どこまでもひたむきね、綺礼。あなた、一日中、私のことばかり考えてるのでしょう?」
そう言って笑うアイリスフィールの顔を引き寄せ、綺礼は男性器をその生意気な口に突っ込んだ。根元まで、咽喉深くに挿し込んでやる。
「んん……んーーーーーーーっ!」
苦悶するアイリスフィールの顎を撫でてやる。奉仕の再開を命ずる合図であった。
その時、また上の扉が勢いよく開く。
「貴様という奴は……まだ、呆け続けるつもりか!?」
その騒がしい声は、当然ながら……英雄王、満を持しての、再臨。
「いい加減、夢から醒めよ! これ以上、この俺の気分を害すれば、どうなるか知らぬお前でもあるまい! それとも、俺と矛を交える覚悟があるのか、綺礼よ!」
「ギルガメッシュ! 見ての通り、私は忙しい! 言いたいことがあるなら、後にしてくれ!」
目も開けず、綺礼はぴしゃりと言い放った。鼻白む、ギルガメッシュの気配を確かに感じ取る。
「…………」
頭上から、返答は無かった。だから綺礼は、ギルガメッシュが扉も閉めず立ち去ったのだと合点した。しかし、それは誤りであった。
「そんなに良いのか」
すぐ近くで声が響き、綺礼は目を開けた。見ると、ギルガメッシュは足許に膝をつくアイリスフィールの真後ろに立っていた。しかも、全裸で。サーヴァントの能力で霊体化して降り、実体化すると同時に着ていた衣服を消し去ったのだろう。
「何のつもりだ……?」
呻くように綺礼が問えば、何食わぬ顔でギルガメッシュは答える。
「気にするな、俺も具合を確かめてやろうと思ってな。ほら、女よ」
「ん……!」
ギルガメッシュがアイリスフィールの尻に触れた。すると、綺礼への口による奉仕が、止まった。
それは1秒にも満たない時間であり、アイリスフィールは再び口腔内で舌を動かしはじめる。だが、尻を高く掲げ、自分の手を背後に回し、自分の尻の割れ目を大きく広げたのだった。肛門を捧げる仕草であった。
「ま、待て、アイリ! 勝手に、何を……んおおおっ!」
アイリスフィールに強く吸われ、堪らず、綺礼はまた目を閉じた。
「尻のほうだそうだ。安心しろ、綺礼。前の穴までは取らんでおいてやる」
ギルガメッシュのその声とともに、アイリスフィールの責めがさらに情熱を増した。
「ふざけるな! だ、誰が、いいと言った、のだ……やめろ! やめてくれぇっ!」
「ん……ん」
「なるほど、これはなかなか……尻の穴でも、良い挿し心地だな。これなら、独り占めしたい、お前の、気持ちも、分かる、な」
ギルガメッシュの腰による振動が激しくなるにつれ、アイリスフィールの興奮もどんどん高まってゆく。
「ぬおおおおおおおおおっ!!」
「んんんっ!」
その快感に為す術もなく、綺礼は絶頂を迎えた。感極まったアイリスフィールの喘ぎとともに。