※この作品はR-18です。

EDEN最終戦争少女伝説~if     作:綾栗ナオ

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仇敵(オルグ)からの誘い

 校門から教室までの移動する間にも、好機の目は俺達を放っておいてくれなかった。

 

今日はまた一段と、舐めまわされるような視線がまとわりつく。

 

それだけじゃないしに、生徒たちは俺とカヌを見るなりのこそこそ話。

 

 

「おい……あれ」

「しっ、見るなって!」

「佐井本と小沢をノシたって話だぞ」

 

 

 

……。

 

 

 ため息が出そうだ。

 

 悪い噂は千里を走るってるか。

 

誰が噂を流したとかどうでもいいけど、佐井本達の件もツッコまれたら厄介だ。

う~ん……佐井本が下痢で調子悪かったとでも言っておこう。あいつの学校での不良としての権威に、錆びがつきそうな話だが……まあ義理もないし、汚名がついたところで俺が気にすることではないな。

 

 

 

 

 カヌは校門から昇降口へと登っている間に、クラスメートが知るクールで無口な栗栖花濡へと色を変えるように戻っていた。俺の前では素で基本的には他人に接する時は、クールというかあしらうような態度なんだよな。

 

 

 教室のドアの前について大きく深呼吸。

 

 やはり、手に汗が滲む。

 よし……気合入れて行くか。

 

 

 

 ガラリと音を立て教室のドアを開ける。

 騒がしかった教室は、一瞬静まり返り元の空気をとり戻したように膨れあがる。

 

 

 

 目、目、目、いくつもの視線が俺とカヌに注がれる。

 

 

 カヌは席に座るなり、早速取り巻き連中に囲まれている。適当にあしらってるようだが、矢継ぎ早に質問攻めに合いスクラムのような人垣で、最早イスに座ったカヌの姿が見えない。

 

 

 そういえば、阿久津と佐井本、小沢の姿が見えない。

 

 

 

 

「き……き、き、き、き聞いたよ。市之倉君、希野さんに告白されたんだって!? それだけじゃなく、栗栖さんと仲睦まじくスーパーで焼き肉を選らんでたんだって!」

 

 星口が早口で、まくしたてながら近づいてきた。

 いつもの星口だ。

 自然すぎて不自然な点が見あたらない。

 

 昨日、危惧した予感は現実のものとなりつつある。

 スーパーで運悪く五味に、カヌと買い物をしてたのを見られてしまったからなぁ。どうやって誤魔化そう。

 

 

 

 

「……それは」

 

「このスケコマシ! 希野さんの告白を受け入れておいて栗栖さんにまで、魔の手を出そうだなんて、不純だよ! 」

 

 

 弁明する機会すら与えらることなく、星口が青筋たてながら近寄る。

 うん、いつもの星口だ。自然すぎて不自然な点が見当たらない。

 

 

「待て希野の件は違うぞ勘違いだ。あいつが屋上に付き合って。て言葉を額面通りに見た人の誤解だ」

 

「じゃあ希野さんの件は勘違いとしても、栗栖さんの件はどうなの。変だよね、友達同士で焼き肉を食べたりはしないよね!」

 

 

 星口が必至に俺に問いかける。

 最早、台風のように暴れ回る噂の渦中にいるカヌへ視線を這わす。

 

 

 席に座るカヌの姿が、野次馬のように集まった人垣に埋もれ確認できない。

 それでも、俺の方へ意識を向けてることは何となくわかった。

 

 

 星口が蠍の記(セルケト)の可能性もあるからな。

 いざという時には正体を明かしてでも、即座に攻撃に出ることだろう。それは最悪の場合で、出来ることなら騒ぎを大きくしたくない。

 

 

「友達は焼き肉を食べたりするぞ星口」

 

 

「栗栖さんの弱みでも握ってるんじゃないの。佐井本君とケンカして勝つとかさ、市之倉君そんなキャラだったけ? 旅行の後から中身入れ替わってない?」

 

「佐井本は下痢で調子が悪かったんだよ……っ」

 

 ……うっ。

 何気に言った星口の言葉に反応するように頭痛が襲ってきた。

 エデンの時と一緒だ、最近はもうないと思ってたのに。

 

 

「みんなに質問攻めされて疲れたのよね」

 

 

 頭痛で顔をうつむけていると、遠慮がちに少し離れてカヌの話を聞いていた柳田さんが俺の前にいる。

 

 

「お姉さまと焼き肉食べたんですって。その後は何か進展はあったのかな?」

 

 

 屈託のない笑顔を向ける柳田さん。

 

 

 

「何もないよ。たまたまスーパーで会って、お互い夕飯まだってことで食べただけだから」

 

 

「きゃーっ♪ やっぱりあの占いは当たるのよ、まさか市ノ倉君がお姉さまの恋人候補に一番近いだなんてロマンチックよね」

 

 

 カヌも恋人って設定は避けたらしい。

 

 ただ、もう友達という関係は通用しないところまで来てるのかもしれない。

 

俺が王でカヌが奴隷なんだもんな。

 

 本来は、逆でもまったくおかしくないんだが。

 

 

 上手くあしらうカヌの傍から男子も女子も、自分の席へと戻っていく。ホッとした表情の者もいれば、俺へ明確な敵意を向け睨んでくる者もいる。

 

 

 最早、教室の中は台風のように噂が暴れ回り駆け巡り、柵のない動物園状態のようで歯止めが効かない。

 

 その渦中にいる俺とカヌ。

 

 

 ……。

 まったくもって、世の中は今日も順調にふざけている。

 

 

「ところで阿久津と佐井本は?」

 

 

「阿久津君は風邪で休みだよ。佐井本君は、市之倉君に負けたのが悔しかったんじゃないの? サボリだと思うよ」

 

 

 星口が空いた2人の席へ見渡しながら答える。

 そういえばレンコのやつの姿もないな……。

 

 

 そんな中で、動物園状態の騒がしいクラスの中へと絵夢が足を踏み入れる。元々、丸い目をさらに丸くし、噂好きの女子が何事があったのか絵夢に説明してるようだ。

 

 

 絵夢と目が合う。

 何を話してるのか聞こえないが、自然と聞き耳を立てるように意識をこらす。

 

 

 ぎこちない笑みを作る絵夢が、まっすぐ俺の方へやってきた。

 

 

 

「リュウ君おはよう」

 

「ああ。おはよう絵夢」

 

 

 しばらくの無言。

 何故か少し気まずい。

 

 

「話を聞いたよ。優音ちゃんと付き合ってるの?」

 

「それは誤解だ絵夢。本人に聞いてみろ、俺と付き合ってるなんて聞かれたら1秒で全否定するぞ」

 

 

 絵夢はホッとしたような表情をする。

 

 

「そ、そうなんだ。じゃあ栗栖さんと焼き肉食べたのは本当なんだ」

 

「たまたまスーパーで会ってな」

 

 

 

「……ふーん」

 

「どうした絵夢、変な顔して」

 

 

「どうせアタシのは変な顔だよっ! 栗栖さんとお幸せにっ! 末永くお幸せにっ!」

 

 

 少し泣きそうな顔をして、プイっと音がしそうな首の巡らせ方で、自分の席に戻っていく絵夢。なんだってんだ……まさか妬いてるのか? 俺だぞ、俺なんかにか。

 

 

「はいはいはい。ナンザマショ、教室の外まで声が声が聞こえてるザマス。席に戻るザマショ」

 

 手をパンパンと鳴らしながら、ザマスカこと金友が入ってくる。

 浮き足だった生徒達も逆らう様子はなく、柳田さんや星口も自分の席へと戻る。

 

 

 

 そして退屈な授業は、絵夢の委員長の威厳の欠片もない挨拶で締めくくられる。

 

 

「きりーつ。れーい」

 

 

 さて、屋上に行くか。

 最早、秘密の会話の定例場所となありつつある屋上へと、カヌと向かおうとすると――だ。

 

 

「あれ。授業終わったのに、カバンも持たずにどこ行くのリュウ君」

 

「ちょっと屋上にな」

 

 

 絵夢の視線は俺の後ろにいるカヌを指している。

 

 

「ふーん。栗栖さんと屋上に行くんだ。行ってらっしゃい! 栗栖さんと屋上に行ってらっしゃい、リュウ君のエッチ」

 

 

 絵夢はそう言い教室から飛び出るように出て行った。

 

 

「おーい。どこ行くんだ絵夢って……行っちまった」

 

 

「よろしいのですか?」

 

 

「まあ……後でなんとか言っておくよ」

 

 

 何で俺がカヌと屋上に行くのにエッチとか、言われなきゃならんのだ。

 気をとりなおし屋上へ向かう。

 

 

 人気のない屋上。

 天気は快晴、鬱陶しいぐらい空は青い。

 

 

「イザナヒメいるか?」

 

「ここに」

 

 

 抑揚のない声と共にイザナヒメが屋上の柵を超えジャンプしてくる。下は何もないのに、どこから来たのやら。

 

 

 どっからどう見ても100%ネコのイザナヒメ。

 元は人間なんだが神央百科全書(ナラヤナシリーズ) 猫の記(バステト)で猫のままの状態のイザナヒメ。

 猫の記(バステト)は現在、奪われて中央議会の手にあるらしい。

 

 

「絵夢の護衛ありがとな。それと蠍の記(セルケト)らしき気配はあったか」

 

 

「とんでもございませんリュウ様。私の探っていた限り、蠍の記(セルケト)らしき気配はありませんでした」

 

 

「あくまで可能性ですが、阿久津、佐井本あの2人の中の誰かが蠍の記(セルケト)なのではないでしょうか」

 

 

 

 

 確かに俺も感じていた。

 昨日は禍々しい殺意を出していたらしいけど、今日はそれが一切ない。

 やはり、阿久津か佐井本のどちらかか……。

 レンコが今日、来てなかったのも少し不気味だな。

 

 嫌な予感が頭の中で、何度も何度も管を巻く。

 

 

「リュウ様。いいことを考えました! 2人ですから1/2です。どちらも始末してしまいましょう、証拠も残らないほどに粉々にしてみせます!」

 

 

 屈託のない笑顔で殺人予告をするカヌ。

 

「それは止めておこうカヌ」

 

 

「そ……そうですか、奴隷の分際で出過ぎた真似をしてしまいました」

 

 

「クリス・カヌ。お前短絡すぎ」

 

 

「じゃあネコのイザナヒメさんもいい案を出して……いたっ!」

 

 

「ネコではない」

 

 

 イザナヒメの肉球で叩かれるカヌ。

 ああ見えてもF22を一撃で破壊する威力がある。

 

 

 しかし……絵夢の安全を確保するのならカヌが言ったように、不安要素は排除すべきなんだ。どちからは一般人だしな、それが阿久津にしろ、腹ただしいが佐井本でも殺されるほどのことではないと思う。

 

 

 俺は……考えが甘いのかなアリアリ。

 

気をとり直し命じる。

 

 

 

「カヌ。絵夢の護衛を頼む、不自然に思われないように今日も一緒に帰ってやってくれ」

 

「了解しましたリュウ様」

 

 

 笑顔を見せカヌは階段を全段、一足飛びで降りて行く。

 なのに着地は、足に羽でも生えたような、タンっと静かな音。

 

 そういう……人間離れした動きは自重してほしいけどな。

 

 

「じゃあ帰るかイザナヒメ」

 

「御意」

 

 

 イザナヒメと帰りの道を行く。

 口数も少なく、あまり自分から喋らないイザナヒメ。

 なので2人共、無言で道を歩く。

 

 

 

 アーケードに差しかかると、昨日の暑そうな学生服のボキンマンが募金活動をしているようだ。

 

 

「あら昨日のお兄さん。募金はいかがですか、一流の寄付士たるとも諭吉さんの1枚や2枚は当然、さあさあ一緒にボキンマンしましょう」

 

「悪いな急いでるんだ」

 

 

 俺は馴れ馴れしいボキンマンを素通りしようとする。

 

 

「栗栖花濡さんは今日は一緒じゃないんですか?」

 

 

 やっぱりカヌに下心があるのか。

 

 

「見てのとおり一緒じゃないよ」

 

「そうですか残念ですね。大事なお話があったんですが」

 

 

 大事な話?

 昨日俺といた時に1回会っただけだと思ったが。

 

「見ちゃったんですよ昨日、中央議会の連中を一網打尽にする栗栖さんを。いやーあれだけお綺麗なのにお強いときた。天は二物も三物も与える人には与えるんですねー」

 

 

 緊張の欠片もない口調。

 昨日のニュース見ました? ぐらいの主婦が井戸端でするような部外者のような喋り方。

 

 

 見てた……だと?

 この男、中央議会の者か、一体どこまで知っている。

 

 俺が警戒の念を見せると、既に前にイザナヒメの背中があった。

 おそらくボキンマンが攻撃に出ようものなら、即反撃に出るつもりだろう。

 

 

「何ですかこのネコ? まあいいです、そんな警戒しないでください。お兄さんも多分普通の人じゃないんでしょう。僕らは仇敵(オルグ)中央議会に仇をなす者。

 是非とも栗栖花濡さんを仇敵(オルグ)に誘うべく声をかけました」

 

 

 ――仇敵(オルグ)

 中央議会から離反した者、処理対象ナンバーの者達が反旗を翻すべく結成した組織。

 話には聞いてたけど、このボキンマンが仇敵(オルグ)だなんて。

 

 

 しばらく考える。

 これからのこと、判断をどうするべきか。

 全ては俺の裁量次第か……。

 

  

 to be continued

 

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