続けるかどうかはまだ考えておりません。
愛情と哀情
*これはもしもアルゼナルに攫われたヒルダをレイゼルが助けるのに間に合わなかったらというお話
*****
その悲劇は、兄とレヴェンも予想出来ずに起こった。
「いないっ…いないいないっ⁉︎どこだよヒルダっ…⁉︎」
『私は周囲の情報を調べています!』
ちゃんと船のことを管理していたはずなのに、妹がいつの間にかいなくなっていた。レヴェンを連れて食料や製品を奪う為に外に出て彼の目を離した時、ヒルダはすでにリィアンにはいなくなっている。警官に捕らえられてアルゼナルに連行されたか、最悪暴力を振るわれて殺されてしまったのかと彼の身体に悪寒が走った。
「急いでヒルダの場所を特定しろ!早く‼︎」
『見つかりました!場所はアルゼナルです!』
ヒルダが外に出てまだ生きていることが確かではあったものの、連行場所はとっくに決まっていた。
「アルゼナルっ…今すぐに行くぞ」
『…急ぎましょう』
「戦闘はもう覚悟の上だ。妹の危機なのが分かった以上、隠れ潜む余裕なんてない」
アルゼナルに侵入し、アラームを鳴らす前に暗殺してヒルダの元へ向かおうとする。警備しているノーマ達を蹴散らして、とっさに助けに向かおうとしたものの時すでに遅かった。
「ヒ、ルダっ…?」
彼女の純潔はアルゼナルのジルによって既に穢された。黒い髪をした女が義手を膣と尻穴からは血が流れていたことが分かる。
手鎖で両手が遮られ、無抵抗にされるがままだった。それ以降はもう、アルゼナルにいる全員が
【殺ス】
これを知ってしまった彼がアルゼナルにいる彼らを許すことなんて到底できるわけがない。家族が目の前で性的暴行をやられている連中に激情するなというのはどう考えても土台無理な話なのだ。
その後は、殺戮という名の皆殺しが始まった。骨を粉砕されて悲鳴をあげる者や、抵抗しようとしたら時を止めた後にナイフで滅多刺しに刺されたことで他のノーマ達も恐怖で動けなくなった者もいる。他にもゴールドエクスペリエンスで作り上げた生物で大暴れさせ、事態は混乱に陥れた。マナの人達に連絡しようと司令室に向かっても、そこにはレイゼルが生み出した怪物が大量にいる。
助けを呼ぼうとするが、その前に殺されてしまう。軍事基地は一瞬にして本当の意味で地獄と化した。ドラゴンと戦うメイルライダーもパラメイルを封じられたせいで怪物とレイゼルの前に敗れ、他のノーマも銃を持って対抗しているが全く効果が無かった。
レイゼルはアルゼナルにいるノーマ一人一人をスタンドで嬲り殺しに叩きのめす。助けて、死にたくないという叫びは届いてはいるが、声を上げている時点で位置がバレバレだから彼らも殺した。
レイゼルは、アルゼナルにいるノーマを一人残さず殺して殺して殺し尽くして、何もかも破壊する。無関係だろうが、子供だろうが、善良な人だろうが、そんなもの関係ない、知ったことかと。
無差別に殺戮を繰り返していく。
ーーーここにいる奴ら全員、みんな死んでしまえばいい。
【地獄に落ちろ】
何故助けなかった、何故妹がこんな目に合わなくてはならないんだという怒りが、憎しみが彼らに向けられる。
「お、にぃ…ちゃん」
それを側から見ていたヒルダは、兄の豹変ぶりを見て身動きが取れなくなった。ジルの身体検査によって尻や陰部辺りは若干血がついて違和感があったが、今ではその違和感よりも鬼の顔をしていた義兄のレイゼルが目の前で人を沢山殺し続けているという恐怖で目を丸くしている。
「あ、あぁ…」
彼女の心には身体を弄られ拷問されたという心に傷を負ったが、兄による処刑執行を目の当たりにしていることがトラウマを植え付けてしまった。
こうしてアルゼナルにいるノーマは全員を一掃した。その無慈悲な殺戮に正しさも、間違いも関係ない。
助けようともしなかったノーマ達に
唯一残っていたのは殺戮による血だらけの軍事基地とノーマだらけの大量の死体、破壊後の残骸。
そして『ヒルダを守れなかったという後悔』が残っていた。
この軍事基地で生きているのは、ゴールドエクスペリエンスで生成した怪物と兄妹二人しかもういない。
ーー愚カナ者達ハ皆殺サレタ
ジルをスタンドで死にかけになるまで殴りつけて心臓を抉り、逃げ惑うエマ監察官はマナで防ぐこともままならないまま背を向けていたところを拳銃で射殺。他にも敵はいたがまず侵入前にパラメイルを使えなくさせるように細工を施し、ゴールドエクスペリエンスで生成した狂化生物によって為すすべもなく蹂躙された。
もうアルゼナル出身のノーマは、誰一人存在しない。何故ならレイゼルがみんな消してしまったのだから。
*****
昨晩の一件が終わり、ヒルダはとっくに頭が限界だったため急な疲れてそのまま布団へ寝てしまう。
「おはよう、ヒルダ」
次の日になるとレイゼルは何気ない表情でヒルダに顔を向ける。怒っている様子はなかったが、妙に目が死んでいた。昨日と違って目の下がクマに若干なっており、さっきまでの鬼のような怒った顔は全くしていない。
(お兄ちゃん…私のせいで…)
ヒルダはレイゼルが内心怒っているんじゃないかという恐怖で唇が震えながらも、食べる前に泣きながらもまず先に頭を下げていた。
「あの、ね…ごめんなさい、本当にごめんなさいっ!」
「…なあ、泣いて怯えてるけどいきなりどうしたんだ?」
「え?だって私が出て行ったからレヴェンにも兄貴にも迷惑かけて」
レイゼルは平然と首を傾げて、急に質問をしていた。ヒルダは兄が昨晩のことを覚えてないのかと驚いている。
「…一体なんのことだ?それよりも朝食作ったからさっさと食べよう」
「う、うん」
(あれ、怒らないのっ…それとも怒りでアタシのこと忘れてるのかな?)
この時はレイゼルがヒルダに対して怒っておらず正常だったとヒルダは思っていたが、あんなことが起きたのにどうして平常心なのだろうと内心では食べながらも考えていた。
が、レイゼルのとった行動はヒルダが考えたよりも遙か斜め上に悪い意味で予想を超えていた。
「あーそうそう、ご飯の最中に悪いけどヒルダにはあるものをつけてもらったから」
「え?何なの?」
「ほら、鏡用意しておいたぞ。夜更かししたけど昨晩の時間で懸命に作ったんだよ。きっとヒルダも喜ぶかなと思ってさ」
レイゼルが鏡を見せるとヒルダの首に巻いていたものはハート形の赤いチョーカーの首輪がついてある。ヒルダが疲れて寝ている間にレイゼルが深夜のうちに特殊な小型の発信機を用意して作っていた。
ヒルダが起きる前に既につけたものだ。
(…え?何これ)
「「あ…あの、お兄ちゃん?」なぁヒルダ。俺考えたんだけどさ、もう二度とああいったことにならないためにも今度こそ命に代えてでも守ってあげなくちゃいけないんだ。俺はお前のことを本当に愛してるからさ、こうでもしないと気が置けないんだ。どこにいて、何をしているのかも徹底的に管理しないと」」
最後にどこで何をしてるか管理するといった内容にヒルダは怯えている。
レイゼルが一体何を考えているのか。
「な…何を言ってるの?それに管理って」
「今後からこういう風にするから、遠くに行く時も俺には分かるようになってるから。良かったな?これで離れ離れにならずに俺達ずっと一緒だよ」
どこまでが一緒なのか、それすら言おうともしない。レイゼルはそのまま笑顔で話を続けていく。
「本当ならノーマを手駒にして利用したかったけど、うん。そうする必要はなくなった。お前さえ生きていれば、俺はそれで十分だしお前以外の余計なものは全部邪魔だからな。ヒルダだって四六時中俺と居続けたらもうあんな怖い思いをしなくても済むだろうし。
俺の言ってること、分かるだろ?」
「…え?い、意味が分かんないよ!ねぇレヴェン‼︎レイゼルお兄ちゃんがさっきからおかしいけど、何があったのっ⁉︎」
まだ叱ってもらった方が良かったとレイゼルの異常な考えを聞いて、ヒルダはそれが怖くてたまらなかった。
レヴェンも応答してくれなかった。
(昨日のことと、マジでお兄ちゃんが朝から変なことばっかり言ってるせいでもう頭が…)
「あ、あのさ…!疲れてるんだよ。バカ兄貴…だからこんなこと、お願い、やめようよ?」
「…そうか。その通りだよな。お前の言う通り何を考えてるんだろうな?ヒルダの言う通り俺は本当に…おかしくなっているのかもしれない。いや、もうとっくにおかしくなってるんだろうな?」
首輪を外してくれるだろうと手を伸ばそうとしたが、外さずにヒルダの両肩に手を置いた。
「でも、もう良いんだよ。この世界に正しさや誠実さを求めても結局無価値だってことがようやくわかった。いままでの倫理観はもう何もかも間違ってたんだ。
俺達はただの餓鬼で、何も知らなかったんだ。いくら綺麗事を思い描いても、この残酷な世界がそれを汚すんだ。そんなものを目にしてもう限界だったんだよ。きっと、俺自身が余りに周囲に対して遠慮しすぎたからだ。考えが甘かったんだよ。
妹と暮らして何年間一緒だったんだ。
俺は、いつの間にか一番大事なものが見失っていた。あんなゴミどもに目を配るよりも、何か大事なことが欠けてたことに」
今までのレイゼルはヒルダに対する好意はあったものの、それでも他の人に対する対応もそれなりにこなしているために差別することなくまともに話せる相手ならばさほど問題はなかった。
だが、あの事件以来もう今となってはノーマによる利害よりも妹以外誰も信じられず大事なものを独占したいという気持ちに駆られている。
「アルゼナルの連中があんなことしなかったら、ヒルダに酷いことをしなかったら…俺は…俺はっ、こんな半端なクソ野郎にならずに済んだのにっ‼︎
俺にはもう、一体全体何が正しいことなのかもうわからないんだよっ‼︎
でも大丈夫、大丈夫だからね。どんな時でもずっとヒルダと一生側にいる。もう離れ離れなんて真っ平ごめんだ。あんな思いはもう二度としたくないんだよっ‼︎」
もうヒルダに怒る以前に、それよりもレイゼルはヒルダを失いたくないと過保護になってしまった。自分のものにしたい、手放したくないと今度はヒルダの身体を抱きしめる。
「だからね、そのさ、何処にもいかないようにしないといけないからさ。だから、もう俺の必ずすべき事は…
家族として、義理兄としてお前だけの愛を育むことだ」
彼の愛は、歪みに歪んでしまった。
家族愛と口に出して言うが、本当の家族ならば一人の意思を無視して自分の都合の良いように捻じ曲げるようなことはしない。
今までのレイゼルはそうであったが、
「もうやめようよ!こんなの…こんなの絶対おかしいよ‼︎」
「でも俺はお前が反抗的だからって容易に暴力は絶対に振らないよ。妹にそんな酷いことするわけないじゃないか。
お前が俺と同じように大きくなって、たとえここから逃げて離れ離れになっても俺は地獄の底までお前を追うから、この世界からお前を守ってあげられるのは絶対に俺だけなんだ。ヒルダの理解者はもう俺しかいないってことが。だったら俺だけが1番の理解者だってことをちゃんと分からせないと…でないと…でないと」
ヒルダは今までのレイゼルの発言を一旦整理して、どうしてこうなったか分かった。
(あぁ、そっか…私のせいだ。私の身勝手が、お兄ちゃんをここまで酷く歪ませちゃったんだ )
『申し訳ありませんヒルダ…』
レヴェンの方は主従関係である以上助けることができず、二人の話に割り込むことなく聞くことしかできなかった。前のことで兄をこんな風にしてしまったことに罪悪感を持ったヒルダは、彼の身勝手な愛をそのまま受けるしかできなかった。
「だからさ…俺の妹ならその先はもう…ちゃんと分かってるよね?俺達血は繋がってなくても、兄妹で…お互いのことがどうしようもなく好きなんだ。
口調も、瞳と外見も、笑顔なところも、恥ずかしがって照れるところも、素直じゃないところも、突っぱねるところも、意地悪なところも、胸も性感帯触って一生懸命感じてることも…なぁヒルダ?
お兄ちゃんね、もうお前のこと束縛して独占するほどどうしようもなく好きで好きで好きで好きで愛して愛して愛して愛して、愛おしいんだ」
「うん…」
レイゼルの言い分に、もうヒルダは拒否することも逆らうことすら出来なくなり、頷くことしか出来ない。
「もう、どんなエッチなことがあっても我慢しなくて良いよな?このまま大人になっても俺は死ぬまでずっと一緒だよ」
ヒルダだけではなく他の周りにも優しかったかつてのレイゼルは、もう彼岸へと行ってしまった。たった一人の妹であるヒルダを守れなかったからなのか、それとも兄を疑って離れようとしたことにショックを受けてしまったのか。
今のレイゼルには、もうヒルダしか何も見えていない。
心が壊れた義理兄は、たった一人の愛しき妹を離さず外に羽ばたかせないよう鳥籠に入れてでもすがるしかなかった。
ヒルダの救出が間に合わない(死亡していない)
↓
アルゼナル及び基地内のノーマをスタンドで蹂躙して皆殺し、壊滅状態に陥りました。
だいたいはこいつらのせい(ジル司令官とエマ監察官)
基地内の惨状はモノクマのおしおき(処刑)並みに酷いことになってます。前半で生き残っている主なキャラは、ヒルダ(レイゼルに過保護管理中)とマナ使えないことを自覚してないアンジュリーゼとモモカ、無人島にいたタスクを除いて全滅でした。
個人的な感想ーーー
R18版ではこう書いてます。
【大事な人が目の前で強姦と性的暴行をされて、真面でいられる訳がないと】
絶望するか、ブチ切れるか。少なくとも嫌悪感を抱くに決まってる…だいたいマナ世界に光と闇があるんだってなら、アルゼナルにだって組織の表と裏があってもおかしくない。
リベルタスのことと、ドラゴンの正体については百歩譲って仕方ないってなるけど、拷問に関しては人権云々以前にそんなのスパロボのキャラがそのシーンを見てしまったら、善良の心持ちの何人かはなんて事をしてるんだと本気でキレると思う。
ジル司令やエマ監察官は我々のやり方に口出ししないでもらいたいって反論するかもしれないけど、やり方そのものが醜悪すぎる。突っぱねたところで余計タチが悪くなるだけだし…下手したら彼女らの首を絞める羽目になってたんじゃないか。
鉄火団は最後の最後まで仲間全員が団長であるオルガに対する信頼は大きかったし、ケジメも重々理解してる。
でも殆どのノーマに関しては同盟どころか、言動次第で別世界に敵を作ってしまう羽目になった可能性があった。(彼女らは隔離され、封鎖された世界にずっと生きていたから)
アンジュだってマナの住民に殺されそうになる程の酷い扱いを受けたはいえ、世界をブッ壊してやるって発言も、結局他人事とはいえないだろうし。
互いに別世界の人で、価値観が異なるとはいえ…撃っていいのは撃たれる覚悟もそうだけど、口は災いの元にもなりかねなかった。