アルゼナルが崩落して以降、レイゼルはヒルダがあの時のような身勝手なことをしないために軟禁していた。再びアルゼナルで起きた悲劇が2度と起こさないためにも彼にとっては必要なことだった。
妹も、あの事件でもう勝手な行動をする気も起きていない。
彼の元から離れて外に出たとしても、たった一人だけで生き残ろうとする気力も失っている。
兄の言う事は絶対に聞きつつも、せめて母親にまた会いたいという本命の願いだけに、兄も素直に受け入れた。
その時は一緒に行こうという形で、二人は外へ出る。
愛し愛されていた優しい母親の記憶は、身体が成長しても胸の内に残っている。
しかし、悲劇は更に続く。
長年思っていた親子愛は、感動の再会をしても悉く打ち砕かれてしまった。
『アンタなんか、生まれてこなければ良かった』
母は新しく産んだ娘を守る為に、帰ってきた過去の娘を拒絶したのだ。しかも、守った娘にはヒルダという名前をつけて庇おうとする。
かつて愛していた母親は、豹変してしまった。
無事に帰ってきた娘に対して、化け物だと蔑んだ。マナを扱えない人間を異端扱い、ノーマという化け物として侮蔑するのが、この世界の殆どがそうなのだろう。
愛していた子供と離れ離れになっても愛していたのかもしれない、だがノーマだと隠していた親を周囲からはどんな反応をされるかは目に見えている。
ノーマだった娘を隠していた事が耐えきれなかったから、あの時に連れ去られた子供のことに母親は目を背けた。
そして、マナを使えて当たり前の子供を産むことにしたことも。何もかも忘れていたわけではない。
それでもマナを持たない存在を異物として
心変わりした彼女の様子から、もうどうしようも無かった。
そんな母親の見た兄の表情は、アルゼナルを襲ったような鬼の形相のような顔に豹変したことと。堕落した母に失望し、罪のない新しい娘にも軽蔑な目で見ている。
家族として拒絶された悲しみ以上に、妹を化け物だと侮辱したことの感情がこみ上がり、今にも腑が煮え繰り返りそうになっていた。
【この妹が母親に会うまでずっと一体どんな酷い目にあったか、それでも愛してもらいたい人の為にも必死に生きようとしていたのか】
彼の目には失望の涙と共に明確な殺意を宿し、震えた手で、懐に入れてあるマグナムを取り出そうとする。
ヒルダも自分を拒絶する母親に涙していたが、隣にいた兄の表情と行動に青ざめる。目は焦点が合わず、怒りで我を忘れそうになっていた。
目の前で妹を拒絶したことに冷静でいられず、トチ狂った行動を止めようと必死になって抑える。
母親は化け物と読んでいるヒルダを愛しているレイゼルにも拒絶しようとしているのだから、義理兄が母親に対して何をしでかすかわからない。
『…母さんも、あの連中みたいに…そんな目で妹を見下すのか。
家族も、理不尽にヒルダを傷つけるんだな。
分かった、もういいよ。もう言葉なんていらない…いいや、もう喋べらなくていい。
これ以上聞いたら…俺と、妹の耳が腐る。そのまま俺達の思い出の中でじっとしててくれ』
その言葉と共に彼は懐から銃を取り出し、銃口を向けようとする。
ヒルダは涙ながらに、母親を殺さないでと魂胆するが、レイゼルは躊躇なく発砲した。
照準がズレて命中しなかったが、何とか母親を殺させないために、無理矢理にでも兄を引っ張ってリィアンへと連れて帰ろうとしていた。
帰ってからのレイゼルとヒルダの心は更に悪化し、より一層につきっきりになっていることが多くなった。生き続けようと必死になる度に傷心し、良いことなど一つもないと、ただ黙って海の水平線をじっと眺めていく。
ーーーもう、これ以上頑張るのは疲れたと。
*****
その一方で、アルゼナルが壊滅した事によりドラゴン達はアウローラのいるミスルギ皇国へと進行していく。邪魔をする存在いなくなった事で侵攻してきたドラゴン達は動きやすくなり、アウラを取り戻す為に向かっていた。
アルゼナルの崩落に寄って、ドラゴンを狩ってくれるノーマやパラメイルも既に消滅した。
ドラゴン側にとってはなぜ滅びたのか不自然だったが、アウラを取り返すための好機としてすぐに行動に出る。
各国は、迫り来るドラゴンに対して自前の兵器でどうにかするしかなかった。
国を統治している調律者のエンブリヲは興醒めし、アウラを持って帰る準備をし、密かにこの世界から脱出しようとする。
しかし、
「見つけましたよ…調律者、それにアウラっ…ここにいたのですね!」
「ドラゴンの娘か…‼︎」
(あまりにも早すぎるっ…⁉︎何が起きている)
発見次第、サラマンディーネの収斂時空砲によって、捕縛されていたアウラはすぐに解放される。
アルゼナルを全壊させ、間接的とはいえドラゴンを有利にさせられた要因、かつ彼の創造する物語を破綻させたイレギュラーのレイゼルに憤っている。その男を探そうにも、目の前で争っている面倒なドラゴン側の総攻撃にミスルギ皇国の武力では全く抑えきれないことは分かっている。
しかし、彼がレイゼル達のことを探るよりも、先手を取って動いたのはドラゴン達だった。
(何っ…⁉︎)
驚いたのは、先手を取られただけではない。
たった一機の時空砲でアウラは解放され、エンブリヲとヒステリカの二つを同時に潰さなければならないという弱点までも見抜かれている。
ヒステリカは大破し、彼女の視線はすぐさまエンブリヲ本人に向けている。この時点で何者かがサラマンディーネに助力している事を察した。
「エンブリヲ、覚悟っ‼︎」
「馬、鹿なっ…こんなことがっ…⁉︎」
【持たざる者達を手駒にして虐げた、その報いを受けると言わんばかりに無惨に散っていく】
エンブリヲはヒステリカを自分の元の転移させて逃げようとするが、焔龍號のブレード、積層鍛造光子剣「天雷」によって機体ごと貫かれた。
多くの人達を操り人形に組み合え、気に入った者を自分の手で救い、愛玩道具に扱おうとした。感動出来る出会いも、改心もないまま退屈な日々を過ごし、奪われた彼等によって粛清され、滑稽な末路を迎えた。
彼の討伐と共にドラゴンとマナ、二つに分かれていた地球は一つとなった。姫と彼女の率いたドラゴン達は歓喜し、マナを使っていた彼等は秩序無き生殺与奪の生活を強いられる事となるだろう。
ーーー世界の情勢は、また大きく変わっていく。
*****
【エンブリヲは死亡し、世界は一つとなった。
ドラゴン達がアウラを奪還したことにより、各国ではマナを使用することが出来なくなったことにより、彼らの平和は崩れ去っていく。
その数ヶ月が経った】
ある一人の男が、軍事施設アルゼナルの蹂躙について真相を探ろうとしていた。
ーーー彼の名前は、タスク。
無人島で平凡に過ごし、アルゼナルの消失を小耳に挟んだことで、その滅ぼした元凶であるレイゼル達のことを探ろうと各国を旅していた。
ドラゴンとその姫達が父と母の仇を取ったエンブリヲを倒したことには感謝していたが、彼らに協力していた何者かについて心当たりがあった。
古の民と協力関係だったはずのノーマ達を根絶やしにされたことに、彼の心境は複雑だった。
かつての仲間だった彼らの生きてきた証も、遺体ですら塵となって消えている。
だからと言って、ドラゴン達の知らせを聞くまではずっと、無人島で憂鬱な日々を過ごし、見て見ぬ振りを続けていた。
エンブリヲが死んで、アルゼナルも滅んだという知らせを聞いたのはドラゴン達がこの無人島に立ち寄った時に聞かされた話だ。
その原因を確かめようと世界中を回り、遂にその真相へ辿り着く。
「繋がった…!」
なんとか余った情報で接触を図ろうとし、やっと連絡が出来るようになった。
『…あぁ、懲りずに私達を探っているのは貴方ですか?』
「単刀直入に聞く…アルゼナルを滅ぼしたのは、お前達なのか?」
1年半、真相を知る為に苦労して探した末にレヴェンに通信できるようになった。
真剣な顔で聞いている彼に、呆れたように返事をした。
『…えぇそうですよ。あなたの言うとおり、アルゼナルを滅ぼしたのは我々です』
「つっ…‼︎どうしてアルゼナルを滅ぼした…!」
『……散々追いかけてましたから、どうしても知りたいみたいですね』
「あぁそうだ。あそこには、かつての仲間がいた…古の民とノーマ達が手を取り合っていた。
その責任から逃げた俺が…責める資格はないのかもしれない。でも、あんな惨たらしい方法で殺す程のことを、君達に彼等がしたっていうのか⁉︎』
かつての仲間達を殺された怒りの感情を抑えながらも、その理由を聞こうとする。
両親の仇であるエンブリヲか、敵対していたドラゴン達のやったことなら理解できたが、そうでもない第三者が蹂躙していたことに理解どころか納得できない様子だった。
『そうですね…貴方にも、知る権利はあります。
ここまで辿り着けたのできたら、殲滅した理由と、その映像を見せるつもりでしたし』
レヴェンが映像を流し、ジル総司令官がレイゼルの逆鱗に触れさせたことでアルゼナルを全壊させ、あそこまで豹変して歪んでしまったことも説明していく。
記録した映像を再生し、彼は信じられないと思いつつも青ざめた顔をしつつ息を呑んだ。
「馬鹿な、こんなっ…こんなことをアレクトラが」
『これで分かったでしょう…映像を見たのなら、二度と我々に関わらないでください。どうしても、そちらの仲間達の仇と無念を晴らす為に我々を殺しに来たと言うのでしたら、私でも貴方の命の保証はできかねません。
あの兄妹二人の邪魔をすれば、あの映像と同じように凄惨な末路を迎えることになりますよ』
映像が終わってから、男は何も言えなくなってしまった。
何も、言葉が思いつかない。
大事な人を穢された復讐者の怒りは、至極当然だったのだから。
「…いやっ…もう、この事に関与するつもりはない。寧ろ謝るのは、俺の方だ」
『……なぜ謝るのです。
貴方は何もしてないでしょう』
映像を見て、胸を痛めたタスクは謝罪の言葉しか言えなくなっている。映像からジルの行為は報復されても仕方のない事でもあり、自業自得といってもおかしくなく、もうこれ以上非難しようにもできない。
これはもう、因果応報である。
ジルの他にアルゼナルにいた全てのノーマに罪はないかもしれないが、妹を助けようともしなかっただろう。そもそも抵抗しようとした時点で既にレイゼル側からしたら完全な敵とみなしても同然なのだろう。
「いやっ…!もし俺がアルゼナルに行って…ジル達を…アレクトラを説得すれば仲裁できたかもしれなかった。
あんなっ…アルゼナルと、その施設にいたノーマ達全員が蹂躙されることも」
『もう終わってしまった事に、たらればの話はやめて頂きたい。
それに戦う事に逃げてしまった貴方と、他所から来た私達の言葉に…あの
それと…もう一つ補足します。
軍事施設に所属しているノーマ達もまた罪が無いとは言い切れません。
彼女の言う事に、彼らが本気で背けるわけないと思いますよ。
命令のまま従順に従って、間違いなく手駒として動くしかできないですよ。
組織に所属してる上に、生殺与奪の権利を握られている時点で…察して下さい」
「それは…」
ここまでの状況から見て、レイゼルによるノーマの蹂躙は【不幸な事故】だったと割り切るしかできなくなっていた。ジルが人類の反逆とエンブリヲを打倒するためにリベルタスにやたら固執していたのとも。
彼女の背後に付いていくノーマ達が、反抗するとも思えないと言う説明にも納得した。
生きる権利、人としての尊厳がないノーマ達にとってアルゼナルが最後の居場所なのだから、こうなる運命になっていた。
『……残念ですが、もしもなんて話はないですよ。これが現実です…もうこれ以上、我々と関わらないで下さい。
それが貴方自身の為にも、なりますよ』
最初はアルゼナルをあんな風に破壊した奴を許せないと思っていたが、映像を見せられたら黙認するしかなかった。愛している家族が目の前で性的暴行を犯されたら、過剰な報復をしてくるのは目に見えている。
だからそこ一線は越えるな、命の保証は無いと警鐘を鳴らした。
彼が片足でも踏み入れようとすれば、二人の逆鱗に触れる事になる。アルゼナルで起きた被害のように、碌な死に方はしないだろう。
アレクトラは、調律者を打倒する前に超えてはならない一線を超えてしまった。それ故に、彼女とその彼女に協力した彼女とノーマ達は蹂躙されたのだ。
「…アレクトラは、怒らせる相手を間違えてしまったんだな」
こうして真実を知ったタスクは何か言おうと思っても言えず、諦めて悲しそうな顔をしたまま去っていく。
(復讐する相手も、これでいなくなった…エンブリヲも消えて。アルゼナルが滅んだ原因も知って、俺は…さっきのを見ても、怒ることすら出来なかった)
彼等を追うまでの目的は、死んでいった彼女達の仇を取るためでも、復讐したいわけでもない。ドラゴン達でもなければエンブリヲの計らいで蹂躙されたわけでもない、彼女達の生存を許さない何者かが滅ぼした真相をどうしても知りたかっただけだった。加害者側の話を聞けば、目的が前者に傾いていたかもしれなかっただろう。
ーーーだが彼は、真っ当な理由に納得して、何も言えなくなった。
彼は少し考えて、立ち止まる。
かつての仲間達も敵もいなくなり、敵討も消えて、因縁も無くなってしまった。
今の彼は自由であり、何にも縛られるものはない。また無人島で平穏な生活に戻っても、誰も怒る人はいないだろう。
しかし、
(ノーマ達の存在と彼等の戦いを記録に残そう。歴史に記して、多くの人達に凄惨な過去があったっていう経験を知ってもらうんだ。
俺達の戦いを世界を変える為の犠牲を無意味になんて、できない。
それが彼女達の最期を身届くことが…見て見ぬ振りをして逃げた俺のできる、生きてきた彼等の償いだ)
彼は新たな決意と共に、戻ることをしなかった。これ以上レイゼル達を追うのをやめ、新たな目標を抱き、一人で世界を回っていく。
マナの無くなった世界を見て、差別されてきたノーマ達の命懸けの戦いを、多くの人達に知ってもらう為に。
失った数を数えるのではなく何もかも無かったことにしない為に、一歩先に未来へと歩いていた。
*****
「どうしてだろう…もうマナは無くなったのに、全く知らない世界に放り出されたみたい」
兄妹は虚の目で、窓越しに外を眺めている。
アルゼナルは妹を強姦しようとしたことで連帯責任で断罪し、エンブリヲは彼の作った法により母親を豹変させ、産まなきゃ良かったと言わせた事で頑張る事を諦めてしまった。
世界が混沌になったのも妹がノーマだからと差別した報い。兄妹、二人揃って外の世界どころか誰も信じられなくなってしまった。
後日、レヴェンから世界中のマナが無くなったという知らせを聞いたが二人とも素直に喜べなくなっている。
二人にとって、もう何もかもがどうでも良く思ってしまった。
「一体、どこで私達…おかしくなったのかな…」
世界の情勢が変わっても、人の心は簡単に変わることはできない。
空は青いのに、二人の心は黒く澱んでいた。
ヒルダが大人になっても、ずっと首輪をつけられて生活している。
「あの、ヒルダっ…その、ごめん。
ちょっと良いか?」
「…ん?どうしたの?
また私が酷い目に遭う夢を見たの?」
レイゼルに何回か膣内射精されて妊娠し、お腹をさすっている。首輪はまだつけたままで、兄にまた束縛される事も当たり前と思うようになってきた。
ソワソワしつつも、ヒルダが離れようとすると、抱きしめながら泣きついてくる。
「あ、えっと…」
「あーあ…またソワソワして泣いてる。
怒らないから、こっちに来て話してごらん」
兄が怖くなって、また無理矢理抜け出そうとしたこともあって乱暴しようとし、大泣きして拒絶した時にも震えが止まらず、涙も止まらない。
ヒルダにもトラウマがあるように、レイゼルにも心に深い傷を負っていた。
この重度のトラウマがきっかけで縛りが緩和して乱暴もしなくなったが、妹の依存については余計に悪化している。
「…で、どんな夢を見たの?」
ノーマだと発覚されたら警官の男達に暴行されたり、強姦されたりと、妹の酷い目に会う悪夢を見るたびに激しく嘔吐し、身体も精神も弱々しくなっている。
「もし私が船から出たいって言ったら、私のことをどうするの?」
「それは嫌だっ…」
「嫌なら、アタシが動けないようにもっと酷いことする?
私生活も、行動も、性格も、全部言う通りに
「それも嫌だ…‼︎‼︎でも、もう離れたくない…‼︎‼︎
ずっと一緒いないとやだっ‼︎」」
(子供の頃はしっかり者で憧れてのに…今は私に凄い甘えん坊になってる)
妹と離れることに恐怖し、前以上に酷く臆病になっている。その気になれば、また幼い頃みたいに兄を出し抜いて、船から出ることも可能だった。
そんな癇癪ばかり起こしたどうしようもない兄に、離れようとしない妹もまた病んでしまったのだから。
「あぁうん…心配、しなくて良いよ。
私の首輪が無くなって、ここから出ても帰るところなんてない。外にいる人達から嫌われるのは、分かっているから」
レイゼルは目の下のクマも酷くて泣き虫になったような気がしていたが、そんな泣き縋る義理兄に少し可愛いと感じている。
(ママはあんなにも私のことを拒絶したのに…兄は私にだけ、こんなにも激しく求めてくれてる。
もう私しかいないからずっと離れないでって)
「意地悪な事を言って…ごめんね?」
この依存した生活を続けているうちに、ヒルダも感覚がおかしくなっていった。外に出ても碌なことにはならないことを実際に経験している。
ーーー私も、お兄ちゃんのことを管理してあげないといけないとね…
「ごめんなさいっ…ごめんなさいっ、ヒルダがいないと俺何も」
「うんうんっ…よしよし、今のはアタシが悪かったよ。良い子っ、良い子。
ここに、ずっと一緒にいるよ」
そう言って、レイゼルが泣き止むまで背中と頭を優しく撫でていく。心が耐えられなくなって涙を流し、たまに幼児退化して駄々をこねる。
マナの力で裕福だった国は壊滅し、世界はアウラの帰還によって幸せで満たされている。
エンブリヲの統治した世界はこれで崩落し、マナそのものもアウラがいなくなった事で消え去られている。
やるだけのことをやった二人にとって、変わった世界のことなど最早どうでも良かった。今までの境遇が酷かったからか、外には何の期待などしてない。
外に目を向けても冷遇され、酷い時は暴言と暴力で強引に黙らせようとする。
手を差し伸べる存在など、誰もいなかった。
レヴェンはそんな二人の様子を見て、何もしない。どんなに厳しい言葉をかけても、外に希望がなかったのならば何の意味もない。
それ以前に、心が摩耗した二人にどんな言葉をかけていいか分からかった。ここまで生きてきた労いの言葉か、堕落した生活に対しての叱責か。あんな期待を裏切るような悲惨な出来事が何度も起きて、もう頑張れないほどの深い心の傷を負っている。
どんな言葉をかけてあげても全く意味がない、なぜなら二人はこれ以上頑張れなくなった。
心も壊れ、意気消沈もしてる。
差別される側へ堕とされ、腐敗しているのならば、こうなってしまうのは当たり前のことだ。
『マスター…』
遠隔操作のような代用品がないと動かせず、周囲の情報だけが長所である。身体は無くとも、主人を導くのがデバイスの務めだった。
たが、レイゼルとヒルダははどんなに努力して生きようとするたびに傷つくばかりの人生だった。
ただ静観するだけして何も失ってないのに偉そうな事を、今の二人に言う資格はあるのか。
ヒルダは段々と兄の言い分には肯定しつつ頷き、笑顔のまま兄を安心させている。かつてぶっきらぼうでツンとした性格だった彼女も、今では兄にもバカとは全く言わなくなり、ずっと飼い犬のようにずっと優しくし続けている。
幼い頃に逃げてからずっと心がすり減ったまま生き続け、嬉しくも楽しいと感じた思い出もたった一度の悲惨な出来事を思い出す度に黒く塗り潰されて病んでしまう。
ヒルダも心が壊れているレイゼルと一緒にいるうちに彼の思想に影響し、一人で生きていける自信がなくなってしまった。自分を愛してくれる人は、目の前にいる兄以外はもういないだろうと諦めている。
外に助けを求めようとする度に騙し裏切られ、暴力で脅され大事なものを奪われそうになる。
二人とも周りの怒号や批難、殺意に萎縮し、お互いしか誰も信じられずに依存し合うようになる。
深く傷つけられた心は、一生残り続ける。
「死ぬまで、一緒だよ…」
誰かと会うきっかけも、その心が救われることもない。
何も変わらない日常を大事にして、二人はただ静かにひっそりと暮らす。
ーーーーある樹木に紅い林檎と金の林檎が、実っていました。
二つの林檎は地面に落ち、粗悪な場所に放り出されました。
誰からも見つけられることも、愛情を注がれる事もありません。
落ちてから見つかっても、粗悪な場所にずっとあったという理由で汚いとゴミのような粗末な扱いをされ、捨てられます。
価値の無くなった林檎は、腐敗した沼に落とされても誰かが手を伸ばす事は決してありません。
ただゆっくりと手の届かない沼の奥深くで穢れていき、皮も身も腐って朽ち果てるだけ
ヴィルキスがいらない子
(アルゼナル蹂躙によって、機体は行方不明となっている)
・レイゼルの手によってアルゼナルは壊滅(大体はジルのせい)
・主人公のアンジュは、世界にノーマだとバレることがない。
*ただし、マナが使えなくなってしまったことにより各国で事故と暴動が確実に発生
・タスク、アルゼナルを探ろうとするもの映像を見てあまりの酷い内容に絶句。
もう何も言えなくなり、仲間達の仇を取らないまま、この件に関与しないことを誓う。
ノーマと古の民達の生きてきた伝記を残したいと新たな目標に切り替え、前向きになって生きていく決意をする。
・エンブリヲはサラマンディーネによって成敗。
(レヴェンが、地球へやってきたドラゴンの姫達に電波通信して知ってる情報諸々を与えつつ交渉する。
全力で助力し、ドラゴン達を勝たせた。
エンブリヲがアルゼナルを潰したことで、自分達の事を危険視して探ってくる可能性が高かったために、動けなくなったレイゼルとヒルダに話す事なく独断で動いた)
(主人公がアンジュから、サラマンディーネに交代)
・兄妹、ヤンデレ化エンド
兄(若干の幼児退行)
妹(感情鈍麻)
(レヴェンは壊れている二人に沈黙することしかできず、両依存をただ見守ることしか何もできなくなった)