パラメイル乗りのノーマを勧誘するにも失敗続きのレイゼル達は、今度は輸送機を襲撃してノーマの子供達を攫い、教育して戦わせるといった計画を試みようと考えた。
が、その実行の1日前にレイゼルはとある杜撰があったことに気づいてしまった。
もしもノーマの子供が船に沢山いたとして、その教育はもちろん育成と世話をしなくてはいけないのは重々承知している。だが、子供達の時間かヒルダとの時間を取捨選択する必要があれば子供の教育に時間をかけてやったとしても、彼女達がレイゼルに懐いてしまったらヒルダはいくら子供でも嫉妬どころか憎悪むき出しでレイゼルはもちろん子供も酷い目に合うだろう。逆に、連れて帰った子供達の育児を放置にしてヒルダとの時間を多くしてしまえば、救った子供達を戦力にするはずが敵対心を持って反抗してくる可能性が高い。仮に連れ帰ったところで、結局のところレイゼル達にとって大きな負担となっている。
連れて帰っても本末転倒であったためこの計画は中止にして、もう一度レイゼルはヒルダと話し合いになった。
*****
「で、どうすんのさ。マナはもちろんアルゼナルも信用できなくなったわけだっていうのに。しかも、子供を教育することも、あたしらの戦力にすることもダメって…もういっそのことあたしら二人だけで行動するってことで不要で良いんじゃないの?」
ヒルダの言う通りもう諦めて二人だけで蹂躙しても計画に何の支障もない。
すでに夕食を食べており、食器を片付けて話し合いを設けた。精神的に病んでいるヒルダにとっては、たとえ子供が沢山いても兄との時間を邪魔する障害にしかならないだろう。
「少なくとも、最低限の保険は必要だ」
「それが出来ないからもう私らだけで良いじゃんって話になってるんだけど…」
ヒルダも結果が上手くいかないせいで苛々している。アルゼナルを現段階で潰して奪えるものは全て奪えるが、本来の敵はマナ。彼らを有効活用するためにあえてあの軍事基地を直接叩こうとはしていない。
今後の戦いに支障がきたすのではとのことで色々考えたものの、この船に住む二人の考えを誘ったノーマが拒むせいで頓挫してしまう。だが、レイゼルはアルゼナルにいるメイルライダーの新人を見て理解した。
「いや…いるじゃないか、適任者が」
レイゼルはレヴェンに指示し、モニターをつけると金髪の長い髪をした女が写っている。
だがヒルダはこの女を見て気に食わない顔をした。
「はぁ?正気かよ兄貴…まさかこの痛姫様をここに?連れてきたところで私らを憎むのは目に見えてるだろ」
彼女の性格上の問題として、引き込もうにも必ず相入れないというのがヒルダの意見だった。アルゼナル内部にいるノーマのことを不快な目で見ており、彼らではなく『これ』発言しているが何よりの証言だっだ。
ジルもダメなら死ぬだけだと発言しており、来たばかりの彼女と親しくしようとする人物などアルゼナルにはあまりいない。むしろ、彼女自身がノーマ人を拒んでおり、新人のミランダとココには笑顔で応えているが心の奥底では二人のことなんて大事にすら思っていない。ココから貰ったプリンをゴミ箱に捨てるようなことを平気でやり、嘆願書を書く方を優先していたために良心が全く痛んでいない。
「だからこそ良いんだよ。化け物として偏見な目で見て憎むだけしか能のない…無知な者ほどな?それに、アンジュリーゼを脅す手札なんてこっちにはいくらでもある」
彼女の発言に難があるが、操縦や身体能力、ライダーの適正能力、全てにおいてほとんどが優秀であったことにも一つの人選理由でもあった。しかも、ラグナメイルの鍵である皇族の血まであるのならば、こんな都合のいい人物を手玉に取れたら、多くの子供を連れてくるようなことをしなくとも彼女一人を手玉に取れば最高の戦力をレイゼル側は得ることができる。
彼女は新人として第1中隊に所属しており、周囲にいるノーマ達をモノ扱いしたせいで邪険な目を向けられている。まだ自分がマナを使える健常者であると思い込んでいる阿呆を高みの見物で眺めていた。
*****
『準備はいいですね?』
「あぁ…」
レイゼルはアルヴァアロンを操縦し、皇女が初めてドラゴンとの初陣に割り込み、彼女の状況認識がまだ把握できてないところを狙って奪い取る。
しかし、
「…一緒に乗らせて」
乗るとはいってもヒルダは一緒にいてとずっとせがんでいたために、レイゼルはヒルダの腕を引っ張って一緒にアルヴァアロンに乗せてあげた。
それぞれの機体には一人乗りだと何度も言っているのに、ヒルダはレイゼルの袖を掴んで離そうとはしない。
「分かった。ただし、操作の邪魔はするなよ?」
「うんっ…!」
ヒルダはレイゼルを抱くようにし、レイゼルは見ないと分からないから首だけ横に傾けつつアルヴァアロンを操作した。
ドラゴンがシンギュラーから出現し、第1中隊がパラメイルに乗って陣形を取っていた。その中でパラメイルに乗ったアンジュリーゼは離脱し、ミスルギ皇国に帰ろうとしていた。
「アンジュ!何処に行くの!」
「私は…私のいるべきミスルギ皇国に帰ります‼︎」
第1中隊の副隊長のサリアがアンジュリーゼを引き留めようとするが全く耳を貸さない。しかも、もう一人の新兵がアンジュリーゼについて行こうとしている。
「アンジュリーゼ様!私も、夢の国に連れて来てくださいっ‼︎」
「何いってるのココ⁉︎」
ゾーラ達は出現したドラゴンを相手に戦闘をしている。アンジュを含めた新兵が3人いたが、そのうち一人がドラゴンにやられていなくなっていた。その子の身体はパラメイルごと二つに引き裂かれて、海へと落ちていく。
ココの死体を見ても、それでもミスルギ皇国に帰ることを諦めようとはしない。レイゼルはパラメイルとドラゴンとの戦闘の間に割り込んできた。
「…邪魔だ」
周辺のドラゴンをビーム攻撃で倒し、ミスルギ皇国に移動しようとしているアンジュを確保しようとした。背後や上を見上げることなく帰ることに無我夢中になっていた。
「アンジュ後ろっ⁉︎」
「え?」
アンジュリーゼがミランダの声を聞いて振り向いた時には、アルヴァアロンがそこにいた。彼女らが周囲を見渡すと新人がミランダしかいない。彼女達の周りにいたドラゴンは黄金の機体がほとんど片付けている。
「あれって…⁉︎隊長!アンジュが!」
「くそっ!デカブツが!」
ゾーラ達も大型ドラゴンの撃破に集中しているのに、アンジュを助けるなんてことをすればそこを狙われる。助けに行きたくても行けない状態になっていた。
「ダメッ!」
「…」
ミランダが止めようとグレイブで追おうとするが、ドラゴンが道を遮って助けることができない。黄金の機体が孤立している皇女を連れて帰ったということとなっていた。こうしてレイゼルは、ノーマ任命された皇女を攫うことに成功した。
「お疲れ」
「…せっま」
操作しているレイゼルと彼に抱きついているヒルダ、そのままレイゼルの膝に乗せているアンジュリーゼが入っているためにすごく狭い。
*****
「ここは…」
「気がついたか?箱入り娘」
「⁉︎だ、誰なのですか!」
無理矢理連れてこられたアンジュリーゼはまた見たことのない二人に怖がっていた。拳銃やナイフは回収し、メイルライダーの格好をしたままの状態になっている。
レイゼル達にとってはアンジュリーゼの確保が大事だったために、彼女が乗っていたグレイブは捨ている。
「嫌がっていても困る。無理にでもこっち側に付かせてもらうぞ?何のために連れてきたと思っているんだ」
アンジュはいきなり知らない男が目の前に現れ、レイゼルから逃げようとしていた。
「落ち着けバカが」
「放してっ…!」
レイゼルは腕を掴んでいるものの、アンジュリーゼはまだ大暴れしている。レイゼルは手錠をかけてまず腕を動かせないようにした。
「放しなさい!私を誰だと「皇女アンジュリーゼだろ?」なっ⁉︎」
彼らは知っていた上でアンジュリーゼを確保している。するとさっきまで怒りの感情を出していた顔がいきなり青ざめ、パニックになる。
「私のことを知って…では何が目的なのですか!まさか私を直接殺しに…」
皇女がノーマだと知られた以上、許せないと思ったミスルギ皇国出身のこの二人がアルゼナルに送らせるよりも直接手にかけるというものかとアンジュリーゼは考え、恐れたものの。
「んなことだったら、お前を確保する前にあの場所で撃墜してるっつーの」
「アルゼナルより扱いは幾分マシだ…ただし、お前の行動次第によってだがな。ノーマの相手はノーマでないと分かり合えないからな?」
レイゼル達は命を取ろうとしないことがわかったアンジュリーゼは臆病にならず、助かったと心から安心して今度は敵視するような目で反発してきた。
「ノーマなど…ノーマなど人間ではありません!お前達のような野蛮で卑劣、暴力的で反社会的な化け物…」
暴論ばかり言ってくるアンジュリーゼをスタンドで押さえつける。全てを言い切る前に口を閉じさせ、喉を締めようとしている。
「こうして改めて聞くと、ほんっと…頭にくるもんだな。保身になれば相手を非難し、貶す。いざ自分の身が危険になれば命乞いして死にたくないとかほざく…こんなのが皇女なんて信じられんな?所詮この女の魅力は八方美人のような外見だけで、中身はそこら中にいるマナの連中と同レベルなんだな?
いつまでも鬱陶しい言葉を並べるようなら、口を縫い合わせてやろうか?」
「ノーマの警告音が鳴っている時点でもう理解しろよ。あとさ、身の程を弁えな…痛姫様?」
二人ともこれ以上ないくらいの殺気を向けており、今にも殺しそうなほど手の力を入れている。だが、アンジュリーゼを生かして確保するといったものであるために、あえて殺さない。
「でも差別しているっていうことに関しては俺達もまた同じだよ。ノーマもマナも属すつもりは微塵もない」
「貴方達は…私を、私を一体どうするつもりなのですかっ⁉︎」
アンジュリーゼは無理矢理連れてこられた身であるために何をされるか何も分からないままなのだ。さっきまでミスルギ皇国に帰ろうとしていたはずなのに、気絶されて訳の分からない二人組に連れてこられ、混乱している。自分の保身があっただけでも落ち着いてはいたが、それでもレイゼル達に対する警戒心が残っていた。
アンジュリーゼはレイゼルの目を向こうとはせずに横に顔を向けて見ないようにする。
「まぁいい、お前には空き部屋があるからそこでしばらくしてもらう」
*****
料理はヒルダが作っており、レイゼルは尋問の為の人数分の机と椅子を用意する。
「あの法を作ったのは政府なんだろ?その政府のどこの誰が提案した?」
「知りません…」
それは知っている上で知らないと隠しているのか、それともただ知らないだけなのか。アンジュリーゼは口を開かず、何も言うつもりはない。ヒルダは態度が悪いアンジュに、襟を掴んで脅した。
「まだだんまりを決め込むつもりか?」
「皇女である私に、貴方達のような輩に屈するつもりはありません」
「ふーん、ミスルギのことはお前より俺達の方が広く浅く知っているんだがな。たとえば最近お前がセーラっていう子供をノーマに引き渡したというつまらん武勇伝も」
少なくともほとんど与えられるばかりのアンジュリーゼよりもミスルギ皇国のことや、アルゼナルのこともよく知っている。
「⁉︎なぜ貴方がそのことを!」
「詮索はいい、お前は質問に対してただ答えればいい。それができないなら、こちらも質問責めをするだけだ」
アンジュリーゼの態度は傲慢で、レイゼル側からは何も言わないのに聞き出そうとしてくる。
「だからノーマ管理法を作った人なんて本当に何も知りません!」
「…分かったよ。ならさっきセーラの発言の件で少し話そうじゃないか?雑談をしよう」
どこでどうやって知ったかということは言わず、セーラという赤ん坊のことについて説明した。かつてアンジュリーゼがその産みの母にノーマとして生まれた赤ん坊を捨てて、また新しい赤ん坊を生むように言ったことだった。
レイゼルは一つずつ彼女の弱みに付け入る。
「さて…この時お前の言う新しい子を産んで、それがマナなら幸せに育めといった横暴な発言についてだが?」
「横暴って…そんなの当たり前です。ノーマはあの世界では生きてはいけません。
だからこそ、ノーマではないマナが遵守されるのです」
(この女、死ぬほどの恐怖を何度も味あわせてやろうか?)
レイゼルはいちいち勘に触る発言に怒りを抑えながらも、アンジュリーゼの精神をボロボロにしようとまだ話を続ける。
「お前の言うように俺達の母親が実際そうしたさ。ノーマ扱いされた子供は今までずっと愛されてきたのに、今じゃ新しい子供を産んで前まで産んでいた子を拒絶する始末だ。お前がそういったように…そして新しい子を産み、今度はマナを持った由緒正しきものを育むって言ったな?だったら、お前が妊娠してノーマの子を産んでも嬉しくないわけ。でもそういう可能性だってあるよな?」
「そんなこと有り得るはずがありません。私はあの国の皇女なのですよ。皇女の身である私が、ノーマを産むなどと…」
「ないことはないだろ。どんな職、人柄、一人一人が様々で生まれる子供はノーマであるのとそうでないもの。その二つを産む際に調整できるわけでもなく、ノーマを産んでしまったら隔離されてマナだったら優しい世界に暮らすことができるっていうことを何度もやってきたんだからな?」
マナの力を持ち得た人々は、何不自由のない暮らしをしてきたのだ。しかし、マナを使うどころか壊すノーマの出産が出てきていた。その問題に政府がノーマに対する対応は、アルゼナルという施設に送られ、異世界から出てくるドラゴンを退治して世界を守っていたのだ。
ノーマからマナにしようとする努力も、共存していくという道も選ばず、出産したばかりの子を教育させ兵士にしている。
「おい兄貴。ご飯できたけどまだやってんの?そんな奴と話すより、先に食べようよ」
「もう少ししたら食べるから、待ってくれ」
ヒルダが顔を出している。まだ終わりそうにないから、ヒルダ自身もイライラしていた。
「それを食え、食べながら続けるぞ」
尋問を続けさせるためにレイゼルが握っていたおにぎりを手渡すが、アンジュリーゼはそれを払いのけた。兄が作ったものを手で払ったアンジュにヒルダはすぐにキレた。
「テメェっ、いい加減にしねぇとぶっとば「だから待てヒルダ」あのさ…こいつやっぱあの時殺すべきだと思うんだけど…」
ノーマだと明かされ、アルゼナルにいたアンジュリーゼは着替えも、何から何まで側にいたモモカという次女とマナ頼りにしている。
しかも、現状把握も全くできない。
ノーマからの食べ物を食わないのか、さっき食事を手に取らずに払いのけるようなことをすれば、逆に何も食べさせなことも考えてない。
幼稚な考えに、突発的な行動ばかりしているアンジュにレイゼルは呆れていた。
「…にしてもお前、本当に何から何までお子様だったんだな」
「さっきから何が言いたいのですか貴方達は!私を愚弄しているつもりなのですかっ‼︎私は、皇女として…貴方のような野蛮な」
「あんたの頭の中はどうでもいい。兎にも角にも、洗礼の儀でお前を中心にして起きた事実は、紛れもなく本物であることだ。野蛮で暴力的なノーマであることも、な」
アンジュリーゼが認めようとしないノーマだという事実を突きつけた。
「そんなの横暴ですっ‼︎私は、貴方達に対して何も悪いことなどしてないのに何でそんなひどいことが!」
「でも、お前がマナ使いだと証明する人は誰もいない。お前はノーマだ。俺たちと同類…それだけのことだ」
否定するだけ徹底的に彼女のマナでいた頃の否定する。彼女がマナの世界に移住していた頃と、アルゼナルに移動されても彼女は必ず国が助けてくれると信じていた。
だが、いくら長く待ち続けてもあちらの世界では誰も擁護することはなかった。
「本当に自分は何も悪くない。まともなのは自分だけだとでも?」
「私は、私は何も悪くなんてありません!好きでノーマになった「へぇ?お前が見捨てたココのことも?」⁉︎」
次にアルゼナル以降のことでアンジュリーゼに突き詰めてきた。ノーマだとバレたアンジュがどんなことをしてきたか。第1中隊の中にはアンジュに嫌がらせしたり、命令は絶対だとナイフを突き立てたりする子もいる。
アンジュリーゼもマナの生活を堪能しており、天国から一気に地獄に叩き落とされている。だが、レイゼル達の方からはそこまで成長して親に最後まで愛されていたのだから同情の余地なんてなかった。
レイゼル側の方は親に関しても、強く拒絶され。ヒルダの心がまた更に深刻になって病んでいったのだから。
「そいつも可哀想だったな。お姫様が来るって驚いて、嬉しくなってたんだ。プリンをあげようとしたらお前はゴミ箱に捨てるし、その程度の人物にしか思ってもなかったんだろ?
…お前の存在を認めてくれる奴はもう、誰もいない。アルゼナルにいたあの子はお前に憧れていた。
お前が殺したんだよ。
見殺しにして、逃げた。
今後も、これからもお前は人殺しを無自覚にやっていく。
慕っていく奴らを皆殺しにな」
「い、言いがかりも大概にしてください!私は何も悪くなんてありませんっていっているのになぜ分からないのですか‼︎
何で私ばっかり…みんなして。見殺したなんて言われても…そもそもノーマは…ノーマは人間なんかではないのに‼︎何で私ばっかりがっ!」
「テメェ…今ここでぶっ殺すっ‼︎」
ノーマが人間ではないと言ったアンジュリーゼを殺そうとヒルダがスタンドを用意して襲わせる。このままいけばアンジュリーゼの頭は木っ端微塵に吹き飛ぶだろう。だが、
「クッ…ハハッ…クククククッ、クッハハハハハッ‼︎アッハハハハハ‼︎」
「お、お兄ちゃん…?」
キングクリムゾンの拳はレイゼルのザ・ワールドによって押さえつけれ止められてしまった。それを聞いたレイゼルは怒るどころか狂人のように叫びながら笑い出した。ヒルダも初めてあんな様子になっているのを見たのだ。
「さっきから何なのですか…貴方、おかしいですっ!」
「なぁアンジュリーゼ?
間違いって何だよ?
正しいって何だよ?
お前は散々皇女っていう特権でノーマ持ちの母子を貶した。今までずっと父母が特権を使ってノーマの事実を隠してもらったんだから、その歳になっても守ってもらったんだろう。
お前に関しては自業自得だろうな?
でも…俺たちはあの世界にいてから誰一人傷つけようとは考えてもなかったし、それをするつもりは微塵もなかった…なのに、さっきまでいた世界で平和に暮らしていたかったのに、誰も傷つけてないのに違っているだけでつまはじきにされたこっちの気持ちがわかるか?
なのに法が、定められた規約が、それがあるから自分達は何も悪くないって?…そんなゴミみたい基準、何もかもを滅茶苦茶にしてでも台無しにしてやる。誰を犠牲にしてでもな。
そんな世界、俺達が否定してやる。
お前は被害者のつもりだろうが、マナを持ちでないことを自覚していないお前だけじゃない…マナを所持している者全員纏めて加害者だ。だから化け物扱いしている俺達が法だの規則だの悪だの善だの知ったことかよ。
俺達が気にする道理はこれっぽっちも思ってないね。
ノーマは野蛮で暴力的で反社会的…お前が言った言葉だぞ?」
「わ、私は…」
マナで輝いていたアンジュリーゼも、ノーマだとバレてしまい地獄に叩き落とされ、悲劇を気取っていてもヒルダは勿論、レイゼルもアンジュリーゼのことを殺したいと思っている。
ただし、これはあくまで保険(道具)としてアンジュリーゼという女を選択し、かつレイゼルなりの尋問である以上、アルゼナルの総司令であるジルのように肉体的な意味で暴力を振るうつもりはなかった。
ただし、どんなに酷い暴論でも突きつける。
心がおかしくなるまでに。
「母親の子供がノーマだという理由で捨てろと吐き捨て、自分は差別される側じゃないと思っていたはずがマナの使えない皇女と白日のもとに晒される始末、更にはココという年端のいかない子供を見捨てたんだからな。
実に滑稽な女だよな、お前は。
それももう一つ。お前にちょっとしたプレゼントを渡すよ。近くにある袋を確かめてみろ?」
レイゼルがそういって指差すと、近くに置かれてある白色の大きい袋が置かれていた。さっきまで無色だったのが、赤く変色している。
恐る恐る、その袋を開けると。
「うっ…⁉︎」
ドラゴンの攻撃によってバラバラになったココの死体がそこにあった。アンジュリーゼはそれを見て、気分が悪くなりそうになり、レイゼルがいるにも関わらず吐いた。
「探すの結構大変だったんだぞ。なんせ海の中を探さなくちゃいけないんだ。鮫に食われてるかもしれないし、深海にまで深くになると手を出すこともままならないんだ。何でここまでしたいかって?
簡単だよ、その気になればお前が苦しみ嘆く顔が見れるってこと。たったそれだけだ」
レイゼルはアンジュリーゼの肩を叩いて囁く。彼女の身は震えて、レイゼルを凝視していた。もうこうなってしまっては、真面に話すこともできない。
レイゼルは大きい紙を3枚用意して、机に置いた。
「ま、今日のところはここまで。吐いたものはそれで包めて、ゴミ箱にでも捨てておけ。だが次の日になっても尋問はまだやるからな?」
あくまでアンジュリーゼを追い詰めて、彼女を駒にする。追い詰められて自殺なんてことはさせようとはしない。レヴェンに監視させ、彼女を利用価値にできるまでこの船に監禁させるつもりだった。
「遅くなったな?それじゃあ飯にしよう。おいヒルダ」
「!う、うんっ‼︎」
ヒルダは呆然とその光景を目にしていたが、レイゼルが声をかけたことで反応した。レイゼル達二人は部屋を出て行き、アンジュリーゼはレイゼルの威圧に何も言えず、吐いたものを紙で包んでゴミ箱に捨てる。
「いやだ…私は…私は。助けて、モモカ…」
払いのけて落ちてあるビニール包みのおにぎりを拾って、それを泣きながらしんみりと食べていた。心が弱っているアンジュリーゼには親しい人物の名前を言いたくなるほど追い詰められていた。
*****
*原作通りココ救済なし
今回死亡キャラ救済というものではないので助けません。原作キャラ死亡というタグがある以上、今後はこういう鬱展開が何度もあるので気をつけて下さい。
*アンジュリーゼの尋問
ジルのような身体、性的な暴力はしません。精神的に追い詰める尋問をしていくといったような感じです。脅したり怒鳴りつけたりするようなものもありますし、行動や考えを一方的に否定するやり方です。
死亡者:ココ・リーヴ