※この作品はR-18です。

紅と黄金 Y.version   作:斬刄

7 / 9
曖昧な部分もあるかもしれませんが、教えて頂ければ幸いです。
タグに新しく狂化があるんですけど、これって本当にヤンデレなのか?狂ってるだけなんじゃないのかって疑問に思っていたので一応つけています。


想いは届かず

早朝

アンジュリーゼには運動用の服を着させて、機体に乗せるための適正テストを行っている。アルゼナルで既に結果を出してはいるものの、レイゼル側の方はアルゼナルとは全く違う訓練器具を使用している。

 

「…全部合格点だな」

 

レヴェンが結果を表示して見せると、値はアルゼナルで出した結果と同様に優秀であった。もう一度身体能力を調べていた理由は、緊急時にパラメイルの機体以外でも操縦できるかを考えていたからだ。

「レヴェン、アンジュリーゼ用の機体を一応考えておけ」

『機体を作る指示はしないのでしょうか?』

「今のところ作る必要はない」

良好な結果であったことから、有効活用のために機体を与えても良かった。が、本来アンジュリーゼに操作して欲しいのは神殺しのラグナメイルである。優秀だから褒美としてあげた機体を、アンジュリーゼが乗って逃げ出すということも考えられる為に、どんなに成績が良かったとしても機体の譲渡は見送りにした。

「着替え終えたので、部屋で休みます…」

「あぁ、お疲れ」

適正テストを全て終え、運動用の服から身軽な格好に着替えて部屋に戻っていく。アンジュリーゼという保険を確保したものの、駒を具体的に何をさせるのかをレイゼル達はまだ決めていない。アンジュリーゼは指示が出されるまで、ずっと部屋に籠っていた。

 

*****

 

昼頃

 

レイゼルは二人を呼び出し、会議を始める。アンジュリーゼは部屋から出て、椅子に座ってレイゼルに顔を向けている。ずっと部屋で寝転んでいたヒルダは、眠たそうな目をしながらも近くにあったクッションに座る。

「次は、アルゼナルにある神の兵器とアンジュリーゼの指輪を強奪する」

「はいはーい。あのさ兄貴、その計画を練るのって幾ら何でもいきなり過ぎるんじゃねーの?まだそこの痛姫様に何させるか決めたわけでもねーのにさー」

レイゼルの本題にヒルダが右手で挙手し、左手でアンジュリーゼに指差した。その発言に気に障ったかのように、アンジュリーゼは勢いよく立ち上がってヒルダに反論している。

「痛姫様と呼ばないでください。私にはアンジュリーゼという名前があります」

「誰がテメェの指図なんて受けるかよ。あんたのことは痛姫様って今後も呼ばせてもらう」

(いきなり喧嘩か。まぁ、こうなることは分かっていたが)

 

アンジュリーゼと親しくなるつもりは微塵もなかったが、特にヒルダはレイゼルよりも警戒心が強く、他人を危険視する。ノーマを差別していたアンジュリーゼのことなど全くと言っていいほど信用していない。ヒルダはスタンドであるキングクリムゾンを展開して痛い目に合わせようと構える。アンジュリーゼも腰にあるリボルバーを用意する。

しかし、

 

 

「ヒルダ、そんな些細な理由で喧嘩するのも殺し合うのも止めろ」

「つって…なんで止めんだよ!」

 

二人の喧嘩勃発よりも先にレイゼルが世界(ザ・ワールド)で時を止め、間に割り込む。レイゼルはヒルダの腕を掴み、手を出させないようにさせていた。

今ここでアンジュリーゼを失えば、確保した苦労が水の泡になるのを防ぐために。

「いい子だ。痛姫様とかじゃなくてアンジュリーゼってちゃんと呼べよ」

「うん…その代わりひっついたまま話を続けて?」

「仕方ないな」

数分経つとさっきまだ殺意をたぎらせていたヒルダが、レイゼルに頭を撫でると従順な子猫のように態度を変えている。

 

レイゼルはヒルダのそばに椅子を移動させ、そのまま二人が引っ付くようにする。

 

「なぁアンジュリーゼ。お前だって、こんなアホみたいなことで命を落としたくないだろ。世界の復讐を果たすんじゃないのか?」

「そうですね…分かりました」

 

レイゼルの言い分を聞いたアンジュリーゼも身を引き、リボルバーを元の場所にしまう。

 

(まるで番犬と主人だわ)

 

ヒルダがレイゼルだけに素直な態度を取っていることに、アンジュリーゼは何も言わないまま心の底では呆れている。さっきまでの喧嘩が落ち着き、二人とも席に座る。

 

「さて、二人のいがみ合いを終えたところで…それじゃあ会議を始めるぞ」

 

アンジュリーゼの捕獲以降、アルゼナルの方は、相変わらず飛んでいるドラゴンを毎日殺したりしてノーマ達は変わらない日々を過ごしている。レイゼルが乗っていた黄金の機体をいくら探しても、この世界にあるはずのない機体であるためどんなに探しても、その情報は無かった。

 

捕獲作戦は成功し、第二として彼らが隠しもっているヴィキルスとジルが所持している皇女の指輪を手に入れることだ。ヴィルキスの鍵として三つあるが、その内は皇女の指輪、皇族の血の二つが明かされていることをレヴェンの情報網で入手している。

 

アルゼナルにある二つを奪うことができたら完了ということになるが、そう簡単にはいかない。

強行突破しようとすれば、必ずメイルライダーの中隊との殺し合いが勃発する。ヒルダとレイゼルの二人だけでアルゼナルの部隊を突破することは可能だが、その間にドラゴンが奇襲をしてくる可能性も考えられる。

次にアルゼナルに潜入して探ろうとしてもヒルダは必ずといっていいほど兄であるレイゼルに対して極度の依存であることから二人一緒に隠れる必要がある。よって、隠密行動も難しい。

 

「その下準備の為に明後日、俺達は神聖ミスルギ皇国へ向かう。計画の前段階としてな…潜入は俺とヒルダの二人で行く」

「…?貴方達が神聖ミスルギ皇国に潜入するよりも、レヴェンっていうのでミスルギ皇国を解析すればよろしいのではないのでしょうか?アルゼナルよりも詳しいと言っていたはずですが…そもそも、なぜその計画に何の接点もないミスルギ皇国なのでしょうか?」

 

アルゼナルの突破の為に、前段階として神聖ミスルギ皇国を出したのか不可解だったアンジュリーゼは質問を繰り出した。

 

「ミスルギ皇国に行く理由はな、動機だよ」

「動機…ですか?」

「あぁ。お前のお兄さんであるジュリオにノーマ側がヴィキルスを隠し持っていた情報を流し、アルゼナルにいるノーマの信用を無くす。兄の性格は家族のお前が分かっているから、後々レヴェンの通信手段を使って交渉する。交渉後に、アルゼナルとそいつらでぶつけ合ってもらう。

 

アルゼナルと俺達で正面切って戦うなんてそんな馬鹿な事しねーよ。

 

俺達がミスルギ皇国をよく知っているのは確かだが、王宮の方に関しては調べていないんだ。それにな、ジュリオに接触するわけだから側にいるリィザっていう女が何者なのかも探らないといけない。無闇にレヴェンの力を使って、王宮内にいる他の誰かに勘付かれて怪しまれても困る。もしもミスルギ皇国の宮殿内に黒幕ことエンブリヲがいるならば感づかれるってことも考えないといけないからな。

食物が不足しているという理由もある。

 

 

まぁ要するにだ…皇国のことをよく知っているお前の知識を活かしてジュリオを利用することと、今はまだ慎重に動くって事で理解してほしい。

 

他に何か、釈然としないところがあれば聞いてくれ」

 

アンジュリーゼは兄であるジュリオの性格を知っており、レイゼル達がそれを利用し、騙して誑かそうとしている。前までのアンジュリーゼならば家族の一人を陥れようとする畜生な二人に怒鳴りつけるが、今となっては何とも思っていない。

 

兄と妹は、もう父親を殺している。

殺されて当然のことをしたのだ。

もう、あの頃には戻れない。

 

「…分かりました。貴方達二人で動くのなら…私は、どうしたらよろしいのでしょうか?」

「アンジュリーゼは指示が出るまでそのままリィアンに待機だ。ヒルダは…ちょっと来い。一緒に同行するお前にだけ大事な話がある」

「うん…」

それを聞いたヒルダは途端に機嫌が治り、レイゼルの腕を掴んだまま一緒に部屋へ入っていく。アンジュリーゼは兄を利用する作戦に何も感じる事なく、無関心のまま部屋に戻っていった。

 

*****

一方、神聖ミスルギ皇国では

 

「ハァ…ハァッ…」

 

メイドの格好をした少女が雨の中で必死に逃げ回っていた。何日間も、衣服はほとんど泥まみれのまま、見つからないように人気のない場所へ少しずつ移動している。

今日は幸いにも、天候による霧が生じたことで警官達に見つけられないようになっていた。

 

(アンジュリーゼ様っ…‼︎)

 

アンジュリーゼの侍女ことモモカ・荻野目は追っ手から逃げている。彼女は幼い頃から皇女アンジュリーゼのことをずっと慕っており、アンジュリーゼがたとえノーマであったとしても、お誕生日にもらった大事な服を破り捨ててまで怪我したところを止血しようとした。

 

自分の大切なものよりも、モモカを選んでまで。

 

ノーマだとバレていなかった頃は平和に暮らしていたはずなのに、それが家族共々バラバラになってしまった。洗礼の儀でアンジュリーゼがノーマだということが国民に明かされると、アンジュリーゼを逃がそうとした母親は目の前で殺され、アンジュリーゼはゴミとして扱われてしまった。父も絞首刑で死に、慕っていたアンジュリーゼはドラゴンの戦いで行方不明というようなことにもなっている。

その報告を聞いたモモカは、マナの力を駆使して、身を隠しながらもアンジュリーゼを探そうと必死になっていた。当然、捕らえていたモモカが突然脱走したことでジュリオは彼女を捕らるようにと憲兵と警官達に命令する。

 

モモカはこの国から出て、一刻も早く行方不明になったアンジュリーゼを見つけに行きたいという気持ちにかられていた。が、

 

(⁉︎あれは…)

 

 

金髪の美少女がずっと立ったままロープの格好をして周囲から身を隠している。彼女が周囲を見渡すために警戒していると、モモカは翠の瞳と顔を一目見てすぐに気づいてしまった。

 

アンジュリーゼが生きているという喜びに目を輝かつつ、凝視する。容姿を幾度となく見てきた彼女に、誤魔化すことはできなかった。

(やはり、生きておられたのですね‼︎アンジュリーゼ様‼︎‼︎)

モモカは行方不明になっていたはずのアンジュリーゼがこうして生きていたことに驚き、嬉し泣きをしながら向かおうとするが、

 

 

「アンジュリーゼさ…」

(あれ…)

 

走ろうとするどころか、そのまま地べたに倒れてしまった。誰かの近づく音が聞こえているというわけでもなく、何も気づかないまま撃たれていた。

 

彼女の腹部から大量に出血し、身体が思うように動けないことに誰かが背後にいたことにようやく気づいた。

モモカの背後にいた彼は、彼女の警戒心が薄れたところを狙っていた。

(あ、アン、ジュリーゼ様っ…)

 

 

*****

 

レイゼルがヒルダだけに話があるというのは、裏の計画としてアンジュリーゼをこのまま保険として使うにしても彼女を慕っている人もいないとは限らない。そんな邪魔者をどうやって排除するかということを二人で考えている。

 

『昨日の早朝にアンジュリーゼが必死こいて泣き叫んでいた人物の名前はモモカ・荻野目という女です』

 

レヴェンが画面を表示して、レイゼルとヒルダに見せる。モモカという専属の侍女がいることで、今までずっとマナを使えなかったことを隠蔽することができた。

 

「そんな奴ほっとけばいいじゃん…庇ったところでとっくに殺されてるかもしれねーんだぞ。それにその侍女がアンジュリーゼに好かれるとは限らないだろ?私とあの女の家族みたいに」

 

マナの世界にいる人達は最初は同じマナ使い同士可愛がっていたものの、ノーマだと断定されると心が豹変し、アルゼナルから抜け出した子供達が再び家族や大事な人に会っても追い出されている。信じたはずの家族に裏切られ、役人に通報されて連行されるという非情極まりないことが、あったのだ。

 

だからこの侍女も、家族と同様に殺そうとすると考えていたが

 

「甘いなヒルダ。誰もがそうであるとは限らないことだってある。マナとかノーマとか関係ない考えを持って、本当にアンジュリーゼを思っている…そういうやつが存在しているならば俺達のようにしぶとく生きている。しかもそいつを会わせるなんてことになったら、俺達にとっては都合が悪過ぎる…

 

 

だからこそ、こういう厄介な存在は目の前で確実に殺すんだ」

 

レイゼルは、たとえ差別的偏見を持っていない人がこの世のどこかにいたとしても、兄妹に悪影響をもたらすのであればどんな善人であろうが、その時点で排除するしかなかった。

 

*****

 

既に表向きの計画は終え、モモカ暗殺へと移行している。待ち構えていたレイゼルの片手には、サイレンサーピストルを取り出して後ろから正確に撃ち抜く。殺傷力は低いが、銃声が響かない分暗殺向きになっていた。

 

 

レイゼル達も同様に、霧が生じていることが何よりも好都合だった。

「感動の再会、と言いたいところだが…お前がいるとこちら側の邪魔にしかならないんだ」

「アンジュリーゼ…様」

 

彼女の瞳には尊い皇女様が生きていることに喜びはしたものの、全く声は届かない。彼女は手を伸ばし、自分が死にそうになっても、アンジュリーゼが生きていたことに感涙している。

 

(私は、貴方を、いつまでも…)

 

レイゼルは二度拳銃の引き金を引き、モモカ・荻野目の身体をゼロ距離で撃ち抜いて確実に殺害した。アンジュリーゼの正体がノーマであったとしてもモモカにとってそんなのは全く関係は無かった。彼女にとって一番大事だったのは、アンジュリーゼと再会し、共に生きていくことなのだから。

 

「…同情はしないぞ」

 

復讐心で堕ちたアンジュが目を覚ますということは、レイゼル達にとって非常に不味いこととであり、彼女との鉢合わせを阻止する必要があった。アンジュを侍女に合わせたりでもしたら、今まで堕ちるところまで堕ちた皇女を良いように利用することができなくなる。

更には、自分達のことをアルゼナルなどといった組織に売ろうとするのは余計に不味い。

 

よって、二重の意味でアンジュの次女であったモモカといった女は、レイゼル達からすれば殺すべき対象だったのだ。

 

レイゼルは遺体を大きな布で包み、彼女の血をゴールドエクスペリエンスで作った生物に飛び散った血を吸わせることで現場にある証拠を隠滅する。

 

「こんなことでよろしかったのでしょうか?」

片手に通信機を持っていたアンジュリーゼは周りから見えないようにフードを被った格好をしており、モモカのそばに誘導させつつ待機するように指示していた。

 

モモカ以外の憲兵と警官達は既に寝込んでおり、この霧の中で誰にやられたのかもわからなくなっている。レイゼル達が帰ってくると、重たそうな正方形の食物箱を彼は抱えていた。

 

「なんなのですか全く…いきなり机の上にあるロープを着て、外に出て待っててくれって」

「ちょっと野暮用があってな。万が一の為にお前の力も借りる必要があったかもしれなかったが、別にそんなことはなかったな。

それじゃあ戻るぞ、リィアンに」

 

彼が所持した拳銃と衣服には、モモカの血が付着してある。アンジュリーゼはレイゼルの衣服についている返り血が一体誰の血だったのか、巨大な荷物に何が入っているのかも聞くどころか気づかずにそのまま船へ戻って行く。深夜にレイゼルがモモカの遺体を処理したことで、もう二度とアンジュリーゼがモモカと再び出会うことはもう無かった。

 

 

*****

 

*第二段階の計画(ヴィルキス&指輪強奪作戦)

アンジュがレイゼル側にいる&悪堕ち時点で原作が既に崩壊しております。

ノーマの人員確保から次の標的は神殺しのヴィキルスですけど、慎重に行うという事になっております。

え、ジル一人でも厄介?

…な、ナンノコトカナー

 

*裏の計画

レイゼルとヒルダの二人が闇堕ちしたアンジュリーゼを救おうとしかねないため、モモカを危険人物と判断。せっかく利用しようと企てたのに改心するどころか報復される危険性が高い。鉢合わせしたら二人一緒に逃げる可能性があった為、接触する前にレイゼルが殺処分しました。

 




死亡者:モモカ・荻野目
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