※この作品はR-18です。

汝の眼球が食べたい   作:Schuld

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流石に長くなりすぎたので前後編に分割致しました。


かみとかし(前)

 髪は乙女の魂であり、それに触れることを許すのは特別な意味を持つ。

 

 今日も今日とてレイシフトが終わった後、物資の収支報告と収穫に基づく霊基強化プランを纏めたマシュは身繕いもそこそこに立香の私室を訪れていた。

 

 「先輩、失礼しますね」

 

 「ああ、マシュ。開いてるよ」

 

 インターコム越しに語りかけて入室すれば、愛しい先輩の姿は寝台の上にあった。

 

 今日も今日とて、茨木童子と共に。

 

 「おう、マシュか。つまみの一つでも持ってきたか?」

 

 黄金色の鬼はほこほこと湯上がりの蒸気を纏っており、同様に立香も頭にバスタオルを引っかけた風呂上がりの装い。部屋着のズボンと空調が効いているのを良いことにタンクトップ一枚羽織っただけの姿は、正直年頃の乙女には随分と目に毒であった。

 

 そんな立香は壁に背を預けて寝台に座り込み、茨木を胡座を掻いた膝の上に載せている。手にはタオルを持って金色の髪を丁寧に拭っており、傍らにはドライヤーも用意されていた。一緒にシャワーを浴びたのか云々は、最早論ずるのが馬鹿らしい領域に達しているが、それにしても甲斐甲斐しいものである。

 

 「その、報告書をですね」

 

 「ん、ご苦労だな汝も……立香、櫛も頼むぞ」

 

 「はいはい。マシュ、ドライヤー当てるからちょっとだけ待っててね?」

 

 「あ、はい、ごゆっくりどうぞ」

 

 一体何をごゆっくりすればいいのか。しかし、先輩は後輩の言に甘えて丁寧に髪の手入れを始めた。キューティクルに沿ってドライヤーを当ててやり、冷風と温風を混ぜて水気をしっかりと飛ばす。そも魔力で身体を構築しているサーヴァントに髪の手入れが必要か否かは疑問だが、まぁ当人が喜ぶのであればいいだろう。

 

 無駄は心の贅肉と女神の皮の人も仰っていたが、時には無駄な事が少しはあった方が良いのだ。遊びが無い機械が摩擦で直ぐに駄目になるように、全く心に遊びが無い人間もプレッシャーに弱くなる。

 

 その点、何があろうと、たとえ四肢の一本を吹き飛ばされようとも笑っていられる精神力を持つ立香は強い。重圧に折れず、威圧に負けず、困難に妥協することを知らないのだから。

 

 そういった精神性の持ち主こそ、今まで歴史に英雄英傑として名を残してきた。

 

 そんな英雄の卵は、理容師としてもやっていけそうな丁寧な手つきで髪を乾かし終えると、ベッドサイドから髪油なんぞを取り出して鬼に塗り始めた。一度霊体化したら無意味になるというのに、何とも健気なことである。

 

 ふと鬼が微笑んだ。寝台の傍らでファイルを持ちながら待っていたマシュを見て、いや、正確にはじぃっと鬼を見つめていたマシュを見返した形である。くっと口の端を吊り上げた嫌らしい笑みは、言外にこう語っている。

 

 うらやましかろ? と。

 

 露骨に挑発されればむっと来てしまう。冷静になれば、自分がおねだりしたら先輩はぽんやり笑って手招きしてくれると分かっていても、感情というものはどうしても制御し難いもの。むすっと頬を膨らませながら、気持ちよさそうに髪の手入れをされる鬼を極力視界に収めないようにすることを抵抗とし、マシュは面白くない時間を凌ぎきった。

 

 「ん、大儀であった」

 

 十分ほどもたっぷり時間をかけて身繕いされ、鬼は満足したらしい。大仰に言い放つと、これが定位置であると言わんばかりに立香の膝へ上体を投げ出して寝台に寝そべった。この鬼は横になるスペースがあると、直ぐこうするので目に毒である。マシュは衝動に任せて一瞬武装を展開しかけた自分を必死に抑え、先輩に笑顔を作ってクリップボードを差し出す。

 

 今度機会があったら、この鬼にささやかな仕返しをしてやろうと硬く心に決めながら。

 

 「ごめんね、マシュ。お待たせ」

 

 「いえ、お気になさらず」

 

 ペラペラと強化プランを捲っていくと、ダ・ヴィンチ女史とロマニ監修済みの印が押された中長期の育成プランが目に入るが、その内の幾つかには付箋と共に実行可能という覚え書きがなされている。

 

 これは、いわゆる本日のおすすめ、というやつだろう。現状で層が薄いクラスを補強すると共に、今後強化することが望ましいと思われる英霊に梃子入れするプランが次なる特異点を想定して練られている。立香は立香で色々考えてはいるものの、やはり冷静に俯瞰して物を見られる上の立場にある人間、彼等からのアドバイスは大変有り難いものでもあった。

 

 余談であるが、この鬼にせよ後輩にせよ、ここ一番では絶対に引っ張り出すことは目に見えている面子の霊基は、既に限界まで研ぎ澄まされている。故に彼女たちはプランに無関心になりつつあった。以前はどちらが優先されるかでちょっとした小競り合いもあったようだが、自分に関わりが無くなった途端に現金なものである。

 

 「えーと……アサシンが薄いし、やっぱり対人交渉を考えるとステンノかなぁ」

 

 霊基を鍛え上げようと思えば、一体何時間レイシフトすれば稼げるのかと言いたくなるほどの資源が一瞬で溶ける。有用性と今後の発展性を考えた人選が必要だが、直接戦闘においてもレイシフト先での対人交渉においても人選は難しい。それこそ戦力的には何ら劣る所は無くとも、茨木童子を初めとする反英霊だとか、コミュ障分類されてもおかしくない面子ばかり連れては特異点探査も難航しようというもの。暴力で解決することも不可能では無いが、そればかりでは後々立ちゆかなくなるので、結局自分の首が絞まってしまう。

 

 その点、男性という概念に特別強い女神ステンノは、少なくとも生きた人間が居る地を訪れるに当たって鬼札になりえる。何せ彼女が微笑むだけで、意志が弱い男ならば命すらも容易く投げ出すだけの魔力があるのだ。この暴力のような魅力は、オケアノスの大海にて猛威を奮ったこともあり立香の信頼は厚い。

 

 「おい、汝よ」

 

 「ん? 何? 茨木」

 

 ステンノの名が出た途端、茨木の顔が微かにこわばった。見下ろしてみれば、ご機嫌な猫のようだった表情が一変し、苦虫を噛み潰した上で飲み下し損ねたような渋面があった。

 

 「吾の忠告を忘れてはいまいな?」

 

 「忠告……って?」

 

 「神霊の類いに気を許すな、と何度も口を酸っぱくして言ったであろうが」

 

 言われて思い出し、掌を打つ。か弱い女神、かつて貶められたゴルゴン三姉妹が長姉ステンノとは長い付き合いになる。彼女が立香の呼びかけに応えたのは、冬木を踏破しオルレアンの征伐を終え、人と英霊の混成軍がぶつかり合うローマの戦場を抜けた後の事。ちょっとした出来事を縁とし、彼女はあの何とも外連味の漂う、しかして外見は儚い乙女の笑み携えてカルデアへやって来た。

 

 それも堂々と、初めて自分が貪られるのではなく、貪ることのできる英雄様と遊びに来たと宣って。ローマで面白半分に玩弄された前科も相まって、今此処でぶっ殺しておいた方が良いと判断した茨木を止めるのに令呪の消費を要するほど、彼女がステンノに抱く印象は悪かった。

 

 というより、茨木は神霊全体に拒否感を覚えているのだ。

 

 「いいか汝、立香、吾がマスターよ。神霊の類いは人を玩弄し消費するが、決して愛しはしない……分かっておろうな?」

 

 「ん、分かってるよ」

 

 茨木童子は莫逆の友である酒呑童子をとある源氏の頭領に、神の手助けを受けた彼等の手によって討たれている。無論、討たれるべき存在である事を彼女は十分に理解しているが、やはり騙し討ちの上にチートアイテムまで持ち込まれると腹に据えかねるらしく、小狡い英雄と、その英雄を助けた神々を酷く嫌っているのだ。

 

 結局、何だかんだいって強大な怪異である茨木童子と酒呑童子は、神が肩入れしなければ討たれることもなかったのだから。如何に源氏の頭領が“ぶっ壊れて”――多義的に――いたとしても、三つの神器がなくば悪くても相打ちには持ち込めたであろうに。

 

 剰え、自分が何時か喰らおうと目を付けた英雄に、真っ向から唾を付けようとされてどうして黙っていられよう。ただでさえ強い神霊への憎悪が正しく募るばかりであった。

 

 「よいな立香、軽々に魂だのなんだのをくれてやると宣うなよ」

 

 重々しく言い放つ鬼は、ほんの僅かな間、刹那と呼んでも良い短さなれど立香の眉根に皺が寄ったのを見逃さなかった。そして、彼女は皺の意味を悟れぬほど愚かでも察しが悪くもない。

 

 「おい、汝、もしや……」

 

 「種火が集まったと聞いて来てやったわよ!!」

 

 鬼が牙を剥いて口から微かに炎を零した時、タイミングでも計っていたのかと聞きたくなる間の良さ――或いは悪さ――で扉が開かれた。インターコムは鳴らされておらず、当然主人からの許可も無い扉が開かれた理由は単純。何をしたかは分からぬが、プロテクトをブチ抜いて物理的にこじ開けてきたのだ。

 

 「さぁ、さっさとなさいな。最高の戦力が進んで来てあげたのだから」

 

 そこにありしは、心折れず旗持つ聖女の極北に立つ女。竜の軍勢で己を否定したフランスを蹂躙し尽くした竜の魔女。かねて畏れよ、ドヤ顔が似合う黒銀の乙女の名をジャンヌ・ダルク・オルタナティブなり。

 

 「おい……」

 

 一瞬にして空気をたたき折った女の存在に、鬼は物騒な青筋を浮かべながらゆらりと起き上がった。あくまで泰然と、されど燃えさかる炎の如く苛烈に。鬼は大骨刀を虚空より具現化させつつ、贋作の魔女と相対した。

 

 「汝よ、良い度胸よな? あれか? 空気を読むということを知らぬか?」

 

 「……何よ小鬼が。私は朗報がある、と前もって連絡を受けてきたのだけれど。それをどうして矮小な化生如きが止めようというのです」

 

 扉を開け放った時は楽しそうに輝いていた魔女の瞳が、瞬く間に絶対零度に冷え込んだ。対極なれど邪悪を意味する黄金の瞳のみを同じくする二人は、化生たる証の視線で切り結んだ。さっさと退け、否汝が退けと無言の内にぶつかり合う。その様を見て、マシュは小さく呆れたように吐息して立香の前に立ちはだかりつつ、小さく耳に嵌めていたインカムを起動した。

 

 さっさと治安維持要員、あらゆる争いを物理で叩き潰せる御仁を呼び寄せて、愛しき先輩が湯冷めしないで済むように処置すべく…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぱちり、と小気味良い音が食堂の一角に響いた。音の発生源は安っぽいマグネットボードに打ち付けられた将棋の駒であった。コンビニででも買えそうな安物の量販品は立香の私物であり、カルデアに持ち込んだ荷物に何故か紛れていた代物である。

 

 「ほれ、成ったぞ」

 

 「ん……」

 

 そんなマグネットの将棋を囲むのは、巨大なたんこぶを頭頂部にこさえた茨木童子と、首を何処かの文房具娘や式神の如く人間がしてはいけない角度に傾けたジャンヌ・オルタであった。言うまでも無く立香の部屋で剣呑なやりとりをし、毎度の如く私闘一歩手前まで加熱した二人は、マシュによって召喚された婦長の手によって一瞬で撃滅された。小陸軍省閣下は、カルデアの治安維持、ひいてはマスターの健康問題となると滅法強くなる。

 

 その結果、頑強な筈の化生が何故か揃って中々癒えぬ傷を負い、立香の私室を追い出される結果と相成った。ある意味において予定調和、何時もの流れと言って良い展開であった。

 

 尚、余談であるが立香は風呂上がりの薄着を叱られ、腹巻きをしてタオルケットにくるまれ、フローレンス女史監視の下でホットミルクを飲むという処置が下された。

 

 ティーサロンで出てくる香り高い紅茶とは比べるもない、ティーパックの安物を囲んで反英霊二人は暇を潰している。無論、両者共に単なる無聊の慰めとしてボードゲームに興じている訳では無いのだが。

 

 堅牢に穴熊を組んだオルタの陣が少しずつ削られていく。一節では平安時代にはもう原型が合ったという将棋だが、茨木はバーサーカーであるにもかかわらず達者にこなし、下手の横好きという言葉が似合う竜の魔女は……基本や定石は抑えていても、臨機応変には動けないという、上級者のカモと形容するに相応しい様を晒していた。

 

 少しずつ少しずつ確実に討ち取られ、相手の手勢に寝返っていく手駒に竜の魔女は歯がみした。裏切られる屈辱は分かっていたつもりであるが、それにしてもこれは酷い。チェスと違って手駒の再利用があるのは知っていたし、自分がやる分には楽しそうだが、やられた時の苛立ちが半端なかった。それこそ、ちょっと下手を打って持って行かれた大駒で自陣が削られるのは酷い辱めである。

 

 どうせなら召喚された時、サンドバッグ代わりにピエールの一体でも引っ張ってくれば良かっただろうか、と思いながらも魔女は趨勢の決した戦を続けた。流石にここで、この鬼相手にジャンヌルールを発動したなら、食堂の主共から鬼共々どんな目に遭わされるかは分かっているので、続けるしか無いのだ。

 

 「で、だ、竜の魔女よ」

 

 「何よ、小鬼」

 

 「汝、立香の魂とやらに手ぇ出しておらぬだろうな」

 

 ぱちり、先ほどまでジャンヌの幕下にあった飛車が茨木の手によって叩き付けられ、ジャンヌの柳眉が逆立った。

 

 「……図星か」

 

 「馬鹿にするんじゃありません。アイツが差し出すといったから、貰ったまでです」

 

 実際には何でもする、という文言を利用して魂を自分が地獄に戻るにあたって道連れにすることなので、実態としては何も変わらないのだが。それこそ、何か身の回りの物を一つ貰う程度の小さなことでも文面は果たされる。

 

 「汝な……」

 

 「……神霊のように魂に紐付けするような、胡散臭いことはしていません」

 

 この話題は此処までだと宣言するように、ジャンヌは腹立たしげに自分の王将を取り上げて放り投げた。後五手で詰むことを悟り、投了したのである。

 

 「なら良いが」

 

 対局が済んでも礼の一言も無いが、それがこの二人の普通である。不機嫌そうに座席に大きく身を預けるジャンヌは、感想戦はしなくて良いのかと問たげな茨木に言い放った。

 

 「ふん、あのマスターを心配するなら、もっと目を見張らせておくべき存在が幾らでも居るでしょうに」

 

 「あん?」

 

 述べ上げられるは、カルデアに蔓延る不穏分子達の名前。破綻を孕んだ竜や、奔放な神霊達はこのカルデアにおいて、近い将来何かやらかす存在として警戒されている面々だ。立香との関係が破綻した、或いは進捗させようとした途端に何かしでかすのが目に見ている面々。これを放置しておいて、自分に釘を刺すとは何事かとジャンヌは問いたかったらしい。

 

 「……汝は、まぁ歪んでおれど一応は正気だからな」

 

 「はぁ? 人を捕まえて狂人と比較しますか」

 

 「あの紅蓮の聖女共と比べれば幾分かまともで、清姫と比べりゃ理性的であろうよ。なればこそ、釘を刺した……意味があるからな」

 

 「それらと比べられるのは業腹ではありますが……そういうことですか」

 

 狂人に言葉が通じないのはデフォルトだ。まともな物言い、それこそジャンヌはアルトリア顔に区分されてるが、全然似てねーじゃねーか! という突っ込みをされた所でキャスターのジルが訂正を受け容れないのは誰しもが知る所。

 

 結局、他人が立香を安珍の生まれ変わりでないとか、まかり間違っても星座にしてくれるなと言ったところで聞き入れるとは思えぬ面々がいる以上、言葉を尽くしたところで何の意味も無いのだ。

 

 その点、一応は言葉が通じるジャンヌであるからこそ、鬼は言葉によって釘を刺しに来たのだろう。それこそ、通じなければ行き着くところは殺し合いであると分かりながら。

 

 ただ、想像していたよりは穏当な結果であると理解し、鬼は一応の安心を得たようだが。この魔女が極まった変態ばかりが集まる神族と似た悪戯を企てていないと分かっただけで収穫だ。鬼は立香を大事にはしているが、その魂の後までどうこうしようとは思っていないのだから。

 

 精々、グランドオーダー達成の暁には、片腕切り落として自分の物にする達成報酬の約束を取り付けた程度のことである。

 

 「あー……ままならんな」

 

 因みに、この事は右目の事もあって色々と面倒臭いマシュには秘密である。比較的早い段階で立香に提案していたが、左目を貰う約束で舞い上がっている彼女に言うのは無粋かと思って黙っていたのだ。食うか綱に切り落とされた腕の代わりに使うかは思案中なれど、とりあえずジャンヌともブッキングせずに済んで一安心である。

 

 しかし、あのマスターが自分の身体を安売りするのは何とかならないものか。欲されねば差し出さぬが、欲されれば殆ど迷わずくれてやるのは問題である。その内、何処が誰の物か名前を書いておかねばらななくなりそうで心配だ。

 

 その点、どうやったって名前を書くことができない魂となると始末が悪い。それこそ、内心では自分が天上に還る時にどさまぎで召し上げてやろうと企んでいる神霊なんぞ、逆に居ないはずがなかろう。アニムスフィア繋がりで星座なんぞが増えたら、流石に笑い話にもなりはしない。

 

 「で、汝は……」

 

 「その話、今しないと駄目かしら?」

 

 下らなそうに言い放ち、ジャンヌは将棋を片付けに入った。勝ち逃げされるのは業腹であるが、続けたい話でもないのだと言い放つように。しかし、誤魔化せるとは思っていない。これは結局、どちらかが座に還る還らないの話にならざるを得ない話題であるから。

 

 「……そうか、よかろう」

 

 「物わかりの良い子は好きよ、割とね」

 

 「抜かせ小娘」

 

 「それに……」

 

 茨木が使っていた玉を弄びながら、ジャンヌは心底つまらなそうに食堂の一角を指さした。丁度今入ってきたと思しき二人連れ。この界隈ではよく見られる、肩に担がれた童女とその連れ合いという絵面であり、オケアノスでほのぼのさせられた女神と怪物のカップルが印象深い。

 

 が、そこに居たのは弓持つ女神とミノスの雄牛ではなく、何故かステンノを結構無理して肩に載せた立香であった。

 

 「なんじゃアレ……」

 

 「さぁ」

 

 妙な光景に鬼も魔女も「何やってんだ彼奴ら」という顔を作る。食堂で無聊を託っていた面々も微妙そうな表情を作ったり、渋面を浮かべたり果ては発狂して見せたりと忙しい。発狂した清姫は凄まじい速度で一時的に鎮圧されたが、これは後でマスターも説教案件であろう。公の場で誰かと軽々とイチャつくな、とは何度も言われているはずなのに。

 

 何とも言いにくそうな表情でその様子を見ていた二人に気付いたのか、立香の肩に悠然と腰掛けていたステンノは、何とも嫌味なことに笑みを贈ってみせた。艶然とした童女の似姿に不釣り合いな点は茨木と似通えど、男性の保護欲を擽る女神の微笑みはまた違った趣を持つ。

 

 そして、それは男性に特効があったとして、逆に女性にとっては酷く疎ましく感じる物なのだ。

 

 「……後でちと説教してやらねばな」

 

 「珍しく意見が合うわね。同席しても?」

 

 「……神が碌でもないと分かっているのは汝も同じか。よかろう」

 

 余裕たっぷりの笑みを浮かべる女神に、茨木は我らが主人がまたぞろよからぬ約束をしたに違いないという、予言めいた予想を巡らせるのであった…………。 




間が開きましたが、何とか此方も更新です。ダビデの方も合わせて感想などありがとうございます。お気に入り600人突破、ポイント1,000到達で望外の評価に驚き喜んでおりました。

次はステンノ様。活躍を貰った上に相方まで得た妹とか、有用さで上回った怪物の方とかロリの方の末妹に比べて扱いが悪かったステンノ様は拗らせる余地が大分あるので大好きです。何よりもマリーに次いで我がカルデアにお迎えできた高レア鯖だったので思い入れも一入。

やはりいちゃいちゃした描写は楽しいので、拗らせながらも入れていくと同時に、駄目人間化もさせていきたい所存。
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