提督「出張だ。鳳翔、一緒に一泊しよう」
鳳翔「エッッッ♡」(脳イキ)
会議出席提督「他所の提督全員女になってる!?」
北上「鳳翔さ、提督に夜這いしちゃいなよ」
鳳翔「エッッ」(実行)
鳳翔、睡漢(すいかん)一歩手前で自我を取り戻す
我ながら酷すぎるあらすじ。
今回R-18要素ありません。あしからず。
「今日はお早いですね、提督」
「ん? ああ……。お客さんが来るんだ。さっさと食べて迎えの準備をしたくて」
朝食の席。俺の向かいに座りつつ玉子焼きを箸の先で
そんな彼女が、普段より早起きかつ忙しなく頬張る俺に疑問を投げかけた。……のだが、正直言って俺の方こそ問い返したい。「なんで俺達、毎日一緒にご飯食べてるの? 」って。
「……なあ、無理して俺と食事の時間を合わせなくてもいいんだぞ? 明石、いつも夜遅くまで仕事してるだろ」
「いえ、そんなこと! お、お互いの事を知る時間は必要ですからっ」
以前にちょっとした勘違いをさせてしまって以来、すんごいグイグイ俺に迫るようになった明石。彼女の中では、俺と明石は付き合う一歩手前くらいまで進展しているらしい。
今までの事を思い浮かべる。いくら早起きして食堂へ向かおうとしても、執務室のドアを開けると目の前に明石は立っていたんだ。どれだけ恋する乙女の顔をして待ってたって、軽くホラーだぞ。
飯だってあんまり共通の話題もないから、大抵は頬を赤らめながらこちらをチラチラ見る明石の視線に曝されているだけだし。……まさかこいつ、俺をオカズに白メシをかっこんでるんじゃないだろうな!?
……とにかく気まずい。非常に……。とはいえ素直に断れないのは、
──っと、もうこんな時間。
「ごちそうさま。じゃ、明石」
「は、はいっ。お昼は──」
「悪い。今日は駄目そう」
そうですか、と俺の言葉に小さく相槌を打つ。そのしゅんとする姿を見て、思わず罪悪感が湧いてしまった。ああくそっ、こうなった原因が俺のアホみたいな行動(雄っぱいを露出しようとする)だから穏便な解決策が見えない。
いや、今悩むのはよそう。臭いものに蓋じゃないが、目前にもっとでかいヤマが迫ってるんだ。
──もうすぐ舞鶴鎮守府から、提督と選りすぐりのエリート艦隊がやってくる。
長い一日になるのは目に見えていた。
†
秘書艦の吹雪と二人、鎮守府の正門の前に立つ。
「うわ……今日も死ぬほど暑そうだな、吹雪。……吹雪?」
うう、シャツが蒸れる。外は朝っぱらからムシムシしていて、
「ほ、本日は
彼女はぎゅっと握りしめたバインダーに齧りついてひらすら何かを復唱していた。どうやら寒いわけじゃなく、極度の緊張由来のものらしい。
舞鶴提督と会った時の連絡の練習か? 確かに秘書艦の大事な役目だけど……たったそれだけの言葉を紡ぐためにここまで焦る姿は随分と可笑しいな。
「はは、そんなに固くならなくても」
「なりますよ! 遥かに格上の鎮守府さんですよ!? お迎えするのは二度目ですけど、慣れるわけないです……!」
ぶつぶつと小言を連ねる吹雪。どうやら舞鶴鎮守府に相当の引け目を感じてるらしい。
まあ、うちみたいな小規模な鎮守府とは艦娘の練度やら提督の資質やらも訳が違うだろうし、そうもなるか。
「焦りもしますよ……」
彼女は未だに青ざめた顔でバインダーの用紙を見下ろしている。そういう俺自身も若干気持ちが昂ぶってるところはあるしな。気持ちは分かるよ。
そうだ、ちょっと茶化して緊張を解いてやろうか。
「焦る、か。 それって……俺のおっぱい見たときより?」
そう。それはこの貞操観念の逆転した世界に来た時、何も知らない俺は下着姿で吹雪に迫った事があったのだ。その後俺の乳首を見た彼女は失神した。
「へ?」
「俺のおっぱい見たときより焦ってるの? って」
ちらり。制服の胸元のボタンを開け、俺は少しだけ肌を白日の下に晒した。
「 ──ぶっ!! ちょ、それ、それっ違っ!」
俺からの発言に一瞬きょとんとした吹雪だったが、直後に俺の方へ向き直し、両手をわたわたと動かして何かを伝えようとし始める。
「お、おっぱ、それも焦りましたけど! えっと!」
「スケベだな〜」
「いや、スケっ! スケベじゃ── 」
真っ青だった顔がトマトみたいに赤くなってるし、おまけに視線だけは胸元から離さない。これは面白いわあ。更に追い打ちしてやろう。
俺は向こうの方へ指差しながら呟いた。
「あっ、舞鶴さん来たな」
「あ!? あわわっあっ!」
胸元と指差した方とを行き来させる吹雪の目。明らかに胸を視る時間の方が長いのはご愛嬌だ。
「どっ何処ですか!? 司令官襟正して、襟! 早く──」
個人的に満足したところで肩をトントンと叩いて、彼女に言う。
「……うっそー」
「ん!? あっ……〜〜〜〜〜っ!」
「あっはは、面白っ!」
ついけらけらと笑ってしまう俺。そのせいで、涙目で手を強く握りプルプルと震える吹雪が続けた言葉を半分くらい聞き逃してしまった。
「……役得、役得……あぁもうだめ、もう組み伏せて
「え? なんて言った? 分からせ?」
「いっ!? 何でもありません! ありませんから!」
よく聞き取れこそしなかったが、単語の陰に不穏なモノを確かに感じる……。分からせ、だっけ? 今夜にでも検索してみるか。
……とまあそんなしょうもないやり取りを続ける内に、正門前に公用車がやって来た。
黒塗りのセダンから降り立つのは、凛とした顔をこちらに向ける
「嶋田大佐。わさわざ舞鶴よりご足労を」
「やあ
手早く敬礼、答礼を済ませると、吹雪が今日の予定を読み上げる。……筈だったのだが。
「ほっ本日は、ひ──」
「
「え?」
まるで吹雪のことなど眼中に無いかのように彼女の言葉を遮り、俺にぐいっと顔を寄せた北上。
「木南中佐さーん?」
後ろ手を組み、上目遣いにこちらを見つめる。重力に従って襟元にできた空間に現れた鎖骨、その窪みについ目が奪われてしまった。
ふわりと鼻孔をくすぐるシャンプーの香りは妙にぬるい空気に乗って、なんというか……生々しさにくらりとする。
「あ、ああうん! そうするよ」
「ありがとー」
はっ、つい空返事で受け答えしてしまった。ちらりと隣を見やれば、役目を奪われたショックで放心した表情の吹雪が。
「こら、北上。あちらを困らせるな」
「失礼しましたー」
嶋田大佐の叱責も意に介さずといった北上は、ふにゃりと笑って大佐の後ろへ引き下がる。こちらは緩急つけた彼女の空気感にたじたじだ。
だが、確かに彼女の言った通り、ディーゼルエンジンの重い音を響かせて人員輸送用のトラックは到着した。
停車し開いた扉からは、複数の艦娘が顔を覗かせる。見た感じ、以前の記録とは顔ぶれが違うな。別の艦隊を連れてきたってことか。
「おとこっ! 男よ! 噂通り!」
「なに! 嘘をつくでな……ち"く"ま"ーーっ!!」
……なにやらすんごい騒いでるんですけど。まあいいや、とにかく彼女達と大佐を庁舎へお連れしないと。俺と吹雪は事前の打ち合わせ通り、手分けして案内を始める。
†
嶋田大佐を応接室へお通しした所で、やっと肩の力を抜いた。
「改めて。ようこそ
「
「よろしくお願いします。北上もよろしく」
「はい〜」
お互いにテーブルを挟んで向かい合ったソファーに腰掛けつつ、ようやくといった感じで砕けた言葉を交わす。
以前嶋田さん直々に、崩した口調で構わないと言われたんだけど、流石に外でそんな真似はできなかったからな。
「こちらを」
「ああ、悪いね」
コトリ、と俺と嶋田さんの手前に冷えた麦茶が置かれる。現れたのは我らが鳳翔。吹雪が舞鶴の艦娘たちを案内するからと、応接室での給仕役を鳳翔に頼んでおいたんだ。
今日も今日とてお淑やか、それとしゃがんだ際にニーハイ越しに見えた膝のラインがすごいえっち。
いやもうホントにね普通のそれと比べると実は短めな袴ね。だから膝から下は白日の下に晒される。そこに白ニーハイが合わさってさあ肌色よりも影が際立つんだ。んで鳳翔の脚。この肉の柔さと無駄のない細さ、真理が唯一矛盾を見逃している。真理に愛された脚なんだわ。まあそんな中でも膝は骨と皮膚が近い分硬さが出てしまう筈なんだけど白ニーハイが中和するんだなこれが。だから俺は膝のラインがすごいえっちだなって思ったわけよ。
……っといけね、つい雑念が。
「よ、鳳翔。 おひさ〜」
「むっ……」
嶋田さんの後ろに立つ北上が、鳳翔に気付くや声を掛けた。そうか、この間の会議で知り合ったのかな? 対する鳳翔は──あれ? 口ごもって頬を膨らませてる。かわいい。……じゃなくて。二人の間に何かあったのか?
しかし推測する暇もなく、嶋田さんが麦茶に口をつけながらこちらへ話を振った。
「今日は午後からの演習が大きな予定だけれどね。その打ち合わせの前にもう一つ、君に頼まなければならないことがあるんだ」
──え? 突然のカミングアウトに思わず目を見開く。彼女を見れば、いつの間にだろうか、至極真面目な表情でこちらを見つめていた。
「……失礼、文書ではそのような事は」
聞いてない。今日は演習(勝てる見込みは無いが)、その後にうちの艦隊を教導して頂いてお開きの筈だ。筈だった。
「いわゆる機密事項だよ。と言っても大した事じゃない。ちょっとした
機密? お守り?
「と、いいますと?」
ある種先の見えない恐怖の様なものに冷や汗を滲ませる。俺、なにやらされるの? まさかヤバめの弾薬……劣化某弾の使用と戦闘データ収集とか? 勘弁してくれ。
嫌な想像が脳内で渦巻く中、俺の表情が面白いのだろうか、若干頬を緩めつつ勿体ぶった態度を取る嶋田さんがようやく口を開く。
「なに、もうじき分か──」
とその時、応接室の扉が大きな音を立てて開けられた。
「たのもーーーーっ!!」
ばんっ、と現れたのは──これまた小さい女の子。駆逐艦より頭身が低く、幼女と言える体躯だが、身に着けているのはセーラー服だ。
「
「
いひっ、と八重歯を見せて、佐渡と名乗った彼女。
その後ろには、同じような背丈の娘がもう一人。威勢のいい佐渡とは対照的に、妙に大人っぽく右手を顎に添えながら身体をくねらせる仕草を見せる幼女は、対馬と呼ぶらしい。
佐渡、対馬──待て、この娘らもしかしなくても海防艦か? 初めて見た! こんなに小さいの!?
「待ってぇ! もう、廊下は走っちゃだめって言ったでしょっ!」
「遅いぜ
「鹿島さんも走ってるじゃない」
「あなた達を追いかけるためですっ! って──あっ」
理解が追いつかずに固まっていると、ぱたぱたと続く足音が。
二人より遅れて現れ、幼女達を見下ろし叱りつけたのは。ウェーブのかかったツインテール、優しげな目元、スラリとしつつも出る所は出ている身体の──鹿島。
かつて居た世界では、男達の子種を何度も無駄撃ちさせた女王その人が、扉の前でこちらへと敬礼を見せた。
「し、失礼しました! 香取型練習巡洋艦二番艦、鹿島です。 こちらの択捉型海防艦、佐渡、対馬と共に豊施鎮守府への着任となりましたっ」
「は? 着任……? うちに?」
「はいっ! ──えっ男性!? 」
「ほら、もうじき分かると言ったろう」
わたわたとする鹿島を尻目に、嶋田さんがこちらを見て笑った。
「"海防艦"の艦娘が新たに顕現してね。こんなちんまいのが数隻、戦列に加わった」
「え、最近ですか?」
海防艦。俺も名前だけは知っていたカテゴリーの艦娘だ。とっくの昔に運用されてると思ってたけど、この世界じゃようやく艦娘として現れたらしい。
やっぱり前の世界と若干の違いはあるみたいだな。……ああいや、貞操観念以外の話でもってことね。
嶋田さんはそんな俺の思考なんて知るはずもなく、言葉を続ける。
「どうもこれだけ幼い見た目だと世間体が宜しくない。なのでしばらくは公表せずに運用していく方針らしい」
「は、はぁ……」
……で、何故ここに?
「なぜここに? と言った顔だね」
「うっ」
なんだかこちらをじっと見つめる彼女の瞳に全て見透かされているような気さえする。
「なに、新人研修みたいなものさ。海防艦には各地の鎮守府を転々とさせている途中なんだ」
「で、今度は
な、なるほど。
扉の方をちらりと見やれば、俺達の会話が終わるのをうずうずしながら待っていたらしい海防艦達と目が合った。
「よろしくな!
「こーら、その言い方は失礼でしょ? 司令、存分に働くつもりですから、楽しみに……ね♡」
「しばらくの間、お世話になりますっ! ……お、男っ、男っ……」
し、尻尾が……、ぶんぶん振られる尻尾の幻が見えるぞ。よーしよし、待てが出来て偉かったなー。……なんて思考停止に陥りそうになるも、そこは上司の手前。あんぐり開いてしまいそうな顎にそっと右手を添え、思慮する素振りでなんとか支える。
そんなこんなで唐突な海防艦2隻とサキュバス(前世の認識だけど)の着任に言葉を失いつつ、応接間での歓談はお開きとなった。
†
凪いだ海に硝煙が幾筋も連なって上る。俺は吹雪と二人、埠頭で艦娘達を待っていた。容赦ない日差し、海面からの輝り返しに思わず目を細める。
暑さに反して、胸の底には冷たさが広がっていた。
『いやあ……流石は嶋田さんの艦隊です。完敗だ』
ひとまず海防艦達の事は後にして、定刻通りに演習は行われた。大方予想していた事だが、
『なに、私のじゃないさ。むしろ私が彼女達の指揮をさせて貰えることが光栄なくらいだよ』
『さて……私は今の模擬戦のフィードバックといこう。北上、旗艦を呼び戻せ。どうせ暇だろう』
こちらの旗艦が大破した際、居ても立っても居られず、つい口から漏れてしまった言葉。彼女の答え慣れている気さえする返事が脳裏にフラッシュバックして唇を噛む。
もちろん鎮守府としての規模も歴史も長い向こうに分があるのは当然だ。だが、やはり俺自身の──提督同士の能力の差も大きいだろう。
「くそ……」
身の回りが色々破茶滅茶だけど、それはそれとしてやるべき事はやらないとな……。
「テートク……! sorry、また舞鶴に負けたヨ……」
「金剛!」
演習の場となった近海域から艦隊が帰投した。肌は煤に汚れ、艤装もひどい有様で。伏し目で縮こまる彼女達を見ているのが辛い。
「お前達は良くやったよ。あの舞鶴相手だ。負けて当たり前とは言いたくないが、編成を捻らずに真正面からぶつける演習にした俺の責任が大きい。すまん」
「そんな、謝らないでくださイ……」
後学の為とはいえ、負けてこいと言える俺はなんて非道なんだろうな。こんな俺が彼女達にできる事といえば……。
できる事といえば……。
……うーん、ハグくらいかな?
「辛かったろ。入渠の前でも後でも大丈夫だから、俺を
俺の胸を皆に貸すぞ。俺の身体を通して出る
「「……え?」」
そんな俺の思いと裏腹に、ぴし、と空気の固まる音がした。あれ? 嫌だった? なんなら艦隊のみならず、隣の吹雪までこっち見て口をあんぐり開いてるし。
「抱くって……アメとムチのバランス滅茶苦茶ですよ!」
「嫌だった? ごめん」
「「い、嫌じゃ無いですけどっ!」」
「エロっ……司令官……」
皆顔を真っ赤にして俺に迫ってくる。そんな中、金剛だけはひとり両頬に手を当ててイヤイヤと体をくねらせていた。
「テ、テートクっ、そんな……ハグなんて……」
「ちょっ! 金剛さん、ピュア過ぎ……」
「え? 金剛は間違ってないぞ。 ハグだよ」
何言ってんだ?
「「は、ハグかぁ……」」
「皆、なんだと思ったんだよ?」
「やだぁ、ハグなんて恥ずかしいネ……っ」
露骨に肩を落としてどうしたんだよ。
「いや、司令官とハグなんて最高ですけど……でも……抱きたい……」
どうやら別の事と勘違いしてなかったのは金剛だけだったみたいだ。っていうか、金剛も金剛でハグで恥ずかしがるようなキャラじゃなかった気がするけどな……?
†
うわ、死にてえ。
"抱いてくれ"って……。アホばっかりのこんな世界じゃ
艦娘達の性事情に悪影響を及ぼしてしまったかもしれない……。結局誰一人としてハグせずに入渠へ向かってしまったし。
「ただの○ッチじゃん俺……」
父性からの発言だったんだけどな……。ひとり手洗い場の鏡の前で頭を抱える。
もうすぐ夕方といった時間帯。演習・休憩を終えた両艦隊は再び近海へ出て、舞鶴からの教導を受けていた。あと一時間半もすればそれも終わり、相手方は帰りの準備に入るだろう。
残りの俺のタスクとしては、嶋田さんからの戦術指南を頂いて、お見送り。それだけ! 今日の仕事はおしまい! 風呂入って寝る!
……なーんて事にはなる筈もなく。予定のために隅に押しやっていた書類の消化もさることながら、今日中に海防艦と鹿島に対してコミュニケーションを図る必要もあるんだこれが。
「……っしゃ」
パンと両頬を張る。気合充分、日付が変わる前には全部終わらせて寝てやるからな! 待ってろ布団!
心の中の本部以蔵「日に数度、心が小説から離れます」
どころじゃないですね。物凄い亀ペースとなってしまいますが更新は続けますので、なにとぞ……。