提督「体、診てくんね?」
ていとく(明石視点)『なんだか俺の身体、おかしいんだ…。ねえ、触って?』
明石「じゅ、順序ってモノがあるでしょおおお!///」
提督「えぇ……」
保健室から執務室へ戻った俺は、机に突っ伏して頭を抱えていた。
現在時刻は
吹雪は失神するわ、明石は逃げるわ……俺、そんなに嫌われてたっけ? ストレスで禿げそうだ。
「うーん…」
とはいえ、ここで唸ってたってどうしようもないよな。俺のポリシーはポジティブシンキング(ということにしよう)、悩むより解決策を模索するんだ!
そう胸に決め、がばっと起き上がる俺。すると、以前買ったものの持て余していたラジオが目に留まった。そうか、これだ。
「日常会話のネタを増やして艦娘とコミュニケーションだ!」
そう言い終わるや否や、ラジオに手を伸ばして電源ボタンを押した。会話が弾めば好感度も上がるだろ! いや、上がってくれ! 頼む!
微かな希望を胸にしつつ、周波数のメモリを注視する。
これ、たまに使っても洋楽垂れ流しチャンネルを開いてばっかだったしなあ。真面目そうな番組を探そう。
『ガガ…打った! しかし打球は僅かにラインの…
…アッハハ! お前は妄想逞しい女子中学生か…
…男に嫌われないために。女のエチケッ…』
「ふあぁーあ、…まだ寝足りねえのかな」
ぼーっと聞き流しながらつまみを回す。昼下がりじゃ、まともなのやってないかも。
『ザーッ …そうですねえ。現在の日本が抱える問題として…』
「おっ」
あったあった。このチャンネルね。さーじゃあ仕事、再開すっかあ!……とその時。
……コンコン。
『ひれいかーん!』
ん?……この声、あいつだ。なんだか少し鼻声のようだけど。
「入っていいぞ」
「ひつれいします!」
入室を許可すると、薄紫の髪を後ろにまとめた少女──青葉がドアから顔を出した。…その鼻には、捻ったティッシュが詰められている。
「おい、どうしたんだそれ」
「ふぁい!?」
俺が指摘すると、彼女はハッとした顔をしてティッシュを素早く抜き取った。
「…さ、さっき壁に顔ぶつけちゃって…アハ、アハハ」
「どんな勢いでだよ」
青葉は照れ隠しのように一通り笑う。俺は呆れ顔をしながら手元の書類へ目を落とした。
「ティッシュなら酒保で売ってるぞ、悪いけどここには無いから……ん?」
ぬっ。そんな擬音が似合うくらい、突然俺の机に影が落とされる。顔を上げると……至近の距離から、青葉が俺を見下ろしていた。
「そんな用事じゃないんです……。…提督ぅ」
「えっ?──なっ」
急に猫撫で声となった青葉。彼女はその手を伸ばし、俺の頬に優しく触れる。
すらりとした綺麗な指先に目を奪われていると、気付けば彼女の顔がさっきよりも更に近くへと寄っていた。
突然の事に反応が遅れて思わず目を丸くする。勝手に顔が熱くなるのを感じ、羞恥で心臓が鼓動をいっそう強くした。
「おまっ、何のつもり──」
「言わなきゃダメですかぁ……?」
「……」
吐息が鼻先にかかるほどの距離。俺と青葉はたったそれだけの距離で、しばらく無言のまま見つめ合った。
──青葉の顔、綺麗だ。頬を朱に染め上げ、目は潤んでトロンとしている。彼女の綺麗な双眸に引き込まれ、俺は視線を外せずにいた。
そんな空間を最初に破ったのは、青葉の方からだった。適度な湿りを保った唇が開かれ、俺に向けて言葉を発する。
「司令官…私の
「……っ」
「だから…司令官も私に、
………………。
……オイオイオイオイ。死ぬわオレ。なんだこれ普段読んでるエロ漫画か? 素人童貞の俺にはどうすればいいのか分からねえ。とりあえずキスすればいいのか?
でも待て、これ俺、犯罪者にならないか? もしバレたら、たとえ双方同意の上でも俺が一方的に憲兵にぶっ殺されるんじゃないのか……!?
でも、据え膳食わぬは…って言うよな!? よーし、するぞキス。キスするからな。……ってやっぱり無理! 捕まりたくないもん!
「司令官……」
「おっふ」
俺が心の中で遅疑逡巡を繰り広げている内に、青葉の顔がゆっくりと迫ってくる。
どどどうしよう。あっ、唇が触れ──
ガタンッ!!
「えっ」
「へっ!?」
突然、執務室に響いた音。ビックリしてお互いふっと我に返る。
音の鳴った方を見れば、床にラジオが転がっていた。青葉が机に上半身を乗り出した弾みで落ちたんだろう。しかも、その衝撃で音量のつまみがグイッと回っていた。ほぼ最大の音量で、ラジオから音声が流れる。
『──近年増加している、女性による紳士暴行事件ですが──』
『──女は狼。気を付けなければなりませんよね──』
「……」
「……」
……は?
なんだそれ? 俺は自分の耳を疑いながら前へ目を向けると……顔は青ざめ、滝のように冷や汗をかく青葉の姿があった。
「……青葉?」
俺の疑問の眼差しをどう誤解したのか、彼女は「ひっ」と小さく溢すと、半開きの口から絞り出すように声を発した。
「す……」
「す?」
刹那。恐ろしいまでの脚力で後ろへ飛び退いた青葉は、空中で変形するかのように土下座を形作り、フローリングの床へ着地した。そして、絶叫。
「すみっませんでしたあああああ!!!!」
さっきまでの猫を撫でるようなそれはどこへいったという張り上げられた声。果てしないクオリティのジャンピング土下座。そしてそれを視覚と聴覚で一身に受ける俺。なんだこの光景。
えっ??? なに? なんで?
「どうか、どうか憲兵にだけはぁぁぁ!!」
「まって、青葉、なあ」
「ああああ!!」
「おい!」
俺は100点満点の土下座を披露する青葉の元に駆け寄り、無理やり起き上がらせる。
青葉の顔は鼻水ダルダルに真っ赤なおでこと、なんとも情けない状態になっていた。先程とは180度意味合いが違う
「質問なんだけど、いいか?」
「はひ?」
「紳士暴行って……なに?」
†
……なんだよ、それ。
「青葉、冗談じゃない、んだよな……」
「社会の摂理じゃないですか!嘘なんてつきませんよ!」
青葉曰く、世の中の女性は
俺の知ってる社会の通念と
彼女を信用しきれずテレビもラジオもつけて確認したけど間違いない。これは……事実。
「でもさ、青葉はさっき、俺に初めてをあげるーっていったよな?」
「えと、それは……」
これってつまり、『俺の童貞やるからお前の処女よこせよ! 』って女に迫ったのとイコールってことなんだよな……? ヒエッ。
「……キモッ」
「う゛っ……。そ、それは司令官にも原因があるんです!」
俺の何気ない一言がグサリと突き刺さったみたい、青葉は膝から崩れ落ちる。言われてみれば、なんだか俺と同じ童貞臭が青葉からするような気がしなくもない。
「原因って?」
「私、見たんですから! 明石さんを身体で誘惑する司令官を!!」
「……え」
え、もしかして俺が診てもらおうとした時?
あの時の明石がキョドってたのって、勘違いをしてたのか? エッチな方向に?
ってことは吹雪も俺の胸を見て……?
……そういうことだったのか。頭の中ですべてのピースが噛み合ったような感覚。でも……。
どうしても言いたい。俺は深呼吸すると、声を張って青葉に突っ込んだ。
「おまえら中学生か!!」
提督です。
最近は暑いですねえ。冷房が無ければ、詰襟なんて着ていられません。
でも、シャツ1枚だと女性達の目に悪いそうです。世知辛いですね。
あえてシャツ1枚でほっつき歩いて、周りを惑わしてみましょうかね。ナイスな考えでしょ。
さて次回の〝貞操観念あべこべな生活〟は?
「鳳翔、オナバレする」
「明石、勘違い」
「提督、襲来」
の三本です。
嘘です。