ラジオ『女性による紳士暴行が増加しており……』
提督「は? なんだそれ?」
青葉「なんだ、って…」
かくかくしかじか
提督「……要するに、貞操観念が逆転してんのか! ここは!」
Beep Beep Beep…!
時刻は
「…んぁ」
まぶたの重さに目を開けられぬまま、俺はやかましく鳴る目覚まし時計を止めるために、腕を音の方向へと伸ばす。カチリ、という音とともに目覚まし時計は黙り込み、提督私室は静寂に包まれた。
「んんん~~~っ」
大きく伸びをして、俺は起き上がる。
「さーて、メシメシ」
例えヘンな世界へ飛ばされたって、提督として職務を全うしなければならないのは変わらない。これでも1つの鎮守府の主なんだという自負が、俺の頭を冴えさせる。
…ってのは嘘。内心不安で一杯なんだけど、トップがガクブルしてるのを部下に見せるわけにはいかないし。
まあ好きだったアニメが地獄みたいな内容になってたけど、それはそれだ。ひとまずはいつも通り朝飯を摂って、執務を再開しよう。
†
……やっぱり詰襟暑いよ!!
俺は上下を寝間着からしっかりと制服に着替え(ただしYシャツは着ていない)、食堂に向けて歩いていた。艦娘達の反応を見るに、もうシャツ1枚で出歩けないのか…これは結構なストレスになるなあ。
せめて襟のホックだけでも外しておこう。そう思い立って首元へ手を掛けていると、廊下の隅で何やら立ち話をする艦娘達が目に留まった。あれは……秋雲と浦風、それに深雪だ。
「提督の夏服、ズボンの生地ホンット薄い。パンツを透かさない為に色々気を付けてる提督とか、妄想捗るぅ!」
「かーっ、最高じゃねぇ! そういえば二人とも、提督さんの新しいブロマイド買うた? ぶちシコれるわ」
「ちっちっ、お二人さん遅れてるぅ。写真や妄想より、昨日の司令官の方が過激だったって話、知ってるかい?」
「ほぉ……?」
三人とはまだ距離があるから会話の内容は聞こえないけど、きっと可愛らしい話題なんだろう。駆逐艦の年相応な、これまた可愛らしい笑顔にほっこりする。
なんだかとても仲良さそうだ。あの組み合わせは結構意外だな。近づいたらちょっと声掛けてみるか。
「……そうしたら、吹雪に近付いて来た司令官が!」
「ふんふん!」
「下着姿のまま、あいつの肩を掴んで!」
「ふんふんふん!!」
「下着をずらして──」
「おはよ。俺がどうかした?」
「──へっ? ほげええええええ!!」
「おわっ! 何だよ!?」
ポン、と俺の胸元くらいの身長しかない深雪の頭に軽く左手を置きながら、心穏やかに三人に話しかけた──んだが、何だかすごいビビられた。ショック。
「しし司令官っ! い、いつから聞いてた!?」
「え、お前たちの話を? いや、俺の名前が出てたくらいしか聞こえなかったぞ」
「そ、そうなんか」
「ほっ…」
なんだよ気になるじゃないか。…まあ、乙女の会話を詮索するのもあれだし、問いただしたりはしないでおこう。
「そういえば深雪、お前今日遠征だろ。早く朝飯食べて準備しとけよ?」
「お、おう…」
「じゃあなー」
手をヒラヒラと振りながら、三人の元を後にする。何だか3人とも俺の方を向いた途端に顔を赤くしてたけど、どうしたんだろう。
†
提督が3人の元を離れ、食堂へ向かっていった後。
「なあ、今…司令官の…」
「うん、襟のホック外れてた。見えてた」
「……うち、ちょっとトイレ行って来るけえ/// このまんまじゃご飯に集中できへんわ」
廊下には、提督の胸元を見て頬を朱に染め上げ、悶々とした駆逐艦達が取り残されていた。
†
廊下の突き当たりにある、両開きで固定された大きなドア。その奥からは、食欲をそそるいい匂いや食器の擦れる音、艦娘達の活気ある声が廊下まで届いていた。
ここは食堂。朝昼晩と鎮守府の腹を支える重要な場所である。
…とまあそんな説明は置いといて、俺は食堂に足を踏み入れた。混み具合は…普通かな。朝食は6時から8時までの間の自由なタイミングでご飯を食べてもらうってルールにしてるから、結構人足がバラつくんだ。
「あ、提督ーっ、…っ!/// 」
「おーす」
俺を見た艦娘がニコニコと手を振ってくれる。当然俺も笑顔で返す。うんうん、我が鎮守府の上司と部下の仲は良好だ。
朝食を受けとるカウンターの横に設置してある、今日のメニューのイチオシとささやかな挿し絵の書かれたブラックボード。これの前に立ち止まった俺は、何を食べるかに頭を悩ませる。
今日の日替わりセットは…パンにオムレツか。うーん、常設の焼き鮭定食も魅力的だし、白米かパンかで迷うなあ……。
…と突然、悩んでいる俺の元に駆け寄る艦娘が一人。
「提督っ」
「お、明石じゃないか」
「はい、おはようございます!」
昨日男子中学生ばりの勘違いをして俺の前から姿を消した明石じゃないか、という言葉は心の中で押し殺す。すると、明石は済まなさそうな顔をして、上目遣いに俺を見つめた。
「提督、昨日はすみません」
「え、どうしたんだ急に」
心の中を読まれたかのような明石の台詞にギクッとなった。どうやら勘違いをした事くらいは流石に分かってんだな。
…と思ったんだけど、次に明石の続けた言葉に俺は唖然とする事になる。
「提督の気持ちを踏みにじるような真似をしてしまいました」
「は?」
「提督。私、必ず貴方に見合うような女になりますから。それまで待っていてください!」
…おい、これって…もっと勘違いしてないか!?
「ええと……」
「それはそれとして提督! 一緒にご飯食べましょう?」
「あ、ああ…うん…分かった……」
段階、段階…と呟く明石に手を引かれ、俺は弁明の余地なく朝飯を食べる事になった。
明石なあ…どうすんだこれ。あいつを傷付けたくは無いし、上手いこと解決策を探らないと。
†
やけに馴れ馴れしくなった明石と朝飯を食べて私室に戻った所で、昨日の俺は (
「……あっ!」
やばい、今身に付けてる下着を
「おーい、鳳翔ーーー!」
この鎮守府は、各艦娘の洗濯物や鎮守府の掃除を鳳翔が進んでこなしてくれている。彼女が洗濯を始めるのは朝の決まった時間であり、それまでに間に合わなかったものは次回の洗濯に回されてしまう。
服や下着を最低限の量しか持っていない俺にとって、洗濯を一日逃すというのは大惨事(穿くパンツが無くなるんだし、大
「お呼びですか、提督?」
「お、おはよう鳳翔! もう洗濯はじめちゃった!?」
「いいえ、まだですが」
ゆったりとした仕草で洗濯所のドアから出てきた鳳翔は、穏やかな笑みを湛えつつ俺に受け答える。よかった、まだ始まっていなかった。けど鳳翔の仕事の邪魔をしないためにも、早く脱いで渡さなきゃな。
「わるい、俺の下着も洗ってくれ。今すぐ脱ぐから!」
「ええ、いいですよ──って、ちょっと!」
「え、なに?」
ん?あの鳳翔が急に取り乱したような声色で話しかけてきた。珍しいな。
「ここで脱ぐんですか……!?」
「あー、はしたないよな…ごめん!むこう向いてて!」
「は、はいっ!/// 」
くるっと180度身体を回した鳳翔は、なんだか余裕がないといった感じでそわそわしている。俺が洗濯を始めるギリギリで来たから怒ってるのかな。
上は詰襟を脱ぎ、下はベルトを外してストンとズボンを落とす。ちゃっちゃとシャツ、パンツを脱ぎ、改めて制服の上下を着付けた。いわゆるノーパン状態だけど、すぐに風呂入るんだし良いだろう。
「終わったよ。はい、これ」
「あう、はい……」
「悪かったな。よろしく頼むよ」
今までつけていた下着を手に持ち、鳳翔に渡す。さぁーて、もう心配事はない。ゆったり風呂に浸かろうか。俺は洗濯所を後にした。
†
しゅるしゅる。ぱさっ。
今、
ばくばくと鳴る心臓と勝手に熱くなる両頬を感じ取りながら、提督が呼び掛けてくれるのを待っていました。
「終わったよ。はい、これ」
そして振り向けば、提督の手には上下の下着が。私は口から心臓が飛び出そうになるのを必死で抑えて、それを受け取りました。あ、温かい…。
これは、
「悪かったな。よろしく頼むよ」
じゃな、と
静かになった部屋の中を、まるで私の心臓の激しく打ち付ける音だけが支配してしまったかのように思えて。いつの間にか私の頭は
「提督……」
下着を手渡しされるというのは、それほど私が信頼されているという証なのでしょうけど。
──
「……てい、とく」
ごめんなさい──。私は
†
気付けば私は、両の手で彼のパンツを鼻先まで持ち上げて居ました。そしてそのまま、呼吸。
…クン、クン…
「……はぁっ」
提督の
……くん、くん。
落ち着きを完全に失った私は、呼吸が浅く乱れていることにも気付けず、意識が弛緩していくままに身を任せていました。
くんくん。
じわじわと全身に熱が生まれて、身体中の汗腺と
それだけでは飽き足らず、私はパンツを裏返し、股間と臀部とを繋ぐ布の部分に鼻を寄せると──また一呼吸。
くんくん…くん。
「…っ、っ!」
先程より一回りも二回りも濃い匂いに、心臓の昂りは最高潮に……。
頭、おかしくなりそう…。もう我慢できない。
私の右手は提督のパンツから離れ…胸、へそ、鼠径部と身体を下って、袴の上から股へと寄り添い。
そして──
…しゅり、しゅりっ…
「んぅっ」
しゅっしゅっ…しゅっ…
──刺激、それに伴う快い感覚。
ごめんなさい、ごめんなさい提督。私は……。
しゅっしゅっしゅっしゅっ。
「はっ、はっ……」
紅潮した顔でパンツに鼻をうずめ、ひたすらに快楽を貪る。
性に目覚めたばかりの
…しゅっ…ちゅっくちゅっ…。
いつの間にか、袴の上からでも粘り気を帯びた水音が聴こえるほどに、その激しさと気持ち良さは増していました。
「提督…提督…んっ」
羞恥や罪悪感を押し退けて、頭の中は興奮でチカチカとしています。
口から垂れた涎も、ぽたりと足の間から垂れてくる
──ぞくぞくっ。
「っ…! もう……?」
やがて快感の波が
──いやっ、まだ…
──嗅いでいたい。続けていたい。気持ちいい。いきたくない。やだっ。気持ちいい。気持ちいい。気持ちいい…。
「はぁ、はぁっ!…はぁっ!」
くちゅくちゅっくちゅっくちゅっ。
しかし勝手に荒くなる吐息と強まる右手の圧に、私の願いは簡単に却下されてしまいます。
鼠径部が痺れ……
「…っ、いく……!」
ああ…もう、駄目ぇ…っ!
──いくっ!
…あ──。
「──ふぅぅぅっっ! んんっ、んっ…!」
限界を越え。
視界は白み。
──秘所の、幾度の収縮。腰が勝手に跳ね、膝ががくがくと震えました。
「はぁ、はぁっ……!」
抑えても抑えても、殺しきれない声。それと共に私が
†
大浴場、更衣室。この時間帯は艦娘は利用しないため、
さぁ、服を脱いで風呂へ──という所で、重大な事に気がついた。
やべ!
先程まで靴を履いていた事もあり、もう一つの下着の存在を完全に失念していた。
これも洗濯を逃すと大変だ…すぐ鳳翔の所に戻らないと。俺は靴下を手に持ち、裸足で革靴を履くと廊下に出た。
とその時。
『──ふぅぅぅっっ!』
隣から声が。あれ?この声、鳳翔か? まあいいや、靴下靴下!
「悪い、鳳翔! 靴下も──ん?」
「はっ…、…っっ!?」
ばっと洗濯所に顔を出した俺の目には、顔を上気させた鳳翔と──裏返しになった俺のパンツが映った。
そして、俺に気づいた鳳翔はみるみる目を丸くして黙り込む。
「……」
「……!!」
えっと、どういう状況?
真っ赤な鳳翔に、裏返しのパンツ。……あ、分かったかもしれない。これはつまり……。
「なあ、鳳翔」
「は、はい」
「……ごめん! パンツを洗濯するときは、裏返しにしないといけないんだったよな!」
俺は両の手のひらを合わせ、精一杯申し訳なさを表現しつつ彼女に謝った。
「っ! え、ええ。次からは気を付けてくださいね。あと、靴下もまだ間に合いますよ」
「助かった! ありがとう」
今度こそ洗濯するものは全て出したはず。そう確信した俺は、再び浴場へと戻っていった。
†
解体。その二文字が、提督に自慰を見られた
「……」
「……!!」
こんな姿を見せられて、提督は怒っているかもしれません。もしかしたらこんな私に落胆しているのかも。
どうしましょう、こうなったら舌を噛みきるか…と迷っているところに、突然提督からの謝罪が。
「ごめん! パンツを洗濯するときは、裏返しにしないといけないんだったよな!」
──え?
勘違いしているのでしょうか…? 手を合わせて腰を曲げる提督を見ながら、私は戸惑いました。
「ええ。次からは気を付けてくださいね。あと、靴下もまだ間に合いますよ」
戸惑いながらも半分冷静に、口から出任せが飛び出しました。
「助かった! ありがとう」
そう言い残してまた去っていった提督の背を見ながら、私はハッと気付きました。きっと、提督は私の痴態に気付きつつも、私のために空気を読んでくれたのですね。
はあ……なんていい男。女を立ててくれる気遣いも、寛容さも持ち合わせている。
私の…私の男にしたい。小さく火の点けられた欲望は、心の中でみるみる内に大きくなっていったまま、頭の中を支配していきました。
異世界に迷い込んだ者達が行く所はどこだ。その予測も立たないままに提督は、艦娘の様子に戸惑う。
まだ幼い駆逐艦に宿った性の力。呼び起こすのは誰だ。
次回、貞操観念あべこべな生活。
「大海(うみ)を駆ける」
君は、刻の涙を見る…。
大嘘です。