「また発狂してしまいましたか…」
発狂し、大きめの眷属に抱きつきながらヘラヘラと笑い出した
「また信仰系回復魔法を使えるものを呼んでこなくては…。あまり頼りたくはないのですけどね」
ナザリックにおいて信仰系回復魔法の使い手は貴重だ。あまり重要ではないと言われている実験のためにあまり何度も忙しい彼等の手を借りるのは、彼らの仕事の邪魔をしているようで気が引ける。
「しかし、いくらなんでも脆弱が過ぎるのでは? これでは守護者統括殿の望む結果を得られるのはいつになってしまうことか」
恐怖公は現在アルベドに協力し、一般的な精神力しか持たない人間に発狂させないギリギリの調教を長期間にわたって実施する限度を見極める実験をしているのだが、芳しい成果を得られないでいた。
「もう4回目というのに、まだ1日と持たないとは、なにが悪いんでしょうかね?」
涎を垂れ流しながら巨大なゴキブリに抱きついてカクカクと腰を振るというおぞましい行為を続けるフィリップの様子を見て首のような場所ををかしげる恐怖公。
フィリップは夢の中でどんな妄想を見ているのか、なんとも幸せそうにだらしなく顔を緩めている。
「前回調教した八本指の皆さんはこの程度では発狂などしなかったというのに。この者が特別貧弱なのか、彼等が特別強靭だったのか…? 一般人のサンプルとしていただいたのですから後者だと思いますが…。いくらなんでもこれでは…」
ウンウンと唸りながらも眷属に命じて信仰系回復魔法の使い手を呼びに行かせる。
「悩んでも仕方ありません。早く発狂を治療して、もっとギリギリの調教を見極めなければ…」
ひとまずの目標は一週間。最終的には一年間は安定的に耐えられるようにすることが求められている条件だ。こんなペースでは達成するのに十年以上かかってしまうだろう。
アルベドからは「期限は設定しないので、この人間の寿命が尽きるまで気長に実験をしてくれればいい」との言伝を受けているが、それで手を抜いて成果がいつまでも出せないのでは偉大なる至高の41人の手によって生み出された誇り高き領域守護者の沽券に関わるというもの。
決意を新たに次の調教プランを練り始める恐怖公。その目は使命感に燃え上がり、崇高なる決意と忠誠心にみなぎっている。
発狂しても治療され、また発狂するまで調教され続ける永遠に終わらない無限の悪夢。
フィリップの絶望の時間はまだまだ終わらない。
ということで安定の夢オチでした。