佳代はいい女だ。
世間じゃガリガリの痩せた女が有り難がられているようだが、佳代の手は肉付きよくて握れば程よい弾力があった。
佳代は全身がゴムボールのようだった。
「ねえ、しようよ」
夜になると毎晩俺を求めた。
「ああ」
スマホを片手にわざと気のない返事をしたが、心の中じゃ「そらきた」とにんまりほくそ笑んでいた。
「たつやぁ」
鼻にかかった甘ったれた声。
背後から首元へ抱きつかれて首筋に吐息がかかる。佳代の豊満な乳房が体温と柔らかくまじわり背中で溶けた。
佳代はマゾだ。
拘束を好み、家にあるあらゆるもので縛れとねだった。
「縛られると、もっと、たつやのモノってかんじがするの」と、目を恍惚でとろんとさせて、唇をなめながら言った。
のしかかると佳代の弾力で自分の体が弾むようだ。
ベッドは近所の家具屋で買った安っぽいアルミ製で、四方のポールに手錠をかけてあった。
まずは抵抗を防ぐために両手両足をベッドに拘束する。
すでに息のあらい佳代が「きすして」とねだる。
最初はいうことをきいてやるか。
吸いつくように佳代の唇を舐る。
やはりゴムのようにブヨブヨと柔らかく、俺の口を押し返すような反発にあった。
佳代とはいわゆる出会い系で知り合った。
会員登録して間もなく見つけた佳代のプロフィールは、年齢22歳、かわいい系、ぽっちゃり、フリーター。
目障りな顔文字を多用し、内容のない自己紹介をダラダラと長文で打ち込まれていたから、知能はさほど高くなさそうだと思った。
母親がうるさい、父親は家に帰ってこない、家をでたい、前に勤めていたバイト先の店長の悪口、そこを2週間でバックレた。かわいい服を買ったから来月の携帯代金が足りないなどと、くだらない愚痴まで書いてあった。
適当に読んだそのあたりの一部分で、佳代に決めた。
両親は放任主義で家族関係が希薄なためうるさくなく、未成年の可能性もあると思った。長く付き合った友人もいないだろうし、まともに学校も出てなさそうだ。
登録の名前が「ぁぃ姫」だったのもいい。自己愛強くてご都合主義そうな金欠女は金で八割方意のままにできる。
俺は抱ければ年齢、容姿は問わなかった。
ただ一つ相手に選ぶ条件は、孤独で男に依存しやすい女。
世の中じゃ倦厭されるタイプなんだろうが、全身で寄りかかられても俺はそれが苦ではなかった。
なぜなら俺は天涯孤独の身だからだ。
北関東、土地だけはある平屋建ての、築50年の日本家屋。もともと農家で生計を立てていた両親は、8年前に事故で二人そろって他界した。
佳代の見た目の第一印象は「思ったよりもマシ」だった。
自分語りに余念がなく、丸くてクリッとした目元とネイルサロンでデコった爪と、買ったばかりの服を俺にアピールした。
「かわいいね。よく似合っているよ」
この言葉一つでさらに十倍のアピールが返ってきた。
化粧ポーチは雑誌の付録だったんだけどかわいいとか、マニキュアはどこそこで何百円のピンクじゃないとダメとか、佳代の今日の持ち物で俺に紹介されていないものなどないのではないかというほど満遍なく喋った。
俺はすべてのものの良いところを見つけて全部褒めた。
いいね、すごいね、かわいいね、俺の好みだよ。
適当な喫茶店に入り、これをランダムに繰り返す間、佳代はジュースを三杯飲んだ。
「ぁぃ姫」はやがて「佳代」と名乗った。
自分で作った設定が面倒になったらしい。締まりのない体の持ち主に相応しい性格だ。悪くない。
佳代の唇から離れると、はぁっと息をついた。
嗜虐心を煽るすがるような瞳がこちらを向いている。唇は、ついた唾液を拭えずにてらてらと光沢を帯びて、隙間から赤い舌がちろちろ動いていた。
「たつやのそういう目がすき」
「そういう目?」
「これからヤルぞっていうカンジ」
「そうか?」
佳代がふふっと笑った。
これから脳内のスイッチが切り替わるってときに、雰囲気がぶち壊しだ。愛嬌のある顔にイラついた。
だまっていろよ。この肉は。
ピシッ! と頬を軽く平手打ちした。乾燥した音が室内に響いた。
ベッドしか置かれていない部屋は、大した広さもないのによく音を反響させる。音のわりに痛みは少ないはずだが、これで佳代にもスイッチが入った。
顔を赤くさせてもぞもぞと太ももを動かし、乳房も連動してうねうね動いた。
「もうだまれよ」
「ごめんなさい」
ぞくぞくぞくと這い上がる興奮。俺は股間へ血液が流れていくのを感じていた。
佳代のシャツを捲り上げる。胸で一旦はつかえてしまうが、そこを強引に引き上げるとぶるるんと反動で胸が揺れた。
若い肉は仰向けに横たわっても、ブラジャーでつんと上向いてわきに流れることはない。
下着越し、わしづかみに揉みしだく。
「あぁあん……」
佳代がこちらへ視線をやると脂肪で顎が二重になった。
醜いと思うが、醜態をさらしてもなお抗えない快感なのか。
欲望に染まっていく様子に俺はますます興奮する。
ブラジャーの布地をめくると、しずくの形のような柔らかみの先端。乳首がツンと天井を仰いでいた。
佳代の容姿にそぐわぬピンク色のかわいい乳首。
「かわいいな」
思わず心の声が漏れた。
指の腹ですりすりと小動物を扱うようにそっと撫でた。
「あ、あ、あ……」
佳代が感じて揺れると、ぽよんぽよんとちいさくバウンドした。
ここだけ意志を持った別の生き物みたいだ。俺に触れられて喜んで、ますます得意げに先端が張る。
艶やかに透けるような色素が、ぷるぷると細かく震えて鳥肌になる。
「あぁん」
鼻にかかって吐息交じりの声がする。そうか。そんなにきもちいいのか。かわいい乳首。
両手で左の乳輪の周囲の肉を揉む。生クリームを絞るみたいに力をわずかに込めると、先端がより押し出されてぷくっと膨れる。そこを口に含んだ。
「あっ」
口先をすぼめてちゅるちゅると吸った。下品な音が漏れたって気にしない。
「あっ! あんっ!」
幼女のように甲高く、幼い声がする。乳首の声は最高だな。
ちゅるんと口を離すと、俺の唾液で光って、なんとも言えない美しさになった。
この絞られた状態の乳首を触りたい。
床に落ちていた長めのロープで乳房の上下を縛った。縄を肉に食い込ませ絞り出す。
「あぁああ……」
ロープの硬さが皮膚に痛いのか、悶えるようなか細い声が聞こえる。
周囲の肉をひとまわり、胸のほうへぐいと寄せた。ずっしりとした実りに悦に入る。
重みのある柔らかいものの揺らぎ。薄紅の先端と色白のしっとりした肌。やや汗ばみ始めて触れれば掌に吸い付くようだ。
唾液で湿る乳頭を人差し指で撫でた。
「あぁっ」
つるっと滑った。押されてへこんだ頭がまたすぐにピンとなる。
今度はそこを素早く指先で往復させた。
はあはあと息遣いが荒い。興奮しているな。この乳首。
摩擦に悦んでコリコリと固くなる。
硬さを舌で確認するか。先端だけを舌で包んだ。
「あっ……」
舌先で転がして、吸って、撫でた。
俺の唾液がたくさん蜜のように垂れて、縄のところで溜まる。
甘くておいしい。触感も最高だ。
表面は柔らかく、くちびるではさむと熱い芯がこりこりと。
乳輪の周囲の肉も、体温が上がったのかややピンク色に火照っている。
ふと、隣の乳首と比較する。
俺が潤した乳首と違って寂しそうに佇んでいる。興奮に張って震えてはいるが、先端の乾燥がなんとももの悲しい。はやく触ってと言いたげだ。
「右も、なめてほしいか?」
乳首に問うと、
「なめて、ください」
と小さく返す。
「もっとかわいく、上手にねだってみろよ」
「右のちくびぃも……なめてくらひゃいぃ」
舌足らずの幼児喋りも、乳首ならば仕方がない。
縄を締めなおした。両手でそっと引っ張り出すように肉をかき出す。もぎ取れないように、しかし弱い力では手からこぼれてしまいそうな柔らかさ。てのひら全体に力を均一に込める。慎重に位置を整えて丁寧に。
努力の甲斐あってか、まるで玉座に鎮座する王のように乳首が誇らしげに立った。だけど切望するのは淫らな仕打ちか。すけべだな。
快楽を求めるくせにそれを誇りで隠す乳首。
生意気に思えた俺は指で強めにつまんだ。
「あうぅっ!」
徐々に力を強めた。上下関係を知らしめてやる。
「あんんっ! いたいっ」
急激に力を最大にまで込めて、すぐに離した。
「ああっ……」
間髪入れずに優しく口に含んだ。
「あぁああ……」
とろけるような声と、やや硬度のあるまるみ。
突然の痛みによる緊張から、即座に弛緩して快楽を貪るだらしのない乳首。
くちびるで輪を作り、周囲をマッサージするように押し込んで揉んだ。
「あん……あん……きもちいいよぉ……」
怠惰だ。
徐々に輪を狭めて先端を柔く挟む。
「あっ……もっと……ちゅうちゅうしてぇ」
要求の激しい乳首だな。左とは大違いだ。
左をちらりと見やる。
いつの間にか乾いた自身に、心中おだやかでないだろうに毅然とした様子でこちらをうかがっている。
嫉妬……してはくれないのだろうか。
両方に求められていると感じた。
俺は起き上がり見下ろした。
「あ……はやく……もっと……」