あの後、シャワーを浴びてお互いの抱き心地を確かめ合うように抱きあいながら眠りについて朝を迎えた。
今回分の料金をもらっておいとましようとしたんだけど、前回同様に抱きつかれて四苦八苦した。んー、柚華ちゃんの家庭状況からして人恋しいのかもしれないけどあまり依存させてもね?
今回もどうにかこうにかなだめて柚華ちゃんの家を後にして、いつものように事務所にコール。
「終わった」
『はいはいっと。迎えはいる?』
「んー、お願い」
『はいよー』
さて、今日は何をしようかな……。昼寝……さすがに寝てばっかだしな、最近。んー、んー……。
あれ、これといって思いつかない。趣味も……特にないかな? 料理も家事の伝手だし手芸も紗季にねだられて憶えただけで趣味とは言えないし……。
「ふむ。これと言った趣味がない」
「それじゃうちの事務処理でもしますか」
「彩音さん?」
キキィっと音を立てながら止まった車から聞こえてきたのは彩音さんの声。今日の迎えは彩音さんか。
「税務報告書とか給料計算でしょ? 嫌ですよ」
「じゃあ表の仕事でも」
車に乗り込みながら彩音さんに言われた表の仕事。偽装営業所と言う形で社長が運営してる飲食店で確か
「表かー……表って言っても趣味でやるような事じゃないですよね? 完全に仕事ですし」
「給料が発生する趣味って事でいいじゃないですか」
さもなんてことのなように言ってるけど、普通に8時間労働だし趣味でやることじゃない。
「それに、ガールを表には採用しないじゃなかったんですか?」
「……まあ、なんとかなるでしょ」
表、喫茶店には女性しか入れないだけで来るのは一般人か百合っ気のある子だけ。非合法の風俗ガールをそんな表に出せるわけないんだけど……。
「……まあ、裏方専門なら片手間でもいいですけど」
確か料理とデザートに、手編みのコースター作りとかだったかな? コースターなら手間もかからないし簡単に作れる。
「ちょうど今日欠勤者が出て人出が足りなかった所です。厨房長の職務、まかせましたよ」
「え? そんなの聞いてない!」
*** *** ***
「……はぁ」
フライパンを片手に動かして作っているのはオムライス。この店で出しているのはテレビでもやってる切り開くタイプらしく、紗季にねだられて数回しか作った事のない不慣れなものを作ってる。
黒のロングスカートに白のレギュラーカラーシャツ、それに赤いネクタイの格好でそれを作ってる。なんでもこれが厨房での格好らしい。だとしても、ネクタイなんて首回りがうっとうしいだけだからぞんざいに緩めてるけど。
「はい、オムライス」
同時進行で炒めていたチキンライスを皿に盛ってその上に出来たばっかりの卵生地を乗せて後ろのカウンターに置く。
こうやっておいてるとホール要員が客席まで持って行って、目の前で切り開いてデミソースをかけるらしい。なんか無駄に凝ってるというかなんというか。
さっきも言ったようにここは女性オンリーの店だからスタッフも客も女性しかいない。今持って行ったオムライスも学生らしき2人組のいる席に持って行ったし。
「えーと、次は……はぁ」
そしてそんな女だらけな店の厨房長(仮)をやらせてるいるのが私。ねえ彩音さん、私裏方なら片手間にって言ったのに思いっきりメインどころじゃない。ねえって。
次のオーダー表に書かれてるスープスパとカルボナーラの材料を手に取りながらもかなり憂鬱なんだけども。
てか、この店無駄にメニュー多すぎ。
茹で機のパスタを投入して茹であがるまでの間、マッシュルームとタマネギ、ベーコンを薄切りにしてフライパンに放りこんで第一下準備完了。
次にボウルに生クリームと牛乳、卵黄に粉チーズの塩コショウをいれて混ぜ合わせて、豚バラ肉を少々大き目に切り分けてオリーブオイルで炒める。これと同時進行でスープスパの具も炒めて、茹で機から茹で汁をすくってフライパンにいれて顆粒コンソメをいれ、茹でるついでにソーセージも一緒にいれてボイル。
ここまでやったところでパスタが茹であがり、パスタを炒め終わった豚肉へ投入しさっき作ったソースをいれて合える。
スープスパの方も程よい具合を見計らってパスタをいれて、ボイルしていたソーセージを取り出して切り分けて見栄え良く皿に盛りつけて仕上げの刻みパセリを振りかけて完成。カルボナーラもブラックペッパーを仕上げに振りかけて完成。
これもカウンターに置いて次にうつる。
はぁ、メンドイ……。
「次」
*** *** ***
ひたすら料理を作り続けて2時間ほど。休憩時間となり、今はバックヤードにいる。そこそこ広い空間にはL字型にキッチンが設置されていて3口コンロと冷蔵庫、シンク下にはオーブンレンジがついてる。私はそこで冷蔵庫から適当に取った材料で昼食を作ってる。他の子は弁当とか持ってきてたけど、生憎そんなもの持ってきているわけもない私はこうして休憩時間も料理をしてる。
料理とは言ってもあった材料を適当にいれこんだ炒飯だけどね。
「できたっと」
ちなみにこのキッチンは試作品を作る用途で使うらしいけど、私は気にしない。
そもそもこの店のメニューのほとんどは私が考案……、家で作ってる料理を人さまに出せる状態にしただけ。間接的に笹倉家の料理を店で提供してるわけだけども、そこそこに繁盛するくらいにはリピーターがいるらしい。
で、他の子が弁当を食べている中で私だけが出来たての炒飯を食べてる。うん……適当に調味料も放り込んだけどいい感じにしあがってる。
「……なに?」
「え、あ……おいしそうだなって」
自己評価を下していたら横にいたショートヘアの子がなんか見てきてたから聞いてみたんだけど、ちょっとあたふたした返答が返ってきた。ふむ……。
「食べる?」
「えっあ、その……ん」
一口、スプーンですくって差し出すと顔を赤くしながらも食べた。うん、表情からして大丈夫っぽい。
「そういえば真美ってさっきも由奈さんの事見てたよねー。惚れた?」
「なっ違っ」
快活そうな感じの子が慣れた感じでイジってる。しかし見てたのか……全然気付かなかったな。
真美と言われた子はあたふたして顔を真っ赤にさせてる。なんか茉莉みたいな子だな……。
「あたし
「メニュー作った人間だから?」
「は?」
「え?」
またいい感じの反応が返ってきた。でも大体はこうなるかな?
「え? うちのメニューって……えーと」
「笹倉由奈」
「由奈さんが全部?」
「え? まじで? うち結構メニューあるけどあれ全部?」
「大半はね」
デザートに至っては社長の家に行った時にメニュー作らされたっけ。
というか、メニュー考案の給金とかもらってないんだけど。
「うわぁ、なんかすごい人が助っ人できてるよ」
「ということはなんでも作れるって事だよね。いいなぁ」
「まさか。フレンチだ中華だなんて言われても作れないけど?」
「嘘だ。うちのメニューってフレンチとか中華系結構あるし」
「デザートだって種類結構あるもん」
「……」
いや、だってほら。好きにやっていいとか言われたら人間やっちゃうでしょ? 材料もそろってたし作り方も知ってたし。うん。
「でもうちって何気にカレーとかの方が人気だよね」
「うん。一般家庭的なメニューが人気だよね」
笹倉家の味はどうにも好評なようで。カレーに至っては手直しなしのそのままの味付けでやってるし。
「それはそうと、そろそろ休憩終わるけど」
「えッ嘘!?」
会話に夢中になってた2人はともかく、食べ終わった皿を片づけながらわたわたと慌ただしくしてる2人をみてた。
そして休憩が終わり、キッチンに戻ると何故か火の車状態になってた。なんで?
「どしたの、これ」
「ネットでうちの料理がなんでか話題になってるらしくてさ、さっきからどんどん来るのよ。人手が足りないから早くはいてー」
早智が近くにいた子に聞いたらそんな返答が返ってきた。ふーん、ネットで話題ねえ。
とりあえずオーダー表に書かれている物を作るべくキッチンに立つと、なんか聞き覚えのある声が聞こえた。
一部がカウンターキッチンになってるからそこからホールを見ると……あり?
「へぇ、ここが女性オンリーの店かぁ」
「綺麗なとこだね」
「……紗季?」
あれ、なんでいるの?
「んーとね、じゃあ私はミートリゾット。紗季は?」
「んー……チーズドリアでいいや」
また面倒なものを……。
紗季達の注文票が厨房に届き、それを受け取ってとりあえず作り始める。リゾットにドリアか……あ、かなりメンドイ。
ちらちらと紗季達を見ながら2つを順々に作って行き、さらにホールが活気立つ中厨房も白熱していってる。なんでここまで人がくるわけ? この店ってここまで繁盛してる店じゃなかったでしょ。
料理マシーンと化した厨房スタッフがどんどん料理を作って行く中、私もドリアとリゾットを完成させホールの子がそれを持って行った。
「おいしそー」
「いただきまーす」
さてさて、お味はいかに。
「んー、おいしい!」
「……?」
「どうかした?」
「なんだろ、うちの味に似てる」
そりゃ私が作ってますから。
「うーん、似てる? んー……」
しばらく悩んでた紗季はいきなり席を立つとカウンターまできて厨房内を覗きだした。当然、カウンター付近には私がいるわけでそんな事をされると目があう。
「あ、やっぱりお姉ちゃんだ」
「勝手に覗かない」
「フリーターって言ってたのにここで働いてたんだ」
「はいはい、そうですよー。ほら、さっさと戻る」
「はーい」
適当にあしらうと紗季はさっきいた席に戻って行った。友達らしき人となにやら喋ってるけどまあいい。
にしても、さっき適当に言ったけど勤務先がここって認識されたかな……間違いとはいいきれないけど、んー。
とりあえず今はオーダーを消化していくしかない。うん、どんどん溜まって行ってる……あー、帰りたい。
「次」
*** *** ***
夕方5時30分。店はガランとしホールでは閉店作業をしてる。
この店は5時30分までの日中営業と、7時からの夜間営業のタイプの店になってる。7時からはアルコールも出すBarとして深夜1時までの営業。そしてBarになっても女性限定なのは変わらない。
深夜閉店だから送迎があるとは聞いてるけど、そのせいなのか日中とかわらないくらいの従業員がいる。
今ホールと厨房内で片付けをしている子達は日中従業員で夜間の方はのちのちの出社になるらしく、さすがの社長も表の方では法律は守るらしい。ガールの方は18以上なら未成年でも雇ってるけど、こっちでは日中は高卒か学生バイトで夜間は20以上の高卒となってる。人を見る目だけは確かだから綺麗所も含め、スタッフ目当てで来る顧客も意識した人選をしてる。
ちなみに私は19だから夜間の方の助っ人は呼ばれてない。呼ばれても行く気はないけどさ。
「今日厨房覗いてた子って妹?」
「うん。うるさかったでしょ」
「そんなことなかったけど、すごい似てたね」
フライパンのコゲを金たわしでこそぎ落としていたら、左右から早智と真美が寄って来た。
「美人姉妹かー」
「かわいかったねー」
実際はエロ娘だけどね。あの子。
その後もあれこれ話しながらクローズを終え、今日の仕事は終わった。なんか別れ際にやたらと正規就職を求められたけど本業はアッチだし断っておいた。でもまあ、彩音さんのあの感じだと助っ人の形でちょいちょい放り込まれそうな気がする。
「おつかれー、どうだった? 表の仕事」
「椎奈?」
徒歩で帰るのが面倒だとか考えてたら彩音さんの運転する車が目の前で止まり、車中には前にもちょいちょい名前は出してた椎奈が乗ってた。今時? なふわっとしたブラウンのロングヘアにくっきりふたえの目元、全体的にふわっとしたコーディネイトの格好をしてる。
前から思ってたけどお嬢様っぽ格好好きだよね、椎奈。
今だって白のロングスカートにレーヨンブラウス、そしてサマーニットを羽織ってる。
「んー、これはこれで楽しいかな」
車に乗り込みながらそう答えると、なんかにこにこと気味の悪い笑みで返された。
「でもー、由奈はえっちぃ方が好きでしょ?」
「抱きつかないの。それと発情しない」
「スモークガラスもなければカーテンもない普通の四駆なんですけども」
抱きついて来た椎奈の脚の間には発情の証拠とも言えるものがある。ぐいぐいと押しつけてきてるソレは普段ならディルドとかで代用されるもの。
ふたなりの椎奈にはそれが元からある。今もこうして押しつけてきてるんだけども……。
「もう、由奈のいけずー。ちょっと前ならさせてくれてたでしょ」
「TPOって知ってる?」
彩音さんが言った通り、普通の四駆である車内でコトに乗じるつもりはない。それに前って言ってもそれは社長の家であって野外でも車中でもない。
「むぅ。じゃあ後でいいや」
「そんなにシたいなら鏡香とすれば?」
「鏡香とのエッチ、気持ちいいんだけど相性良すぎちゃうしなー」
「じゃあ彩音さん」
「……そういえばシた事ないっけ。ねえねえ、今度シよ?」
「御断りです。ふたなりの相手は社長だけで十分です」
まあ、この子も結構性欲強いからなー。前にシたときも体力つきて寝落ちするまで延々とシてたし。あの時何回ナカに出されたっけ……でも妊娠はしなかったなぁ。
椎奈、結構かわいいから生まれる子もかなりかわいいと思うんだけどさすがにふたなりともなれば自然妊娠は難しいかな。
やっぱ体外受精かな……でもセックスで自然妊娠の方がいいし……んー。
「どしたの? いきなり悩みだして」
「なんでもない」
コロンかなにかつけているのか、顔を覗きこんできた際に甘いにおいがした。女子力高いなー。
そしてそのまま車に揺られるままに移動した先は社長宅で、そのままリビングまであがっていった。
そこにはリクライニングチェアに座ってくつろいでる社長がいた。くつろいでる社長の上には飼い猫が親子そろって乗っかってくつろいでる。
「お、来たか」
「別に呼ばれてないですけど」
「私も呼んでない」
くいっと顔をこっちに覗かせると乗っていた仔猫の一匹が飛び降りてこっちにきた。みゃーみゃー鳴きながらよじ登ってきてる。
とりあえず抱きあげて撫でながらソファに座ってると、他の猫も降りてきたのか社長のうえから私の上に居住まいをかえたらしく親子そろって群がってきた。仔猫が3匹膝の上に昇って着て他の子らは私の横で丸くなってる。
「飼い主は私なんだけどねー。いつもいつも由奈にくっつきにいくんだよなー」
「私だって知らないですよ」
椎奈もソファに座って仔猫を一匹抱きあげてなでてる。そう言えば椎奈って猫好きだっけ。
「まあ、なんだ。厨房長ごくろうさん」
「由奈の料理食べたかったなー」
「はいはい」
私の何がいいのかみゃーみゃー甘えてくる仔猫の相手をしながら適当に流す。猫もいいけど個人的にはヤマネがいいなー。あの目がくりくりしててころっとしたのがかわいい。今度ペットショップ行ってみようかな……野良でいるわけないし行かないといないしなー……。
「それとな、今日欠勤した厨房長が長期休暇に入るから復帰するまで頼んだ」
「……は?」
「病院で検査したら不整脈だったらしくてな、療養と治療で約半年の休暇にしておいた。病状次第で伸び縮みさせるが、その間の厨房長」
「いやいや、本業はガールなんですけど。今日明日の助っ人ならともかく半年とかやですよ」
いくら顧客が離れないと言っても半年も空ければさすがに離れるでしょ。本業でもないのに半年もやってられないっての。
「そもそもあっちとこっちは別物なんだから向こうの欠員は向こうで補充したらいいでしょ」
「ホールならともかく厨房はそう簡単に人が来ないんだよな、これが。メニュー考案者でもある由奈なら今日みたいく即日で行けるだろ?」
「……聞かなかった事にします」
群がってる猫達を全部椎奈に落ちつけて早々にリビングを出た。何匹か追いかけてきたけど追いつく前に扉も閉めたから追きていない。
今まであれこれ横暴はあったけど今回のはさすがにないわ。
「帰るんですか」
「ここに入る時にはいいましたけど、余所に手を広げても私はかかわらないって言いましたよね。メニュー考案も好き勝手しましたけど、あれっきりの形式でやったわけですけど表で欠員出たからって補充要員にされるいわれはないですよ」
半年の期限付きだとしても、私は非合法の風俗嬢以外やる気はない。
彩音さんのそれだけ言い放って玄関を出ようとしたら腕を掴まれた。
「たく、人の話は最後まで聞け」
「聞かなかった事にするって言いませんでしたっけ」
「だから最後まで聞けって」
腕を掴んでいたのは社長で、開け広げられたリビングからはみゃーみゃー仔猫が鳴きながら顔をのぞかせてる。
何故か親猫も一緒に鳴いてる。
「半年とは言ったが毎日とは言ってないぞ。毎週金曜のランチタイム、10人限定で厨房長のおまかせ料理出してるのは知ってるだろ。それをやってくれって話だ」
「……」
「ガールをやめろって言ってるわけじゃない。昼の数時間、助っ人で入ってくれて」
「……毎週金曜のランチタイムのみ。欠員がこれ以上でようが私はかかわらない。これでいいなら」
「一向にかまわない」
金曜の昼間、か。
話が終わったのを感じ取ったのか仔猫達が走りよって着て飛びついて来た。私は止まり木でもなんでもない。
親猫も目の前まで来て座ったかと思えばなんかドヤ顔っぽい顔でこっち見てるし……なんなの、この猫達は。
「さて、時間も時間だ。彩音、由奈の送迎は任せた。椎奈はこっちで今後の話しな」
「はーい」
へばりついてる仔猫をひきはがして椎奈に押しつけ、私は家を出た。親猫が脚にまとわりついてきて邪魔してきたけどこれも椎奈に押しつけた。
話がどうとかって言ってたけど、猫同伴でもいいでしょ。
「黒華(くろか)も由奈さんが離れて行くのは嫌だったんでしょうね」
「?」
車に乗り込みながら彩音さんが妙な事を言いだした。ちなみに黒華ってのは社長の名前。藍沢黒華(あいざわくろか)、がフルネーム。あんなんでもまだ25歳だったりする。
「学生バイトを省いてしまえば人手不足ですからフルで入って欲しい所を金曜限定なんて言うんですから」
「どっちにしろ、フルなんて言われても聞く耳持つ気はないですけど」
「今の今まで我儘を聞いてもらっていたのが悪い方向に出たようですけどね。由奈さんなら二つ返事とはいかなくとも引き受けてくれると思ったんじゃないんですか?」
「そこまで親しい仲でしたっけ、私ら」
どちらかと言えば彩音さんとの方が付き合い長いでしょうに。
「何かと由奈さんにかまってるのがいい証拠でしょ。そうれはそうと、今後のシフトは改めて作りなおしたのをメールしておきますので」
「ん」
シフトとは言っても金曜の固定業務と公休だろうけど。この公休自体、面談とかで稼ぎたい子は減らしたりしてる。あと一日当たりで受ける予約数とかも面談である程度は決めてる。
私が週5日勤務の2日公休。の公休は大体固定日になってるからプライベートの予定も立てやすい。
そして新たに増えた金曜の業務。シェフのおまかせコースってメニューだけど、実際には創作料理だったりする。ものすごく簡単に言ってしまえば私の好き勝手にやっていい。
でも毎週金曜日に10組か……考えるだけでもだるいな。
ぼーっと窓の外を見ていたら見慣れた風景が広がり、しばらくしたら家についた。
「それでは」
「うん」
車から降りて彩音さんと別れ、家に入ると玄関には靴が二つ。
「あ、お姉ちゃんおかえりー」
「ただいま。誰かきてるの?」
「うん、今日お店に一緒にいった子。それとね、泊まったりとかだめ?」
「別にいいけど?」
「やったー」
玄関さきに出迎えに来た紗季が妙なテンションでリビングに戻って行った。楽しそうでなにより。
一旦部屋に戻ってラフな部屋着に着替えて下に降りると、ゲームに興じてる2人がいた。TPS系のゲームらしく、さっきからバンバン敵を撃ってる。
「あ、お邪魔させてもらってます」
「うん、ゆっくりどうぞ」
さてさて、夕飯の支度でもしますかな。でも時間も時間だし……ふむ。
冷凍庫を開けてがさがさとあさると、前に作って保存しておいたらしいハンバーグのタネが出てきた。期限もまだ大丈夫だから使えるかな。
とりあえず煮込むことにしたハンバーグを底の深いフライパンに放り込んで煮込んでいる間に他物を作る。色見としてはあと黄と緑かな。
緑はサラダで補うとして黄色は……んーパプリカでごまかすか。
パプリカで色見をごまかしたサラダといい具合に煮詰まったハンバーグ……あれ、中からなんか出てる。
「あ……焼くつもりで作ってたんだ、これ」
中からとろけ出てきたチーズはうまい具合にマッチしてるから問題ない。さてさて、後何か作ろうか……んー、ん?
「何?」
「なんでもなーい」
ニヤニヤ顔の紗季はそれだけ言って戻って行った。なんだろうか、あれ以来なんかふっきれた感がある。というか何も変わってなかったらそれはそれで怖いけども。
とりあえず夕飯はこんなもんでいいかな。
にしても、働き詰めで満足に休憩してなかったなぁ。
フローリングにあぐらをかいて座ってる2人はともかく、ソファに座ってひと段落……つこうか……。
「ねえ紗季」
「なーにー?」
「あれなに?」
カチカチとコントローラーを操作する紗季はチラっとソレを見ると、
「なんかね、いっぱい産んで増えちゃったからって」
「……」
無造作、とまではいかないけどソファの影に隠れて置かれていたケージの中には、ハムスターが2匹いた。まだ子供なのかすこし小さい2匹がくっついてなにやらもひもひと食べてた。
パールか……個人的にはロボロフスキーの群れがよかったな。あのちっこいのがくっついて固まってるのがいい。
しかしジーっと見すぎたのか、もひもひを中断して2匹そろってこっちを見てる……かわいい。
「お姉ちゃんってこの手の小動物好きだよね」
「いいでしょ、別に」
ケージ越しに指を近づけたら2匹そろって近づいてきてちろちろ舐めてきた……。
「お姉ちゃん、顔がふにゃけてる」
*** *** ***
あの後は催促されるがままに夕飯となり、お風呂に入ったりゲームをしたりハムスターと戯れたりしているとあっという間に12時を過ぎた。
さすがに私も疲れてたのもあってさきに部屋に戻って寝る事にした。さてさて、差し迫る金曜は何を作ろうかな……。
あー……柚華ちゃんとか小由利さんもなんかあの店着てそうだけど、大丈夫だよね? んー、顧客の子とか着てそうだけど、そこはまあどうにかなるか。
「もういいや、寝よ」
とりあえず今日は寝よう。うん……おやすみ。
第1章完(⊃`ω´⊂)
次は番外編ですー