「この家ですね」
「へぇ、結構大きいね」
彩音さんに送迎してもらって今日の子のところに到着。
「じゃ、がんばってねー」
「ん」
びいい
穂純を残すわけにもいかないから一緒の車に乗ってきてる。このまま家の方まで送迎してもらうから一緒に乗ってきてる。つくまでの間、ずっと膝枕してたけど。
「鹿島宇美(かしまうみ)、か」
さてさて、どんな子かなー。
インターフォンを鳴らすと「はーい」と声がしてぱたぱたと人の気配。
「あ、こんばんはー。どうぞー」
出て来たのは……金髪のショートカットの子。デニムのショートパンツに半袖の黒いプリントTシャツ。そして耳にかけてピンで止めてる……うん、耳にはピアスだらけなんだけども。あ、化粧は薄い……というか、そんなに手を加えてない感じかな。
でもさ、こういうのって茉莉とかの担当じゃないの? ねえ。
とりあえず招かれるままに家にあがる……はて、この靴どこかで見たような……。
玄関で靴を脱ぐ時にちょっと見憶えのある靴が目に入った。どこで見たんだっけ?
「こっちこっち」
2階建の家でこの子の部屋は2階にあるらしく、ぱたぱたと階段を上がって角部屋に通され……。
「……」
「ん? どうかしたの? おーい、紗季?」
「……お、姉ちゃん……?」
紗季……? えーと、私はガールとしてここに来てるわけで、呼んだのがこの子だとして……?
「お姉ちゃん? いつも熱上げてるあのお姉ちゃん?」
「うん……」
「ふむ」
ひとまずスマホを取り出して緊急連絡先にかけた。
『なんだ、なんかあったのか』
「あー……バレタ」
連絡相手は社長。一応なんかあった時の緊急連絡先になってる。
『は?』
「……妹の友達が呼んだみたいでね、目の前に妹がいる」
『……あー、その妹を手篭めにしたらいいじゃないか?』
「本気で言ってるなら削ぎます」
さて、どうしようか。というか紗季にバレタ……あー、どうしよ。遺書の準備とかしてないからさっくと死ぬわけにもいかないし。
『はぁ……彩音、今日空いてる奴いるか? ん、ああ……はぁ、由奈。全部出払ってるから引き継ぎは無理だな。次回無料って事にしてキャンセルでまとめるしかないな。まとめ終わったら連絡しろ』
なんとも都合悪く誰もいないと来た。キャンセルしかないかなー。
「……お姉ちゃん、帰っちゃうの?」
「前に言ってた風俗がうちとはね……身内相手に商売しないわよ」
「でも呼んだの私なんだよねー……それでもダメ?」
「お姉ちゃん、お客さん選んで仕事するの? 私もお客なのに」
何故かにじりよってくる紗季。
「……風俗に手を出せなんて誰が言った? 大抵はロクでもない店が多いって言うのにさ、感染症検査もロクにしてない店がどれだけあるか知ってる? 前に言ったよね、風俗なんてロクでもないって」
「でも、お姉ちゃんは……そうなんでしょ?」
「だとしても、妹相手に商売はしない」
言い寄ってくる紗季を冷たく突き放して宇美ちゃんに次回無料の話を伝えて家を出た。そして再度社長に連絡して迎えを呼んだ。
よりによってなんで……。
*** *** ***
「それでいじけてうちに流れ着いた、と?」
「……」
ベッドで穂純と抱き合いながらぼーっとしてたらそんな事を言われた。
というのも、あの後宇美ちゃんの家から戻ってきて早々に穂純の家に荷物とかを持って転がり込んだ。
「聞いたよ。妹にばれたんだって?」
「うん……」
転がり込んで、穂純に連れられるままにベッドに入ってこれまでの経緯とかを話してた。
「開き直って抱いちゃえばよかったのに」
「妹相手に出来ないわよ……」
「私が現役の頃ね、3P希望の子の家に行ったんだけどそこにいたのは姉妹でね。てっきり友達とかかと思ってたらさ、実の姉妹でセックスしたいって。普段からシてたみたいだけどたまにはいいかなってことで呼んだみたいだけど……由奈はそう言う風には出来ない?」
「……」
どうだろ……。
確かに紗季はかわいいし、昔も今も懐いてくれてて甘えてくれて……ほんとによく出来た子。
かといって家族愛を超えるほどのものかと言われればそうとは言えない。
「普段から結構甘えてくるんでしょ? お姉ちゃんとシたいって言ってくるって前に言ってたじゃない。一回こっきりって言ってシたらよかったのに」
「そうだとしてもさ、妹だよ?」
小さい頃からずっと、かわいがってきた妹。手間がこれといってかかることもなく。
「その妹……紗季ちゃん。紗季ちゃんからしたらどうなんだろうね? 大好きなお姉ちゃんなのか、それともセックスしたい対象として見てるのか。お姉ちゃんはお姉ちゃんとしても、それは由奈が思ってる姉妹考とは違うでしょうね」
「……」
「かわいいかわいい妹で、変な事も言うけど懐いてて手間もかからずって感じでしょ? 紗季ちゃんからしたらずっと面倒見てくれた大好きなお姉ちゃんで、甘えたらその分ちゃんと返してくれて……。で、あれこれ知りだすうちに劣情が湧いて家族愛から逸脱した」
逸脱、か。
紗季に……干渉しすぎたのかな。
「たぶん、今日のコールをした子がきっかけでしょうね。1人エッチのシかた聞いたり明らかにその直後の格好で寝てたり。かわいいもんじゃない? それをきっかけにお姉ちゃんが振り向いてくれるかもしれないって思ってるあたり」
「なにそれ」
「不自然でしょ? そのまま寝てる現場にはち合わせるなんて」
「紗季がわざとしてたって言うの?」
「でしょうね。その気になった由奈が強引にでもシてくれる事を願ってたでしょう。でも、妹としか見てなかった由奈はそんな事をするわけもなく、なんのアクションもなかった。軽くキスしたって言ってたけど紗季ちゃんにもうちょい度胸があったら押し倒してたんじゃない? 由奈の事」
「……」
「まあ、部外者の私がつべこべ言ってもしょうがないけどさ。こればっかりは本人と向きあって話さないと何にもかわらないよ。こうして、訳がわかんなくなってるのは由奈だけじゃないでしょ」
「……うん」
「ほら、私も一緒に行ってあげるから」
「……うん」
「でもその前にシよ?」
「……うん……ん?」
「……ゆ、由奈?」
「……シすぎ」
あの後、穂純に襲われるような形で逝かされ続けた。もう疲れて一歩も動きたくない。
「逝った直後なのにノンストップでシ続けるし。ずっと逝きつづけだったんだけど、私」
「で、でも……気持ちよかったでしょ? ね?」
「過ぎた快感は地獄」
「……はい」
ベッドの上で寝転がる私と、その横で正座をしてる穂純。スプリングの効いたベッドだし、見た目ほど効果はなさそうだけど。
穂純には正座をさせたまま、足腰が動くようになるまでベッドでくつろいでシャワーを浴びに行った。
手早くシャワーを浴びて服を着て部屋に戻ると、ぷるぷる震えてる穂純がいた。
「何してるの?」
「脚……しびれて……うぅ」
スプリングの効いたベッドでもそれなりの効果はあったらしい。
今度は穂純の回復を待ってから持て来たばかりの荷物を持って家に帰った。
穂純に手を引かれるままに家路についてるけど、紗枝とあってどうなる事か……。止まることなく歩いていく穂純の引かれるまま歩き続けて、
「ついた、と」
「そうだねー……」
家についた。
んー……家にいるっぽいね、紗季。
「さ、はいろう」
「んー……」
鍵を開けて家にはいると、
「……お、姉ちゃん」
「た……だい、ま」
なんともぎこちない帰宅になった。とういかなんで玄関先にいるのかな、この子。
穂純を連れだって家にあがると、紗枝はこれまたぎこちなくリビングに消えていった。
「うわぁ、絵にかいたようなぎこちなさだね」
「笑いながら言う?」
私らもリビングに入ると、ソファに座ってた紗枝が跳ねるようにビクついた。そんな恐ろしい者を見たような反応しなくても。
「どうも、由奈の同僚の秋月穂純です。そんでもって彼女です」
「お姉ちゃんの……?」
「先日はうちをご利用して頂きありがとうございます……まあ、なにもせず帰っちゃったみたいだけど」
穂純は何食わぬ顔でソファに座って紗枝と話してる。というか今さらっと彼女とかいったよね。
「うちはね、女の子専用の非合法風俗店なの。私も、由奈もそこの風俗嬢」
「ッ……」
紗季の眼が穂純の隣に座る私に向けられた。
「うん。高卒入社かな」
「で、今現在うちのナンバーワンね。Laclimでも一応働いてるけど、そっちはヘルプで入ってるから本業は風俗嬢」
「……」
「大好きなお姉ちゃんが風俗嬢ってわかって嫌いになった?」
「嫌い……じゃ、なぃ」
「じゃあ知る前と同じくらいに好きって思える?」
「ぅん」
「風俗嬢なのに? 電話で呼ばれ知らない初対面の女と寝てるお姉ちゃんを今まで通りに?」
「……」
「ふたなりの子相手に中出しもされてるのに、好きって言える?」
「穂純?」
さっきから穂純は一体何を言ってるのかな……。
「……なの?」
「紗季?」
「ほんとう……なの? 知らない人と、初対面の人と……シてるの?」
「んー……まあ、そうなるかな。最近は顧客の子とばっかりだけど」
なんで泣きそうな顔を……仕方ないか。
「ねえ紗季。ここまで聞いてやっぱ嫌いになった? 呼ばれたら知らない人とでもするこんなお姉ちゃん」
「……」
今となってはうつむいてその表情は見えない……んー。
「ねえ紗季ちゃん。風俗嬢で女の人と呼ばれたらセックスする……まあ普通の身内じゃ考えられないけどね。でもさ、その程度(・・・・)で嫌いになっちゃうの?」
穂純はさらっと言うけど、その程度で流せるようなあっさりした話しじゃない。
「っ、わかんない……ッ、わかんないよッ、そんな事いきなり言われても……」
うつむいてた顔をあげた紗枝の顔は涙に溢れて……姉妹喧嘩もした事ないし、駄々をこねて泣くなんて事もなかったから……初めて見る、紗枝の涙。
あぁ……こんな形で見る事になるとは思わなかった。
「とりあえずさ、好きか嫌いか。これだけでもいいんじゃない?」
「……」
ポロポロと涙をこぼしながら私を……睨んでる、よね。これ。
「……好きじゃない、かも」
「じゃあ嫌いになったんだ」
「嫌いじゃない……でも、わかんない」
紗枝はそれだけ言うとソファから離れて部屋に戻って行った……。
「穂純……、あそこまでいう必要あったの」
「何事も中途半端って一番面倒よ。壊してそこから作りなおしたほうが手っ取り早い。何でも作る方が面倒なんだから、中途半端なら壊しちゃうのがいいの」
中途半端、か。
「お姉ちゃん大好きって盲目でいられない。由奈個人、今まで見てなかった部分も含めて知った上であの子がどういった答えを出すか。それちゃんと受け止めてあげなさいな」
「うん……」
なんだろ。結局全部穂純が解決してる。
結局、私はあの子の姉のつもりでいただけなのかな……。喧嘩した事もなくて、甘えられてるからなんか勘違いしてたのかな……。
穂純に手を引かれるままに歩いて部屋についた。
「うーむ、どれどれ」
ぽん、とベッドに座らさせられて穂純はめー達がいるケージの前で何かしてる。
「ちち」
「ちー」
何して……?
「おとなしくて結構。ほら、手出して」
振り返った穂純の手にはめーとわたが乗ってた。それもおとなしくくっついて。
受け取るべく手をだすと、ひょこひょこと手に移り乗ってきた。
「今乗せる時に見たけどさ、左の子。その子、オスだよ」
「……え?」
オス……? え? めー……オスだったの?
「ち?」
「そっかー、オスか……」
「増えるねー。増やすの?」
「どうしよ……」
試しに片手ずつに乗せて手を離してみると、
「ぢー」
「ぢぢーぢ」
ものすごい鳴く。というか手の上でひっくり返って癇癪を起こす。5㎝くらいしか離してないのに。
「無理に離したらストレスになる感じ?」
「そうだね」
手を元に戻すと癇癪をやめていちゃいちゃとくっついてる。何このカップル。
「まあ、増えたら手に負える範囲で貰ったげるわよ」
「うん」
しかしこの2匹。飼い主の手の上でいちゃつきすぎじゃないかな。安全地帯と思われてるのはうれしいけど。
「でさ、多少は気が晴れた? ハムの相手で」
「……うん」
アニマルセラピー、かな?
手の上でいちゃついてるめーとわたを膝の上に移すと、くっついたまま毛づくろい開始。自分だったり相手をだったり、所かまわずにいちゃついてる。
ハムちゃんよ……そこまで互いが愛しいかい。
「すごいいちゃついてるわね、その子ら。ちょっとでも離したらいじけるし」
「なんかあって病院とか行く時どうなるんだろ」
そうとう癇癪起して鳴き喚きそう……。
「ねえ由奈今思ったんだけどさ」
「なに?」
「これ、太ってるんじゃなくて妊娠してるとかじゃないよね?」
「……」
まんまるとした体形のめー。なんかひょうたんっぽい感じでまるい体形のわた。なんか太り方がおかしいきもするけど……ねえ?
「……わた?」
「ち?」
あれ……ただのおデブじゃない?
「増えるねー」
「だねー」