※この作品はR-18です。

高律の夏休み   作:bui

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世界一初恋の二次小説です。

8月5日は高律の0日設定。
いったいどんな日になるのだろうかというのはクラスタの興味の湧くところです。

そんな日が目前に迫っているので祭り気分のお話です。

二人は過去を乗り越えて行けるのかな?

過去をないことにしては先には進めないのに。



高律祭りその6 




好き・もっと好き・ものすごく好き

食事の時に昨日の話を振って見ると「高野さんに振られました。」とリツは感情のない顔で言った。

 

覚えているのか…。

 

ってことは俺はまた失敗をしたのか?

ズクリと胸が痛み、とたんに暗い気持ちになった。

 

昨日のリツは朝からなんとなく変だった。

いや…、朝からではなくて、イギリスから帰ってきてからずっとリツは変だった。

 

リツがツンを発するときに、それは俺にとっては残念なシーンであることが多いのだけど、リツからは命の躍動のような熱さを感じられて、そんな跳ね馬のような強い意志を持つリツを手に抱(いだ)くときの愛しさと来たら、おぼれきっている駄目な自分さえ愛しく感じるほどだった。

 

そして望むものが手に入らないもどかしさに追いすがり、必死になって策を練る攻防は、まるで天下を手にいれる国取り合戦のように感じられた。

 

しかしここ数日のリツは何かに凍えていた。

いや静かに飢えて乾いていた。

 

貧られ搾取されるのは願ったりだけど、どんなに注いでもリツの飢えを癒すものがここにはないことも理解していた。

 

リツの目は俺の中の小さい一点に注がれていた。

それは俺が切り捨てたもののかけら。

わずかにへばりついていた昔の俺というピースに他ならなかったから。

 

お前は誰なの?

何を見ているの?

問うたらリツはそれに答えてくれたのだろうか。

 

 

 

▽

いつもどおり居心地の悪そうなリツを押さえつけるようにして、まずは朝飯を食べさせて食後のリラックスタイムとばかりに引きずって移動したリビングのテーブルに、熱いほうじ茶をコンッと置いた。

 

花のフレーバーが入っているそれは作家からもらったもので、珍しくリツも気にいって飲んでいた。

 

湯飲みにしては丸いフォルムの白いそれは、両手で包むように持つのに丁度良い球体で、ー見して薄手に見える外壁は熱さが外側に伝わりにくい作りになっていた。

 

「お前昨日変だったから。」

 

発した言葉は唐突だったけどリツは眉をピっとあげて思いあたることがありそげな顔つきをして、それ以上の声かけを俺がしないでいると、リツはもごもごと説明の言葉を発した。

 

「イギリスでいろいろと考えることがあって…。なんだか自分でも気持ちがまとめられなくてこのところずっと変だなと思ってました。」

 

掌(たなごころ)で包み込むように湯飲みを持つリツを見ていると、昨日の少し幼いリツの顔がだぶって見えた。

 

「ふられたってさ、なんで?」

「ふられたはふられたでしょ?そのままの意味ですけど。」

 

昨日までのデレリツは影を潜め、ツンツンしかないツン強めリツがそこにいる。確かにその部分だけ切り抜けばそういう取り方もできる。しかし昨日の話は違ったよな。

 

冷たいようだけど幼いリツが求める『嵯峨先輩』はもう俺の中には存在しない。俺は成長するために嵯峨峨政宗であることをやめ、その殻を脱ぎ捨てた。

 

今の俺になるために過去に奴は置いてきたのだ。

 

リツ、お前とて同じだろう。

織田リツをどこに置き去りにしてきたのか知っているくせに。

 

「過去のお前じゃなく今のお前と恋愛したいって意味だって分かってんだろ?」

 

何度も何度も繰り返した不毛なやり取りに、少しうんざり気味に答えると、多少予想していたことなのか、それほど困った風でもないリツがいた。

 

「俺はーつのことしかできないから、一人前の漫画編集になるまでそれに向けて突き進むことしかできません。恋愛でぐるぐるしたりうじうじしたりするのはむりなんです。だから仕事と恋愛の両立はできません。」

 

リツの言わんとしていることは分からないでもない。御曹司として会社を背負って生きる運命を繰り返し言われ続けたのだ。

本来の優しさや穏やかさとは別の所で、トップに立つ人間として育てられたがゆえに培われたプライドの高さは、たとえ将来的に会社を継がない道を選んだとしても無くならない。きちんとした結果を出さなければ自分自身を納得させられないだろう。

 

「じゃあさ、いつ一人前になんの?」

「そんなの俺にわかるわけないじゃないですか。」

「お前ってさ、周りが認めても自分はだめだって言いそうだけど。」

「それは…。」

 

リツは返す言葉が見つからないようで、少しだけ冷めたであろうほうじ茶をフウと吹きながら啜った。

 

土曜の早朝なのにすでにゴウゴウとひっきりになしに道路を走る車の音がして、それにまぎれて子どもたちが笑う声が聞こえる。

 

夏休みだよなと窓の外を見ると空の色は冷たく見えるほど青かった。

 

「なら、一人前になったかどうかは高野さんが決めてください。」

 

少し間が開いてから唐突に、リツは両手で湯飲みを守るように抱えて視線を上げないままそう言った。

 

濃い茶色がかったほうじ茶がタプンとゆれるのが見えた。

 

「そんなんでお前納得すんの?」

たとえば、たった今お前はもう一人前だと俺が宣言したらどうするつもりなんだ?

そんな意地悪なコトを思いながらそう言うと

 

「高野さんが自分の心の中でそれが正しいって納得するなら俺も納得します。」

 

と今度は顔を上げて言った。

 

それは俺自身の良心とか正義に問うという言葉で、要するにいい加減な答えだった場合、その後のリツの恋愛にはきっと俺は関われないということなのだろう。

 

相変わらず厳しいな…。

 

組んだ足の上に肘をついたまま俺がため息をつくと

「俺は昔も今も未来もたった一人の人しか好きになれませんから恋愛とは無縁です。だから仕事を優先したいんです。」

と今度は幼い日のリツのような弱々しいくせに意思を持った瞳と震える声がした。

 

ハッとして目の前のリツを凝視すると瞬間的に視線を外にそらしたリツは耳まで真っ赤で、『何が恋愛と仕事を両立できないだ!』と思わず叫びそうになっていた。

 

「それってさ、俺のことが好きってことでいいの?」

 

喉から心臓が飛び出しそうに動揺してるってお前分かる?

それどころか体中が心臓の筋肉になったみたいにどきどきしていて、みっともなくも声が上ずり、身体がカーッと熱くなる。自律神経が誤作動を起こして毛穴が開き、発散された熱のせいで身体がぶるぶると震えそうだ。

 

「俺は、ただ今でも初恋の人だけが好きだと言ったんです。聞こえてなかったんですか?」

 

この期に及んでまだ俺を好きって言わないリツからツンな答えが返ってくる。

 

まったくお前ってホント…。

 

むかついたから人と人との適正な距離を越えて、不快だったりどきどきしたりのストレスを感じる至近距離に間合いを詰めると、リツは途端に逃げ腰になって腰を浮かした。

 

ソファーの肘掛って便利だ。逃げようとしたことで隅に追い詰められたことに気づいたのか、リツは後ろ手に肘掛を掴んで顔を青くした。

 

好きって言って欲しい。

遠回しじゃなくてただ好きって、その言葉が欲しい。

 

抱きしめて背を摩り頬にキスをして念じるようにずっとそうささやき続けたけどリツは頑固で、引きずり込んだベッドの上でもどんなに啼かせても、結局それをロにしなかった。

 

 

 

まどろみの中で深く考える。

これで二人の関係は変わったんだろうか。

 

直接的な言葉じゃなかったからまた違うと逃げられたりしたら捕まえるすべが浮かばない。誰かに持ってかれても何も言えない。

 

リツを求めてリツも応えてくれる、そんな二人の関係にまだ足りないと思うのは賛沢なんだろうか。

 

眠気に負けそうになって、目を瞑りなるがままに身を任せていると

「高野さん。寝たんですか?」

と擦れるような、息と声の境目のような小さい小さい声でリツが俺を呼んだ。

 

そう言えばいつだったか、以前にもこんなことがあったような気がする。

 

そうだ…、苦しいとか放せとか。パンツだけでもはきたいとか、そんなこと言って俺の腕の下でリツがじたばたしてたんだっけ。

 

俺はと言えば…、面倒だから寝たふりしてやり過ごしていたら、こいつもまたグーグー寝入ってて、俺もいつの間にかまた寝たんだ…。

 

基本的には、俺は寝起きはいい方で、さすがに隣ではたばたされて起きないほどには鈍感ではない。(リツとは違ってな…。)

 

寝ていることを確信したのか、または本当に寝ているのを確かめたいのかリッがツンツンと俺の頬を軽くつつく。

 

そのつつき方が弱くて、これは本当に寝てたら気がつかないかもしれないと思ったほどだった。

 

都度リツが疑わしげに『本当に寝てるんですか?』と耳に向かって小さく小さくささやくのがおかしい。

ホントは起きてるっていつばらそうか。

 

タイミングを計りながらも不自然でない程度に「ン…。」とか言って身じろぐ素振りで寝たふりを続行しつつリツの期待(どんな期待?)を満足させてやると、唇と頬の微妙な境目に柔らかいなにかが押し付けられる感触があった。

 

え?まさかリツの唇?キスか?

 

さすがにどきりとして目を開けそうになるけど、耳元から「さすがに冷静な時には絶対にむり…。」というぼそぼそと篭った声が聞こえ、俺の顔の横にポスリと何か(頭?)が落ちたのが振動で分かった。

 

平常心を取り戻した俺は『何が無理なんだ』とそろそろネタばらしをしてやろうと目を開けた瞬間…。

 

「高野さん、好きです…。」

 

と擦れて籠ったリツの甘い声が聞こえたのだった。

 

 

 

聞き間違いようのない言葉なのにはじめはそれがやっぱり聞き間違いではないかと疑って、次に本当はこれはすべて夢だったのではないかとも思ったけど、やっぱり耳のすぐ傍で小さいけどはっきりとリツの声がしたのは間違いがなかった。

 

びっくりしていると、丁度顔を横にくるんと向けたリツのはにかんだ桃色の頬と、少しいたずらっ子のように月形に細められた深緑の瞳が迫り、次の瞬間リツはこっちが驚くほどに表情を変えた。

 

赤かった頬はさっと色を引き、瞳はまん丸に見開かれる。

 

「いっ!いつから起きてたんですか!」

 

ガバッと身を起こしワナワナと震える肩はまるで漫画のワンシーンのようで、発せられた言葉は俺が聞いていないかもしれないというささやかな願望を表していた。

 

「いや…、そもそもまだ寝てねーし。」

 

俺の言葉はリツの願いをばっさりと断ち切ったようで「うそ!」と短く叫んで顔をまた布団に勢いよくうずめた。

 

「まあ、もういろいろあきらめたらいいと思う。どうせずっと一緒にいるし。」短くそう告げて、少し上体を起こし、体重をリツの背にかけると「悔しい…。」とリツがつぶやく。

 

「高野さんが百万回好きって言ってくれたら一回ぐらい言ってもいいかもって思ってたのに。」

 

よほど恥ずかしかったのだろう、もう言ってることもメチャメチャで、こんな自分は負けだと言わんばかりに「悔しい、悔しい、」とツンの爆撃を投下してよこす。

 

しかし何と甘いツン攻撃だろう…。

 

 

「100回ぐらいにまけといて。」

背中にチュッチュとキスをしながらそう言うと

「1000回」

と言う。

「110回」

「1800」

「増えてんぞ、150」

「う…、150…、って…。」

 

バナナの叩売りか俺たちは…。

 

「ちゃんと数えておけよ。毎日50回言うからな。」

「う…。」

リツは俺の下からズルリと身体を引き抜くように動いて仰向けになり、不本意そうに口をー文字に結んでいた。

 

そんなに嫌がんなくても、三日に一回ぐらい言ってくれてもいいんじゃね?

もう一度上からリツを見下ろした俺の顔は少し曇ったことだろう。

さっきまでは縁日の風船のようにプカっと浮かぶんじゃないかと思うほど嬉しいかった気持ちが少しだけしぼんだ。

 

「顔を見てきちんと言いたかったのに…。」

 

俺を見上げるリツの細い指が俺の顎をすっとさすり、羞恥に揺れていた視線はきっちりと俺を捕らえた。

 

「好きです。高野さんのこれからを全部俺にください。」

 

リツがきっぱりとしたアルトの声でそう言って、俺の唇を引き寄せ触れるだけの軽いキスをした。

 

その愛しさに、さっき致したばかりのはずの身体が、絞られるような欲情に痛む。

目がしらが熱くなって雫が一粒垂れ、どれほどこの言葉を望んでいたかが自分でもわかった。

 

ポスリとリツの身体に身を乗せて手当たり次第に何もかもをかき集めるような抱擁をすると、リツが俺の肘にも唇でさするようなキスをした。

 

「高野さんに触っていいですか?」

 

返事を待たずリツの手が俺の脇腹辺りで動く。

 

筋肉の境目に沿って人差し指が動き、親指がそれを追うように摩り、背骨の窪みをなぞりながら上へと上がり、五本の指が肩甲骨のへこみをぐっと押した。

 

「運動もしてないくせに、なんでこんなきれいな身体をしてるんですか?」

 

身体を起こしたリツが俺の背を支えて横に転がし、互いの身体を反転させる。

目の前には先ほどの情事の証の赤い花びらが何枚も舞って見えた。

 

身体をまたいで座ったリツが半分脱げかけている俺のシャツに手を掛けて、胸を露にし、首を伸ばして胸の尖りを口に含んでチュッと吸った。

 

男の乳首なんて吸ったって、と思いながら瞬間身体の芯を有機質の柔らかくて尖ったものが走るような感覚がした。

 

いつもリツのその小さな存在をまさぐるとリツが身体を跳ねらせる姿が脳裏に浮かぶ。

 

やべえ…、俺ひょっとしてこのままやられちゃうのか?

 

ちょっとだけ湧いた困惑を悟られないように平常心を装う顔をすると「気持ちよくないんですね。」とリツががっかりしたような声で言った。

 

「嫌だって言ってるのにって、高野さんから強い快感を与えられて浸ってしまっても…、それはみんな高野さんのせいだって自分を偽っていました。

でもこれからは、二人でちゃんと気持ちよくなるセックスがしたいです。俺も高野さんを悦ばせたい。」

 

リツの言葉にどきりとする。

 

感情が豊かすぎてそれにあう言葉を選びきれないのだと無口になる瞬間のリツを見ていた。

そのリツが今俺に自分の心を語ってくれている。二人でと言って未来を告げてくれている。

 

 

「そうだな。二人でだな…。」

 

リツの両手が俺の顔の横にポスリと置かれて、逆光の光の中でリツの顔が近づく。

 

『キスされるんだな』という期待に嬉しさが湧き、同時に愛しさが切なさを呼んだ。

相愛の相手から与えられるキス…。

 

嬉しすぎて泣きそうだ。

 

重なったリツの唇は緩く強く緩急をつけながら吸ったりさすったり食んだりと忙しない。

まるで別の生き物のようなそこはリツと俺の外側と中側を一つに繋げる。

 

強く噛みたいのに躊躇するのは小さいころ食べた風船に入ったアイスのようだ。

パツパツと弾力があるのに中身はドロリとしていて、はじけさせたいのにはじけた後を想像して慎重になってしまう。

 

でも食べ始めると甘いそれに夢中になって、チュウチュウと貪るようにすべてを身体に収めてしまうまで止まらない。

 

リツが唇をツイっと歯で甘噛みをする。上唇も下唇もそのピリッとした刺激に陶酔する。

柔らかいばかりの咥に歯があるのは絶妙だ。ねっとりとした練り切りの和菓子の中の乾燥した果実の皮のような尖りが甘さにけじめをつける。

 

柔らかい舌でさすって押して湧くじれったさを、緩く噛んで強く噛んでと応えてやれる。

舌の長さが足りない。もっと奥まで行けたらもっと与えてあげられるのに。

 

ああ、人ってなんて欲張りなのだろうな…。

 

リツの羽織っている俺のシャツはリツの身体を軽く覆っていたけど中は先ほどの情事をまだ色濃く残している。

一旦冷えた筈の身体がいたるところで俺を求めているのが分かる。

 

見えない部分が見えるような気がして、でもやっぱり見えなくて、人の欲情はこうやって溢れていく。

 

心はつながった。唇ももはやお互いの凸凹に沿うのではないかと思うほど一つになってる。これ以上貪ったら無くなってしまうのではないか?

ならば他のところでもリツと繋がりたい。

 

今までと同じなのにやっぱり違う。

飢えて乾いてそれを満たすものではなく、与えられる幸せに自分も与えたいと思ってる。

 

「抱きたい。リツをもっと気持ちよくしたい…。俺も気持ちよくなりたい…。二人で一緒に…。」

 

かつての俺たちは似たような言葉から始まった。だけどあの時の俺はきっと独りよがりだったのだろう。

 

人生において終わりは呆気なく訪れる。手にしたものが目の前で崩れていく瞬間の頼りなさ、そして湧く絶望。追いすがることもできない喪失感。それは終わったのだと分かる瞬間だ…。

 

しかし出来事がいつから始まるかを知るのは難しい。

 

宣言して始まることは少なく、あとから思い返してみて初めてあの時だったと分かることばかりだ。

 

二人にとっての明確なはずのその時間は呆気なく散ってしまった。だけどまた始まりが訪れる。そしてこれからは始まる事しか考えたくない。

また今日から止まっていた二人の時間が動き出す。

 

 

▽

 

「練習の成果が出てるな。」

 

そう言いたかったけど、口からは自分のモノとは思えないような切羽詰まった喘ぎに似た息しか出ない。

一番心もとない場所を相手に預ける行為は信頼以外の何物でもない。きっと歯を立てられればあっという間に噛み切られてしまうのだろう。

 

タプタプとした柔らかい場所はリツの手の平で包み込まれ、程よい強度でクリクリとまさぐられ、会陰が引っ張られる微妙な感触が普段は気にもしない裏に潜んだ感覚を呼び起こす。

 

様相を変えている起立は、はじけないようにリツにしっかりと摑まれながらもてあそばれ、今日何度目か分からない切羽詰まった状況になっていた。

 

「リツ…、リツの中で終わりたい…。」

 

やっとのことでそう言うと、股の間で楽しそうにしていたリツが俺を咥えたままで顔を上げる。

 

ヤバイ…、視線だけでイキそうだ…。

 

俺から離れ膝立ちになったリツが前髪をかき上げながら少し後ろを振り返り、自分の後ろの窪みに手を這わせる。

 

指でつついたのだろうか「あ…、」と小さい声がして滴が内またを伝ってシーツに落ちた。

 

過去の熱に今が掻き立てられる。

思い出したのかその熱にリツの中心がグっと力を取り戻したのが見える。

 

「いっぺん出す?」

そこに手を添えて軽く扱いて聞くと直接的な刺激にピクリと眉を顰めてから

「中で…。」

と暗に外の刺激だけでイキたくないとリツが答えた。

 

リツの身体を引き寄せて背をスリスリとさすると、ホゥッと熱い息を首筋の近くで小さく吐く。そんなささやかな刺激も今の自分には起爆剤になるから始末に悪い。

 

リツの身体に巻き付いているシャツを丁寧に脱がすと、リツも果物の皮でも剥くように俺のシャツと肌の間に手を入れて剥いでいった。

 

熟れた桃のような粘度の高い白い部分と、少し皮の赤みを残した色の違う甘い部分のような身体が目の前に現れて喉が鳴りそうになる。

 

食べたら甘いんだろうな。汁が垂れて体中がべっとりするんだろうな。食べだしたら全部貪るまで止まらないんだろうな…。

 

甘そうな色の違う突起を下からペロリと舐めあげると添えられていた手に少し力が入り、リツの身体がピクリと跳ねる。

背を支えている手に力を入れて引き寄せて唇を密着させ、甘く膨らんだそこを口いっぱいに含んで吸うとリツの口から「ぁん…、」と息が漏れた。

 

密着した腹と腹の間には互いの熱をいっぱいに含んだ起立が重なる。それはフルフルと震えて、激しい唇のキスよりむしろ初々しいかもしれないと感じ、意識してすり合わせるようにするとまたリツが熱い息を漏らした。

 

男にしては華奢な身体だ。でも骨格はしっかりしていて掴んでも引いても折れそうには思えない。

それをいいことに溢れすぎて着地場所もないほどの愛しさで力を込めて抱きしめるとリツも頭にしがみついて来た。

 

好きが溢れて止まらない…。

 

まだ柔らかくて暖かい入口に、自身の起立に手を添えてあてがうとリツが少しだけ身体をずらしそれを収める。肩に乗っている指に少し力が入って少しずつ腰を落とすリツの顔が苦痛とも悦びともつかないようにゆがむ。

 

一番深く差し込まれたところでリツがフルっと身震いをして抜き差しをしようとしたのが分かった。

しかしその動きを腰を掴んで止めて再びギュッと抱きしめるとリツの腰がブルブルと痙攣するように震える。

 

「た、高野さん…。」

 

名を呼ぶ声に困惑とじれったさが見える。

 

「動いて…。動きたい…。」

 

リツが懇願するように耳元でそういうけど俺はまだもう少しこの暖かさに浸っていたかった。少しでも動いたら終わってしまうのが分かったから。

 

「もう少しだけこのままで…。」

 

リツの輪郭をなぞるように両手で腰を摩り小さな尻を掴んで、顎を唇で舐めるとリツの中がキュッと締まる。

律動よりもささやかなその動きは今の俺には甘露でしかない。

 

クリっと噛んだ耳朶の感触は、寒天で包まれた駄菓子のようで、中に酸味の混じった餡を蓄えているのではないかと連想させる。

耳のひだや窪みに舌を這わせるとリツが逃げようとして身体をよじる。

 

でも逃がさない。

リツが本当に嫌がっているわけではないと知っているから。

 

「や、あ…、んっ…。高野さん。もう…。」

 

互いにもう限界を悟り、リツを仰向けに転がしながら体重をかけるとリツの甘い声は断末魔の悲鳴のような喘ぎ声に変わっていった。

 

腕に刺さるのはリツの爪。

容赦なくお前の印を刻んでくれ。

 

もっともっとと思っているのに、張り詰めた互いの劣情は呆気なく終わりを迎えてリツのあとを追うように放った後は原始的な愛しさだけが残っていた。

 

「気持ちよかったですか?」

 

リツが確かめるように上がった息の合間に聞く。

 

「お前は?」

 

答える代わりにそう問うと

 

「死んでもいいと思うぐらいには…。」

 

と返って来た。

 

 

同じだな…。

 

 

リツの髪の毛をツンッと引きながらそんな答えを俺も返した。

 

 

▽

 

朝目を覚ましてからは身体にずっと感じていた冷えは消えていた。

 

先輩がリツに寄り添いリツは大好きな先輩とともにあの場所で幸せになるのだろうか。

 

あのどんよりとした冷えた気持ちはイギリスからついてきたものだった。昔のリツに支配されていた時間、俺は俯瞰するようにリツと高野さんを見ていた。

 

明るく笑い、美味しいと喜び、高野さんが笑ってくれるならと甘えてすべてをゆるす素直なリツは高野さんに想いをぶつけた。

このままのリツを高野さんが受け入れたのだったら、きっと今度は俺が冷たい塊となってあの桜の元で泣き暮らしたのだろう。

 

悔いを手放せないままに。

 

でも高野さんはそれを受け入れずに今の俺を選んでくれた。

 

好き、大好き、もっと好き、言葉にできないほど好き。好きの最上級はどんな『好き』なんだろう。

 

 

ください。

あなたのすべてを。

それってなんてわがままなことなんだろう。

でも、うれしい事もしい楽ことも、

辛いことも苦しいことも、

可能性も才能も、

全部俺がもらったから。

 

高野さんが涙をー筋流して俺に全部くれたから。

 

全部全部、俺のもの…。

 

 

目を瞑ると桜の木の下で肩を抱かれたリツが先輩と笑っているような気がした。

 

 

 

 

▽

「りっちやん、何でイギリス土産が東京バナナなの?」

 

休み明け、間に合わせることもできなかった俺は諦めて駅中で買ったよくあるものを携えていた。

 

「あ、木佐さんすみません。イギリスからとんぼ返りでお菓子さえ買えなかったんです。」

それは嘘じゃない。

一刻も早く帰りたかったから。

 

「ところで木佐さんはどこかに行かれるんですか?」

さっさと話題を変えよう。

 

「え、あ…、北海道に…。」

年下に見えるほどの童顔の先輩はなぜか急に真っ赤になった。

 

「へえ、いいですね。涼しそう。」

当たり障りのない言葉を返すと

「東京バナナ美味しいね。

と変な木佐さんは急に挙動不審になって東京バナナを何個も口に放り込んだ。

 

俺達の夏休みは終わった。

 

色々あったけど過ぎてしまえばあとは日常だけだ。

 

 

 

そして残った半分の夏休みは暦の上では秋になっている。

何が違うのか分からないけどきっと違う夏休みになるはずだ。

 

それを二人で探すための新しいスタートが今始まった。

 

 

 

おしまい。

 

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