※この作品はR-18です。

BLEACH -とある少年の女難-   作:朱夜

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第10話 大和撫子? いいえ、狼です

卯ノ花隊長からのアプローチ宣言から一週間が経った。

この一週間の間、隊の宿舎で朝を迎えると何故か隣で俺の寝顔を眺めていたり、

薬草を取に行くと言う名目で連れ出されたり、

仕事が休みの日には卯ノ花隊長の自宅にご飯を呼ばれたり。

 

気疲れするような一週間を終え、今日は一人で修業を行っている。

 

「ふぅ……」

 

具象化された俺の斬魄刀は霧と例えるのが分かり易い。

重さは無く、触れる事すらできない。

 

『妾に触れられぬはお嫌ですか?』

 

頭の中に響く声は、目の前の具象化された俺の斬魄刀の声だ。

嘲るような笑い声を上げ、高い声で俺を挑発する。

 

「目に見えても触れない物程怖いものはないからな」

 

『ふふっ、主様は妾に触れたいとおっしゃるのですね?』

 

「触りたいとは言ってないだろ」

 

『妾に触れたければ、妾の本質を見抜いてくださいませ……』

 

今の主様にはまだ無理でしょうが、と声を残し、刀の形状へと戻る。

形無き刃、それが俺の斬魄刀なのだろうか?

見た目は浅打、しかし、始解して能力も使える。

 

俺が初めて始解を把握(・・)したのは四番隊での遠征任務の時だ。

夏の時期に流魂街で熱病が流行り、診察に行った時の帰りだった。

 

虚の群れと戦闘になり、そこで初めて大虚と戦闘になった。

大虚の放つ虚閃から逃げ遅れた隊士を庇って攻撃を受けた時だった。

一瞬にして虚閃を呑みこんだのだ。

隙が出来た大虚へと斬りかかった時、切っ先から虚閃が放たれ、

大虚を消し去ったのだ。

 

その時初めて、俺は始解の能力を把握した。

それまで自分の斬魄刀の能力がイマイチ分からなかったのだ。

具象化してもコイツは答えてくれなかった。

 

霊圧を乗せて斬撃を放つ放出系とも違い、

身体的上昇を見せる物とも違う。

自分が四番隊と言うこともあり、治療系能力かとも思ったがそれも違った。

 

色々な事を試したが、分からなかったのだ。

相談に乗ってくれた人は口々に「斬魄刀に聞け」と言うが、

俺の斬魄刀はそんな殊勝な性格の持ち主ではなかったらしい。

 

ただ、なんとなくコイツの本質はつかみ始めている。

 

(相手の能力を悉く無効化し、跳ね返す……反射と言うより、呑みこみ、吐き出す…まるで、飢えた動物だ)

 

これ以上進展は無さそうだ、鞘に刀を戻し、隊舎へと戻った。

 

 

 

翌朝の事だった、四番隊隊舎に重症を負った日番谷が運ばれてきた。

同じく次々と運ばれる十番隊の日番谷の部下達。

 

「勇音、黒沼三席」

 

「「はっ!!」」

 

「十番隊が向かった現場へ急行し負傷者の手当てを、私は重傷者を見ます」

 

「「分かりました!!」」

 

四番隊に戦闘の心得のある部下は少ない。

この場合戦闘よりも治療に優れた部下を連れていくべきなのだろう……。

 

「く…ろ………ぬ…」

 

治療されている日番谷が俺を呼んだ。

 

「何だ?!」

 

「気を………つけ……ろ」

 

日番谷はそれだけ言って、瞼を閉じた。

俺は日番谷を見つめ「分かった」と呟く。

 

「急ぎますよ! 黒沼三席!」

 

「ッ! はい!」

 

俺と虎徹副隊長を含め、20人を連れて俺達は隊舎を出た。

隊舎を出てすぐさま現場に瞬歩で向かうが、後ろを走る隊士達が遅い。

 

(このままでは……)

 

「黒沼三席! 先に行ってください」

 

「虎徹副隊長……しかし!」

 

「今は現場に残っている人達の人命救助が優先です!」

 

「分かりました、先に向かいます!」

 

霊子で足場を強く固め、踏みしめる。

一瞬にして虎徹副隊長達を置き去りにした俺は、

十番隊が虚と戦っているだろう現場へと急行した。

 

 

 

 

到着した現場では激しい戦闘が行われていた。

十番隊の隊士がバラバラになって戦っている。

 

(集団戦闘をしないのではなく、虚によって分断されたか……)

 

「君臨者よ、血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ、蒼火の壁に双蓮を刻む、大火の淵を炎天にて待つ!! 破道の七十三! 双蓮蒼火墜!」

 

両手の先から直径5メートルはある蒼い炎の弾丸が虚の群れへと向かう。

着弾した虚を呑みこみ、更に波となって虚を呑みこんでいく。

 

「縛道の六十二! 百歩欄干!!」

 

残った虚に向け、複数の光の棒を飛ばし、その場に固定する。

 

「援軍かっ?!」

 

十番隊の隊士が固まり、こちらにやってくる

 

「四番隊三席、黒沼だ、現在の状況は?」

 

「負傷者多数、重傷者は日番谷隊長と共に先程瀞霊廷へ、副隊長の指揮の下戦闘中です!」

 

「分かった、俺は一足先に来ただけで副隊長と隊士はまだ少しかかる、その間虚を食い止められるか?」

 

「やってやるさ」

 

十番隊の席官だろう、棍棒になった斬魄刀を肩に担いでいる。

 

「任せる、負傷者はどこだ?」

 

「こっちです!」

 

十番隊の隊士に案内を頼み、負傷者の元へと急ぐ。

負傷者の中にはこれまでの戦闘で深手を負った者が多く、

ここでは完全な治療が出来そうに無い。

一人一人治療して周り、致命傷だけを塞いでいく。

 

離れた所では虚の叫ぶ声と、十番隊隊士の戦う声。

 

『主様、主様』

 

こんな時になんだ、斬魄刀からの声にぶっきらぼうに答える。

 

『妾が考えるに、このまま治療を続けるより主様が戦った方が良いかと思われますが』

 

(馬鹿を言うな……俺は四番隊の死神だぞ、戦いに来たのではなく治療しに来たんだ)

 

『ですが、このままでは主様の霊力が尽きるまで治療する事になりますよ?』

 

斬魄刀の声に周りを見渡せば、新に担ぎ込まれてきた負傷者が多く見て20人は居る。

 

『ほらっ、ほらっ! 主様! 戦いましょう!』

 

(お前は一体何がしたいんだ……)

 

『分からないのですか?! 妾の本質が! あの時妾に与えてくださった甘美な物(・)を!』

 

あの時とは、一体何時の事なのか………。

 

『主様、主様は治療になど向いていません、それが分かったからこそ、主様の隊長も剣を教えたのでしょう?』

 

(卯ノ花隊長が、俺に剣を教えた理由……? 弟子だからじゃないのか? 何か意図があるのか?)

 

ここに来て、俺が剣を教えられた理由を問われる。

何故だ、何故コイツはこんな時に……。

 

「黒沼三席っ!」

 

はっ、と周りを見渡すと、手が止まっていた。

そして、駆け付けた虎徹副隊長率いる19名が治療に当たっていた。

 

「どうしたのです! 黒沼三席!」

 

「あ、いえ……すみません、治療に『主様! 戦いましょう!』っ! 黙ってろ!」

 

突然斬魄刀に向かって怒鳴った俺に、虎徹副隊長が怪訝な顔をする。

 

「黒沼三席?」

 

「すみません、虎徹副隊長、コイツが戦えとうるさいもので……すぐに治療に当たりますから」

 

そう言って治療の途中だった十番隊の隊士へと向かうと、虎徹副隊長が待ったをかけた。

 

「黒沼三席、貴方の戦闘能力は四番隊とは思えない程の物だと存じます、ここは十番隊と協力して、虚を殲滅してはくれないでしょうか?」

 

何を言い出すのだ、俺は虎徹副隊長へと振り向いた。

 

「このまま戦い続けても何れ限界が来ます、そうなれば治療どころではありません」

 

「しかし……俺は四番隊の……」

 

「確かに、四番隊は戦闘向きではありません、しかし、黒沼三席はどうでしょう?」

 

虎徹副隊長は、俺が卯ノ花隊長から剣を教えられている事を知っている。

治療技術だけでなく、鬼道も教わっている事も……。

 

「ッ……分かりました」

 

「お願いします、治療は私達でやりますから……ただ、早くしてくれると助かります」

 

「了解……」

 

斬魄刀に手をかけた途端、弾けるような声が頭の中に響く。

 

『戦い! 戦い! 戦い! さぁ、さぁさぁ、さぁ! 主様! 早く戦場へ向かいましょう!』

 

あぁ、うるさい……。

大和撫子のように御淑やかな声で話すと思えば、

興奮した獅子のような勇ましさを見せるコイツ……。

いや、最早飢えている。

 

「行くぞ……飢狼」

 

獰猛な、飢えを満たせと叫ぶ咆哮が、聞こえた気がした。




遅くなってすみません、10話投稿です。
最近暑くて大変ですね、皆さんは熱中症とか大丈夫ですか?

千歳の斬魄刀の名前が「飢狼(がろう)」に決定しました。
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