大幅に変えた訳ではありませんが、一度目を通して頂けると嬉しいです。
読者様方にはご迷惑をおかけしますが、今後ともよろしくお願いします。
あの騒動から半年。
霊術院で必要な過程を収めた俺と日番谷は揃って護廷十三隊入隊試験に合格、
晴れて死神となった。
俺は特に希望しなかったため、四番隊に配属、日番谷は松本のいる十番隊に配属された。
草冠、草冠宗次朗については、あまり多くの事を知らない。
日番谷からは、同じ斬魄刀を持ったがために、戦ったとだけ聞いている。
恐らくは、もう生きていないのだろう。
少なからず時間を共にした仲だった事もあり、悲しさを覚えた。
四番隊では主に雑用をこなしている。
「黒沼ぁ~、終わったかぁ~?」
「はい、今終わりましたよ」
倉庫に積み込んだ薬草を確認してもらい、合格を貰う。
「お前は優秀だなぁ、そうだ、隊長が呼んでたぜ、行ってこいよ」
「分かりました」
俺は早足で卯ノ花隊長のいる執務室へと向かう。
四番隊に配属された日、皆の前での挨拶の後、卯ノ花隊長からのお話の最中に、
俺を卯ノ花隊長の正式な弟子として育てる事を公言させられた。
いきなりそんな事を言ってしまい、大丈夫だろうかと心配していたが、
副隊長の勇音さんや席官クラスの人には話しが通っていたのか、反論されなかった。
一般隊士も、長く所属しているだけあって卯ノ花隊長の目に叶うことが、
どれだけすごいことか理解している様だった。
しかし、俺と時同じくして配属された同僚にだけは、理解されなかった。
執務室に向かう間、同僚の陰口を耳にしてしまい、少しだけ気落ちした。
「卯ノ花隊長、黒沼千歳、ただいま馳せ参じました」
「ご苦労様、お入りなさい」
扉の前で到着の旨を伝え、入室の許可を貰う。
中に入ると、お茶を用意している卯ノ花隊長がいた。
「疲れたでしょう、まずはお茶を飲んで一息入れてください」
用意された茶菓子と一緒に、卯ノ花隊長からかけられる言葉に返していく。
俺がまずここに来ると、卯ノ花隊長はお茶と茶菓子を用意する。
それから1時間程かけてお茶を楽しみつつ、隊での仕事について話すのだ。
そして時間が経つと、卯ノ花隊長の指導の元、鬼道による治療術を教えられるのだ。
「千歳さんは優秀ですね、先週教えた事をもう習得しています、少し妬けてしまいます」
「卯ノ花隊長の教え方が上手だからですよ、それに、隊長直々に教えてもらっているのに、上手くできなかったら笑われてしまいますから」
自傷気味に笑うと、卯ノ花隊長に頬を摘まれた。
「誰だって最初から上手くできる人はいません、千歳さんが出来るのは、自身の才能です」
眉間に皺をよせ、怒っていますと言う顔を作っている。
「すみまへん……」
素直に謝れば、頬が解放された。
「分かっていただければ結構です」
花が咲くような笑顔を向けられ、俺は顔が赤くなるのを抑えられなかった。
「顔が赤いですよ? ふふ、可愛い人ですね」
頭を撫でられ、余計に顔が赤くなる。
あらあらと、困った様に言いながらも、顔は面白がっている。
やられっぱなしは癪だ、お返しとばかりに卯ノ花隊長の手をどけ、抱き着いてやった。
「ち、千歳さんっ?! な、なにを……」
「こうやって卯ノ花隊長に甘えるの、久しぶりですね」
「な、な、なっ」
驚き余って言葉が続かない卯ノ花隊長を、下から見上げる。
「好きですよ、卯ノ花隊長」
ぼんっ、と言う音が聞こえそうなぐらい、
顔を真っ赤にした卯ノ花隊長の表情に満足し抱き着くのを辞めた。
「あ……」
すぐに離れてしまったのが嫌だったのか、今度は卯ノ花隊長が俺を抱きしめた。
「わ、私も……好きです、千歳さん」
今度は、俺の顔が弾けそうなぐらい赤くなった。
無言のまま抱きしめられていると、卯ノ花隊長が離れ、両手で俺の顔を包んだ。
白魚のような細く、柔らかい手で包まれ、俺の顔ぐらい熱い指に腹の底がきゅっとなる。
そうして近づけられた卯ノ花隊長の唇に、俺の唇が奪われた。
「んっ……」
卯ノ花隊長の舌が強引に俺の唇をこじ開け、俺の咥内を動き回る。
押し返そうにも、巧みな舌使いで俺の舌を絡め取られ、蹂躙されてしまう。
「ひゅっ……んっ……」
卯ノ花隊長の左手が俺の後頭部を抑え、右手は腰に回されている。
逃げられないこの状況下で、誰かきたらまず言い逃れはできない。
俺は何とか顔を離し、息を整えながら卯ノ花隊長に待ったをかける。
「誰か、来たら……言い逃れできません」
「そう……ですね」
残念そうに答えた卯ノ花隊長は、俺から離れ、溜息をついた。
「私が隊長でなければ、千歳さんとこうする事を、誰にも咎められないのですが……」
な、何て事を言いやがるんですか貴女は……。
独り言のつもりなのだろうが、その声は大きく、俺にもハッキリと聞こえた。
求められている。
それならば、答えてやるのが男と言う生き物だ。
「は、早く昇進して、卯ノ花隊長と肩を並べられるぐらいになってみせます……だから、待っていてくれませんか?」
期待に応えるつもりで放った言葉、卯ノ花隊長は一瞬嬉しそうな顔を浮かべ、
次には厳しい表情を浮かべた。
「私と肩を並べると言うことは、隊長になると言うことです……貴方は、私と共にあるために隊長を目指すのですか?」
卯ノ花隊長の言った言葉は、隊長として、死神として、俺の在り方を否定する言葉だった。
死神は尸魂界と現世の魂魄を均等に保つことが役目の調節者、
好きな女のために隊長になるなど、在ってはならないのだ……。
「すみません、今の言葉、取り消します……俺は、卯ノ花隊長のような立派な隊長になります」
だから……。
「その時まで、貴方を待ちましょう……」
ありがとう、卯ノ花隊長。
お礼は、最後とばかりに交わした口づけのみ。
この時を最後に、俺は卯ノ花隊長と親密な関係になる事はなかった。
隊の仕事も十全にこなし、卯ノ花隊長の修行についていく。
俺が隊長になると宣言したためか、卯ノ花隊長の修行に一つの項目が足された。
それは剣道だ。
卯ノ花隊長は剣道を特技としており、その腕は護廷十三隊でも総隊長に匹敵する程だとか。
それが真実なのか定かではないが、修行の時に向けられる殺気や、容赦のない攻撃は、
卯ノ花隊長が達人以上の剣の使い手であることを身をもって知ることとなった。
四番隊に配属されて3年が経った。
そんなある日の事である。
数日前に十番隊隊長として任命された日番谷が、四番隊に訪れた。
「久しぶりだな、黒沼」
「日番谷か? どうしたんだ、四番隊に来るなんて、怪我でもしたか?」
「はぁ、時間ができたから来てみれば、お前は相変わらずだな」
どうやら様子を見に来てくれた様だ。
俺は日番谷を四番隊の自室に招き入れ、お茶を出した。
座敷に対面で座ると、日番谷が口を開いた。
「聞いたぞ、卯ノ花隊長直々に稽古をつけてもらってるって」
「あぁ……それにしても、日番谷が隊長か、すごいじゃないか」
「少し前に隊長に任命された、俺が史上最年少らしいが、正直言って自信がない」
日番谷は肩を落とした。
俺はその姿に、溜息をついて言い放った。
「ついてくる隊士が可哀想だな」
慰めの言葉を期待したのだろうか? 同期で仲の良かったのは俺と草冠、
そのうち草冠は日番谷自身の手にかかっている。
それに、隊長を目指すと公言していないものの、隊長を目指している俺には、
今目の前で隊首羽織を着て、更に自信なさげな顔を見せた日番谷に苛立ちを覚えた。
「何?」
「自信を持てないなら今すぐ隊長なんて辞めちまえ、隊士も、自信がありませんなんて泣き言ほざく隊長に命かけるなんてできないだろうよ」
隊長は、その隊の象徴であり鏡だ。
どんな状況でも隊士の前で弱い姿を見せてはならないのだ。
「てめぇっ! 誰に物言ってやがる!」
「誰って、お前だよ、日番谷」
「さっきから気になってれば、俺はもう隊長だ、日番谷隊長と呼べ」
俺が日番谷と呼び捨てている事に腹を立てたのか、自身を指して言った。
さっきまで隊長と言う自覚も、自信もないと言っていただけに、この言い様には流石の俺も腹を立てた。
「断る、今のお前は誰が見ても隊長だなんて思わない」
「何だとっ!」
「おまけに、今のお前なら、俺でも勝てるな」
ふつふつとこみあげてくる怒りに、日番谷は無意識の上に霊圧を上昇させている。
「試してみるか?」
背中の斬魄刀に手をかけ、更に霊圧を上昇させる日番谷。
自分が認めていなくても、隊長に任命されただけあって、霊圧の重さが異常だ。
「隊長が一般隊士に向けて剣を抜くか?」
「はっ、席官なら十分だろうが」
なるほど、納得。それなら問題ないだろう。
俺は斬魄刀を手に、立ち上がる。
今はとにかく目の前でうじうじしてる日番谷をぶちのめしたい。
「場所を変える、ついてこい」
日番谷が部屋を出るのを、後について出ていく。
隊舎を出る所で、副隊長の勇音さんが門を通ってきた。
「あれ? 日番谷隊長じゃないですか、どうかされたんですか?」
事情を知らない勇音さんは、日番谷と、その後ろにいる俺を見て言った。
「あぁ、ちょっとこいつ借りるぞ」
「黒沼三席をですか? 構いませんが……」
いつも通りなら、この後少し時間が経って、卯ノ花隊長による剣道の時間だ。
「すみません虎徹副隊長、卯ノ花隊長には、日番谷隊長に呼び出されたと伝えてくれませんか?」
「分かりました、そういう事でしたら伝えておきますが……黒沼三席、黒蜜屋で和菓子を買って帰られたほうが良いとだけ、言っておきます」
勇音さんの言葉に疑問符を抱きつつ、俺は「じゃあお願いします」と頭を下げて門の外で待っていた日番谷へと近づいていく。
「忘れないでくださいね……」
勇音さんのつぶやきは、俺に届くことはなかった。
場所は瀞霊廷の外れ、周囲を十分に見渡せる荒野にやってきた。
「てめぇに隊長の力ってのを見せてやる」
そう言って自身の斬魄刀、氷輪丸を抜いた日番谷。
「今のお前は隊長じゃねえよ」
同じように斬魄刀を抜いた俺が対峙する。
お互いに霊圧を上昇させ、どちらともなく一歩を踏み出した。
「せいっ!」
「はぁっ!」
気合と共に、刀を合わせた。
時間になっても、千歳さんが来ない……。
心配になって部屋を出ようとしたら、扉の前に勇音が立っていました。
「どうしたのです? 勇音」
「あ、隊長……その、黒沼三席なんですが……」
私は勇音から、千歳さんが十番隊の新隊長、日番谷冬獅郎に連れていかれた事を知る。
彼等が院生時代の同期であることを、千歳さんの話しで聞いていた私は、
久々に会うのであればと納得した。
(ですが、訓練を放り出すとはいただけませんね……)
少々躾が甘かったのかもしれない。
そう考え、何か良い案は無いかと考えた時だった。
「これは……」
どこかでぶつかる巨大な二つの霊圧。
相当な距離をあけているのか、勇音には感知できないようです。
「どうかしましたか? 隊長?」
「勇音、日番谷隊長は何と言って黒沼三席を連れていったのですか?」
「借りるとだけしか……」
ほう、私の千歳さんを借りると言っておきながら、霊圧をぶつけ合うとは……。
例え同期であり、共であろうとも見過ごす訳にはいかなそうですね……。
「勇音、私は少し出ます、後の仕事は任せましたよ」
「えっ? 隊長? 他の仕事って……全部ですか?」
「私が戻ってくるまでで構いません」
勇音に構う一分一秒が面倒になり、私はおざなりに指示を出して部屋を出た。
「肉雫唼」
斬魄刀を解放し、知る限りではエイに似た生き物となった肉雫唼の背に乗ると、
移動を開始する。門の上空まで来ると、背後から覚えのある霊圧が複数やってきました。
「卯ノ花隊長も気づいたのかい?」
先に声をかけてきたのは京楽隊長だった。
後に続くのは浮竹隊長、二番隊の四楓院夜一隊長だった。
四楓院夜一の後ろに居るのは、千歳さんが入隊する前に届け物をしてくれた女性死神だった。
「えぇ、私の部下と、この間任命された十番隊の隊長のようです」
皆を肉雫唼の背に乗せると、浮竹隊長が口を開きました。
「一体何をしているんだ……この霊圧から見て、戦っているようだが……」
「新隊長任命祝いでもあるまいな、卯ノ花隊長の部下と言うことは四番隊、戦闘には不向きだろうに」
「すみません、すみません」
呆れる二人と必死に謝る一人。
届け物をしてくれた女性死神は、十番隊の者のようです。
私はその死神の肩に手を置いた。
「悪いのは貴女ではありません、事情はどうあれ隊長が剣を抜いたことが問題なのですから」
追い打ちをかけたつもりはないのですが、女性は「あのクソチビめ」と悪態をついていた。
「所で、貴女は十番隊の?」
「はい、十番隊副隊長の松本乱菊と申します」
よく見れば、左腕に腕章をつけていた。
松本副隊長は私達を見渡し、ある事を語り始めた。
「十番隊は今、前隊長戦死の事で内部分裂を起しています、新隊長の日番谷隊長はなんとか隊を纏めようとしていたのですが……」
そこで一旦言葉を切るあたり、纏まる事はなかったのでしょう。
「隊士は隊長の言葉を聞くどころか、隊長を認めようともしませんでした……任命されたばかりで相談できるような隊長方もおらず、旧知の仲であった黒沼千歳に会いに行くと言って出ていかれたのです」
それがどうして、と松本は洩らした。
松本副隊長には心苦しいですが、私は心当たりがあります。
「嫉妬ですか……」
溜息をつけば、京楽隊長と浮竹隊長が反応を見せました。
「ん?」
「何がだい?」
「黒沼三席は隊長となる事を目標に目下修行中です、そこに現れたのが自信も、誇りも持たない日番谷隊長であった事に憤慨し、嫉妬したのではと思ったのです」
「隊長を目指すとは大口じゃのう」
「そうだねぇ、それに隊長ってそんなに良い物じゃないと思うけど」
千歳さんの目的を知っているがために、説明することはできる。
しかし、これ以上語るのは躊躇われた。
「とにかく急ぎましょう、大事になる前に」
私はそう言って、肉雫唼にもっと早くと指示を送るのです。
110年前の十番隊の隊長には志波一心、つまり原作主人公の父親、黒崎一心だったのですが、既に戦死扱いです。
ごめんね一心さん、でも作者、アンタ嫌いじゃないよ