『
アイドルを上手にプロデュースするために!!
1、その子のアピールできる良いところ、その子らしさを磨きましょう!詳しくはP3から!
2、気持ちよくアイドルができるように、色々なサポートをしましょう!詳しくはP13から!
3、オーディションで勝てるように、出るオーディションは考えましょう!詳しくはP19から!
4、いろんなところから声がかかるように、コネクションを作りましょう!詳しくはP28から!
5、アイドルのことを誰よりもプロデューサーさんが信じてあげましょう!一番大事!!
』
ちひろさんがすでに声をかけていたらしいアイドル候補生とやらを出迎えに行ったので、とりあえずちひろさん直筆のプロデューサーノートの1ページをめくってみたら、思ったよりもしっかり作りこんであるようだった。まだ1ページ目しかみてないが端的にまとめてあるようで何をすればいいのかぐらいは把握できそうだ……もちろん実際にやってみないとわからないことだらけだろうが。そのうち「14 へ いけ」なんて文章が出てきてゲームオーバーになるような作りになっていれば楽しみながら読めそうだったけど、さすがにないか。
……にしても遅いな。玄関なんて部屋を出て廊下歩いてすぐだというのにもう1分以上もたっている。というか声が聞こえるしなにか話をしているようだ。わざわざ玄関先でおしゃべりなんて、なにかトラブルでもあったのだろうか。見に行ってみるか。
「……から、あなたはいったい誰なんですかっ?」
「ですから、何度も申し上げた通り私はここでアイドル事務所を経営している代表の者です!あなたこそ何の用件でここにこられたんですか?」
「ピヨッ!?そっ、そんなはずないんです!だってここは彼の……あっ、ほらやっぱりいるじゃないですか!ちょっと社長!この人誰なんですか!」
なんてこった。ちひろさんの言うアイドル候補生とは小鳥さんのことだった……なんてわけないよな。
「小鳥さんおはようございます。さっそく来てくれたみたいですけど何かトラブルでもありました?」
「しゃ、社長のほうこそいったい何があったんですか!誰ですかこの女の人、私知りませんよ!?」
かつてないほどの剣幕だ、いつも余裕のある感じの小鳥さんがこんな……いや割とこの人パニックになること多いからなそうでもないな。
「彼女は今日からここでアイドル事務所を運営することになった千川ちひろさん。こっちの仕事も一部経理とか事務処理を担当してもらうことになったからこれから顔合わすことも多いと思うし、よろしく」
「あ、あっ、アイドル事務所ぉ!?なんですかそれ聞いてませんよ私!ていうか事務処理までやるんだったら社長ほんとうにお飾りになっちゃうじゃないですか!」
「はい、なのでプロデューサーさんにはこれから『私と』アイドルをプロデュースしてもらうことになってるんですよ、ぐうたらで働かないなんてことには私がさせません!」
うわぁ、話してた感じからうすうすそうじゃないかと思ってたけど、この人武内のおばちゃんと同じで働くことに素晴らしさとか感じちゃってるタイプの人だ、やっぱりアイドル事務所なしにできないかな。あとやたらと『私』にアクセントをつけたのは何故?同じセンスのない緑の服を着こなす者として譲れない何かがあるのだろうか。
「き、き、き……聞いてませんよぉ社長ぉ!どういうことなんですかっ!!」
「ちょ、近所迷惑になるから声はもうちょっと落そう?それでどういうことかって、信じられないかもしれないけどさ……あ、とりあえず中入ってよ。玄関先で話するのもアレだし」
というわけで小鳥さんを迎え入れてから、かくかくしかじかと経緯を説明した。
「そんな部屋も時間もあいてるからってホイホイ新しい事業を始めるってどうなんですかっ?し、しかもそれがアイドル事務所ぉ!?社長テレビすらほとんどみないのにそんなことできるんですか!?」
「いやそれは俺も少し疑問に思ってるんだけど……ちひろさんその辺どうなんですか?」
「必要なことや知るべきこととかは私がきっちりお教えしますよ!それにプロデューサーさんならきっと向いてると思います!」
初対面でそこまで言い切るに足るような何かを武内親子から聞いているのか?
人生二度目なこと以外、そんな特別な何かがあるわけでもないと思うんだけど。
「で、でも社長もこれから余裕があるとはいえ仕事がまったくなくなるわけじゃないですよね?経理とか税関連とかは私、任されても困りますよ?」
食い下がる小鳥さん。自分の働いている会社のことなんだから当然だけど、そういうのとは別にして何かいつもより必死なように見えるな。
まぁ今日話しました、それでやることにしました、では不安を覚えるのも当たり前なことなんだけど……正直武内のおばちゃんが絡むと突発的に仕事が増えたりするのは今に始まったことではないし、個人的にはもうなるようになれといった気分だが。
「それも大丈夫です!私こうみえてもそのあたりの事務処理には自信がありますので、私の事務所のものをやるついでにそちらの方も面倒を見ますから!」
「うー……社長はそれで納得してるんですか?武内のおばちゃんに言われたからって無理に受けることはないと思いますよ?なにより、その、楽しみだったんですよね?今日から始まるつもりだった毎日のような生活が」
あぁ、小鳥さんはきっと俺の夢を知ってるから、ここまで真剣になってくれてるんだろう。俺が不労所得生活のためだけに今の仕事で一旗あげたことを知っているのは、初めからついてきてくれていた小鳥さんだけなのだ。
「小鳥さん、俺のことを気にかけてくれてありがとう。でも大丈夫、それに武内のおばちゃんの言うことにも一理あるしさ。それにどうせならここでもう一回り稼いでおじさんになるころには貯蓄だけで生きていけるぐらいになれば、それはそれで夢に近づくと思わない?」
「ううっ……社長が納得してるなら私からどうこう言う話ではないかもしれませんけども…じゃ、じゃあ私も明日からこっちで仕事するようにしていいですかっ?ほら、私も何か手伝えることがあると思うんですよ!経理のこととかちひろさんにお任せするなら私との連携も重要になりますし!!」
「いやいや小鳥さん、小鳥さんがいないと現場が回らないのわかってるよね?人付き合いが下手糞な俺に代わって今までずっと対人折衝をしてくれてた小鳥さんは言わば事務所の顔なんだから、急に武内くんに全部パスなんてのはちょっと無理があるでしょ。そもそも武内くんって慣れない人相手だと俺よりも挨拶とかが苦手じゃない、見知った相手だと逆に強いみたいだけど」
「そ、それは確かにそうなんですけど……でも…」
……納得できないのか。考え方が似ているせいか小鳥さんとはいつも阿吽の呼吸に近い意思共有ができるのに、今回はやけにこだわるな。駄目なこと自体に理解は及んでるみたいだから、何かこっちで仕事をしたいって理由があるのだろうか?
「あの、その件に関してなんですが…」
「あっすいませんちひろさん、関係のない話につき合わせてしまって」
「いえっ、これからかかわっていくことになりますからそれは全然いいんですよ。そうじゃなくて、えっと、小鳥さんと呼ばせていただきますね?小鳥さんの仕事場に関してなんですけど、武内くんのお母さんからあらかじめ言付かってることがありまして」
えっそうなんですか?てことはおばちゃんこの流れを予想してたの?
「してその内容は?」
「その……プロデューサーさんにも聞かせるべきか私だけでは判断できないのでとりあえず小鳥さんだけにお伝えしたいんですけど……」
なにそれめっちゃ気になる言い方。また俺をはめようという意図があってのものだろうか。でもこんな真正面から言われたらいいから教えろなんて言えないし。
「じゃあとりあえず小鳥さんにだけ伝えてもらって、小鳥さんが良いって言ったら俺にも教えてください」
「わかりました、では小鳥さんちょっと耳を貸してください……えっとですね……」
俺の隣に座っていた小鳥さんがテーブルを挟んで対面に座っていたちひろさんの隣にいき耳を傾けた。
ほんの数秒で済むような短い内容だったのだろう、ちひろさんは小鳥さんの耳に近づけた顔をすぐに元の位置に戻したが、その行為の簡便さに反して小鳥さんの反応は劇的だった。
最初は何を言われたのか理解が及ばないような顔をしたのち、ものすごい勢いで顔を真っ赤にして「ぴよよっ!?」と年齢を考えないようなかわいらしい擬音を発しながら、俺の方を見た。
「…えっと小鳥さん、それで内容はなんだったんですか?」
「た、たたた大したことじゃなかったです!」
「いえどうみても大したことですけど」
「あの、そのっ!えっと!!と、とりあえず私は社長の言うとおりむこうの事務所で仕事することにしますね!それからちょっと武内さん親子に確かめたいことができたので向こうに戻ります!!」
「え、あちょっと……」
呼び止めようとしたが、呼び止める間もなく出て行ってしまった。
なんだろう、あんな風に劇的な反応をされたら余計に何を言われたのか気になるが、それよりも…。
「プロデューサーさん、小鳥さんは結局、何をしにココに来られたんでしょうね…?」
「たぶん大した用じゃなかったと思うんだけど、俺もそれが気になる……」
「……祝辞を言うのを、しゅくじった?」
「ああなるほど新居祝い的な…そうかもしれません。てかうまいこといいますねちひ……」
…………え、今しゃべったの誰?
2話をいじったためこちらでも一部わけのわからない会話になってしまっていたので簡単にですが修正を行いました。
おそらく一部の人は読んでいて「こいつはいきなり何の話をしてるんだ?」状態になったかもしれません、大変申し訳ないです。