読んでくださっている皆様ありがとうございます。
今後もお気に入り登録などしてくださった方の期待を裏切らないよう頑張ります。
「……というようなことがあったんですよ。だからってまったく同じことをやれとかそういうわけじゃないんですけど、もっと別のやり方も考えてみるべきかなって思ったんです。美希ちゃんと同じことができるできないは別にしても、楓さんにも同じか、それ以上のアイドルとしての魅力や素質があると思うんです。そしてその魅力を今の仕事では、伝えきれてないと思っています」
俺の頭の中にあった楓さんのイメージが砕け散った日から二日後の午後六時。
約束通り事務所に楓さんに来てもらって、改めて不誠実だったことについて頭をさげたまではいいが、来るなりすぐ「今日はどこのお店に行きますか?」などと飲みに行く気まんまんだったので慌てて止めて、先に話したいことを済ませてしまおうと説得して。
子供のように頬を膨らませながら如何にも私不満ですとアピールする楓さんをなだめつついつものリビングのソファーに座ってもらい、ちひろさんにも話した765プロの美希ちゃんのオーディションの話をしたところだった。
「とはいえ、もちろん楓さんの気持ちが一番大事なので、今の仕事がどうかという本音が聞きたかったんです。あと、あればですけどアイドルとしてどうしたいのか、とかです」
「そうですね……前にも言いましたけど、プロデューサーが薦めてくれた今の仕事、私にしてはそつなくこなせていますし、不満とかも特にありません。口下手な私には向いている仕事だと思ってるんです」
「じゃあ今のまま仕事を続けていきたいということですか?」
「そうですね……自分に合ってる仕事だとは思っています。でも、このままモデルのお仕事を続けていて、プロデューサーが言うようなアイドルとして大きくなれるかとかは、ちょっと私にはわかりません」
「つまり合ってる仕事だと思うし続けるのに問題はないけど積極的になるほどではなくて、またアイドルとしての実感とかそういうのも特にないってことですかね」
そう聞くと楓さんは難しそうに眉を八の字にして顔をしかめてしまった。
「……アイドルの実感というのは、よくわかりませんね。正直に言うと、今のモデルの仕事がアイドルなのか、自分でわからないんです。アイドルって、ステージで歌ったり踊ったりするってイメージで……」
そうして語る楓さんのアイドルのイメージは、前世の俺が抱いていたイメージとほとんど同じだった。
この世界のアイドルは日高舞をはじめとするカルチャーショックを与えるような人間の登場によって、大きくその形を変容させていったという歴史がある。
10年前、つまり楓さんや俺が中学生だったころのアイドルは、前世までとそう変わりはなかった。
だがそれからアイドルという言葉が包括する意味がだんだんと大きくなり、今ではモデルはもちろんのことアナウンサーやスポーツマンにもアイドルという呼称がつけられていることがある。
おおざっぱにアイドルかそうでないかを区別する方法は2つだ。
1つはアイドルランクを管理するアイドル組合に正式に登録されているかどうか、そしてもうひとつが自分でアイドルを自称するかどうかだ。
というのも中には事務所に所属もせず(あるいはできず)、自分ひとりの力でアイドル活動を行う人たちもいるらしいからだ。
アイドルランクを得るには正式な事務所に登録している必要があるので、それができない人たちは自称するしかないってことらしい。前世でいうところのメジャーバンドとインディーズバンドみたいなものなんだろう。
「要はアイドルに決まった形はないってことなんです。道端で占いをやってるような人でも中小企業のOLでも宣教師でも、自分がアイドルだと思うか、或いは事務所からアイドルランクに登録してればアイドルだということになるってことです」
俺はそういったこの世界での現在のアイドル観について楓さんに一通り説明をした。
「……でもそうなると、ますます私のアイドルとしての活動ってわからなくなりました。形が決まっていれば、それに合わせるのは得意なほうだと思うんですけど」
「……つまり、そういったアイドルとしての魅力を見つけ出して、引き出して、形にするのが俺たちプロデューサーの仕事なわけです。それで話は最初に戻るんです」
「最初?……あっ、腹を割って話しましょう、ですね?」
「そういうことです。こないだ一緒に飲みに行ってから、今まで知らなかった楓さんのことをたくさん教えてもらえました。でもそれだけだとまだ楓さんの魅力をすべて引き出すには足りない、いやもっともっと楓さんには俺の知らない魅力があると思ってます。それを教えてほしいんです」
「……なんだかそういう言い方をされると、照れてしまいますね。でもわかりました、それならさっそく、腹を割って話、しにいきませんか?ふふっ」
……好きなことを考えているときの楓さんの笑顔は、間違いなく今まで俺の知らなかった魅力の1つだと改めて思った。
「というわけで、かんぱーい」
「乾杯!いやー、最近はこんなとこでも普通にそれなりのお酒とおつまみが出るんですね」
事務所にサンプルとして置いてある介護用の杖を気に言ったのか、素敵素敵と連呼する楓さんをどうにか事務所の外に連れ出した後、
とりあえず楓さんのアイドルとしてのイメージが一番強いステージで歌って踊るアイドルについて考えてみようということになり、
その結果とりあえずお酒が飲めて、歌もうたえるカラオケに行こうということになったのだった。
ちなみにお酒が飲めるところというのは楓さんの強い希望だ。
「プロデューサーはカラオケとかよく来るんですか?」
「若いころはよく来てましたけど最近はあんまりですね。歌をうたうこと自体はかなり好きなほうですし、下手ではないと思いますよ」
若いころというか正確には前世でだが。
「私はカラオケってほとんど来たことなくて、子供のころに家族と行ったことがあるぐらいです」
「学生時代に行きまくる人と全然いかない人ときっぱり別れるイメージですよね。でも楓さんの歌唱力は目を見張るレベルだって、トレーナーさんから聞いてますから。期待してます」
「誰かに聞いてもらうために歌うなんて初めてで……少し恥ずかしいですね」
「恋愛の歌詞なら恥ずかしさも2倍になりますよ」
「……恥ずかしー、歌詞ですね。ふふっ、プロデューサーもお上手です」
「今日は未来の超人気アイドルの歌を独り占めできる日ですから、ちょっとテンションがあがってきてます。プロデューサーとしてもそうですけど、なにより楓さんの1番のファンとして、今日は楽しませてもらいますね」
それから楓さんの歌に賞賛を送ったり、楓さんに比べればつたない自分の歌で楓さんに拍手してもらったりしながら、ふたりして足元がふらつくまで飲んで食べて歌い続けた。
「終電、間に合いませんでしたね」
「いくら酔ってるとはいえ申し訳ないです……もっと常識ある時間で切り上げておくべきでした。楓さんすいません」
結局電車で帰れなくなってしまったので仕方なしに二人で歩いて事務所まで帰ることになったのだ。
ちなみにカラオケ店から事務所までは徒歩10分あるかないかといったところだろうか。
最初はそのままタクシーを呼ぼうとしたのだが楓さんが勿体ないからと固辞したのだ。
言い合いしても仕方ないので、最終的に少しでも歩いて帰れるところまで帰ろうということになった。
「最後に乾杯したウイスキーが失敗でしたね……ほんのスコッチっ。ふふ」
なんて楽しそうに言いながらゆっくりとした速度で隣を歩く楓さんは、本当になんでもない風だった。
「とりあえず事務所について一息ついたらタクシー呼びましょうね。……楓さんそこまで歩けますか?」
「大丈夫ですよー……足元、ちょっとふらつきますけど」
それからしばらく人気のない道を二人して歩いた。
ベッドタウンであるこの街は夜になると本当に静かだ。
そんな中を二人で会話もなく歩いているのだが、悪い雰囲気ではないと思う。
ちらりと隣をみると楓さんが上をみながら歩いているのでつられて上をみる。
上には道の傍にに一定間隔で植えられた木の枝が揺れているだけだった。
楓さんは何が面白いのかそれをニコニコとしながら見上げていた。
4月ももう終わるという時期になり肌寒さを感じなくなってきて、植えられた並木も緑に色づいている。
プロデューサーになった日から、楓さんと知り合ってからもう半年以上の月日が流れたことになる。
隣を歩く楓さんはとても楽しそうだが、いい加減木を眺めながら歩いているだけだと眠くなりそうだ。
お互い酔っている今の状態でする話でもないかと思ったが、駄目ならまた改めて話せばいいと思い、俺は今日感じた楓さんの魅力について、楓さんに言ってみることにした
「今日、楓さんの歌ってる姿と歌を聞いて思ったんですけど」
「なんでしょうー」
「楓さんのいうステージで歌って踊るアイドルというイメージ像は、案外楓さんに似合うのかもしれません」
「……」
返事はなかったが、聞いてくれてはいるようだったのでそのまま続ける。
「楓さん、歌をうたうこと自体好きですよね?このまえ居酒屋に行ったときも思ったんですけど、楓さんが好きなことをしているときの表情って、すごい魅力的なんです。ミステリアスな雰囲気と楽しそうな雰囲気が混ざった楓さんだけの魅力、みたいなものがあると思います。
今日歌っている楓さんは今までに見たことがないくらい、すごい魅力的でした。自分で薦めておいてこんなこと言っちゃあだめなんですけど、はっきり言って今までのモデルの仕事なんかよりよっぽどアイドルとして輝けると思います。それに歌自体とても上手ですし」
「……もし魅力的に見えたのなら、きっとそれはプロデューサーが聞いてくれてたからですよ」
「……そうなんですか?」
「プロデューサーが私の一番のファンだと言ってくれるから、プロデューサーが私の魅力を見つけてくれようと頑張ってるから……私も、がんばろうと思えるんです。聞いてほしいって思うんです」
楓さんが立ち止り、俺のほうを向いて言った。
「私わかった気がします。こういう気分が、アイドルなんですね」
白い頬を上気させながら笑顔で言う楓さんに抱いてはいけない気持ちを抱きそうになって思わず顔をそむけてしまい、取り繕うように聞いた。
「ちなみに、どんな気分なんですか?」
「こういう気分は、こういうですっ。ふふっ」
次話はR18シーンが入りますので問題がなければR18タグの追加等行ってから投稿します。
といっても筆者の感覚だと次話はプロローグの共通ルートにあるあっさり目のエロシーンという感じなのでエロ要素はあっさりです(エロゲー脳)。どちらかというとストーリー処理上の都合という意味合いが強いです。
冒頭でも書いているようにこれを書き始めたきっかけはもっとアイドルマスターのR18小説が増えてほしいからでした。
またR18はR18でも単純にアンアン言わせるだけじゃなく、
「バックストーリーを作ってキャラ関係等ストーリーテイストでもR18要素を楽しめる事」
「せっかくキャラがいっぱいいるし、どのキャラでも書けるようなオムニバス式にする事」
という条件を設けた上で書こうと考えこれを公表する流れになりました。
なので12話までのいわゆる共通ルートを消化したあとは、書きたいキャラのエロを2~3話ずつに分けて書くような形式になると思います。
つまりR18に移動しておきながらしばらくはまともなエロがない詐欺小説になるということです、その点に関して先にお詫びを申し上げさせて頂きます。
長くなってしまいました、読んで下さった方ありがとうございます。よろしければ今後も拙作をよろしくお願いします。次話は明日の夕方以降になる予定です。
また、もしR18はR18で別にあげるべき等の要望があれば言って頂けると助かります。