※この作品はR-18です。

ダビデ案件駄目絶対! と最後のマスターは叫んだ   作:Schuld

1 / 10
マシュ、同意の上の淫紋調教~あれ、そこは屈辱とかじゃねぇの?~

 人理継続保障機関“カルデア”はマリスビリー(以下、経費削減のため省略。詳細は公式HPにて確認されたし)

 

 何やかんやでカルデアのマスターに選抜されたマスター、藤丸 立香は何やかんやで特異点攻略に乗り出し、何やかんやで英霊達と絆を育みながら、何やかんやで人理を救う旅路を継続しているのであった。

 

 「ねぇねぇDr.ロマン」

 

 「なんだい立香君、もう呼符ならダ・ヴィンチちゃんに貰っただろう?」

 

 清潔な医務室でぼけた夫婦がやるような会話を中肉中背の少年と、三十路と言われてもピンと来ない若作りな男がしていた。野放図に跳ねた黒髪の少年はカルデア最後のマスターである藤丸 立香。童顔の男は次々と上司が戦死して野戦昇進で大隊を率いねばならなくなった中尉の如き哀れな医療部門責任者、ロマニ・アーキマン。

 

 カルデアにおいては上司部下の関係なれど、友人のような気軽なやりとりが常態化した二人の間に緊張は無い。例え今が次なる特異点を探しているという、事態的には決して気を抜いてはならぬ状況であったとしても。

 

 メディカルチェックが終わった立香は、誰がデザインしたんだよこれ、小太りだったら様にならねぇ所の話じゃねーぞ、と当初は散々文句を付けていたカルデア制服を着込みながら言った。

 

 「NTRって知ってる?」

 

 「ええ……」

 

 場所が場所なら(困惑)と間違いなく付けられていそうな調子で、唐突な発言に現カルデアトップは憮然とした。呆れたような困惑したような表情には、明白に何言ってんだコイツという感情が滲んでいるも、この英雄なのか馬鹿なのか判断しがたい少年が突拍子のない事をいうのは毎度のことなので、とりあえずロマンは居住まいを正して話を聞いてやることにした。

 

 「どうしたの急に……まぁ、意味くらいは僕とてネットを使うから知ってるけどさ」

 

 「だよね、ネットアイドルオタならエロサイトの一つ二つ漁ってないと逆におかしいし」

 

 「なんで此処で僕に攻撃が飛んでくるかなぁ!? 検索履歴は極めてクリーンだよ!?」

 

 「やだなぁ、ネットアイドルのサイトなんて、どうせ広告バナーで過激なエロ漫画のページが幾らでも映ってるに決まってるじゃないか」

 

 「君、妙に詳しいなぁ!?」

 

 分かってる分かってると頷く立香、本当にエロサイトなんて見てもいないしブクマしてないから! と自分の名誉のために掴みかかるロマニ。この姿を見て一体誰が信じられようか、彼等の双肩に人類70億の命運が委ねられているなど。むしろ信じたら信じたで盛大にチェンジ! と叫んだことだろうが。

 

 「いやね、英霊っていえばNTRという電波がですね」

 

 「君ね、誰彼構わず発信された電波を受信するのはいい加減止めなよ。監獄塔で酷い目に遭ったろ」

 

 しばしのとっくみあいの後に話題は元に戻り――ロマンとしては無かったことにしたかった――立香は酷く電波な話をし始めたが、それはここカルデアにおいて割と平常運転なので流される。英霊と魂で繋がっているマスターは、たまに魔力から何かが逆流でもしているのか、英霊から影響を受けて夢に入り込んだり入り込まれたりするので、それこそ電波の一つ二つ受信した所でおかしくもないのだ。

 

 問題はその毒電波を発信したのは誰かだが、まぁNTRなどという俗な単語を発する英霊は限られているので下手人捜しは実に簡単であろう。とりあえずこの手の話題では、黒髭を吊しておけば八方丸く収まるというのがカルデアにおける通説である。まぁ、たまに本当に冤罪で、性悪悲劇オタなんぞが絡んでいることもあるのだが。

 

 「そしてNTRといえば淫紋。色々あって俺の手から離れた女の子のサーヴァントがぬっちょぬっちょされた挙げ句、淫紋刻まれてパスも盗まれてごめんなさいマスターとか言いながら写真やDVDを送りつけてくるのは最早お約束」

 

 「はいはい、お薬出しておきますねー」

 

 果たしてそれは何処の界隈でのお約束なのか。等閑な対応をされようと、ハッパでも決めたのかと思うほどテンションの高い立香は口を止めない。妙に具体的な薄い本的シチュエーションを列挙した上で、彼は拳を突き上げた。

 

 「NTR、駄目絶対!!」

 

 「そうだね、ダビデ案件は駄目だね、だから君も怪しいお薬はやめようね」

 

 「俺普通にシラフなんだけど」

 

 「だから尚更性質が悪いんだよ」

 

 シラフでこれだけテンション高いのも如何なものか。それとも彼が緑茶ガンギマリの日本人だからなのだろうか。三十路で疲れている男では付き合うのが若干辛いなぁ、と思いながらも、ロマンには部屋を辞さぬだけの付き合いの良さがあった。

 

 そして、それが徒となる。

 

 「何が言いたいかと言えば、NTRってよくないよねって」

 

 「そりゃね、ランスロット案件は流石にね。というか変な本みたいに女性はアレねじ込まれただけで落ちるほど甘くもないんだから心配しないで良いよ。何より女性陣だけでも大分戦力的にアレなのに、男性陣まで踏破してとか不可能だよ」

 

 やれやれと首を振るロマン。実際、一つウン百円のCG集に出てくる程女性は甘くないし、何よりもカルデアに呼び出されるのは人類史に名を残す女傑揃いだ。逆に下手なコトをしたら、トラウマ所か死ぬような目に遭うだろう、男性的な意味でもヒットポイント的な意味でも。

 

 それこそ凄女もとい聖女として名高いベタニアの聖マルタや、小陸軍省として男性を震え上がらせたフローレンス女史なんぞの前へ軽々にアレをまろびださせたなら……次の瞬間には筆舌し難い叫び声を挙げる羽目になる。

 

 その上、よしんばそれを踏破した所でマスターの手元には強力無比な男性サーヴァント陣が残っている。これに追撃を受けてまともな姿で居られる間男など何処にいようか。NTRで有名なかのダビデ王や畜生の騎士、もとい湖の騎士たるランスロット郷とてどうにもなるまい。

 

 何はともあれ、現実は薄い本ほど簡単でも無ければ酷薄でもないのだ。確かに魔術を使った不思議なお薬もあるにはあるが、効き目は一級の霊体存在であるサーヴァントには薄かろうし、マスターは兎も角としてサーヴァントをどうこうできる人間なんぞ居ないと言っても良い。となれば、杞憂を抱く必要性もあるまいて。

 

 が、この緑茶ガンギマリのアホはただのアホではない。常に人の右斜め上の想像を行くアホであった。

 

 「なので先んじて淫紋を刻んだマシュが此方になります」

 

 「何やってんの!?」

 

 立香が指をパチンと鳴らすと、妙に恥ずかしそうにもじもじとした平服姿のマシュが現れた。眼鏡の向こうは伏し目がちにうつむき、白すぎる肌は健康的な桜色に染まっていた。手をお腹の前で組み、内ももを神経質にすり合わせる姿はどう見ても普通ではない。むしろ男性の獣欲を十分に擽る有様であった。

 

 「頑張りました!」

 

 「頑張りましたじゃないよ!? なにやってんの!? 本当に何やってくれちゃってんの!?」

 

 あまりの無体にカルデアのトップは叫ぶしか出来なかった。特殊な出生であることも相まって、親の如く接してきた乙女にこの畜生は何をしてくれたのか。緑茶のキメ過ぎでニューロンに異常でも来したのか如き暴挙である。

 

 「師匠に土下座して教わった甲斐がありました!」

 

 「何やってんだ影の国の女王!!」

 

 もじもじしている後輩の肩を抱き、極東の畜生マスターはサムズアップ……否、よく見たら似た形の非常に下品な手真似をしていた。具体的に言えば公共の電波にはモザイク付きでも乗せられない類いのアレだ。

 

 影の国の女王、スカサハ。死を喪った永遠の女王は、サーヴァントという有り様に自らを貶めたことによって擬似的な死を得る権利を手に入れたこともあり、ここカルデアにおいては元の厳粛にして怜悧な雰囲気はナリを潜めている。割とはっちゃけた彼女のテンションは常時と言うほどではないものの非常に高く、ノリの良さは下町のおば……おねぇちゃんレベルに達することもある。それこそ水着に着替えるために霊基を弄くって、あれこれどーやって戻すんだ? と四苦八苦する位のはっちゃけ具合を誇る。

 

 「ケルト勢の酒宴がたけなわに入りかけた頃にお願いしたら結構簡単に通りました!!」

 

 「畜生! これだからケルトは!!」

 

 ケルトはケルトだから仕方ない。蛮族の中でもフン族に並ぶ名うての蛮族っぷりを誇る彼等は性欲に関しても素直であり、結構簡単にアレをしでかしたりする。むしろ今居るケルト勢で肉体関係持ちが平然とかなりの割合で含有されている辺り、その業の深さは理解できるだろう。

 

 そんなケルティックバーバリアンの元締めに酒が入って箍が外れた状態で、お気に入りである英雄の卵から師事したいと言われれば面白半分で邪法にも似たルーンを教えても不思議ではない。自重とか真面目とか言う言葉は、彼等の中では殆ど死文と化しているのでさにあらん。

 

 結果として、三十路医官が娘の如く気に掛けていたデミ・サーヴァントの腹には桃色に輝く謎の刻印が刻まれることとなった。

 

 「ああっ……もうっ……ほんっとに……マシュ、見せてご覧なさい」

 

 「え? あ、はい」

 

 もじもじしたままのマシュは、促されて平服を巻くって腹を晒した。そこに描かれるのはルーンを転用したと思しき不思議な紋様。丁度臍の下、子宮がある辺りから聖杯をもした台座の図案の上にハートマークを置き、更に複雑な蔓草模様で飾った魔術の刻印が息づいている。桃色に輝くその図案は、先ほど立香が宣ったとおりの物、淫紋である。

 

 淫紋、一部の層に非常に人気があるこの技術は、魔術的な意味においては呪術に近い技法である。擬似的な魔術回路を刻み込むことによって感覚を操り、精神にすら影響を与える外法であるのだが……。

 

 「ん? あ、あれ、この構築は……」

 

 普通であれば魔力に強い抵抗を持つ、或いは魔力そのものに英霊の殻を被せたサーヴァントには殆ど通用する代物では無い。対魔力を持つ者は当然、持っていなくても人間相手であれば最上級と言える規模で何とか微かな影響を及ぼせる程度のものであろうか。

 

 そして当然、言うまでも無く盾の英霊として力を借り受け、非常に高い破邪の力を持つマシュにも淫紋なんて通用する筈が無いのだ。

 

 それこそ、手前で望んで受け容れない限り。

 

 「……ま、マシュ?」

 

 言いにくそうに組んだ指を彷徨わせるマシュ。育ての親に近い三十路の目線から逃れるように彼女は目をそらし……。

 

 「せ、先輩が仰るんです。マシュが大事だから、俺だけのマシュにしたいって。良いかって聞かれちゃったら……もう……」

 

 「しまった! 家の子は押しに弱かった!?」

 

 「めっちゃ可愛かったです!!」

 

 衝動的にぶっ殺すぞと叫びそうになった三十路は頭を抱えて蹲った。無垢で良い子に育ってくれたと思い、この少年とならゆっくり絆を育んで良い感じになってくれてもいいなと思って居たが……よもや、よもやこんなことになろうとは。

 

 これが無理矢理刻印を刻むという畜生度合いなら怒ることもできる。だが、自分から進んで受け容れ、しかも嬉しそうに、まるでもらった婚約指輪でも愛でるかのような手つきで紋様をなぞられては何といえばいいのか……。

 

 「ということで、娘さんと一緒にならせてください! 絶対幸せにします!」

 

 「そうかい分かったよ! 死ねっ!!」

 

 「ドクター!?」

 

 まぁ、此処で拳の一つも振るわねば、逆に親とは言えまいて…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寝台の傍らにあるランプだけが優しく灯りを供給する部屋で、立香は割と良いボディーブローを貰った腹をさすっていた。事後承諾にしても下手すると婚前交渉の方がまだマシという暴挙の割には軽い駄賃というべきであろうか。普通であればそのまま三日三晩何処かに吊されてもおかしくなかったというのに。

 

 お付き合いのご報告を終えた二人は、若さに任せて早速マイルームにしけ込んでいた。据え付けのシャワー室から水音が聞こえてきて、人理救済に入ってから引き締まりつつある裸身を立香が晒しているのは、つまりそういう訳である。

 

 婚前交渉するにしても事実上の婚約宣言をしでかしてからというのは評価できるが、それならば何故淫紋も待てなかったのか。むしろテンションに任せて生きている緑茶ガンギマリ世代だからこそなのかもしれない。

 

 「あの、先輩……あがり、ました……」

 

 思わず感嘆の声が溢れた。薄明かりにぼんやりと照らし出された彼女は、それ程に美しかったのだ。

 

 肉付きがよく均整の取れたボディライン。乳白色の肌が瑞々しいことも、鍛え上げられた四肢が美しいことも彼女の際どい甲冑姿から知ってはいたが、こうしてバスローブだけで隠された裸身を見ると改めて思い知らされる。

 

 マシュは、立香の後輩は儚くも愛らしかった。掌の熱で溶けゆく淡雪のような美しさ。抱きしめたら消えてしまいそうですらある。

 

 ぽすり、と小さな音を立てて後輩は「あれ、やばくね? 俺の後輩超可愛くね?」と今更過ぎることを再認識して頭が軽く沸騰した先輩の肩に頭を預けた。既に高まりつつあった心拍が一気に跳ね上がり、思考が熱されていく。

 

 「先輩……私、その……これ、あつくって……」

 

 彼女は恥ずかしそうに淡く輝く紋様を撫でる。性欲と感度を強引に上昇させる魔術は、パスを通じて流れ込む特定個人の魔力に反応して効果を発揮するような仕組みになっている。どうやら立香の興奮に合わせて術式が励起されているようだ。

 

 「お、おねがいします……先輩、どうか鎮めて下さい……」

 

 「うん、いいよマシュ」

 

 流石にこの期に及んで調子に乗る度胸は無かったらしい。それでも女性相手、ちょっとネジが数本飛ぶ勢いで焦がれた乙女相手への対応とならば間違いではあるまい。

 

 自然と身体を寄せ合った二人は、静かに唇を合わせた。柔らかで肉厚な女性の唇と薄い男性の唇。触れあわせるだけの幼いキスはマシュが望んだもの。得られるのは刺激的な快楽ではなく、相手が受け容れてくれたという精神的な悦楽だ。肉体が感じる心地よさではなく、脳で得る心地よさが痺れるように全身へ巡った。

 

 「あっ……」

 

 少女の口から思わず声が溢れた。恥ずかしさにただでさえ昇っていた血潮が頭に回り、くらくらとしてくる。

 

 淫紋、その悪辣たる一面の発露であった。精神的な快楽ですら、肉体的快楽に変換してしまう機能。行き着くところまでいけば視認や呼吸、思考でさえも快楽に繋げる術式は、破邪の力を投げ捨てて受け容れた後輩の中でしっかと働き続けている。

 

 (叔父貴、俺叔父貴の教え、忘れてないよ!!)

 

 その瞬間を立香は見逃さなかった。記憶の中で逞しいTHE・ケルトといった威容の偉丈夫がサムズアップしている。男女の機微、特に肉体的なあれこれの知識を授けてくれた心の師匠である。まぁ、流石にその場で実践して見せようとされたのには辟易とさせられたが。

 

 教えに従って立香は微かに開けられた上唇を食んだ。軽く咥えるように、啄むように弄ぶ。端っこを、真ん中を、下唇に移ってと丁寧なバードキスを繰り返す。

 

 フェルグスは語った。女は、特に思い合った女は愛されていることを実感すればするほど感度が上がると。肉体における触れ合いで愛を実感させるに一番良いのは、丁寧に相手を求めることだ。

 

 がっつきはしない。丁寧に丁寧に、大事なプレゼントの包装をほどいていくように責めていく。膝の上に手を置いて、上半身だけを捧げ合うように口づけをしていたが、啄むようなキスが数分も続けば我慢が効かなくなってきたのだろう。

 

 マシュから反撃として唇に舌を這わせながら、膝の上でぎゅっと握っていた手を立香の首へと絡ませてきた。身体を寄せると共に引き寄せて、幼い欲求に任せて慣れない舌を精一杯蠢かせる。こういった知識に乏しい彼女の動きは辿々しく、正しくしたいと思った事をしているといった風情だ。

 

 預けられる体重に充足感を覚えつつ、立香は唇を嘗めるために差し出された彼女の舌を捕まえた。無論、唇で。

 

 「んんっ!?」

 

 恥ずかしさに目をしっかり閉じていた後輩の目が、驚きに見開かれた。視界に映るのは悪戯っぽい笑みを浮かべた先輩の蒼い瞳。咄嗟に舌は逃げようとするが、次に襲いかかってきた感覚に押し潰されて、後輩はそれどころではなくなった。

 

 繊細な粘膜をぞろりと撫で上げる、同質の柔らかい感覚に。

 

 「んむっ……!? んひっ……」

 

 舌の腹同士がすりあわされる感覚に後輩は背を逸らしながら戦慄いた。味わった事の無い感覚、淫紋によって増幅されたそれは紛れもない性的な快感だ。舌は立派な性感帯であり、それを弄ばれることは快感を生じさせる。

 

 立香は丁寧に丁寧に口内へ攫った舌を弄んだ。軽く噛んでみたり、全体を確かめるように嘗めたり、唾液を絞り出すようにしゃぶってみたり。様々な刺激を加えて反応を見て、どれが一番喜んでいるかを探るのだが……。

 

 (叔父貴、俺の一番のサーヴァントは超敏感でした)

 

 どこをどうしても面白い反応が返ってくる。身体は頻りに震え、必死に酸素を取り入れようとする鼻息は非常に荒い。首に回されている両腕には、最初は痛いほどの力が込められていたのに今ではすっかり脱力し、辛うじて身体に引っかかっている程度だ。

 

 楽しいとばかりに立香は遠慮無く彼女の口唇を弄ぶ。相手の反応を見て自分も高まり、その高まりが戯れを加速させて更に相手を追い詰めるという螺旋構造。薫陶を受けていたこともあり、更に相手が過熱する様を見て愉しもうという精神性が彼をことのほか平静にさせていた。

 

 それこそ、当の本人も未だ未経験の新品だというのに。

 

 火事場において自分より焦っている人間がいると、返って自分は落ち着けるのと同じ理屈であろうか。マシュの瞳は蕩けて細まり、少なくともまともな状態とは言い難い有様なので、あながち間違いでも無さそうだ。

 

 「んんっ~~~~~~」

 

 大きく身体が一つ二つと跳ね、腕に一瞬だけ力が籠もり……次の瞬間には、脱力してしがみついていた身体がだらりと寝台へと倒れ込んだ。銜え込まれていた舌が抜け落ち、嘗められすぎてすっかり赤くなった様子は、口に仕舞うこともままならぬ様も相まって酷く淫靡であった。

 

 「マシュ、大丈夫?」

 

 「ふぁ、ふぁふぃ……らいひょーふれひゅ……」

 

 上手く動かぬ舌を操っての返答は、どう控えめに見ても大丈夫とは言い難い。やり過ぎたかなーと反省……すると思ったかヴァカめ! と言わんばかりに立香は微笑んだ。

 

 「じゃあ続けるね」

 

 「へ……?」

 

 何時もは心が落ち着く微笑みも、今の有様で薄明かりの逆光を受けたものだと酷く不穏に感じる。いや、実際それは不穏な笑みだったのだから。

 

 立香はボディーソープの残り香と、たった今かいた汗の匂いが香る首筋に顔を埋めた。乾かされた髪からは、女性特有の甘く心地よい匂いが溢れてくる。自分と同じ配給品のシャンプーを使っているだろうに、どうしてこうも心が蕩けるような甘い匂いがするのだろう。

 

 「せ、せんぱ……ひゃぁっ!?」

 

 首筋と顎のラインに口づけを落とす。これ見よがしに痕を残すのではなく、愛おしむように軽く吸い付いたり嘗めたりするのだ。走る小さな快感は既に出来上がりつつあった身体と淫紋に増幅されて、ぼんやりとした頭に殊更大きく響いた。感じるのはただ心地よいという快感と、身体が反射的に帯びる震えだけ。

 

 それが愛した男から与えられているのだと思うと、既に十分過ぎるほど整っていた彼女の胎は、更なる熱を帯びるのであった。

 

 「あっ、あひっ、せんぱっ、らめっ、れす! なんれっ、こんなっ……ひゃっ、ひゃさしいのひっ……」

 

 触れるか増えないかの柔らかさのボディタッチも同時にはじめられる。立香は身体の縁をなぞるようにバスローブの内へ手を這わせた。指先に吸い付くような肌と肉の軟らかな感覚。ついつい思い切り堪能したくなるのを我慢して、教わった通りの動きを再現する。

 

 (叔父貴、リンパマッサージ効いてます!)

 

 リンパ腺は体中に張り巡らせた導管ネットワークの一種であり、色々割愛して直截な物言いをすれば性感帯に近しい位置に張り巡らさせている。丁寧なマッサージで発汗を促せば体調が整うだけではなく、更に性感を昂ぶらせてくれるという一石二鳥の行為。淫紋に次いでダビデ的行為のお伴にされる、ある意味においては大変不名誉な印象を与えられたテクニックであった。

 

 薫陶を護って丁寧に四肢の末端から、しかし絶対に肝心な所には触れずに舌や唇、手指でもってマッサージを施していく姿を見れば師もニッコリすることであろう。元々凝り性なのか、反応を見ながら良いところを探してやると、そこを重点的にせめるルーチンを組んでいった。

 

 「んひぃっ!? あふっ、んぁぁ、しぇんぱ、しぇんぱいい……」

 

 「はいはい、先輩はここにいますよー」

 

 十五分もたっぷりと続けてやれば、そこにはトロットロに蕩けた後輩の姿が!

 

 マシュは首筋と下腹の辺りが非常に弱く、ついで内股が弱点であったらしく、肝心な所に触れないまま延々と愛撫を続けるとこんなことになってしまった。淫紋によって増幅された快楽は、それでなくとも弱点を踏まえた攻めの前に何度も絶頂を呼び起こすのに、たった一つの機能が彼女を切なくさせていた。

 

 淫紋には一つの機能があった。悪ふざけであれもこれもと影の国の喪……美しき女王が色々と機能を組み込んだ淫紋には、許可無くば絶頂に至れない、というセーフティーがかけられていたのだ。肝心要の瞬間を外した絶頂というのは、それはもう惜しいものなのだと宣って。そういった残念な事態を回避するための機能が、性的な経験に乏しい身体を限界以上に高めていた。

 

 「どう、マシュ? 気持ちいい?」

 

 「ひひ……れふ……ふぇも、ふぇもぉぉ……」

 

 「うんうん、辛いよね、分かるよ」

 

 「んひぃぃ!?」

 

 懇願する後輩を愛おしそうに眺めながら、嘆願の言葉を無視してバスローブに手を差し込んでついに初めて豊かな双丘へと手を伸ばした。乳房の輪郭を掠めるようにリンパ節のみを擽られていた胸も十分に限界が来ていたらしく、掌からこぼれ落ちる若い張りのある肉は熱いくらいである。

 

 「でもね、準備しておかないと辛いからね。膜自体は筋肉だから痛覚ないけど、緊張してると他の部分が締まって痛くなっちゃうらしいから……」

 

 「もふっ、もふらいひょうふんぅぅん! らいひょ、りゃいひょうふれふ! こひゃっ、こひゃれひゃう!!」

 

 「分かってるよー、大丈夫だよー」

 

 どの辺が大丈夫だというのか具体的に聞かせろと言われると難しいが、非常に手触りがいいので大丈夫なのだろう。

 

 女性の乳房を単なる脂肪の塊という者がいるが、血が通った乳房には乳房にしかない柔らかさがある。触れれば形に合わせて歪み、牛乳のように白い肌は指先に吸い付いて離さない。優しくマッサージする度に身体は跳ね、喜悦に歪んだ顔から理性が削られていく様を眺めるのも格別である。

 

 痛々しいほどに隆起した桜色の突起を、あえて立香は触らなかった。メインディッシュは最後に、一番大事な所で刺激するのだ。リンパマッサージと同じくらい熱っぽく胸を攻め抜いた後には、マシュはついに快楽の呻きを挙げる以外の反応を見せなくなってしまった。これで絶頂していないというのだから、凄まじい話である。

 

 格ゲーのゲージが如くどんどんと蓄積されていった快楽の貯蓄は、最早爆発せんがばかりに積み上げられていた。常人であれば快楽に気が触れてもおかしくない勢いであったが、頑丈なデミ・サーヴァントのありようがそれも許してくれない。

 

 「……やりすぎたかな?」

 

 相手が処女なら此方は童貞。経験が無い故にちょうど良い加減が分からず、ただ楽しいという感性に任せて弄っていると凄まじいことになってしまった。微笑む姿は愛らしく、引き締まった表情は凛々しい後輩がトロットロになってしまった。とてもでは無いが戦闘中の雄々しいイケメンフェイスが想像できないくらいである。

 

 まだ肝心の下には一切手を触れていないのに、これは果たして本当に大丈夫なのであろうか? とはいえ、童貞は童貞、色々と溜まってしまう閉鎖空間で生活していた立香にも限界はあった。日本男児の平均より些か大きい彼のモノは既に怒張し脈打っている。今日に備えて、というより闖入者がひっきりなしにやってくる自室で自慰もできずに貯めていた期間も長いので辛抱溜まらんという状態。

 

 この状況に至って侵入者がいないのはDrロマニがプロテクトを引き上げ、ケルト勢が初夜の床くらいはと気を遣って警護してくれているからであり、その心遣いを無にするのも悪い。実際、聡い一部のサーヴァントによる襲撃を彼等は必死に食い止めているのだから。

 

 「ごめんね、マシュ」

 

 なので立香は素直に欲望に折れた。既に汗だのなんだのでずっしり重くなったバスローブを脱がすと、そこには粗相したのかと思うほどに濡れそばった女陰があった。色素の沈着も無く、ぴったりと閉じたそこは彼女の年齢不相応に無垢である。この誰にも汚されたことの無い場所を今から汚しきると考えると、これ以上高まることは無いと思っていた心拍が更に跳ね上がる。

 

 「んぃぃぃぃ!?」

 

 具合を確かめるように秘裂をさすり上げれば、もう動けないくらいに疲弊していると思っていた身体が跳ねた。背筋や腹の筋肉が細かく痙攣しているのは快楽の表出であろうか。耐えるようにシーツを掴む手には凄まじい力が込められている。

 

 それでも立香は止まらず、ローションを掛けたと見まごう有様のそこへ、優しく優しく指を潜り込ませた。

 

 「んぁぁぁ、らめれす、もーらめなんれす、しぇんぱい……」

 

 「大丈夫大丈夫、英霊は頑丈だしマシュは強い子だから」

 

 「はひぃ……」

 

 ひだが密集した独特の触り心地。伸縮自在の筋繊維で構成される膣の中は分泌液で濡れそぼり、脱力していることもあってか締め付けはきつくない。これならば挿入したとしてもすんなりといき、痛みを感じさせることもないだろう。

 

 初夜の痛みとは大抵、緊張によって固まった筋肉が無理矢理に擦られることによって発生するものなのだ。血も粘膜へのダメージが殆どであり、筋肉に過ぎない処女膜には痛覚も通っておらず血管も少ないため出血は僅かなもので、イメージほど重々しいものでもない。

 

 ただ、指に触る薄い膜のような感覚は確かに感じられた。半月形のそれは、紛れもない乙女の証。触れて初めて実感した、自分が彼女の最初の男になるのだと。そして、願わくば最後の男でもありたいと。

 

 「ごめんね、マシュ、ちょっと先輩抑えきかなくなってきた」

 

 「ふぇ……?」

 

 彼女が乙女である証明に触れ、立香の理論だった思考をする部分までが俄にゆであがった。今までは後輩の手前、格好良い先輩でありたいということと、彼女に痛みの無い体験をと思って童貞らしからぬ手順を踏んだ行為ができていたが、どうやらそれにも限界が来たようだ。

 

 小さくうわごとのように待って欲しいと促す後輩を無視し、立香は彼女の足を大きく割って身体を潜り込ませた。触れるだけで快楽に揺れる身体を更に愛撫しながら、もう十分過ぎるほどに準備が整ったそこへと逸物を宛がった。

 

 流石に指を一度入れれば、どこに差し込むべきかはもう分かる。右手で臍につくほど反り上がった怒張の位置を調節し、左手はしっかりと後輩の手指に絡めて不安を軽減してやる。

 

 そうして耳元に唇を寄せ、まるで試すかのように囁いた。

 

 「ね、もらっちゃうけど、いいよねマシュ? これでもう、マシュは俺のだけど、いいよね?」

 

 魔性の囁きだ。堕落することをすすめ、他人の手に自分の尊厳全てを捧げろという慮外の契約。その代わりに手に入るものは、物的には存在しない充足感のみ。

 

 「ふぁい……ましゅは……しぇんぱいのになります……」

 

 ただ、理性を振り切るのにそれだけで十分ではあった。

 

 「あああああっ!!」

 

 返答への礼は、緩やかに腰を突き出すことであった。怒張は一突きで女陰の奥にまで滑らかに滑り込み、乙女の初めてを奪い去った。それと同時に乙女は少年の初めても貰うことになる。

 

 散々我慢し続けてきたのはどちらもであったのだろう。立香は初めての温かく粘質な感覚に苛まれ、マシュはいままでずっと焦らされてきた性器への刺激を受け、どちらとも無く達してしまった。

 

 淫紋が絶頂を許可する状況は二つある。一つは淫紋をコントロールしている立香の許可。そして、もう一つは立香自身の絶頂だ。どうしようも無いほどに高め合っていた童貞と処女のカップルは、初めての交合で二つ目の条件を達成できたのである。初体験は非常に難しいものであるが、それを成功させられたカップルは幸福であると言えよう。

 

 「しぇっ、しぇんぱい……こわっ、こわいれす……!」

 

 身体を走る慣れない感覚。下腹部から全身に波及する快楽の波が弱まることは無く、幼い精神を暴力的に蹂躙する。視界が白く明滅し、薄明かりにけぶる愛しい先輩の顔が見えなくなった。大きな快感が耐えることなく押し寄せ、精神を押し流そうとする感覚に後輩は畏れた。

 

 「大丈夫だよ、俺はちゃんとここにいるから」

 

 自身も快楽に身を削られながらも立香は男としてやるべき事を果たした。自分はここに居ると教えてやるために手を硬く握り口づけを贈る。貪るような、弄ぶような口づけではなく、存在を確かめ合うような優しい口づけを。

 

 うわごとのように自分を呼ぶ声は、食われるように口の中へ消えていく。快感に身体は震え、頻りに筋肉が収縮して女性に慣れぬ怒張を責め上げ濃密な魔力を吸い上げる。そうして、吸い上げた魔力が快感に変換されると共に霊基を満たしていった。

 

 そんな強い強い、精神を削るような快楽は五分ほども持続したであろうか。絶頂の絶え間ない波が収まった後輩は、漸う明滅を止めた視界の中に微笑む先輩の顔を見つける。彼もまた額に汗を滲ませていたが、その表情はいたく満足げなものであった。

 

 「先輩……酷いです」

 

 「ごめんね」

 

 「確かにいいとは言いましたけど、やっぱり酷いです」

 

 「そう?」

 

 互いに繋がっているので逃げることなど能わないが、後輩は頬をぷぅと膨らませ顔を背ける。しかし横目に表情を伺いながら、普段は滅多に言わない我が儘を言ってみせた。こういった状況を利用しても許されるのが女の特権というものである。

 

 「絶対ゆるしません。もっと甘やかしてくれないとゆるしません」

 

 「ふーん、具体的には?」

 

 「汗が気持ち悪いのでお風呂に入れて下さい。髪を洗って、身体も洗って、一緒に湯船に浸かって百数えて、ドライヤーで髪を乾かして一緒にお茶を飲んで……」

 

 可愛らしいおねだりがぽんぽんと投げられてくる。恐らく、前からずっとやってみたかったことばかりなのだろう。

 

 「その後は一緒にベッドに入って誉めて下さい。それからそれから、寝るまでずっと頭を撫でてくれながら、子守歌を歌ってくれないとゆるしません」

 

 「そっか、許してくれないと困るから、全部マシュがしたいようにしようね」

 

 「なら……ゆるしてあげます」

 

 おねだりが通った後輩は、普通ならもっと怒っても良い一方的な責めを許した。綻ぶような笑みと共に先輩へと顔を向けるのだが……ふと、違和感が。他ならぬ自分の身体の中で、大人しくなっていた何かが再び大きくなる感覚が……。

 

 「あ、あの……先輩……?」

 

 「ごめん、何か収まりつかなくって……」

 

 「いや、ちょっ、さっきまでのがまだ引ききって無くて……」

 

 「大丈夫、あと2~3回、あと2~3……やっぱ4回くらいで我慢するから」

 

 「先輩!?」

 

 成人を控えた男子の性欲を軽く見てはいけない。女性は三十代に近づいてから増大する性欲が、男児においてはちょうどこの時期に爆発するのだ。猿のようなピークは越えたとしても日に五発程度であれば軽くこなせる。むしろ、これほどに可愛らしい後輩相手であれば、多少無理すれば十発でもいけるのではなかろうか。

 

 緩やかに再開される抽送に後輩は抗議の声では無く、嬌声を上げることしかできず、結局事が終わったのは起床時間間際になってからであった。

 

 尚、後輩が機嫌を直したのは先のおねだりに加えて、“食堂で”あーんしあいながら一食食べ終えるという、カルデアにおいてはある意味投身自殺にも等しい難行をこなしてからのことであった…………。




酒に酔って突発的に勢いで書いた話の供養です。何故かあと五万文字くらいあるけれど、とりあえずこれでお終いということで。続き? それは皆様のお心次第ということで(腰の裏で組んだ手を握ったり開いたりしながら)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。