体を温かい何か不思議な力が包んでいくような感じがする。とても心地よくて、優しい感じがする何か…。
目が覚めると目に飛び込んできたのは青い空。だけど眩しくないのは木陰にいるからだろう。
でも俺はどうしてこんなとこで寝てるんだっけ?しかも何か枕代わりにしてる所為か後頭部に妙な感覚がする。そう不思議に思いながらも俺は体を起こした。
「目が覚めたか…」
「!?」
声のした方を向くとそこにはドラゴンがいた。そしてその瞬間、オオカミ達に襲われたあの時のことを思い出し後退った。だけど立っていたわけではないので結局まともな距離すら取れない。
そうだ…!俺はあの時、オオカミの群れに襲われたんだ!それで気を失って…、ってあれ?オオカミ達は?それに体が…全然痛くない。確かにあの時怪我したはずなのに…、服には破れた箇所があるのに体には傷がない。
「すまない。驚かせるつもりはなかったんだが、あのような目にあっては無理もないだろう」
現状の把握のために俺が必死になって頭を働かせているとそのドラゴンがまた話しかけてきた。そして立ち上がりこちらに近づいてくる。体は全体的に緑色で体長2m以上は必ずありそうなくらいでかい。そんなドラゴンが近づいてくるというのになんでだ…?なんで、恐怖を感じないんだ?
「恐がらせてしまってすまない。だが、どうか信じて欲しい。私は、君の敵ではない」
そのドラゴンは俺の前まで来るとしゃがみ込むように姿勢を少し低くしながら手を差し伸べてきた。
状況から見て、目の前にいるドラゴンが俺を助けてくれたのだろう。目はまっすぐに俺を見つめ声には優しささえ感じる。だからなのだろうか、俺が恐怖を抱かないのは。
信じてみたい。信じよう。
だから俺もそのドラゴンに向かって自分の手を伸ばした。するとドラゴンは少し微笑みゆっくり、そして優しく俺の手を握り、立ち上がらせた。
「自己紹介がまだだったな。私の名はフェイル。フェイル・サモンネクスコだ」
「俺は遊矢。榊遊矢。えっと…、それでフェイルさん」
「フェイルで構わない。寧ろそう畏まらずに気楽に話しかけてもらえるとありがたい」
「じゃあ…、フェイル。聞きたいことがあるんだけど」
「ああ。私に答えられることであれば全て説明しよう」
よかった。ここにきてようやく自分の置かれている状況がわかるかもしれない。聞きたいことは沢山ある。そう思っていると別の場所から声が聞こえてきた。
「おおっ!なんだ、もう目を覚ましたのか。まあ見た感じ大事無さそうで何よりだ」
そして俺はその声の主を見て言葉を失った。ドラゴンであるフェイルの次に俺の前に現れたのはリザードマンだからだ。しかもその隣には1頭の馬を連れているのだが、その馬も普通ではなかった。本来はないはずの鱗が生えている。馬というより麒麟とかそういった別の存在なのかもしれない。
「その反応、坊主。お前さん俺等みたいなのとは初めて会うのか?」
しまった。俺があまりにもジロジロ見てたからこんなことを聞いてきたのだろう。多分良い思いはしてないはずだ。
「ご、ごめんなさい!俺―」
「だっはっはっはっはっは!なぁに謝ってんだ坊主。別に怒っちゃいねえよ!そもそもお前さんを見つけた時から予想はついてたしな」
そう俺の言葉を遮りながら、フェイル程ではないものの大きな手でガシガシ俺の頭を撫でてきた。正直頭が揺れまくって話がよく聞こえない。
「ヴァリオン…」
「おお、すまんすまん。しかしフェイル。随分坊主に気に入られたんだな」
「…?何がだ?」
「手。繋いだまんまだぞ」
その瞬間顔がすごく熱くなって、急いで手を放そうとしたけどそれはそれでフェイルに失礼な気がして結局動けず仕舞い。というか言われるまで全然気づかなかった。恥ずかしい!
するとリザードマンはニヤニヤ笑いながら手を出してくる。
「初めましてだな。俺はヴァリオン・グレイファングだ。坊主の名前は?」
「榊遊矢です。初めまして…」
自然な流れでようやく手を放し、ヴァリオンと握手を交わす。というか俺がすごく恥ずかしがってただけでフェイルは何も思わなかったんだろうか?表情を見るのもなんか怖い。
「ヴァリオンとの自己紹介も済んだことだし本題に入ろう。遊矢、君がどこから来たのか。出身地を教えてくれないか?」
「あ、えっと舞網市だけど…」
そう答えるとフェイルもヴァリオンも難しい顔つきになった。
「当たりだな…。やっぱり訪問者か…」
「訪問者…?」
「遊矢、落ち着いて聞いてくれ。結論から言うとここは君の住んでいた世界ではない」
「え!どういう…」
「つまり坊主は、俺やフェイルなんかのドラゴンや獣人が普通にいる世界に。坊主にとっての異世界に来ちまったってわけだ」