※この作品はR-18です。

エロエロナ物語 -エロエロンナ物語R18編-   作:ないしのかみ

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延びた(笑)。
対決編に入る前に構成を考えている内、書き直し三回。
いや、セックスするエロ編を入れるつもりだったんだけど、途中で気が変わって口中フェラチオに変更。
やっぱり恋人とのまぐあいは、最後に入れるべきだと思ったからね。


帰郷 -サッキュバスの館5- その6

サッキュバスの館5- その6

 

 

              ◆       ◆       ◆

 

 男爵家の夕食は流石に貴族様の晩飯と言った風情で、普段は口に出来無いゴージャスな内容で満足だった。

 海の魚。

 トリィを含むエロエロンナ地方は、沿岸地方と呼ばれるだけあって海に近いのだが、領都を含む沿岸に面した土地ならともかく、多少、内陸へ入ってしまうと生魚は鮮度の問題から食卓で出される事は少なくなってしまう。

 まして、今は猛暑である。

 

 結果として海産物自体は流通するが、保存食として塩漬けされた魚か乾物が割合として多くを占める事になる。

 生の貝類は海水込みで生きたまま運べるのでトリィでも珍しくないが、新鮮な魚にありつけるのは【氷結】の水魔法を使った冷蔵コンテナを利用出来る、富裕層に限られてしまうからだ。

 

「あー、美味しかった」

「カニンガムの見立てですからね。あの男、魚には煩いんですのよ」

 

 トリンの感想にネコ耳族の家令を例に出して、如何に魚の質を重視しているかを説明するお嬢様。

 猫の獣人であるかの種族は、魚の味に拘りを持ち、味の善し悪しに煩い者が多いのだ。

 

「ワインも一級品だからねぇ」

「去年の新酒ですわ。暑い日が例年続いて農業は大打撃ですけど、ワインの品質だけは暑さで上物が出来てしまうのに……」

「頭が痛いのね」

 

 頭をごしごしと拭うトリンに、見えてないだろうけどアラティーが頷く。

 ここは脱衣所。隣は例の大浴場である。

 泊まって行く事になったので、トリンシスを入浴に誘い先程出たばかりだ。

 淫魔としての本能が裸を見た恋人に反応して、股間がふたなり化して抑えるのに苦労したが、状況を察した巫女の口中愛撫で、何とか精液を膣に出す事無く収め、今は安定している。

 

 サッキュバスの射精量はとんでもなく、胃の中が一杯になって鼻や口からも逆流する程溢れ出たのだが、彼女は「飲み切れない程、出すんじゃ無いわよ」と文句を言ったが、その表情は笑顔だったので本気では無いらしい。

 本当だったらこの何倍も中出しして、思いっきり恋人を腹部をボテ腹まで膨らませたいのだが、聖職者としての生活もあるだろうから。アラティーは誘惑に耐えた。

 ここに呼んだのはこちらの都合であり、本来、彼女は教師として今、公学校の教壇に立って生徒達を教えている筈だったからだ。

 教師の役目は聖教会の上司に交替して貰っているが、明日、身重になった姿で教壇に立つのは流石に拙いだろう。

 

「ギルバの話なんだけどさ」

「気付きましたの?」

「そりゃ、身近で観察してりゃねぇ……」

 

 トリンは「これはジャタド家の内情に踏み込む話になるわね」と前置きしてから、シャルルにギルバ・ジャタドが取り憑かれた理由を語り出した。

 

「他のクラスメイトが男色を拒否する中、下地はあったのね」

「ええ、そこらの事情は母親のオルコット夫人に聞かなくては、とは思っていますけど」

「夫人は、今?」

「連れの方と一緒に、我が家にお泊まりですわ」

 

 政務に忙しい父オドニエはこちらへ来なかったが、付き添いとしてオルコット夫人と数名のお供に領主館に出向いており、先のディナーも共に会食したばかりだ。

 

「こりゃ一筋縄では行かないかもね。あたしもナロニエ様に言って明日もお勤めを代わって貰おうかしら」

「司祭様にそこまで負担を掛けるのは……」

 

 ナロニエ・ファフナーはトリィの町の司祭で、トリンシスの上司である。

 平均寿命が半世紀であるこの世界で齢六十を超える高齢だが、彼女が来るまで町唯一の聖職者として、町がまだ砦だった頃から町の教会を支えて来た功労者だ。

 

「ナロニエ様は半妖精(ハーフエルフ)だから大丈夫よ。老体扱いすると怒るのよ」

「……まぁ、お仕事を代わってくれるのなら歓迎しますわ」

 

 確かに寿命三百年と言われる半妖精ならば、まだまだ若いだろう。

 ドレスに着替え終わったアラティーはこの案を飲む事にして、明日の朝食で色々な問題を提起する事を告げる。

 

              ◆       ◆       ◆

 

 領主館での朝食。

 一応、正式な客としてトリンシスもその場に招かれ、一晩、息子の心配をしていたギルバの母オルコット・ジャタド夫人や、回復した主治医ヴァンドルディ、見習い補佐官ガルスなんかが同席している。

 現在、ここの主代行を務めるアラティーと家令カニンガムは無論、同席していた。

 ギルバ・ジャタドの姿が見えないのは、大事を取って休養させていた為だった。

 

「気を遣わなくていいですわよ」

 

 そう言えば、昨晩のディナーでは外来組の態度が固まっていた気がしたので、公式なディナーや夜会なんかと違って、私的なブレックファーストだからとお嬢様は説明して緊張をほぐそうとするが、普段から慣れているヴァンドルディやガルスと違い、他から来たメンバーが固くなるのは仕方あるまい。

 身内以外で会話が弾まないのは拙い。

 

「珈琲に白パン。ベーコンにハムと卵。流石、お貴族様だわ」

 

 その雰囲気を察したのか案の定、最初に口を開いたのはトリンだった。

 食卓に出されたメニューを評価する。

 エルダ世界では三食を食べる習慣は富裕層だけで、一般には朝食抜きで昼と夜に食事を取るが、晩飯は無しで朝・昼だけと言うのも農民には多い。

 これは朝から仕事に出る前に何か腹に入れておく為と言われる。

 

「聖教会じゃ、前夜で出たスープに黒パンがせいぜいだからね」

 

 ちなみに農村部では朝・昼パターン。都市部では昼・晩とパターンが逆転しているのは、農村部では経済的な理由で、油やロウソクの要る照明を灯さない為である。

 日が暮れて暗くなったら農村の人間は寝てしまうからで、公共の照明の普及した都市では逆に晩飯をたらふく食って、明日の朝に備えるからだ。

 

「珈琲を除けば、それ程の贅沢ではありませんわよ」

 

 お嬢様がのたまう。卓上にはアラティー用の食事は無く、その前には珈琲しか用意されていないが、これは彼女がサッキュバスの為だ。

 人間用の食事を口には出来るが、身体を維持する栄養にならないから、普段は味を楽しめる酒や嗜好品しか口にしないので、いつも彼女の席はシンブルである。

 

「庶民から見たら、朝からお肉と卵が出て来るだけでご馳走よ」

「貴族としてはかなり簡素なのですが……。娼館のお客様用朝食の方が、遥かに立派ですわ」

 

 公娼の仕事ではサービスの一環として、客と一緒に食卓へ就く事もある。

 無論、淫魔であるホスト側は客の世話に回るのが主な仕事だし、同席したとしても出されるのは主に飲料だ。

 

「凝ったデザートとかありませんし」

「デザート。うちも出したいですねぇ」

 

 オルコット夫人がため息を付く。

 珈琲なんかは他大陸からの輸入品だから、高級品で庶民が手軽に飲める様な物では無いが、ある程度の富裕層ならば、常飲が可能であり、男爵家も常備していたし、ギルバの実家であるジャタド家でも出せない程では無い。

 しかし、そんな貴族階級でも下級貴族では、デザートはそうそう出せる物では無い。

 ヤシクネーが南方なら伝えたホットケーキがせいぜいで、掛かる費用や凝った調理をするだけの余裕が無いからだ。

 

「領都ではデザートの調達も容易らしいですね」

 

 パンを千切りながら、話を合わせるのはヴァンドルディ。

 彼女がトリンシス同様の東方風衣装に身を包むのは、トリンと同じく東方聖教会で修行した元巫女であったからである。

 もっとも、ヴァンドルディは聖職者としての修行を諦めたドロップアウト組であったらしいが、アラティーは詳しい事情を聞いてはいない。

 

「そりゃ、領都は人口と経済規模がトリィとは桁違いですから」

 

 ガルスが口を挟む。

 

「甘い物は嫌いですニャ」

「カニンガムは辛党ですわね。まぁ、我が町とてそれなりに発展したいですわ」

 

 何とか会話が回って来たとアラティーは、心の中でガッツポーズを作る。

 そこで「田舎町が突然、領都並に発展は出来ないけれど、エロエロンナに近い地理的条件を生かしてコバンザメの様に寄り添う事で、利益を吸い上げたい」と語り、衛星都市化を目論んで、色々な物資を大消費地へ送り込みたいとの政策を淫魔は語った。

 

「何時か、デザートの店も出せる位に、ですか?」

「あら、夢はでっかい方が宜しくてよ。ガルス」

 

 見習い役人は「夢は夢として脇に置いて」と、前置きすると「その前に、今度の渇水をどうにかしたいですね」と続ける。

 

「今年も酷いのですか?」

 

 そう応じるのは、農業方面に疎い主治医だ。

 ドレス姿のサッキュバスは頷くと、「良い機会だわ。わたくしが構想中の計画を皆に聞いて欲しいのだけど、何か意見があったら遠慮無く話して下さいませ」と皆に聞いた。

 

「何をするのよ」

「水路の整備ですわ」

 

 アラティーは膨大な予算が掛かるけど、ポワン河から水を引いて農業用水へと充てる計画を皆へ説明する。

 

「良くは解りませんが、水源確保には丁度良いのでは?」

「主治医殿。世の中には予算と言う物がありますニャ」

 

 ヴァンドルディの意見に異を唱える家令。

 

「税が高くなると、士族としては負担増大がのし掛かってきますが、水は欲しいのは確かですし……。夫の意見も聞いた方が」

 

 悩むオルコット夫人。

 渇水対策に悩んでいる当事者だが、かと言って増税にはそうそう応じられない。しかし、抜本的対策が無いとじり貧になる可能性もある。

 

「水道橋計画並に無謀だけど、やれば?」

 

 かつて計画を持ち出して、無関心を装いながら告げる巫女。

 以前、領都へ水道橋を延ばす計画に反対して、結果的に大損をした前例があったので、以前の水道橋計画の話はトリィではタブーになっている。

 余りにも大きな建設負担に反対票が集まり、結局、水道橋は別ルートで建設されてしまったのだが、近年の渇水からこの決定は間違いだったと反省されているのである。

 

「水道橋が我が領地を通っていれば、確かに水の心配は無かったですね」

 

 後慈恵だが、と前置きして答えるガルス。

 もし計画通りに建設されていれば、水道橋から水を頂く事で水不足の心配なんかまるで気にしなくても良かった筈なのだが、何しろ、アラティーやガルスが生まれる前の出来事なので、今更嘆いても何もならない。

 

「水路に伯爵の支援を求められるのですか?」

「西方運河の一環としてなら、計画に入れていますわ」

 

 ヴァンドルディの指摘にお嬢様はも手書きの概念図を取り出した。

 藁紙に領都、トリィとその先の町が幾つか記されている。

 

「西方運河。伯爵家が計画している新たな水上交通路ですかニャ」

「ええ、カニンガム。その通りですわ」

 

 西方運河はポワン河の河口から、西に延びる新たな運河を開削する計画である。

 陸路を使っていた輸送の効率が、船舶に変わる為に何倍にも貨物取扱量が増大し、しかもコストが劇的に安くなるのを目論んだ一大事業である。

 

「しかし、あの計画は遅々としていますニャ」

「ええ、運河は掘られても領都の周囲に限られていますわね」

 

 当然、河口にある領都エロエロンナの重要性を増大させる目的があるが、流石に莫大な建設費が必要で、掘削工事の進展は遅々として進んでいないのは、領都の人口問題だった。

 西方へと運河を掘る前に、増えた人口を収容する市街地確保の方が優先されたからである。

 

 元々領都は河の両岸に運河を設け、島となった土地を市街地にして拡大していった都市だ。

 運河は船着き場としても機能すると共に、いざ、攻められた際には防壁としても機能する水堀となり、火事の際には防火壁ともなる。

 が、人口は増大し、市壁の向こうには不法居住者が生活するバラックが建ち並び、そこを正規の市街地へと統合するには、外へ外へと運河を拡大して市街地を増やすしか無かった。

 

 この為、本来ならばとっくに完成している筈の西方運河の整備は後回しにされていて、まだ河口付近から殆ど進展していないまま、中断しているのが現状である。

 

「我が領が名乗りを上げれば、建設費の大半はエロエロンナ家が担当してくれると試算していますわ」

「希望的観測ですな」

 

 ガルスが異を唱える。

 如何に伯爵家がうちとは比べものにならないお大尽だとしても、予算はやはり限られているから、大半を出してくれる事は無いと反論する。

 

「まして、エロエロンナ家は海軍を整備しているので予算だって乏しい筈です。

 収入は確かに高いでしょうが、負担も多いってのを忘れてはなりません」

 

 独立貴族は国に対して戦力を保持して、防衛に充てる義務がある。

 地位が高い程負担は大きく、大公家になると大体は方面軍相当、平時で数万人程度まで軍を整える必要がある。

 ただ人を雇うだけではない。それらを食べさせ、軍備を整える必要もあるのだ。

 エロエロンナ伯爵家はこの負担を海軍力と言う形で保持しており、大小何十隻もの艦隊を保持している為、平時でも負担が大きいのだ。

 

「向こうの予算だってどうにか黒字寸前でしょう。だから、余り過度な期待は持たない方が」

「打ち出の小槌って、皇国のお伽話のあれ、欲しいわね」

 

 ハムエッグを口に運びつつ、トリンがうそぶく。

 カニンガムがわざとらしく咳をし、「御領主様に相談した上で、改めて議題を取り上げますニャ」と代行と見習い役人間の摩擦を調停する。

 

「今の予算では、街道の整備と下水道工事で手一杯ではありませんか?」

 

 ヴァンドルディの発言で、改めてトリィの今年の予算が手一杯である事が告げられるが、アラティーにもそれは解っている。

 トリィの町の下水道は今日から工事の予定だ。

 

「確かに……でも、渇水を何とかしないとこのままではじり貧ですわ」

「それは士族の立場としても分かります。ただ、税制の調整が必要な事態なので、御領主様と夫達との調整は必要になるでしょうね」

 

 オルコット夫人に続いて、ガルスが「でも、お嬢様の計画に反対という訳ではありませんよ」とも告げる。

 

「どう言う事ですの?」

「運河計画自体に過度な希望を抱いてはなりません」

 

 確かに運河計画は今後も進められるだろうが、現状の進展具合から見れば再優先のプロジェクトでは無いから、予算の肩代わりは余り期待を持てないのだ。

 

「だから、水路はある程度は独力で完遂せねばなりません」

「我々の手で?」

「そうです。まずは運河規模の代物は必要有りません。我々の欲しいのは農業用水ですから、ポワン河から水さえ引ければ構わないんです」

 

 船が行き交える様な幅広の運河は必要なく、とにかく水を引き入れるだけの貧弱な農業用水路を整備すべきだと主張するガルス。

 

「それさえ引ければ目的は達成出来ます。副次的に水路が出来れば、恐らく運河計画もこの水路沿いにルートが設定される筈です」

「まるで。呼び水みたいですわね」

「お嬢様。それは言い得て妙です」

 

 水路を肯定されたアラティーは、心中で算盤を弾き始める。

 

「良く分かりませんが」

「オルコット夫人。効率の問題ですよ」

 

 ガルスは理解出来ないらしいジャタドの奥方に、まず一から運河を掘削するより、既に存在する水路を拡幅する方が工費や時間が節約出来るのを説明する。

 そして、運河のルートがトリィ経由に確定すれば、将来的に運河の経済的恩恵を受けられる可能性をも指摘する。

 

「河港が設置出来れば、確かに可能性はあるニャ」

「トリィは街道の分岐点ですから、可能性は高そうですね」

 

 カニンガムやヴァンドルディも発言するが、まずは水路の自力掘削の問題から始めるべきだろう。確かに男爵領の予算では厳しい物があるのだ。

 

              ◆       ◆       ◆

 

 様々な意見は出たが、とにかく朝食を終えた皆は解散となった。

 厳しい現実を突き付けられた形ではあるが、水路の構想は皆の理解を得られたので第一段階としては、まぁ、悪くはない感触を得たのでお嬢様は上機嫌である。

 

「貴族様よね」

 

 にこにこしているアラティーの横顔を見詰め、呆れた様にトリンがのたまう。

 

「貴族ですけど?」

「サッキュバスである方を優先して欲しかったわ」

 

 視察の付き合いで外に同行しながら、自分勝手な一般的な野良サッキュバス像を元に語り始めるトリンシス。

 

「領地の経営計画で一喜一憂するのを見てると、本当に淫魔なのか疑問が出て来ちゃうわよ」

「わたくしは、わたくしですわよ」

「それは知ってるわ。アラティーらしいのは充分分かっている」

 

 領主代行の言葉に「うー」とを頭を抱えるトリン。

 

「でも、昨晩、サッキュバスとしてもっと暴発して欲しかった」

「え」

「私の立場考えて、敢えてフェラだけで我慢したでしょ」

 

 図星だった。

 固まるアラティーにトリンは、「暴発してあたしを襲ってくれたら良かったのに。本当は最後まで行きたかったんでしょ」とため息を付く。

 

「そうしたらも今頃、、貴女はわたくしのザーメンでボテ腹ですわよ」

「サッキュバスが相手の腹を膨らませるのは知ってるわよ」

 

 彼女は「昔、膨らませてくれたからね」と過去の事例を出した。

 

「あの時は、我慢出来なくて……」

「嬉しかったよ。子供だったから卵子が出来てなくて孕まなかったけど」

 

 これでもかと精液を詰め込むのは、低い受精率を胎内に長時間停滞する事で妊娠させる可能性を高める為と、精液が孕んだ際に子供の栄養になるからである。

 魔素がたっぷり含まれる淫魔のスペルマは、生まれた淫魔の胎児にとって最高の糧でもあって、これを吸精する事で、僅か数日と言うとんでもない速さでぐんぐん成長するのだ。

 

「あの時みたく、立場を忘れて、あたしだけを愛して欲しかったな。サッキュバスっぼく」

「それは……」

 

 動き易い様にサッキュバスルックに身を包んだアラティーは口をつぐむ。

 ややあって下を向いたまま、「怖いのですわ」とサッキュバスはふるふると震え出した。

 

「わたくしがサッキュバスの本能の丸出しまま、貴女を再び、蹂躙してしまったら」

 

 四歳の頃、恋心が押さえ切れずに暴走して、結果としてトリンシス・トゥーラと言う女性の家庭を崩壊させてしまったのがトラウマなのを告白する。

 遠隔地に島流しにされて、この時は二度と会えなくなる危険もあった。

 領主の娘だから表向きはとやかく言われはしないが、トゥーラ家からは今も恨まれているのかも知れない。

 二度とあんな目は御免である。だから、愛したいけど同時に怖いのだ。

 

「助祭としての経歴を、わたくしのせいで傷付けてしまったら……」

「アラティー。あたしらは、もう大人よ」

 

 彼女達は互いに15歳だ。

 エルダでは13歳から大人の仲間入りをするから、二年の経験を得ている。

 

「大人だから責任は取れるわよ」

「でも……」

「ぱんぱんにお腹大っきくして、教壇に立ってもあたしは気にしないわ。

 生徒達に囃されても、〝アラティーに可愛がって貰ったの。羨ましい?〟とでも答えてやるわよ」

 

 お嬢様は顔を赤らめた。

 腹ボテの巫女が……想像すると赤面するが、少し萌える構図だ。

 

「前にも言ったでしょう。東方聖教会は法国のそれと違って、性行為をタブー視してないって、豊穣、多産の意味からも奨励こそしてないけど、否定はしてないわ」

 

 彼女は「本場の皇国には神殿娼婦だって居るんだから」と主張する。教義の違いから反発が多いと、まだ西方ではこの制度は導入はされていないが、市井での希望は多いらしい。

 

「いいのですか?」

「今更でしょ。あたしとあんたの関係なんて、トリィ中に知れ渡ってるわよ」

「では、今夜……」

「あ、ナロニエ様」

 

 言いかけた言葉を遮り、聖教会の正面で掃き掃除をしている巫女を見付け、トリンが手を振る。

 彼女の上司、ナロニエは耳が尖った半妖精で外見的にはまだまだ若く、人間的な感覚だとティーンエイジャーにしか見えないが、既に齢六十であるベテランだ。

 

「あら、トリン。まぁ、姫様、大きくおなりになって」

「お久しぶりです。ナロニエ様」

 

 挨拶を交わす。ナロニエ・ファフナーは昔からちっとも変わっていない。

 

「相変わらず、お美しく」

「やぁね。人間で言えば老婆とでも思ってるのでしょう」

 

 肩を叩きながら「ほほほ」とお世辞に反応する。

 妖精族とか半妖精族はその身に纏うオーラから年齢が分かるらしいが、オーラが見える王族種淫魔(ロイヤルサッキュバス)ならともかく、単なる臣民種(コモン)のアラティーには判断が付かない。

 

「これからアラティーの視察に付き合いたいのですけど……」

「昨日と同様に代行ね。分かりました。あ、それと姫様を呼び捨てはいけませんよ。トリンシス・トゥーラ」

 

 軽く、トリンは竹箒で頭を叩かれる。

 魔竹が生産されるトリィの特産品であるが、これには元々、皇国の東方聖教会の協力があったと言われる。

 法国系の聖教会から東方の分派が西方へと戻り、東方聖教会として広まったのは第四次マーダー大戦頃だからだが、権威主義的だった西方の聖教会よりも、今では沿岸地方の聖教会は民衆に奉仕する東方系の方が好まれて数が多い。

 

「それと礼拝はして行きなさい」

「はい」

 

 ナロニエに素直に答えるとトリンは教会へと向かった。

 教会は古くから存在し、砦時代に併設して築かれた為、今では西門となってしまった城内の一角にある。

 鐘楼の一部が高さが丁度良いとして、腕木通信の通信塔に転用されてしまっているが、 それ以外はトリィの町の歴史と共に歩んで来た古い建物である。

 

 蝋燭が灯されている祭壇(皇国人は神棚とも呼ぶ)へと向かって、神妙に手を合わせて何度か柏手を打ち、目を瞑って黙祷すると礼拝終了だ。

 

「姫様。お帰りは明日ですね」

「はい、休日は今日までですが……」

 

 予定を告げるとナロニエは「ご領主様はまだ帰還なさらないのですね」と、残念そうな顔を作る。 今朝、届いた通信だと何故か、母は海に出て行ってしまったらしいのを伝えるアラティー。

 

「まぁ」

「海賊退治らしいですわ」

「昔は根っからの私掠船乗り(プライベティア)でしたからねぇ」

 

 母の知古であったらしい司祭はクスクスと笑いながら、「今でこそ白の宰相がNo2ですけど、昔はエロコ様の片腕だとも言われてましたのよ」と海軍時代の母を評する。

 

「伯爵の」

「当時はまだ、士族でしたね」

「予備役だから正規の海軍にでも任せりゃ良いのに、お母様は……」

 

 一応、今でも予備役だが大佐の階級を持った海軍士官でもある母を、アラティーは呆れていた。

 もしかして〝男爵でござい〟とやれてるのは、全てカニンガム以下スタッフのお陰なのかもと疑っている所はあったりするのである。

 実際、平民上がりの士族。それが爵位持ちになった領主はそう言うのが多い。

 二代目は帝王学だの何だのと、最初から領主教育を受けるが、初代はそんな知識習う間もなく、ぶっつけ本番で貴族になったゲースが多いからだ。

 

「お待たせ。着替えに時間が掛かっちゃった」

 

 そんな矢先にトリンが姿を現した。

 聖教会の巫女姿では無く、半袖のカジュアルなワンピース姿をしているのは聖職者の立場では無く、行動したいとの表れだろうか。

 もっとも、首に巴紋の聖印が下がっているのは信仰の表れだろう。

 

「何処から行くの?」

「まずは街道です。ガルスが先に行っている筈ですわ」

 

 土建屋が現場に到着している予定を告げ、町の中に引き返す旨を伝える。

 門が開いて数時間経っているので、街道沿いの交通量も増えてきているから、なるべく午後までに石畳を直したいとの希望はある。

 

「では参りましょう」

 

 ナロニエ司祭に一礼すると、彼女は微笑んで手を振って見送ってくれた。

 晴天で太陽が眩しい。

 今日も暑くなりそうだった。

 

              ◆       ◆       ◆

 

「半年ぶり、でしたわね」

「下水道の整備以来でしたな」

「いつも、ご苦労を掛けていますわ」

 

 石工の親方と挨拶を交わすのは、例の交差点である。

 トリィには三つの門があり、中心を貫く主街道上に東西の門。ここから分岐する北に支街道門がある。

 無論、東西の門に比べると支街道の北門の規模は小さいが、それでも町壁の前面に深い壕が掘られ、堅牢な吊り下げ式の跳ね橋があるのは東西門と変わらない。

 もっとも、水がたたえられてる壕が近年は全くの空濠なのが気になる所ではある。

 丁字路になっている街道の分岐点は、この北門から少し離れた所にあった。

 

 町の中で分岐させるのは、トリィにとって貴重な財源である通行税対策だ。領内を通過する馬車や旅行者から税を取るのは、貴族領に与えられた権利だからである。

 もっとも、男爵家は伯爵家の従属貴族なので、この仕事を行うのは伯爵家より派遣された役人で勝手に徴収は出来ず、従属貴族は支配貴族の配下なので、勝手に通行税を設定出来ないのである。

 これは広く伯爵領内の通行税を一律にして、流通を盛んにする為の策であった。

 もし各領主が勝手に重税を取ったりすれば、領内の交易に支障が出るので、この様な措置が取られているが、一旦会計後に負担金と言う形で取り分が戻って来る仕組みなので、交易が盛んになった恩恵は各領地にも現れているせいもあって、今の所は不満は出ていない。

 

「下水道の方はやっぱりメンテが必要になりますか?」

 

 先に到着していたガルスの問いに、土小人(ドワーフ)の親方は「ああ」と不機嫌そうな表情を作る。曰く、「水量が足りない」のだそうだ。

 たった半年前に調整したばかりで、新しい地下水源を察知して繋げてみたのに、それすら水量が枯れ始めていて、下水に流れる汚物が各所に停滞する事となってしまっていた。

 こいつを拭い去り、綺麗に保つのも整備の仕事である。

 

「まぁ、予想はしていたから、予め召喚師(サモナー)は呼んでいたがな」

「ご苦労を掛けます」

「アリン。こっちに来て挨拶しろ」

 

 親方に呼び出され、現れた亜人に少しビックリするガルス。

 それは褐色肌の少女だったが、異様なのはスカート伸びるおみ足が鋭い爪になっている鳥の脚である事だ。

 袖無しの衣装に短髪から、腕を翼に変化させて飛行する鳥人族(セイレーン)である事に違いない。

 

「施工主の方だね。あたいはアリン・プラッツ。五級召喚師だ」

「行政官のガルスだ。しかし、君は間違えている」

 

 首を傾げるセイレーンに、ガルスは「施工主は領主代行のあちらだ」とアラティーを紹介する。

 アリンは姿勢を正すと、トリンに「あっ、領主代行様でしたか」と慌てて礼をする。

 

「あたしはトリンシス・トゥーラ。トリンと呼んでって……似てるね。名前」

「あ、はい。光栄な話です」

 

 貴族みたいな偉い人と直接会話した経験が無いのか、その会話は緊張気味でどこか他人行儀であった。

 トリンを領主代行に間違えているらしいのだが、それを訂正するの前にアラティーが口を開く

 

「親方。石畳の方の見積もりは終わりましたの?」

「はい、アラティーさ……」

「ちょっと領主代行に挨拶が終わってないのに、サッキュバスが脇から口出ししないでね!」

 

 吠えるアリンに鳩が鉄砲を喰らった顔で、あんぐり口を開けるアラティー。

 逆に顔色を変えた親方は、ずっと以前から淫魔がここの次期領主であるのを知っている。

 

「挨拶するのなら、その人だよ」

「え」

「領主代行のお嬢様は、お前が罵ったその御方だ。馬鹿者!」

 

 トリンと親方に指摘され、顔面蒼白になるアリン。

 始めは冗談だと思い、『あんな破廉恥な服を着た淫魔が、領主代行の訳ないじゃないか』と笑い飛ばそうと思ったが、よくよく考えると、あの冗談の通じない親方が嘘を言う事は無いのだと気が付く。

 

「しっ、失礼しました!」

  

 思わず平伏し、土下座するアリン。

 どこかにともなく〝不敬罪〟と言う単語が浮かんで来る。

 陰険で、質の悪い貴族なんかは、この罪状を手に酷い目に遭わせるらしいとの噂は、酒場や仕事場でアリンも度々聞いていたからだ。

 

『慰み者にされるってのは、流石に女性だから無いだろうけど……。あ、待て。サッキュバスってふたなりだった。これはやべぇ。犯される』

 

 とか考えてるとも知らず、淫魔は「料金がお安くなると嬉しいですわ」と条件を付ける。

 値引きの交渉材料として失言をしたたかに利用するが、当人は強姦されるよりは安い物だとしてあっさりと了承する。無論、工費値引きでアラティーに異存は無い。

 

「召喚師は今までの方と違うみたいね」

 

 以前、見掛けたのは老いた男性だったのをトリンは思い出す。

 

「あ、やはり助祭様には判りましたか?」

「カルト様だった筈。よもや……」

 

 アラティーが後を告げると、慌てて首を振るのはドワーフの親方。

 単にぎっくり腰で寝込んでいるだけで、老齢だが死亡していないと二人に説明する。

 

「このアリンさん。見習いと言うには五級だから腕は確かですわね」

「カルト爺の秘蔵っ子ですわ。ただ、領都の外に出るのは初めてだと思いやす」

 

 説明されて、改めてアラティーは若い召喚師を観察した。

 召喚師と言うのは、魔物を手元に召喚して使役する特殊な魔導士である。

 三級以上の者は大物、単眼巨人(サイクロプス)だの飛竜(ワイバーン)なんかも手駒として使えるらしいが、そんな希有な人材は希少で、そんな人材が数十人まとめて戦力化出来るならともかく、現状では軍隊の戦力としては期待されていない。

 如何に強そうな魔物だって少数では戦争には役に立たないからで、一時的には暴れられるかも知れないが、やがて弩砲で串刺しにされるだけだろう。

 勿論、一匹でも強さの桁が違う本物の古代竜(ドラゴン)だったら話は別だが、そんな超一流召喚師の雇用は至難だし、第一、そう言う奴らは俗事に興味を示さない。

 

 多いのは六級以下の小動物を召喚出来る者達であり、鷹匠みたいな猟師、あるいは漁師系の者達が狩りの補助として使役するのが一般的だ。

 だが、目の前のセイレーンは土建屋の仲間である。

 

「単細胞魔物(アメーバ)使いですのね」

「はい。掃除屋です」

 

 下水の汚物を綺麗にする為に、不定形生物である巨大アメーバを召喚して拭い去る役目の召喚師だ。同時に読み師(ダウナー)であるらしく、井戸掘りなんかに活躍していると言う。

 地味だが、生活に密着している魔導士であるから、男爵領に一人は欲しい人材だった。

 

『さっきの不敬罪、領地専属魔導士になるって条件出しておけば、ですわ!』

 

 五級ならばかなり能力は高いから、召喚してから長時間の使役が可能なのか、或いは使役可能な距離がかなり長いかのどちらかだろう。

 しまったと淫魔は悔やむが、覆水盆に返らず。

 まぁ、次に機会があったら誘ってみようと気持ちを切り替えて、幾つか質問する。

 

「貴女から見て、領内はどう見えますの?」

「ええと、空から見た限りでは豊かな土地ですね」

 

 土建屋だから下水道施設の事を質問したつもりだったのだが、全くの別視点からアリンは土地を評価した。

 セイレーンであるから、もしかするとここへ来るまで空路を飛んで来たのかも知れない。

 

「火山から見て水脈が影響を受けていますね」

「プテラ山からですの?」

 

 アリンは「読み師としての判断だけども」と一応断ってから。「【水脈探知】を行ったんです。すると面白い結果が出たんですよ」と述べた。

 有毒な瘴気は周りに巡らされた竹林で防がれているが、水脈の方も火山から噴出する魔素を含んだ水となってしまっている。

 

「不思議なのは有害な物質は魔竹で吸収されて、残った水は魔素混じりの地下水となってる訳ですけど、何故か、竹林地帯を抜けた先には、あんまりその水の反応が無いんです」

 

 読み師とは水脈や鉱脈を探す専門家だ。

 その商売上、水属性と土属性を兼ね備えた者が多いが、アリンは水属性しか持っていないと言う。

 土建屋に勤めているのもその関係らしい。

 

「魔竹が水を全て吸ってしまったのかな?」

「いいえ、それならば水不足はもっと深刻だった筈ですわ」

 

 プテラ山の噴火から約四十年。竹林が出来たのはそれから数年以内であった。

 確かに魔竹は水を吸収しているのだが、ほぼ全部の水を吸収しているのはあり得ない。

 

「渇水が起こったのは近年ですからね。それ以前は、地下水脈は豊かでしたわ」

「おい、アリン。さっさと作業を開始しろ!」

 

 親方からの怒声にセイレーンの娘はびくりと飛び上がり、領主代行に一礼して慌てて配置に就く。

 唖然としていると、背の低いドワーフが寄って来て「済みません。礼儀知らずの田舎者で」と弟子の無礼を詫び、先程中断された予算見積もりの件を話す。

 値段の交渉はガルスを交えて話したが、妥協点に行くまでに少々、時間が掛かる。

 少しでも安価にしたい男爵領側と、工費を取りたい土建屋側の駆け引きである。

 

「まぁ、妥協点としてこんな所で……」

「まけてくれるなら、工費の半分は現金払いで即決しますわよ」

「姫様は商売が上手い。よござんす。それで手を打ちましょう」

 

 マンホールの前でアリンが巨大なアメーバを召喚しているのを横目で見ながら、交渉は妥結した。

 お嬢様は親方に現金の引き渡しをするから、領主館へご足労願いたいと告げ、ひとまず彼らと共に城館へと引き返す算段となる。

 

「何か気になるの?」

 

 アラティーにトリンが声を掛ける。

 値段交渉中は部外者だから口出しせず、暇なのでセイレーンの召喚師が行う下水にアメーバを潜らせる作業を見ていたのだが、ようやく話が済んだ彼女の表情が暗く感じたのだった。

 

「アリンの話していた水脈問題。午後からはそれを中心に探索すべきかと思ったのですの」

「その前に、あんたのお食事会よ」

「ああっ、そうでしたわ」 

 

 領主代行のサッキュバスに領民が集まって、姫様に精液を飲み干して貰う集会。

 希望者が殺到し、当選券がプラチナチケットクラスになる人気の儀式なので、領民の士気を高める為にもこれを外す事が出来ないアラティーの義務であった。

 

『ま、またボテ腹覚悟ですけど、やらざる得ませんわ』

 

 お腹は空いてないけど、決意を固める淫魔であった。

 

 

〈続く〉




男爵領の将来計画とか、会議部分が長くなってしまった。

掃除屋さん。アリンは下水清掃だけど、召喚師の中には煙突掃除する人も居ます。中に害虫だの鼠だのいても、管の中を進むアメーバが綺麗に食い尽くしてしまいます。スライムではなくアメーバなのは、単細胞生物だから支配しやすいのです。
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