エロエロナ物語 -エロエロンナ物語R18編- 作:ないしのかみ
エロも何とか描写しました。
『サッキュバスの館』シリーズ、風紗館の三人娘編完結です。
-サッキュバスの館5- その11
◆ ◆ ◆
「う……ん」
まどろみの中、アラティーは目を覚ました。
どうして寝台の上にと考えが思い至った時に、ここが自分の私室であると言う事に気が付いた。
マジックライトはわざと光量を落としてあるが、調度品や私物から、それでも充分にこの場所がトリィにある領主館であるのが把握出来る。
「うわっ、すっかり夜中ですわ!」
天蓋付きの寝台から、がばっと起きる。
今夜中に領都へ帰還しなければ行けない立場なのであるが、窓の外はとっくのとうに夜のとばりが降りていた。
鎧戸が使われている一般の窓と違い、貴族の館であるからこそ備えられた贅沢な窓ガラスが映し出す、外が丸見えの夜景に淫魔は状況を判断して焦りまくる。
「起きた?」
慌てて時計で時間を確認しようと振り返った時、側の椅子に腰掛けていた聖教会の助祭が声を掛けてきた。
「……トリン?」
仮眠していた助祭も寝起きだったらしく、頭を二、三度振りながら立ち上がる。
彼女の土埃や染みで乱れた巫女装束から、まだ着替えてないらしいのが窺え、あの遺跡との死闘から少なくとも、半日以上は経っていないとアラティーは判断する。
「休暇は多分、今日の午前までですわ。早くしないと」
「間に合わないわよ。もうすぐ、夜明けだからね」
置き時計を指さすトリン。
ドワーフが創り出した細工が美しい文字盤上の針は、午前であろう四時を示している。
どんなに支度を急いでも領都までは二時間は必要だ。
勿論、身一つで単に行くだけなら一時間程度なのだが、夜中に行っても城門は閉じているだろうし、身体の調子が悪く、領主代行は立って歩く自信が無かった。
「安心なさい。領都へは〝健康が優れず〟って連絡したわよ」
「本当?」
「ガルス様がね、宰相へ直接ね。
了解の返事も貰ったわ。一週間(六日)延ばしてくれるそうよ」
見習い補佐官の名を出して、幼馴染みはサッキュバスを寝かしつける。
公娼の仕事は領内の税収に関わって来るので、一週間は大盤振る舞いだが、大丈夫なのだろうかと逆に心配してしまう。
全体的に身体がだるかったアラティーは素直に寝台に横になり、その上からトリンが掛け布団を整えてくれる。
「貴女も寝てないのではありませんこと?」
「仮眠はしたわよ。着替える暇も無かったけど、アラティーの方が消耗していたし……。
とにかく寝ていなさい」
少し前、領主代行は意識不明だったが、深刻な支障は無いとナロニエに伝えられ、ようやく看病を中止して仮眠に入ったのがほんの三時間前なのだが、それを口にするトリンではなかった。
余計な心配を掛けて、アラティーの心配は増やしたくは無かった。
「眠れない……の?」
仄かに魔法の光が灯り、室内に時計が秒針を刻む音が響く中、静寂を絶ったのはトリンシス。
恋人のいつまで経っても閉じない瞳を心配して、淫魔の顔を覗き込む。
「ええ、どうにも冴えちゃって、ええと、あの後の経緯を聞かせて下さる」
「何処から話そうか」
「援軍が来た理由、ですわ」
リンガム隊長率いる騎士隊だが、地下へ現れたタイミング余りにも良すぎた。
トリンは「あたしらの行動は手に取るみたいに、ナロニエ様の監視下にあったのよ」と告げ、結界に引っかかった式神が、実はアラティーの監視役だったのを打ち明けた。
「アラティーが護衛を嫌がっているのを知っていたから、男爵様が代わりにね」
「お母様が……。司祭は確かに昔の仲間だったそうですが」
ナロニエ・ファフナーは男爵領が生まれた時からの住人だ。
封土としてトリィの街、いや、当時は開拓村が開村した時に母と共に住み着いた古株で、家令であるカニンガムと共にもっとも古い住人の一人である。
母と一緒に昔はやんちゃしていたとも聞くが、まさか式神使いとは知らなかった。
「で、危険を察知した司祭が、近くの騎士隊を臨時徴集して」
「うん。あの騎士隊長のリンガム様は、ナロニエ様の元教え子だったんだって」
だから、不意の動員に対しても柔軟に対応してくれたそうである。
まぁ、男爵領の騎士隊なんか村の自警団みたいで、どいつもこいつも互いに知り合いみたいな所があるし、従士達もナロニエ司祭を良く知っているからこそなのだろう。
これが子爵領だの、伯爵領なんかのもっと大きな場所の組織だったら、部外者が軍に口出しするのを快く思わなかったかも知れない。
「皆、アラティーの事か好きなんだよ」
「そう言われると、照れますわね」
淫魔の頬が少し赤くなり、照れ隠しの様に身体を横たえて頭から布団を被る。
くすくす笑いの後、こんどはトリンが逆に質問して来た。
すなわち、「シャルルに連れ去られた後に、どんな事が起こったの」である。
「まずあの遺跡、魔法装置がどんな物だったかを理解する必要がありますわ」
「シャルルの言だと、地脈活性化装置だったけど……」
奴は古代文明期に創られた物のレプリカだと言っていた。
かつて、伝説の〝南海事件〟の原因となった海底爆発。それを引き起こした邪教結社の魔法装置であった。
一夜にして隆起し、今は男爵領のランドマークにもなっているプテラ山も、この装置が作用した結果らしい。
「一度は壊されたのですよ。でも、シャルルはそれを発見して再建した」
「十年前の事件ね」
聖教会の助祭は頷いた。
当時、シャルルが男爵領へ来た目的。そして士族へと成り上がったのも、この地にその魔法装置があった為で、帝国の意を受けての事であった。
アラティーがサッキュバスと言う事で問題に及んだのは、自分が士族となって帝国の影響力を拡大する為のついでにしか過ぎない。
「あの装置の欠点は、使用に際して膨大な魔力を必要とする事ですわ。
だから、それを補給する為に地下水脈に含まれる魔素を用いた」
「それが近年の渇水化の原因?」
「ええ」
遺跡は水脈を取り込むと、魔素だけでは無く水その物も残らず利用していた。
装置が作動すると過熱するらしく、その冷却に水が利用されたのだ。魔素だけを吸収して魔力無しの純水を提供してくれれば、男爵領の渇水は起こらなかった筈である。
「でもアラティー。そんな知識、どこで」
「装置に取り込まれた時、何故か、装置の持つ何かにリンクしましたの。
膨大な情報が一気に押し寄せて、気が狂うかと思ったけれど、それが逆に反撃のチャンスを掴むヒントとなりましたわ」
意識が装置と接続され、今まで無縁だった知識がインストールされたのだ。
この魔法装置の性能や扱い方。
蓄積されていたここに至るまでの履歴や、現在のステータス。
「その中の一つに、装置の動力源とその仕組みがありましたわ。
これがどうやって稼働しているのかの原理ですわね。
まぁ、今までは地下水脈に含まれる魔素を集め、抽出していたのですが、シャルルが無謀な使い方をしたので、蓄積していたエネルギーは低下していたのです」
「アラティーを取り込んだ……という事は」
淫魔の生命エネルギーと同種の、「生物が持つ霊素を変換する物では無いか」とトリンシスは答えたが、領主代理は「半分正解でしたわ」と肯定する。
「半分?」
「生命力を直接吸収していたら、多分、今頃はここで喋ってなかったでしょうね。
いえ、わたくしの事だから亡霊となって枕元に佇み、お別れの言葉を述べていたのかも」
「ばかっ、縁起でもない!」
胸をぽかぽか叩くトリンに、「痛いですわ」と抗議の声を上げながら、その身体を抱き締めるアラティー。
「装置は魔素のたっぶりと詰まった、わたくしのザーメンを絞り出したのですわ」
「え、それってサッキュバスの吸精方法と同じ」
領主代行は「ええ」と肯定する。
男性の持つ生命力を精液と言う形に変換し、その霊素を胎内で吸収して魔素に再変換して糧を得るのが、サッキュバスの吸精である。
ただ一つ違うのは、ふたなり化したサッキュバスの精液はより純粋な魔素に近いのである。
「一旦、身体の中で精製が行われるの為ですわ」
「そいつを搾り取ったのね」
「ええ、最初は」
魔素を収集する装置にとって地下水に含まれる魔素よりも、アラティーが精製して吐き出す精液の方が都合が良かった。
採取して自力で魔力濃度を高める必要が無かった為である。
それだけ淫魔の精液が高い魔素を凝縮したエキスの塊だと言う事で、当初はアラティーを絶頂させ、思う存分、そのザーメンを搾り取っていた。
「でも……ね。 気が付いてしまったんですの」
「何を?」
「魔素を吸収するのに限界があるって」
装置に意識が繋がり、そのスペックを解析した時点で淫魔は悟った。
魔素の濃度がある一定以上高くなると、繊細な装置の調整が間に合わなくなり、各部に異常が発生するのだ。
では、〝ここへ特別に濃厚な精液を流し込めば?〟と気が付いたのだ。
もしかすると拘束状態から、逆にこいつの主導権を奪い、装置を自壊に追い込む事が可能になるやもと賭け、思いっきり濃厚な精液を精製して大量にぶち撒けたのである。
「呆れた。確かに貴女のそれは凄い濃度だったけど……」
「あれでも遠慮してましたのよ」
淫魔同士が繋がって、数日間も延々と濃縮作業を行って出来上がる〝アムリタ〟と称される黄金の精液、 かつて王族種たるロイヤルサッキュバスに献上されていた品物だ。
文字通り光り輝いている粘度の高い蜂蜜色のそれを、ダイレクトに注ぎ込んでやったのである。
「限界まで濃縮された精液は魔素と霊力の塊で、そんな物をサッキュバス以外の女性の中に吐き出したら、下手すると身体が破裂して狂い死ぬ様な毒ですわ」
「ちょっ、そんな危険な物を毎回、あたしに!」
青ざめるトリンに、ふふっと笑いかける。
「安心なさいませ。わたくしの射精は濃厚ですが、いつもはちゃんと危険じゃ無いレベルですわ」
「驚かさないでよ」
「と言うか、あんまり濃度を低く出来ないみたいなんですの」
サッキュバスの射精能力には幅がある。
乳房にある巨大な精巣から、自在に人間を遥かに超える物凄い量のザーメンを製造し、腹ボテになるまで送り込めるし、任意で濃度や粘度を調整する事も可能だ。
「わたくしのザーメンはあれが標準。他の方はもっと濃度や粘度も低いのを製造出来るみたいだけど、体質なのか……」
密かな彼女の悩みである。
普通の淫魔は濃くても、舌で噛み切れるようなぶりぶりの塊は普通は出さない(いや、やろうと思えば出せるけど)。
使用後の掃除が大変なので、普段から粘っこい水飴みたいな精液を室内に無駄撃ちしない様に心掛けている。
「量も物凄いじゃない」
「あれは本気で妊娠させる為ですわ。運命の相手じゃ……貴女じゃ無ければ出しません」
娼婦としてサービスで、望まれればどんな相手にもボテ腹になるまでは射精する。
でも、普通はお腹がぽこんと出る程度で、臨月寸前まで腹を膨らませるのは余程の事なのだと説明する。
「まぁ、あたしはアラティーの仕事っぷりは知らないけどね」
当たり前だが、田舎街の助祭には淫魔の集う高級娼館は無縁であるから、仕事風景なぞ知る由もないし、お仕事中のサッキュバスはともかく、余程変な性癖を持つ相手じゃない限り、行為中の性交は見られて喜ぶ客は居ないだろう。
「でも、アラティーだから信じてあげる」
恋人の不安そうな表情が、一変して明るくなった。まぁ、そう言う訳で中断していた説明を続けると、超高濃度の精液を大量にぶち込んだのだそうだ。
無論、幾らサッキュバスだって何十リットルもの量の精液が常に蓄えられてはいない。
蓄積分以外の精液は、胎内に蓄積されている魔素を精巣で精液へと還元する。
これならば魔素が続く限り、幾らでもザーメンを淫魔は出す事が出来るのだが……。
「何か問題でも?」
「少量では駄目で、一度の大量の超高濃度精液が必要なんですの」
吸精装置にだって安全を確保する為に、セーフティ機能がある。
反応を感知され、精液の流れが遮断される前に相手が処理しきれない程のザーメンを送り込む必要があったのだ。
「あのバルブか」
「ええ、あれは流入を調節する際の緊急用手動開閉器ですけど」
しかし、幾ら淫魔でも超高濃度の精液、アムリタを大量に用意するには時間が掛かる。
普通のサッキュバスが胎内生成を何日も掛けて、やっと出来上がる代物なのだ。
「だけど勝算がありましたの。覚えてますか。直前までのわたくしの身体」
「太ったボテ腹。贅肉が付いたと嘆いていたわね」
「ええ、それは限界まで魔素を身体に溜め込んでいた為ですわ」
だが、良く見るとアラティーの現在の状態は痩せていた。
腹は引っ込んでいるし、贅肉も無いばかりか、僅かに肋骨が目立つ程、痩身になっているのだ。
「痩せた?」
「ええ、自慢のバストも貧乳に」
言われて見ると、憧れだったアラティーの乳は大きく目減りしている。
貧乳って言うのは語弊があるが、メーター越えの超爆乳だった胸が普通の巨乳サイズへとなっていた。
元々、アラティーは飽和状態に近い状態で、身体に溜め込まれていた魔素が蓄積されていたが、それも普通では無く、魔素を精製し練り込んだアムリタ状態で保管されていたのだ。
「で、それをぶち込んで差し上げましたのよ」
「どの程度?」
「まず、約十リットルを一度にね」
流石にトリンが口を開いてぽかーんと立ち尽くす。
そんなの魔族とは言うものの、人間大の生き物に可能なのかと問うと「全部出し切るのに三十秒程掛かりましたわ」との返事。
一瞬で相手に叩き込むのは不可能だったみたいであるが、一回の射精でそんな量を出せるのは驚異的である。
「最初に五リットル。後は継続して精液を作成しながら、どくんどくんって」
「平気なの」
「まさか。この一発で精巣がいかれてしまいましたわ」
あの爆乳が三倍近く膨れ上がり、膨大な精液を発射したのであるが、こんな無理はもう出来ないだろうと彼女は語る。
生体魔法【爆乳射精】と言う能力らしいが、次発の時にはこの半分以下しか量が出せなかったそうで、多分、肉体の方が壊れてしまったのだと悲しそうに結論付けた。
身体が悲鳴を上げてセーブせざる得なかったのだそうだ。
「この魔法を会得した時から、最初にトリンへ試してみるつもりでしたのに……」
「止めてよ。恐ろしい」
子宮へ一気に数リットルのザーメンが流れ込み、一瞬の内に腹がぼんっと膨らむが、普通は淫魔と繋がってる限り、圧迫されて物凄く苦しいものの、生体魔法【胎内拡幅】で保護されているので身体が破壊される事は無いと言う。
魔王が跋扈していた古代王国時代のサッキュバスが、人体を保護する【胎内拡幅】をワザと切り、戯れに人間の腹を破裂させる残酷な処刑法としても知られているが、現代のエロ淫魔の間では勿論、殺人罪に当たるそれは禁忌である。
「それで、その機械が異常を起こしたと」
「わたくしの濃い精液でも耐えたのですから、魔素を吸収する力はかなり高かったんでしょうけど、その時撃ち込んだのは〝アムリタ〟ですからね」
突然の超高濃度精液を受け、遺跡の生体部分は対応する間もなく壊死した。
猛毒みたいな物とアラティーが言った通り、ロイヤルサッキュバスが口にする様な、超高濃度の魔素には流石に耐え切れなかったのだ。
相手は高純度の魔素の塊。ヒトや魔族の様な魔素に耐性を持つ生物以外、浴びただけで即死するレベルの代物なのだから。
変な例えだが、自然放射線にも耐えられる生物でも、突然、高濃度のウラン原石に触れてしまっら、どうなるかの例に似ている。
機械部分も異常をきたし、ある物は破壊され、残りは少しでも精液の濃度を薄めるべく大量の水を加えたのだが、それが暴走して遺跡中から水が噴き出し始めた。
装置は内部に流れた水をコントロール出来ず、遺跡自体が自壊したのだ。
「水がアラティー味だったのも……」
「元々、希釈されたわたくしのザーメンだったからですわ」
余程、大量の水を加えたのだろう。
もしかしたら冷却水もそっちへ回したので、各部がオーバーヒートしたのも自壊の一因なのかも知れない。
シャルルが捕えていたのが、魔素で飽和状態だったアラティー以外のサッキュバスであったなら、この事態は起こらなかっただろうが、彼女を利用せんとした昔の事件も含めて因果応報というか、自業自得で滅んでしまった事に助祭は因縁を感じる。
「……お腹が空きましたわ」
嘆いていた贅肉は消えているし、身体もガリガリとまでは行かないものの、痩せているのは身体に溜め込んでいた魔素をほぼ使い切ったからだ。
アラティーは何年か振りに空腹感を覚える。
毎晩、毎晩、人気娼婦として大勢の殿方相手に精液を搾り、魔素を貯められるだけ溜め込んできたのだから、空腹感は全くなかったのだが、今は猛烈に精液が欲しかった。
「精液よね。今、カニンガムさんに相談してくる」
「待って、今の時間なら、家令は寝ていると思いますわ」
立ち上がったトリンへ、そう指摘する領主代行。
夜明け近いし、恐らく事件の処理が夜半まで続いたから、カニンガムは就寝したばかりの可能性もある。
流石に寝入り端を叩き起こすのは酷だろうし、今、起こした所で多量な精液が手に入るとも思えない。
「夜が明けるまで、我慢しますわ」
「うーん……。それでも空腹なんだよね。魔法が使えるだけの魔素が残ってる?」
「わたくしの使える初歩的な物と、生体魔法なら」
アラティーの使える六級魔法は魔素の消費量が僅かだし、生まれ付き持っている生体魔法もどちらかと言えば、魔素消費は少ない方だ。
トリンシスはそれを聞いて考え込んでいたが、何か覚悟を決めたみたいで顔を上げた。
「あたしがご飯を提供してあげる」
「へ?」
一瞬、彼女が何を言っているのかが分からなかったが、やがて男爵令嬢はその意味に思い当たって「えっ、えーと」と、視線を明後日の方に向けて狼狽する。
ちらっと、トリンの方を見るが向こうも顔を赤らめていて、自分の予測が当たっているのを確信したアラティーは、改めて恋人に向き直った。
「それって、ふたなり化してわたくしにご馳走して下さるの?」
「使えるんでしょ、他者に男根を生やす奴」
寝台へと歩み寄る助祭。
「ああ、【陰核勃起】の生体魔法……」
男根を生やすのでは無くて、女性のクリトリスを肥大化させて男根化する魔法である。
似た様に見えるが、男根を生やす魔法だったら男性に使って、ペニスを二本も三本も複根化させるとんでもない事が出来てしまう。
それを解説しようとしたが、しても仕方ないと思い直して止める。
「あたしのザーメンをアラティーにあげるわ」
「いいんですの」
「お腹空いてるんでしょ」
この【陰核勃起】は陰核を成長させるだけでは無く、膀胱に手を加えて精巣を形成するので、精子を無い魔素含みの擬似精液を射精可能になる。
姿形は本物と変わらないが、当然、精子を含まないので女性を妊娠させる事が出来ず、サッキュバス用として特化された魔法だと言われており、問題なく女性の生体エネルギーを吸精して食糧として確保出来る。
「嬉しいですけど、その……貰っちゃっていいのですか」
「あたしとあんたの仲じゃない」
今更〝どうしたのよ〟と言う表情をする巫女。
「いえ、そうじゃなくて……」
ああ、『これって淫魔らしくないな』と自覚しながら、アラティーは「トリンの童貞を貰っちゃって……」と小声で囁いた。
途端に幼馴染みの顔がぼっと真っ赤になるが、直ぐに「いいわよっ」と怒った様な口調で返事が返って来る。
「覚悟を決めているし」
「トリンっ!」
寝台から身を起こしながら、がばっと抱きつく淫魔。
トリンシスは「アラティー相手だからよ」と草履を脱ぎながら、天蓋付きベッドの中へと入り込むと、汚れた巫女装束の緋袴を脱ぐ。
東方聖教会の正装がはらりと床に落ち、白衣をはだけさせると真っ白な幼馴染みの裸体が晒される。その姿をお嬢様は綺麗だと見惚れてしまう。
「東方の衣装ってエッチの時、便利ですわね」
「ばかっ」
軽口に怒られたサッキュバスは秘所に手をかざした。
掌が淡いピンクの光に包まれ、照射する感じで股間に注がれるとトリンの下腹部に同色の光が淫紋が浮かび出て、陰核がむくむくと成長して行く。
淫紋は左右対称に広がる形が形成されると光が消えて、赤い色に固定される。
「あああっ……股間が熱い」
「我慢して、順調に育ってますわ」
ぐんぐんと伸びる先端が亀頭へ変化した。
全長が三十センチ近くにまで育ち、血管を浮き上がらせてびくびくと震えるクリペニス。
もっと育てる事も出来るのだが、トリンの負担も考えてサイズの拡大を中止する。
「この淫紋が浮かび出ている間は、わたくしの魔法が持続していますわ」
「な、何か、変だわ、身体が猛烈に猛り狂っている」
それは男性の性衝動だ。
女性を犯したいとの欲望が、止めども無く溢れ出て来るのをアラティーも経験している。
『頃合いは良し』
アラティーは意を決して、逸物を口で咥え込んだ。
舌で愛撫する前に頭部を掴まれ、そのままトリンの腰が前進して喉の奥まで剛直が突っ込まれる。
「ごめんっ!」
同時に猛烈な勢いで、最初の射精が解き放たれる。
初めての刺激に耐えられず、逸物は一分近い脈動で胃の中へ直接、魔素の詰まった白濁を吐き出し続けた。
脈動する太い肉棒が咥内一杯に詰め込まれ、息苦しいが淫魔は耐えた。
『ああっ、これがトリンのザーメンの味』
フェラが終了し肩で息をする巫女へ、口元に残った残りの性汁を舌で舐め取りながら、ゆっくりと尻を向け、サッキュバスルックのクロッチを脇に寄せるアラティー。
「童貞、頂きますわ」
領主代理の言葉にびくんと反応し、まじまじと見詰める先には淫魔の恥丘。
アラティーは一本の縦筋に片手を当てて、ぱっくりとヴァギナを開いて見せつけている。
使い込まれている筈だが、膣は全く黒ずんで無く、まるで未通女(おぼこ)の様に鮮やかな桜色を見せつけていた。
「あ、ああ……」
言葉にならない呻きをあげつつ、トリンは後背位になった淫魔の尻を掴んで引き寄せる。
本来、サッキュバスの一番好む体位は騎乗位なのだが、アラティーは最も基本であり、初心者向けのこの体位を選んでいた。
荒々しく、激しい勢いで逸物が突き込まれた。
「んんんんーっ」
「ふわぁぁぁぁ、あっ、熱いですわー」
二人の声が錯綜した。
真後ろから何度も突かれ、深いストロークでヴァギナが蹂躙される。
音を立てながら、外からでも子宮が突かれている様子が判る膨らみが激しく前後している。
何もかも忘れ、一匹のオスと化した巫女は、「出っ、でるぅぅぅっ」と絶叫しながら、身体の芯を駆け上がる衝動に身を任せる。
「いいですわ。トリン、熱いザーメンを目一杯お出しなさいっ」
「アラティィィィ-っ、いくぅーっ」
エクスタシーが体中を駆け巡り、子宮内に膨大な精液が発射される。
淫魔は先程、胃の中に出されたザーメンに続いて、胎内に注がれた大量の白濁を全て受け止めて行く。
『ああ、美味しい。わたくし、処女だけで無くトリンの童貞をも奪ってしまいましたわ』
空腹だったせいもあるのだろうけど、恋人の出した精液の味は格別の物の様に感じる。
普通ならボテ腹になるまでの大量射精だが、アラティーの吸精能力がそれを上回り、出した側から、吐き出された精液は子宮内へ入ると即時に吸精され、捕食されて次々と魔素へと変換されて行き、体形は変わらない。
「あああああ、熱いザーメンがどくどく入って来ますわぁ」
その声に巫女は応えない。
既に夢中になって淫魔の中へ、精液を送り込む事だけに集中し、意識も半ば飛んでいたからである。
延々、数分の射精を続けた幼馴染みは満足した様に寝床に崩れ落ち、気絶して安らかな寝息を立て始めた。
「お休みなさい」
一言、声を掛けるとアラティーは逸物にしゃぶりついて綺麗に精液を舐め取り、添い寝をする。
そして優しくの恋人を抱き締め、尻尾をその身体に優しく絡み付けるのだった。
◆ ◆ ◆
夜が明けた。
昨晩は勃起していた股間のクリペニスが元に戻っているのを確認して、まだ安眠中のトリンシスを気遣い、そーっと身を起こしてクローゼットから着替え一式を引っ張り出すと、アラティーは私室を抜け出して、浴場へと足を運ぶ。
「おはよう御座います。お嬢様」
「おはよう、セリリ」
既に早番の使用人が色々と、朝の支度に取りかかっていた様だ。
挨拶を交わした後、メイドのセリリが「お体は大丈夫ですか」と尋ねて来るので、「平気ですわ。湯浴みをしますので朝風呂の用意を」を返答する。
「でも浴室は、これから清掃ですが」
「少し待って貰えるかしら」
「了承しました。あ、ケイト、貴女はカニンガム様に報告を」
メイドが一礼すると、別の使用人を捕まえて家令に報告に向かわせる。
タイミング良く、清掃前に湯浴みを済ませるとアラティーは着替え、応接間へと向かう。
取りあえず、サッキュバスルックは止めてパステルブルーのワンピース姿だ。
「姫様。大丈夫かニャ」
朝食の準備が行われているタイミングで、ネコ耳族の家令が問うて来る。
満腹とまでは行かないが、トリンシスが精を提供してくれたので猛烈な空腹感は無く、身体も万全とは行かないが、取りあえずは支障が無いのを告げる。
「助祭を抱いたのですか」
その場に、ヤシクネーを連れたナロニエ司祭が姿を現した。
オリオンとは初対面なので、領主代行は『誰?』と思ったが、それは一旦脇に置いて「はい」と返事をする。
「合意の上よ」
部屋の扉が開いて、入室したトリンが開口一番に叫ぶ。
湯浴みの間に目を覚ましたらしく、身なりも着替えたのかきちんとしている。
「トリンシス助祭、我が宗派では構いませんが、西方聖教会では大変な事になる所ですよ。
アラティー様も余り人前で、そうした睦言を言ってはいけません」
西方聖教会では聖職者との性行為は還俗するか、同じ聖職者同士でしか認められないが、東方聖教会ではこの戒律が緩いのだ。
だが、まだ世間一般では、聖教会と言えば西方だとの認識が強く、下手すると誤解が生じてしまい、アラティーの評判が落ちるのをナロニエは恐れたのである。
「結婚を前提としたお付き合いをしたいと考えてますわ」
「姫様、よくぞ申しましたニャ。
このカニンガム、姫様の婚姻を見届けられるとは感無量だニャ」
まだ「気が早い」とトリンに窘められ、来年辺りに式を上げたいなとの希望が流れる中、今回の事件に付いての報告が行われる。
「水源が復活しましたニャ」
「え、本当ですの?」
遺跡が破壊された事で、何か影響が出たのだろうか。
「いえ、本当に復活とは断言出来ませんけど、貯水池の水位が戻りつつあるのです」
司祭が補足する。
ただ一つ、「湧き出た水が何処と無くイカ臭い」のが問題と続けるが、アラティーのザーメン混じりのあの水が正体なのかも知れない。
領主代行は自分が如何にして、あの遺跡を壊したのかを再び説明したが、皆の反応は微妙だったし、本当に水源が復活したのかは様子を見守る事となり、水路計画の続行が確定する。
貯水池の水位復活は、地下遺跡から染み出した一時的な物かも知れないからだ。
「まぁ、水路は将来の水運用に必要ですわね」
「予算を捻出するのが大変ですニャ」
今回の騒動に関わった騎士隊他には、僅かだが報償を用意した。
死者こそ出なかったが、多少の損害を受けて無傷とは行かなかったし、アリンやオリオンの様な民間の協力者の存在もある。
ナロニエ司祭は報酬を「奉仕活動の一環です」と辞退。
トリンシスも「アラティーの為だから」と同じく、報償は受け取らなかったが、「椅子とか机なんかの公学校の予算を増やして」と別の形で要請が認められる。
この場に居ないアリンはともかく、オリオンは「くれるなら貰うよ」と傭兵らしい態度を見せた。
「さて、朝食の時間ニャ」
そのまま朝食の時間となり、パンとスープの他に目玉焼きが付いた豪華版だったので、皆は朝食に舌鼓を打つ。
アラティーは勿論、お茶しか飲めないが、今朝出た卵が何処産なのかとか、細かい報告を聞いて色々と領地経営に頭を悩ませている。
「これは誰からですの?」
「ラング家からですニャ」
鶏卵は領民からの献上品なのだが、漠然と只で貰う訳には行かないのだ。
献上品は当然、上位領主に対する袖の下と言う側面もあり、それに対する政治的的な力関係に配慮する必要が出て来る。
時には献上されても代価を支払い、貸し借り無しの状態にする必要もあるし、特定の家からの献上品ばかり受け取ると、他家からの嫉妬を編み出す原因になるから、ここは領内の力関係を考えて色々と考えねばならない。
無論、これは鶏卵だけに限らず、他の食糧や特産品、日用品等も含まれる。
「ラング家からは有り難く頂きましょう。セドリック家からじゃなくて良かったですわ」
「前の養鶏場騒動もありますからニャ」
「苦情を言ったシーマ家から、セドリックの味方と見做されるのは御免ですわ」
幾つかの書類に目を通し、サインをして行くアラティーを『こんな時にも仕事をするのか』と 呆れた目で見るトリン。
「休んだ方が良いよ。カニンガム様もアラティーに仕事を回さないで」
「おっと、これは失礼ですニャ」
「家令のせいじゃありませんわ。これはわたくしの……」
言いかけた淫魔の言葉を遮り、「とにかく休みなさい」と言い張る助祭。
これにナロニエ司祭も味方し、私室に戻されそうになった時、バタバタと表が騒がしくなった。
「何事ですの?」
訝る間にもメイドが走り込んできて、家令に報告している。
領主代理たるアラティーに報告しないのは、背中をトリンシスに押されて「休め」「大丈夫」と口論中で、揉め事の最中に見えたからだろう。
やがて、現れたのは領都へ赴いていた見習い補佐官、ガルス・ゼイラムの姿だった。
「姫様。男爵がお帰りです」
「ガルス任務ご苦労様です……って、え?」
ガルスの言に淫魔は固まった時、廊下をばたばたと走る音が響いた。
ばーんと扉が開け放たれ、飛び込んで来たのはこアラティーの母で、ここの本来の領主ニナ・ヘイワースだった。
頭に生えたウサミミがぴょこんと動き、緑のバニースーツに身を包んだセクシーな肢体は年齢を感じさせない若々しさを醸し出している。
「相変わらず、あんたのお母さんは若いわね」
「ウサ耳族ですし、五十過ぎなのですが……」
続いて「羨ましい」とトリンが呟いたのは、敢えて突っ込まないアラティーだった。
女男爵はアラティーを見付けると、腰のカトラスをガチャガチャ鳴らしながら駆け寄り、「留守番、ご苦労様」と大きく手を広げた。
その手の中に飛び込むアラティー。
「お帰りなさいませ。母様」
いつもの大人びた雰囲気はまるで無く、ぎゅっと抱きついて母に甘えている。
淫魔を抱き締める母に、総立ちになったカニンガムやナロニエが「お帰りなさいませ、ニナの姐御!」と返事を返した。
我が子の頭を撫でながら、女男爵は満足そうに頷きつつも「その癖、抜けないねぇ。もうあたしは海将じゃ無いよ」と苦笑する。
家令も司祭も、海軍時代の部下だったのだ。
「アラティー、領主代行ご苦労。貴女を解任します」
「はい。母様」
やがて親子は離れると、留守中の経緯を尋ねる母。
無論、詳細は「後に本格的な報告を尋ねる」と前置きするが、ガルスから入った情報から娘の危機を聞いて、慌てて帰還したと言う。
「領都で概要は聞いていたけどね。
連絡は腕木通信でも良かったんだけど、直接帰って尋ねた方が早いだろ」
カラカラ笑う女領主。
割合早期に税の話も旨く纏まったらしいが、海賊退治やら都会での生活を満喫していたので滞在が長くなったのだと説明する。
「伯爵や宰相とも昔話していたし、早めに帰ったらアラティーの次期領主修行の邪魔になると思ったからねぇ」
やはり、娘の次期領主としての経験を与えるべく、わざと不在になって領地経営を任せていたらしい。
「でも、まさかシャルルの事件がここまで祟るとは予想外だったよ」
嘆息するニナ・ヘイワース女男爵。
そしておもむろに、にやっと悪戯っぽい笑みを浮かべると「報告をお願いするわ。アラテイー」と、小首を傾げて要請する。
サッキュバスの次期領主、アラティ・ヘイワースの帰郷。
母に尋ねられ、いつもにも増し、濃い内容の一週間を淫魔は話し始めるのだった。
〈FIN〉
本来はその10だった後半部分です。
つーか、流石に20,000字越えのボリュームは長すぎるんで、分割しました。
アラティーの姓で気が付いた人も居るかもですが、母はあのニナです(笑)。
彼女が男爵、いや、本当なんです。