エロエロナ物語 -エロエロンナ物語R18編- 作:ないしのかみ
本当は前中後の三部作にすべきなのですが、それを取りやめたのは、戦闘シーンはあれど、エロシーンが中頃に全く無い為です。流石にR-18で「全くエロ描写の無いお話を掲載するのは駄目だろ」って事で、中編は後編に統合されました(笑)。
このエピ自体は「風紗館のリオン」での雷之進の乱(単なる悪役ポジだったのが、意に反して勝手に動き出した)の恩恵を受けた話になります。「じゃ、パンシャーヌ(魅尼の偽名)との出会いを書いてみようか」ってのが、きっかけだったりします。
戦麗舞と雷之進、その2
「成る程、ね」
夜明け、淫魔と武士のコンビは身を隠してオアシスを眺めていた。
リバースが完了した途端、雷之進は魅尼を誘い、偵察に向かったのである。本当はもう少し繋がっていた方がいいのだが、雷之進はもう大丈夫だと固辞した為だ。
「確かに見た事の無い魔物だわね。
ローパー(触手縄魔)に近いのかしら、でもアルラウネ(女妖華)的な感じもあるし……」
その怪物はオアシスの水辺に下半身を浸していた。
亜竜ほどもある巨躯を持ち、つぼ型の胴体根元に棘の生えた無数の蔓が群生している。
雷之進の話だと根っこに当たる部分を擬足として移動するらしいのだが、今は水中に隠れて全体は見通せない。
茨に似た蔓の間からは幾本もの太い触手が枝よろしく林立している。そして、その内の一部は陸地に向かって伸ばされている。
胴体からは赤地に白い斑点を散らした毒々しい花が幾つも咲いている。一番目立つのは正面に咲く大輪の花だ。その花弁中心部には緑色をした人間の裸体が生えている。
「陽光の下で見ると全体が白っぽい緑色してるから、植物っぽいのは確かだな」
「ええ、全体的に植物型と言えるわね…厄介だわ」
水中から伸びた蔓は元住人である女共を捕らえ、その局部に触手を突き入れて愛撫されているからである。
だが、入れられている女達は既に長時間犯され続けているのだろう。突き入れられた触手のせいでがくがくと身体を動かしてはいるが、泣き叫びも、快楽に酔う仕草も見せずに無反応だ。
「生殖目的ね」
植物型のモンスターが生殖の為に、捕らえた獲物を自分の苗床にする例は多い。だが、サッキュバスを含む女魔族が子孫を残す為に人間の精液を必要としたり、人間の腹を借りて孕ませるのに対して、植物型の魔物は女魔族とは決定的な違いがある。
植物型魔物は母胎を重要視しない。
魔族のそれと違い、苗床になった犠牲者は腹に植え付けられた種、もしくは注がれた精液で子供を産んでも、その母胎は子供の為の栄養として使い潰され、発芽と共に死を迎えるのである。
文字通り、腹を割って成長した子供に内部から食い破られ、破壊されるのだ。
「犯された時間が早ければ、処置する事で何とか犠牲を食い止められるけど……」
「意外と優しいのだな。戦麗舞」
その淫魔の言い草に、多少、驚く雷之進。世間的な一般の流布では、サッキュバスは自己中心的で、他者を省みない身勝手な魔物だと思われているからだ。
「同じ女としてよ。流石に哀れだわ」
「敵対した不死怪物共に、骸骨(スケルトン)は居なかった。つまり、屍体の肉が腐り落ちて骸骨になる時間まで、経っていないと言う事だ」
「あんまり目安にならないわよ。それ」
湿潤な気候では肉が腐り果てるにまでに掛かる時間は案外短いが、極度に乾燥している砂漠では、屍体が骨になる時間は長い。これには死体を始末してくれる様な動物や、昆虫類も砂漠では限られているというのもある。
つまり、これは全く当てにならぬ例えに近い。
「そして不死怪物に追われて撤退して、死んだふりでやり過ごそうとしたけど、あたしの邪魔が入った。で良いわね?」
「うむ。気を調整すれば、やつらの探知から逃れられる予定だったのだが…」
本当かしらと、眉に唾を付けるサッキュバス。
確かに気を操る武術の存在は東方では知られているが、目の前の大男が不死怪物の目をも誤魔化せる様な達人にも見えない。
「お主に殺されそうになった」
「仕方ないでしょ。それで敵の数は?」
「半分近くはあの時叩き斬った。今は見えないが、日中は不死怪物の動きが鈍くなる。何処かに姿を潜めている筈だ」
確か、総計で二十体以上、三十体未満は居た筈だ。とすると最初に相対した時のトータルは約六十体か。そりゃ、撤退せざる得ない数である。
それでも生き残っているのだから、何とか流剣法の継承者を自称するだけあって、この男、腕は相当立つに違いない。自在に気を操れるかは置いたとしても、だ。
「もし、喧嘩を仕掛けるなら真っ昼間だわね」
「ああ…。不死怪物の数が少ない時間が勝負となろう」
日光には浄化の力があるらしく、アンデッド系の弱点の一つとされている。吸血鬼(ヴァンパイヤ)等が顕著な例であるが、少なくとも幽霊系は直射日光の下に出る事は無い。陽光が当たればたちまち滅んでしまうからである。
無論、不死怪物の中にも耐性を持つ種もいるが、それでも一様に動きは鈍くなる。
数は力である。でも幽霊が出なければ、相手にする敵の数を相当減らせるだろう。何せ、こっちには二人しか居ないのだから。
「やりましょう」
このオアシスを迂回するか、奴の目を盗んで水だけ確保して去るという選択肢もあった。
水に関しては魅尼にはまだ余裕がある。切り詰めれば次のオアシスまでは何とか保つだろう。
しかし、それは本当に最終手段であって、万が一、方位を失って迷ってしまえばたちまちアウトである。
良く混同されるが淫魔は悪魔では無く、魔族と言う生き物なのだ。アストラル体である悪魔と違って生身であり、生きて行くには飲食が欠かせない。無論、水分(大抵は精液の形で補給するが、やはり水も必要)も補給しなければ参ってしまう。
「では作戦を練るか」
仕掛ける時間は正午に決定した。
太陽が中天に位置して、不死怪物が待避しようとする影がもっとも出来ない時間帯だからである。
◆ ◆ ◆
「おぬし、陰陽師だったのか?」
「もどきよ。専門じゃ無いわ。昔、師匠に習ったの」
魅尼は呪符を出して準備する。
東方独特な紙である和紙を原材料に、特殊な朱色の墨で呪句が描かれている。この墨に魔力が込められており、術者の工夫次第で様々な形に変化する。
今では東方のみに伝わる特殊な魔法体系だ。
「五枚か、流石に心許ないわね」
しかし、用意された呪符の数は少ない。補充しておけば良かったと後悔するが、今はこれで何とかするのが先決である。
西方へ入る前に、和紙だけでも確保すべきかも知れない。紙さえあれば、朱墨で自作する事も可能であるからだ。何故か知らないが、西方の紙では上手く術が作動しないのである。
「助かるが、そいつで何をする?」
「紙兵を繰り出すわ。時間稼ぎくらいにはなるでしょ」
紙の兵隊。と聞くと余り強そうな印象は受けないが、それでも並みの兵士並みの強さはある。雑魚相手では充分だ。
「後はあたし自身の魔法ね。通用すれば良いけどさ」
「頼むぞ。拙者は雑魚に構わず、怪物本体を狙う」
ぎらりと背中の太刀を抜く。彼の流派は最近流行の居合い型では無く、予め抜刀して構えるタイプの古い流派だ。荒い使い方をしていたのだろうか、所々に刃こぼれがある。
「業物ね」
「判るのか?」
意外そうな顔をする雷之進。
「なまくらじゃ無いって程度はね。昔、まど……、巫女姫から拝見した事があったから」
一見しただけで刀の持つ、凄みという奴があった。単に見た目が美しいとか、そんなのを越えた感覚だ。魔性の何か、と言い換える方が近いかも知れない。
以前にもこの手の剣を一度見た事がある。皇国に住んでいた頃だ。決して身分の高い出ではなく、聖神社に奉仕して、数々の偉業を達成した幼馴染み。
功績を挙げ、褒美として天帝から下賜された刀を「これは名刀だわ」と感激して、皆へ見せびらかしていたあの天才巫女姫は、今はどうしているんだろうか?
「ああ、こいつは魔剣だ。だから、もし、奴が特殊な属性を持っていたとしても斬れる筈だ」
「幽霊を斬り捨てていたから、そうだと思ってたわ」
普通の刀では幽体には打撃を与えられない。斬ったとしても手応えも無く、刀身はその身体を虚しくすり抜けるだけだからである。
ミスリルの様な特殊な魔法金属、または一時的か恒久的を問わず、何らかの魔的付与を施した武器のみが、幽体やアストラル体、魔的な体と言った特殊な相手に傷を負わす事が出来るのだ。
巫女姫の刀や雷之進の太刀は、そんな魔性の力を秘めていた。
「間もなく正午だ。仕掛けるぞ」
「もう一度聞くけど、身体の方は大丈夫?」
今にも突進しそうな侍を制して、サッキュバスはもう一度確認する。
【リバース】で生命力を戻したと言っても、完璧では無い。そも、最初に搾精し吸精した時点で生命力を精液にし、更に胎内で魔素に変換する際、少なからず変換エネルギーとして消費されてしまっている。
つまり、吸精で100%純粋に生命力を摂取可能な訳では無いのだ。このプロセスを踏む為にどうしても無駄が出る。逆もまた同様だ。【リバース】で元に戻しても、完璧に返納したと仮定したって元のエネルギーの七割程度の生命力しか戻せない。
それを心配して、実は魅尼は元の量に加えて赤字覚悟で生命力を雷之進へおまけしていた。
魅尼の身体が、今、やや空腹を訴えてきているのは錯覚では無い。
「大丈夫だ」
「じゃあ、行くわよ!」
砂丘や建物の様な遮蔽物を利用して、怪物ギリギリまで接近する二人。
駆け出せば手の届く位置まで前進した後、淫魔は懐に忍ばせた呪符を取り出して、裂帛の気合いと共に魔力を込めて手から放った。
放たれた五枚の紙はたちまち大きくなると、武器を持った真っ白い足軽へと変化する。
紙兵だ。薄く、ぺらぺらで厚みが無い身体。顔の位置には朱墨で複雑な紋様が書かれている。
「やはり出やがったな!」
怒声を上げる雷之進。紙兵の登場と軌を一にして、ぼこぼこと地を割って現れる屍体共。地面に潜伏して日光を避けていたのであろうが、やはり予測通り、幽霊は見当たらず、その動きは昨夜の比ではなく鈍い。
突撃を開始する彼の前に立ち塞がろうとするが、紙兵がそれをカットする。
「雑魚はあたしに任せて、あんたは親玉を!」
魅尼のその言葉に「おうよっ!」と答える雷之進。太刀を構え、一直線に巨躯の怪物へと向かって行く。その左右で紙兵と屍体の戦いも始まっていた。
「でっえぇぇーい!」
太刀が一閃。怪物本体が繰り出す茨似の蔓が薙ぎ払われるが、蔓は次々と繰り出されるらしく、前進が阻まれていた。
「全てを洗い流せ。【激流】っ!」
魅尼の方は得意の魔法を繰り出した。東方の術法とは違う、母のパンシャーヌから教わった西方の水属性魔法だ。
生み出された高圧水流が前方の雑魚敵を一掃すると、触手に犯されている女達の元へと駆け付ける。幸い、蔓は雷之進の方にリソースが向けられているので既に無く、彼女らを縛っていた拘束は解かれて、地面へと放り出されている。
「今、助けるわね」
触手はまだ秘所に突き刺さったままである。ずぐん、ずぐん、と脈動しており、強制的にそれを引っこ抜くと、膣口と先端から精液にも似た白濁を撒き散らした。
その場にいた十四人全てを揺さぶるが意識は戻らない。瞳からは光が失われており、反応しても「うへへ」だの「あああ」だの、言葉にならぬ単語を呟くばかりである。
遅かった。と淫魔は悟った。既に心が壊されて廃人になってしまっている。こうなっては、もう助ける事は出来そうもなかった。
「参ったわね。と、雷之進!」
改めて相方の方に目をやると、蔓で前進を阻止している怪物本体は水辺の浅瀬から、泉の中心へと移動を開始していた。
ここの水深がどの程度有るのかは知らないが、そこまで移動してしまえば、空も飛べず、水棲生物でもない二人にとって追撃は困難になる。
「逃がさないで!」
魅尼が叫ぶが、逃げられてしまうと感じていた。
腰の位置まで水に浸かって戦うだけでも大いに不利であり、まして、奴が完全に水没してしまったなら手も足も出なくなるからだ。
だが、大柄の荒武者はにやりと笑った。
「馬鹿め。水中に逃げたのがうぬの不覚よ」
紙兵との戦いから逃れたグールを事も無げに叩き斬り、正眼に太刀を構える。
「稲妻流秘技、『電光斬り』っ!」
ぶんっと振り下ろすと同時に、その太刀先から紫色の電光が放たれた。
紫電はするすると伸びて、遠く離れた怪物の本体に直撃する。上半身に生えている人間体、一見、緑色の女の子に見える。が「きゃああああっ」と鋭い悲鳴を上げてのけぞった。
魅尼に『あの魔物、口聞く事が出来たのか』との感想が浮かぶ。
「た、助けて……!」
それどころか、意外な事に命乞いまでして来た。しかし、雷之進は容赦なく、二発目の電光斬りを浴びせる。「あぎゃあああ」との悲鳴と共に胴体側面の華々が飛び散り、ぽっかりと黒ずんだ穴が開いてしまう。
「どうして? あたしは何も悪い事していないのに。
ただ、ロリラウネは自分の子孫を残したいだけなのに…」
懇願する様な表情で、胸の前で両手を組み、許しを請う緑の少女。ロリラウネなる名が種族名なのか、個体名なのかは知らないが、涙を流して哀願する姿は哀れを誘う。
だが、侍はふんと鼻を鳴らし、太刀をすっと上段の構えに固定した。そして「おぬしが殺した者達とて、死にたくはなかたっであろうよ」と吐き捨てた。
「稲妻流奥義、『稲妻斬り!』」
にわかに中天がかき曇ると上空に黒雲が湧き出た。雷雲と言われるそれは、耳をつんざく轟音と共に、太い一筋の雷光を怪物へと落とす。
落とされた雷によって泉自体が電撃を帯び、泉の水面を青白く発光させた。
真っ黒焦げとなった怪物は、そのまま水面下へと没し、暫くするとぷかり、ぷかりと魚が浮いて来たのであった。
◆ ◆ ◆
残敵一掃には大して時間は掛からなかった。首魁のロリラウネが滅せられ、アンデッド共の統制が失われたからだ。
紙兵は全て失われたが両人共に怪我はなく、圧勝であった。
「あれ、『斬り』とは言えないわよね」
「開祖から代々の命名法則がそうなっているんだから、俺が文句を言える事じゃない。
それに仇の使う『真空斬り』の方がもっと酷いぞ」
雷之進の使う剣法は魔法剣だった。
魔剣を媒体に様々な特殊効果を発揮させる物で、これは陰陽術の呪符に近い東方特有の技術だ。稲妻流とそのライバルであり、仇でもある真空流は、その中でも特に有名な流派であった。
「さて、気が重いけど後始末が必要ね」
「ああ」
犯され、苗床となった女達であった。放置すれば種が芽吹いて第二、第三のロリラウネを誕生させる事になりかねない。可哀想だが処分する必要があった。
協議の結果、方法は火葬に決定する。この世界では一般的な葬り方である。
土葬や水葬なんかは論外、下手すると不死怪物と化すからである。砂漠では燃料を手に入れるのが困難であるが、建物を一軒犠牲にして燃やす事に決定した。
「あんたは女達を運んで。あたしはその間、役に立ちそうな物を探してみるわ」
「おう」
この集落は死んだ。だが、残された資産は生者の為に役立てるべきである。
死者に貨幣や道具は要らない。それが彼女の信念だった。これは自給自足を運命付けられた悲しい性でもあったのだが、いずれにせよ、物資はあった方が良いに決まっている。
片っ端から家捜しをして、貨幣や貴重品。地図に服。それに食料や酒なども確保する。夕刻、合流した時には全ての準備は完了していた。
「点火するぞ」
物置へ松明を投げ込む雷之進。女達は首筋を切って既に介錯を施してある。
油を撒き、可燃物を積み上げてあった小屋はあっという間に炎上した。
「ご苦労様」
「戦利品は?」
「ここよ。まぁ、大した収穫は無かったわ。せいぜい銀貨ね」
赤々と燃える小屋の炎に照らされながら、サッキュバスは集めた戦利品を地面へと並べる。
これらは山分けとの事で話は既に付いていた。
「剣はどれも大した物は無いな。ふむ、この槍は使えそうだ」
「武器関連は興味ないからどれでもどうぞ。代わりに装身具の類は頂くわね」
「全部は駄目だ。これは折半する」
雷之進は拒絶する。しかし、別に彼に装身具を身に付ける趣味がある訳では無い。この手のアイテムは嵩張らず、換金に便利だからである。
魅尼は他にも価値がありそうな物も見つけたが、それは絨毯やタペストリーと言った大物であり、個人で砂漠を渡る彼らには容易に持ち運べない無用の長物であった。
持って行けないなら、幾ら高価だろうが意味は無い。
「うーっ、ケチ」
「こっちは女を刺殺して、あのくそ重いセントールも含めてだぞ。十三人も運んだんだ。
その苦労を考慮してくれてもバチは当たるまい?」
セントール(人馬族)の体重は当然ながら重い。成人なら体重300kgも越える。しかし、水色髪の淫魔が「えっ?」と聞き返した点はそこでは無い。
「どうした?」
「一人足りないわ。確か、犯されていた犠牲者は十四人の筈よ」
がたっと侍が立ち上がったのと、その身体に蔓が絡むのが同時であった。茨にも似たそれは棘の先から麻痺毒を出し、剣士の動きを完全に封じてしまう。
思わず「くそっ、不覚」の呻きが漏れる中、十四番目だった苗床が姿を現す。
「悪趣味ね」
そう魅尼が吐き捨てる。
形は親そっくりであるが、生まれたばかりなのでサイズは小さい。本体は秘所から生えているが、蔓や触手など一部は女の腹を突き破っている。
そして母胎となっている苗床女は既に屍体であった。屍体を栄養源にしつつ、その身体を操って移動用に使役しているのである。
「ままのかたきだ」
舌足らずの言葉で復讐を宣言する相手に、魅尼はじりじりと間合いを計る。周囲の気配を探り、こいつ以外に敵の有無をあるのかどうかを見極める。
このモンスターには不死怪物を支配する力がある。敵がこいつ一体だけだと油断は出来ないからだ。特に親が使役して、先程参戦しなかった幽霊とかが加わると厄介である。
既に夕刻。幽霊が活動するのにふさわしい時間帯だからである。
「あたしの、なえどこにしちゃうもん!」
ひゅんと風を切って全部で三本ある触手が迫る。親の触手はもっと多かったが、こいつは幼いだけに本数は少ないのである。
「甘いわね」
蔓の方は雷之進を捕まえているので、魅尼へ向ける余裕は無いのが幸いした。
一本が右足を。もう一本が左手に巻き付いた。そして最後の一本が淫魔のヴァギナ目掛けて突進してくるが、魅尼はそれを右手で掴む。
「ふーん」
触手の先端はペニスの亀頭そっくりである。サッキュバスはその形に感心しつつ、そいつの皮を剥いて、内部に収められていた種を指でえぐり出す。
「あっ、や、やめろ」
「やはり一個だけか。これが後から後から出てきたら危なかったわ」
ぼとりと黒い種を地面へと落として踏みつける。黒いブーツの踵で呆気なく粉砕される種子。
多分、親だったら、無数の種が幾らでも触手を通してせり上がって来たと思う。しかし、幼子であるこいつならば、これで打ち止めだろう。
だいたい受粉しないと種は出来ない。こいつの各所に咲いている華は蕾ばかりだから、中央に咲いているこれ一個だけだと予想していたが、どうやら当たりだった。
「さて、あたしに、魅尼戦麗舞に喧嘩を売ったのを後悔させてやるわね」
「い、いや」
屍体に生えて華の中央に位置する少女は怯えていた。逃げ出そうと魅尼に絡めた触手を解いて、屍体の身を翻そうとするが、サッキュバスが掴んだ触手をぐいっと引っ張られ、バランスを崩して地面へと倒れ伏した。
「大人しく立ち去ってれば、見逃してあげたかも知れないのに」
淫魔の尻尾が正面へと回り、ハート型をした先端が変形してぱかっと口を開けた。
右手で掴んでいた触手、亀頭そっくりな形をしているそれへ尻尾がむしゃぶり付いて、たちまち飲み込んでしまう。そして強引に吸引を開始した。
「うあっ」
魔物はびくりと身体を浮かせる。淫魔の体液が分泌する媚薬が彼女の体中に回って行く。その濃度は最高と言っても良いくらい濃厚であった。
たまらず、魔物は白い、種を育てる為の栄養素たっぷりな樹液を吐き出してしまう。
「ふふっ、やっぱり成分は精液に近いのね。
例えれば、うん…ミルクに対する豆乳みたいな物なのかしらね?」
尻尾から子宮へと送り込まれる樹精液を分析する淫魔。
動物性ではなく植物性であるが、発射される白い樹液は精液と言っても良かった。最初にあの白濁を目にした時、舐めて味見はしていたが、こうして飲み込んでいる今、確信に変わる。
種さえ植え付けられなければ、この樹液は危険な物ではない。それどころか、今、腹が空いている魅尼にとっては最高のご馳走であった。
「はぁっ、あっ、やめて♪」
「貴女も楽しんでいるみたいね。では、あたしも楽しませて貰うわね」
触手は三本。残りの二本も快楽に痺れ、のたうち回りながら白濁を噴出し続けている。それを見た魅尼は尻尾が樹精液を飲む先を、それまでの子宮から胃へと経路を変更した。
同時に吸精効率を最大に高め、出された側からどんどん樹精液を吸収して魔素へと変換して行く。これで尻尾を通過中に吸精され、胃へと到達する量が激減する。
サッキュバスが自由になった両手で、地面に転がる二本の触手を片手に一本ずつ拾う。吹き出し続ける白い液体が彼女の全身を染めるが、淫魔は気にせずに皮を剥いて種の有無を確認し、サッキュバスルックのボトムをずらすと、それを咥え込む。
「んっ!」
一本は前に。続けてもう一本は後ろに。ずらしハメで挿入完了すると魅尼は腰を振った。間欠的にぴゅっぴゅと射精を続けていた触手が、ずぐん、ずぐんと脈動を開始して、比較にならない量の樹精液を絶え間なく吐き出してくる。
「あんっ。あんっ、あはっ、ああん♪」
甘い吐息と嬌声が漏れる。クロッチを挟んでヴァギナとアナルに挿入された触手は、絶え間ない射精を淫魔へと注ぎ込み、尻尾もごきゅごきゅと樹精液を飲み干して行く。
「ああっ、きもちいい。でも、やめて……やめて、かれちゃうぅー」
「止めないわ。さぁ、快楽の中で逝きなさい」
更にまぐわい続けて一時間。少女の上で騎乗位の体勢になりながら、激しく腰をグラインドさせて淫魔は攻め立てる。
魔物は「んああ、んあああ」と口から快楽に反応した艶っぽい嬌声を上げ、目は焦点が合わずにとろんとした表情を作りながら、魔物の少女はしなびた野菜の様に身体が痩せ細って行く。
その目には、既に先程の様な恐怖の色は見えない。サッキュバスの与える桃色の快楽一色で塗り潰され、ひたすら目の前の淫魔に射精して犯す以外に何も考えられなくなっているのだ。
「さっ、フィニッシュよ。最後の射精を存分に楽しみなさい♪」
「ひんっ!」
三本の触手から、最後の射精が魅尼へ放たれる。
その量は膨大で、出された途端、只でさえ膨らんでいた腹の中で、外から判る激しいしゃくり上げが観察出来た程である。
「ふわぁああああっ、さいっこうぉぉーっ♪」
「うふふっ、逝っちゃいなさい♪」
ヴァギナが子宮。アナルが直腸。そして尻尾が飲んでいた胃の中にも最大量の樹精液が詰め込まれる。そして最大限の快感に叫びを上げていた魔物が、ぼろぼろと崩れて行く。
全ての生命力を食い尽くし、形ある物質として存在出来なくなった搾精者は塵と化して風に飛ばされ、そこには苗床となった女が身につけていた服しか残っていなかった。
「同時に苗床の方も死滅しちゃったのか。まぁ、一体化してたしねぇ」
思わずげっぷが出る。少し前は空腹気味だったのに、今はお腹一杯である。
しかし、全体量としては相手が幼生体で助かった。全て吸収しても何とか腹に収まる程度で済んだからだ。
これがあの親であったなら、王族種の淫魔だったらまだしも、普通は数人がかりでないと枯死させる事は叶わなかっただろう。或いは完全吸精を諦めて、勿体ないが結合部から樹精液を垂れ流しつつ、搾精に専念するしかなかったのかもしれない。
「さて、雷之進。生きてる?」
魅尼はぶくっと膨らんだ腹をさすりながら、麻痺して動けぬ相方の方へ歩み寄った。
◆ ◆ ◆
麻痺していた雷之進が動ける様になるまで二時間近く掛かった。
「恐ろしい女だな」
「え、淫魔としてはごく普通よ。単なる臣民種だし」
「そう言う意味ではないわ」
彼は苦笑する。身体は麻痺こそ強いられていたが視聴覚はそのままなので、魅尼と魔物の対決の一部始終を全て見ていた為だ。
武士がパラライズしている間、水色髪の淫魔は雷之進の身の回りを世話していた。口は動かせたので「止めろ」と何度も懇願したのだが、「今は満腹だけど、スイッチが入っちゃうのよ」とか言って、彼を沐浴させ、髪を洗い、無精髭を剃って身を整えさせた。
「不必要なのにな」
「不意に襲ってしまうと困るでしょ。時々、理性よりも本能が上回るのよ」
男の体臭がサッキュバスの本能をそそるのは事実だ。だから、匂いの篭もった着物も洗濯し、今は褌一丁の情けない姿である。幸い、まだ家は燃え続けているので風邪を引く事はないだろう。
本当はあのボロ着物も破棄して新調したかったが、中原風の格好をするのを本人が断固拒否したので仕方ない。次善の策だ。
「おぬしに助けられたのは確かだ。しかし、何も礼は出来ないがな」
「お礼ねぇ……。じゃあ、あたしの用心棒してよ」
始めから期待してはいなかったが、彼女は暫く考え込むとそう答える。
似た様な境遇だし、赴く方向も同じだから丁度良い。それに腕も立ちそうだ。
「用心棒か」
「あんた西へ行くんでしょ? 無論、ただとは言わないわ」
吸精が進み、膨らみが半分近くに減ったお腹を撫でながら、サッキュバスは告げた。
「拙者は高いぞ」
「あたし貧乏よ……」
淫魔が言いよどむが、「でも、お礼って形で割引してくれない?」と続ける。
武士は一瞬、顔を歪めたが、次の瞬間「がははは」と豪快に笑うと、「うむ、了解だ」とそれを了承する。
これが魅尼戦麗舞。豪雷之進。この二人の馴れ初めであった。
〈FIN〉
いかん。『エロエロンナ』本編よりも先に、稲妻流の必殺技を披露してしまった。
同様に赤堂の真空流奥義も剣法とは思えぬ、えげつない技です(笑)。
裏設定。
怪物華『妖花ロリラウネ』はオリジナル。でも『世界樹の〇宮』のアルル〇ナ辺りのイメージあり。
植物系モンスターで苗床へ種を仕込んだ後、樹精液を送り込んで発芽を促し(種は樹精液に触れる事で刺激を受けて発芽します)、栄養を与えて子供を急速成長させます。
倒した相手をアンデット化させて支配し、手下として使役する力を持っています。
名前遊び(パロ)。
魅尼は姓です。だからお母さんの名前を西方風に呼ぶとパンシャーヌ・ミ…。あの偽名は母親の名なのです。
牌白(ぱいぱい)さんの姓は沖加南(ちゅうかな)。彼女の失踪で急遽、ピンチヒッターとしてヒロインにされた射把沼(いぱぬま)さんと言う妹が…いるのかもしれません?