※この作品はR-18です。

エロエロナ物語 -エロエロンナ物語R18編-   作:ないしのかみ

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いつものサッキュバスではなく、スプライトのお話です。
背中に蜻蛉みたいな翅が生えた小妖精ですね。
エルダ世界では魔物扱いの、忌むべき種族になってますが…。
舞台は中原。時代は新暦200から500年代です。

今回、少しグロな描写があります。
グロ描写嫌いな方は、注意!

改定。
ゲルパ→ゲルトに統一。
ゲル+パオが語源でしたが、ゲル+ユルトの方が響きが良いので。
「小説家になろう」にも投稿しています。


草原の姫 -アムダリアの産卵-

草原の姫 -アムダリアの産卵-

 

 きらきらと翅を煌めかせながら、羊を放牧している。

 羊は「めぇめぇ」鳴きながら、草を食んでいる。私はぐるっとその辺りを一周しながら、迷い羊とか狼が出ていないかとかの哨戒飛行を行う。

 小さなスプライト(魔妖精)であるあたし達には、見上げる程大きな羊の大きさは圧倒的なんだけど、子供の頃から育てているから、慣れたものだ。

 

「そろそろ、お昼だよ」

 

 すいっと別方向から来た牧童が声を掛けてくる。

 私は「分かった」と返事をすると、彼女と肩を並べて宿営地へと飛んだ。

 あたし達が帰還するのと同時に、宿営地から別の牧童が飛び立って行く。透明な翅が光を浴びて七色に輝くのが美しい。

 

「ただいま」

「ご苦労じゃ。エメット姫」

 

 白い天幕状のゲルト(移動住居)前に降り立つと、女王陛下アムダリア二十世が私を労ってくれた。威厳に満ちた態度だが、慈悲深そうな雰囲気は私の好む所である。

 女王陛下は我が国の長だ。と言っても帝国内では独立国ではなく属国扱いだし、首長の集まるカン諸国と違って、外様なので首都ダイトーでの序列は低いのだが、それでも大カーン帝国の中ではそれなりの力もある。

 ちなみに私が、「姫」と呼ばれるのは女王の娘だからであるが、何十人も居る姫の一人に過ぎないし、姫らしい教育は受けたけど、あまり自分が偉いとか自覚する事もない。

 乳搾りしたり、バター作ったり、やってる事は庶民と変わらないしね。

 

「スープが出来ておる。今日のは絶品じゃぞ」

「はっ、女王陛下」

 

 母親ではあるが、彼女は私にとって母と言うよりも仕えるべき女王だ。そう教育されてきたし、母に対して甘えた記憶も無い。

 一礼すると足早に去り、ゲルト群の中央に設けられている厨房へと向かう。

 厨房と言っても、広場の中央に煮炊き専用の馬車。フィールドキッチンが停められているだけだ。しかし、鍋の中のスープは美味しそうな匂いを振りまいている。

 くぅぅーっとお腹が鳴る。青天井の下、民の後ろに順序よく並んで、自分の番を待つ。

 

「でね。大カーンが亡くなって……」

「ウルタイ・カン国に付くか、ブダイ・カン国に付くか……」

 

 食器を貰ってスープを口にすると、そんな会話が耳に入ってくる。

 偉大なる大帝が亡くなったのはこれで三度目だが、また、内乱が起こりそうだとの心配が飛び交っている。

 我がスプライト・カン国はどう出るか?

 以前の二度に渡る後継者戦争では中立を保ったが、今度はどうなるのか。心配は尽きない。

 

「エメット」

「ベルガ姉様。お帰りになられていたのですか?」

 

 姉のベルガ。第一王女だ。第三十四王女の私とは違って、外交官としてダイトーに赴いているのだが、故郷に帰ってきているとするならば…。

 私が暗い顔をしているのを察して、ベルガ姉様はクスリと笑う。

 

「状況はそれ程悪いのでしょうか?」

「察しが良いわね。まぁ、分裂は必至でしょうね」

 

 偉大なる大帝、ゴーダー・カーンの時代から既に二世紀。周囲の部族を集めて、遠く西方まで進出した大カーン帝国は、既に分裂を続けていた。

 これは広大な帝国を統治すべき大帝が、初代大カーン並みの力量を持っていない事に尽きる。広大な帝国領は隅々まで統治する事は出来ず、誰が継いでも不満が出てしまうのだ。

 

「我が国はどうなりましょう?」

「我らの能力は何処の国も必要だから、敵に回す国は無いと思いたいけど…。

 私達がスプライトで有る限り、難しいのよ」

 

 スプライトは多くの国の基準に当て嵌めると、魔族ではなく魔物に分類される。

 魔族には差別はあろうとも、少なくとも人間に準じる扱いがされるのに対し、魔物は言葉も通じない害獣と見做される。

 人に害を与える獣とされ、駆除対象なのである。

 

「我らの様に社会性を持ったスプライトの方が珍しいんだから、当たり前なんだけどね」

「初代女王のお話ですね」

「エメットはあの話が好きだったわね」

 

 話は三世紀昔に遡る。

 第三十四王女は物語の世界へと、空想の翼を広げていた。

 

              ◆       ◆       ◆

 

「産めっ、どんどん産めっ!」

 

 その昔、スプライトは奴隷だった。

 魔族の大侵攻と共にこの世界へと訪れたスプライト。しかし、体長30cmの小さな身体で多産という特徴しか持たないこの種族は、他の魔族、魔物にとって格好の奉仕種族として使役される奴隷にされる事が多かった。

 飛べる事と小さな身体を生かして偵察役や、伝令として利用された時期もあったが、魔界の軍勢が崩壊すると単なる奴隷へと格下げになる。

 特に醜いゴブリンやオークに犯されて、性奴として扱われる様になってしまうケースが殆どで、その環境から逃れた者も、このアムダリアのように再び捕らえられてしまう事が多かった。

 

「卵は持っていません。許して下さい」

 

 産めと言われても卵が無ければ産む事は出来ない。そして、卵はとっくに使い果たしてしまっていたので、アムダリアは小さな瞳に涙を浮かべて懇願する。

 だが、オークはそんな哀願を受け入れる気が全くなかった。鎖で固定されている手足の枷を解き、ひょいと片手で華奢な身体を掴み上げると、そのまま無慈悲に正面へと持って行く。

 

「ま…まさか、嫌っ、嫌ですぅ」

「卵が無ければ作るんだよ」

 

 そのまま、屹立する自分の股間にスプライトの尻を当てる。

 

「こういう風にな!」

 

 ずぶりと挿入される逸物にアムダリアは悲鳴を上げた。

 どう考えても無理っぽい性交であったが、スプライトの持つ魔法の力で身体は強化されており、身体全体を貫く男性器を彼女は易々と飲み込んだ。

 が、性交出来るのと痛みは全く別の物である。アムダリアのヴァギナはぎちぎちとペニスを受け入れたが、出てくるのは苦痛による悲鳴だった。

 

 オークはそんな事お構いなく、まるで生きたオナホをしごく様に、スプライトの身体を握って激しく前後に動かすと、感極まった所で射精した。

 アムダリアの腹がぶくぅと膨らむが、オークの方は射精を止めない。狭い膣内に流し込まれた牡汁は、行き場がないので全て子宮に飲み込まれて行く。

 腹はどんどん精液を飲み込んで、まるで風船の様に拡大して行き、針で突けば、一瞬で破裂しそうな様相を見せている。

 

「あああ、止めて、破裂しちゃううう!」

「なら卵を作れ。死にたくないならな」

 

 アムダリアの腹が反応する。死にたくない生存本能で魔法が発動したのである。

 膣内射精されたザーメンが吸精され、卵巣が卵を作成し始めたのだ。

 十個、二十個、百個、千個と、精液を元に卵巣内に次々と卵が製造されて行く。それと同時に腹も凹んで、腹部の異常な膨らみは消えて行くが、同時にスプライトの身体は身重になってしまう。

 

「やりゃ出来るじゃないか。それっ、早く蛆を産め」

「蛆じゃありません。幼生体です」

「蛆だろうが、早く産めっ」

 

 びしっと平手で殴られる。

 アムダリアは唇を噛むと股間から産卵管を伸ばした。普段は胎内に収納されているが、産卵時にここから卵を排出する為の物だ。

 ヴァギナの上に位置しており、一見、ペニスのようにも見えるがかなり長い。やろうと思えば体長と同程度まで伸ばす事が出来る。

 お腹をさする。先程作った卵は全て受精しており、このまま産んでも問題はなさそうだが、産み付ける相手が居ない。

 

「産み付ける為の餌は……」

「あん?」

「このままだと孵化しても、直ぐに栄養失調で死んじゃいます」

「それでいいんだよ。必要ねえもんを用意しても仕方ないだろう」

 

 オークは片手に提げたバケツを掲げると産卵管の先にセットして、顎で合図する。

 形状は深く長い。ミルク缶にも似ている、この金属バケツの中に産めと言う事か。

 

「ああん♪」

 

 戸惑いを覚えながらも、アムダリアは身体を震わせて産卵を開始した。

 凄まじい勢いで卵が産卵管の中から飛び出して来る。産む際に産卵管の中を通過する卵が、内側を擦る感覚が男の射精にも似たたまらない快感を呼ぶ。

 

 千個近い卵を撃ち出すのに掛かった時間はほんの十秒程度。「はぁはぁ」と肩で息をするアムダリアの前に、別のオークが現れてバケツの中身を確認する。

 

「ふん、まぁまぁだな」

 

 トングの様な長バサミで、バケツの中から一匹の幼生体を取り出す。

 見た目は白い幼虫だ。甲虫とか蜂の子に似ている。長さは1cm未満でしかないが、短い足を盛んに動かしていて、顎にある鋭い牙がカシカシと音を立てて開閉している。

 この幼生体から蛹となり、完全変態を行って人型のスプライトになるのに大体、一週間はかかる。幼生体は翅もなく、地べたを這いずり回るしかないので天敵に弱い。

 

「今夜はご馳走だぜ」

「えっ、まさか……」

「そのまさかだぜ。お前達の産む蛆は美ン味ぇからなぁ」

 

 アムダリアの子供は食べられてしまうのだ。

 スプライトの幼生体。それが天敵に狙われる理由の一つは、蜂の子やシロアリに通じる味を持ち、甘くて美味しいと言う特徴ゆえだからだ。

 アムダリアの「止めて、食べないで」との抗議は当然、無視された。

 再び鎖に繋がれると、オーク共は「素揚げだ」「いや、煎って食べるのが一番だ」とか調理法を巡る雑談をしながら去って行く。彼女の双眸から涙が落ちた。

 

「悔しい……。あたしの子供達が食べられちゃう」

 

 草原で自由に飛んでいたのは、ほんの三日前だ。

 あの頃は楽しかった。花の蜜を啜り、気ままに仲間と戯れ、そして旅人を襲って精を奪い、産卵する。だが、オーク共のスプライト狩りに遇い、囚われて此処に繋がれて以来、彼女の人生は暗黒に変わった。

 逃げ出せない様に翅をむしり取られ、陽も射さない洞窟に閉じ込められて、鶏の様に卵を産み続け、このまま一生を終える事になりそうだった。

 

「おい」

 

 再び、一人になって洞窟内に吊り下げられた格好になった彼女に、話しかけてきた者があった。

 

「そこに居る奴。俺の脱獄を手伝う気は無いか?」

「え……。でも、あたし、今、手足に枷が付けられててろくに動けないんだけど」

 

 壁の向こうから聞こえたのは若い男の声だった。

 男はアムダリアの声を聞くと、「枷ってのは壁に鎖で繋がれてるあれか?」と尋ねてきた。

 

「ええ」

「そいつは、この壁に固定されてるんだな?」

 

 男は壁の向こう側から、ごんごんと岩を叩いた。

 

「そうよ」

「壁から離れてろ」

 

 言うが早いか、突然、どかっと壁が振動した。

 ハンマーか何かを叩き付けている様な感じで、ぱらぱらと細かい破片が散る。

 アムダリアは呆然としていたが、その衝撃音が二度、三度と続くと慌てて、鎖をじゃらじゃら鳴らしながら、壁の正面から待避する。

 その直後、壁が抜けて破片がこっちへと飛んできた。スプライトの小さな身体がまともに受け止めたら、死亡しそうなでっかい岩塊だ。

 

「ほら、これなら動けるだろう。手伝ってくれ」

 

 彼の言う通り、壁に留められていた拘束具の鎖は壁崩壊と共に下へ落ちてしまっていた。

 アムダリアは恐る恐る、崩れ落ちた隣の牢を覗き込む。

 真っ黒い馬体の大きな人馬(セントール)族が、こちらに尻を向けていた。

 

              ◆       ◆       ◆

 

「エメット。エメット」

「あ……」

 

 心配そうな顔で覗き込む姉。

 

「またトリップしてたのね」

「御免なさい」

 

 現実を忘れて空想の世界へと没頭するのがエメットの悪癖である。特にお気に入りの物語の中へ没頭し、その登場人物にシンクロしてしまうのが、昔からの癖である。

 今回は建国物語のアムダリアに同調していた。

 姉姫もいつもの事なので、「今回は何処まで行ってたの?」と尋ねて来る。少し温くなったスープを口に運びながら、「大帝との出会いです」と告げると、ベルガは「そう」と口にする。

 

「その牢で出会った青年が、後の大カーンになったゴーダー様だったのよね」

「はい姉様。壁をぶち破って現れるシーンは、やっぱり名場面だと思いますよ」

 

 人馬族のキックは凄いと思う。ゴブリン辺りが掘った安普請の牢だったにせよ、岩壁を数発の蹴りでぶち抜いたのだから。

 

「まぁ、本当かどうかは脚色されてるとは思うけどね」

「ロマンですよ。姉上」

 

 ベルガは現実主義者だ。それ故に、空想に浸れるこの妹が羨ましく思う。

 

「それで二人は脱獄して、このオークの勢力を撃滅したんですよね」

「そう言う話になってるわね」

 

              ◆       ◆       ◆

 

 男はゴーダーと名乗った。

 近隣を遊牧する一族の族長であるらしいが、オークに襲撃されて一族が捕まり、身代金の要求に赴いた所で騙し討ちされてしまった。

 

「間抜けだわ。オークが約束を守るとでも?」

「それに関しては言い訳も出来ないな。愚かだったよ。だが、助けたい女性が居た」

 

 アムダリアは向こうの牢に移ると、身体と首を太い柱で固定されているゴーダーを見る。

 固縛が単に縄で結ばれていたので助かった。オークの鍛冶レベルの低さであろうが、もし機械的な錠前でも使われていたのなら、スプライトでは手も足も出なかったに違いない。

 

「その女性は?」

「死んでいた。オークに犯されてな」

 

 オークは女ばかりのスプライトとは逆に牡しか居ない。他種族の女性を犯して、その腹に子供を宿らせるが生殖法だ。

 だから、オークにさらわれた被害者は例外なく餌食となり、産み女として使えなくなるまでオークの子を孕まさせられる。

 例外はスプライトの様な、犯しても自分の種族しか産まないメスだが、この場合、産まれてくる子供はオークの餌になってしまう。

 

「お気の毒に……。さて、結び目を解くのね」

「ああ」

 

 かなり厳重に縛られている。馬を馬車で運ぶのと同じく、長い棒で馬体を締め付け、自由を効かなくしてあるのと同じであり、無論、手も縛られて自由になるのは足だけだ。

 もっともこの足が自由だったのが、壁をぶち破る原動力になったのであるが。

 

「こんな所ね」

 

 翅がないのでかなり苦労したが、何とかよじ登って結び目を解く。

 

「助かった。何か礼をしたいが…」

「お礼? じゃあ、国一つくれるとか、あははは」

 

 無論冗談だ。だが、当のゴーダーは「ふむ」と首を傾げた。

 

「いいな。よしっ、俺は国を作ってやる」

「え」

「今回の事は俺と俺の部族が弱かったせいだ。誰にも負けねぇ大帝国を作って君臨してやろう」

「どうでも良いから、ほら、牢番が来る前に脱獄するわよ。

 

 彼は強かった。

 自由になると牢の鉄柵を前蹴り一発で破り、何事かとやって来た門番もキックで撲殺し、その武器を奪って出口へと向かう。

 

「俺はこのまま集落へ行くが、アムダリアだったか、はどうする?」

「同行するわ。何処へも行く宛ては無いし」

「分かった」

 

 ゴーダーの背に乗ったまま、アムダリア達は駆けに駆けた。

 半日も走った所で、彼の部族が居を張るゲルトの天幕群に到着する。

 とっくに族長は死んだと思われていて、ライバルだった男に一族が乗っ取られてたなんて話もあるのだが、そこから裏切り者共を粛正し、他部族を併合する物語は省略しよう。

 そして五年後。

 ゴーダーはカーン(皇帝)を自称し、彼の配下は十八部族、二万人までに勢力を伸ばしていた。

 

「いよいよ攻めるのね」

 

 アムダリアは呟いた。彼女はゴーダーの女房役として常に付き従い、第一夫人並みの厚遇を受けるまでになっていた。

 しかし、種族がスプライトでは正式な夫人にはなれず、他の夫人と違って常に戦場を共にする立ち位置にも関わらず、側室扱いであった。

 

「この日の為に帝国を作ったんだからな」

「本当に国を作っちゃったのよねぇ」

 

 自分の下に広がっている地図を眺める。

 中原の辺境であるが、確かにカーン帝国はそこに描かれている。

 普通、遊牧民は各地を放浪して土地には拘らず、自分の部族のみを中心とする血統社会を構成するが、ゴーダーは違った。

 

 彼は「誰からも脅かされない為に国は必要なのだ」と考えた。

 敵を討ち滅ぼして配下に収める。婚姻により血の絆によって勢力に加える。

 従う相手には緩やかな統治を。逆らう相手は皆殺しに近い過酷な手を、と手段は硬軟取り入られていた。それは全て中原に巣くう妖魔を排除する為であった。

 妖魔共、オークやゴブリンの様な子鬼族相手にもびくともせず、逆に討ち滅ぼせるだけの勢力を持つ為に、勢力を拡大して行ったのだ。

 

「この地域のオークやゴブリン共を駆逐すれば、俺達の未来を脅かす者は、当面居なくなり、広い領域を俺達の物に出来るのだ」

 

 奴らの勢力が強すぎて、今までは一部族の手には負えなかった。

 人馬の部族が数百人から、せいぜい千人前後なのに対して、オークやゴブリンは数千人の数がおり、しかも全てが戦闘員であるからだ。

 恐ろしい事に奴らには女はおらず、子供だろうが非戦闘員には数えられない。一旦、奴らが牙を剥けば、人馬族の集落が壊滅するのも珍しい事では無かった。

 だが、ゴーダーはこれを打破可能な軍勢を揃えたのである。

 

「明日だ。明日、ようやくミレルの仇が討てるのだ」

「羨ましいわね。そのミレルさん」

 

 ミレルはオークに掴まり自害した女性。それが彼が助けられなかった婚約者であった。

 この数年。彼には妻が沢山出来たが、それは政略結婚の上の妻に過ぎない。ゴーダーが本当に愛していたのは、最初の婚約者であるミレルだけであった。

 

「済まんな。ミレルだけは特別なのだ」

「分かってるわよ。それよりも、その高ぶりを慰めてあげる」

 

 アムダリアは服を脱いだ。

 戦場でこの男の性欲を解消するのが、いつの間にか彼女の役目となっている。

 普通、人馬族は女戦士でも無い限り、戦場に女は同道しない。まして族長、いや、今は皇帝となった者の妃は、こんな最前線へと姿を現す事はまずない。

 

 魔力を込めると白い裸身が成長する。スプライトの持つ生体魔法で、大きな種族と交わる為に身体のサイズを大きくする為の物だ。

 しかし、人形サイズから大きくなっても、せいぜい人間の少女程度がこの魔法の限界だ。

 スプライトは通常、無理矢理突っ込まれても無理が利く。どう考えても挿入不可能に思える男性器であろうと、生体魔法によって身体全体を使って飲み込んでしまえるのであるが、それでも巨根を誇る人馬族とセックスするには、少しでも身体を大きくした方が負担が少ない。

 

「さぁ、挿入(いれ)て」

「おうっ」

 

 騎乗位でずぶりと挿入される逸物が、小さな膣内を一杯に占拠する。

 身体の小ささから、正常位で後ろから突かれるのは不可能だ。腹に抱きついてぶら下がりながら腰を振るまぐあいもあるが、普通は騎乗位が人馬族に対するアプローチになる。

 逞しい物を胎内に感じながら、アムダリアは身体を上下に激しく動かす。少しでも気持ち良くなる様に、愛撫を一層強めて行く。

 

「上手くなったな」

「んっ、んっ、そりゃ、五年間も続けりゃね。ああっ、はぅん♪」

 

 突く度に、下腹にゴーダーの男性器の形がぼこっ、ぼこっと表面に出てしまう。

 生体魔法で肉体強化されていなければ、子宮をも破壊されかねない挿入である。子宮口は完全に開口して、亀頭の先端は貫通して子宮壁に到達している。

 それがフルストロークで出し入れされ、逸物が子宮壁を突きまくっているのだ。

 

「あんっ、あんっ、あっ、あっ、気持ちいい。そうよ。このまま、あたしの中でイッてぇぇぇ♪」

 

 狭い膣内がぎちぎちと締め付ける。それでいて肉襞がビロードの様に男性器を包み、優しく擦り上げて快楽を与えて行く。

 サッキュバスにも匹敵する名器の中で抽送を繰り返す内に、ゴーダーの限界がやって来た様だ。

 

「そろそろ出すぞっ、アムダリア!」

「いいわっ、来てぇ。ザーメンを一杯お腹に頂戴ぃぃぃ!」

 

 一瞬、突き込まれる動きが止まった次の瞬間、大量の精が脈打ちながら炸裂する。

 どばっ、どばっ、どばばっと熱い奔流が流れ込んで、一気に秘洞内が牡粘液で一杯になる。アムダリアは頤(おとがい)を反らしながら、その衝撃にびくびくと痙攣した。

 

「卵が……。卵が出来てきたわ」

 

 精液を受けた子宮から卵巣へ生命力が変換され、アムダリアは大量の卵を生成した。

 サッキュバスの吸精にも似ているが、放たれた精はスプライトの糧にはならず、全て卵塊を作るのに使われるのだ。

 これまでゴーダーに注がれた精は、全て卵になっていた。

 

「まだ一度も産卵していないのだろう?」

「ええ、貴方に助け出されたあの日以来ね。もう、幾つ溜まっているのかも分からないわ」

 

 スプライトは卵を仮死状態のまま胎内に保存出来る。

 秘所からゴーダーの逸物を抜いたアムダリアは、ぽっこりと膨らんだ卵巣を撫でる。

 ぎっしりと卵の詰まった卵塊が、その存在を主張しているかの様に手応えを返してくる。しかし、肝心な卵の数は不明だ。

 普通は大体、千個程度で産卵するが 五年間も産卵せずにいるのは新記録かも知れず、こんなに卵を溜めたスプライトも彼女が初に違いない。

 

 参考で言うならスズメバチの女王が産む卵は一日二千個。魚卵のタラコが抱える数は三千万個。マンボウの卵に至ると、これが二億個もの数になる。

 アムダリアの卵も下手をすると億のオーダーに達している筈だ。昆虫同様、胎内に卵を抱えていても普通は体型に出ないのだが、彼女の場合体型がぽこりと膨らんでいるからである。

 

「全ては復讐の為か」

「ええ、帝国の力、期待してるわよ」

 

 翌日、ゴーダー・カーンの軍勢は妖魔の領域へと侵攻した。

 オーク、ゴブリン、コボルトと言った子鬼共は激しく抵抗したが、奇計や集団戦に勝るカーンの騎馬軍団には敵わず、次々と各個撃破されて行き、全てが平定されたのは半月後であった。

 そんな中、陣中で奇妙な儀式が行われていた。

 

「た、たすげてぐれ」

 

 妖魔共の捕虜が一箇所に集められていた。

 ゴーダーら人馬族の考えでは捕虜は取らない。戦う以前に下った者を除き、敵対した者は例外なく皆殺しに遭う。奴隷として生き延びられる例外もあるが、一般的に敵対者は禍根を残すとの考えからである。

 だが、今回の戦いで大帝は生き残りを集める様に命令した。

 妖魔共、オークやゴブリンは牡しか居ないので、観賞用奴隷として生き延びるのは考えられないのだが、彼らが集められたのは奴隷が目的では無かった。

 

「貴方達に食べられた子供の仇を討たせて貰うわね」

 

 拘束された捕虜の前でアムダリアは産卵管を伸ばす。

 ぬらっと体液に塗れたまま、股間に屹立する硬質の管がぶすりと最初のオークに刺さる。

 無痛針と同じ仕組みで、産卵管が刺さっても痛みは感じない。

 アムダリアがぶるっと身体を震わせると同時に、「はうっ!」と叫んだ。途端に凄まじい快楽。卵が次々と産卵管の中を通って目標へ打ち込まれて行く。

 

「ふわぁぁぁぁ」

 

 蕩ける様なうっとりした表情で、身体を震わせる。産卵管から響く、羽音にも似た「ぶぉぉぉぉん」との静かな震動音と共に、毎分、平均三千個の割合で放たれるそれは、バルカン砲の連射に等しいスピードであり、胎内にあった数百個の卵が僅か十秒足らずで、吐き出されてしまう。

 

「うふふ……次は貴方よ」

 

 最初に卵を打ち込まれたオークは「おこご、げぎょ」と異音を発して苦しみ出している。だが、アムダリアはそれに構わず、次の標的に産卵管を突き刺すと再び産卵をした。

 

「ああっ、気持ちいい。次はお前よ」

 

 ぶすりっ、ぶぉぉぉん。

 次々と産卵をこなして行くスプライト。産卵中、彼女は射精に等しい放出感を全身で感じ、絶頂の中、快感に酔いしれるのだ。

 十数人目だったろうか、最初に産卵したオークの皮膚下が猛烈にもぞもぞと動き、白いスプライトの幼生体が至る所から体外へと飛び出してきた。

 中で孵化し、肉を食らって成長したのである。以前、オークがこれを『蛆』と揶揄していたが、ある意味言い得て妙だったのかも知れない。

 手から、足から、腹から、口から、鼻から、目の中からも食い破って続々と出て来る。

 捕虜達はパニックに陥った。だが、拘束されているので逃れる事は叶わない。

 内部から食べ尽くされたオークが白骨化する。脳や骨髄まで綺麗に食らい尽くされて、その骨は洗った様にぴかぴかだ。

 

「無駄よ。この日の為にうなる程、卵を溜めていたんだから!」

 

 こうして数百人の妖魔に残らず卵を産み付けたアムダリアは、産まれた子供達を統べる女王となった。これが我が国の始まりである。

 

              ◆       ◆       ◆

 

「アムダリア一世のお話は苛烈よねぇ」

「でも産まれた子供達は帝国の兵となって、大帝の為に大活躍したんでしょ?」

 

 エメットの問いにベルガは唸った。

 

「産まれたのは全て臣民種だったからね。凄い数は産まれたけど、変態するまで生き残れたのは半分以下だし、寿命だって短かったのよ」

 

 幼生体には鳥や他の野生動物みたいな天敵も多い。

 そして蛹になって羽化するまでは知性が無い。だから幼生体同士で共食いだってしてしまう。

 

「王族種を産まなかったんだ」

「後に産んだわよ。だから、私達が王女でございって面が出来るんでしょ?」

 

 王族種は上位のスプライト。幼生体にローヤルエキスを与える事で選別される。

 特別な餌を与えられたスプライトは羽化後に卵巣を持って生まれてくるのだ。無論、その違いは卵を産める事と、臣民種の寿命の四倍、約二十年もの長い寿命である。

 主に女王を護る親衛隊としての任に就き、自分も臣民種を生み出して種の保存に貢献するのが役目で、次期女王としての候補になるのだ。

 

「まぁ、大帝が私達スプライトを重用してくれたのは事実だけどね。

 今でも、伝令や偵察兵として空を飛べるから重宝されてるし」

 

 しかし、これには、翅をむしられて再生出来なかった初代女王にとって複雑な物があったらしい。

 娘達が飛ぶのを見て、ため息をついていたとの記録もある。

 スプライトが人馬族とコンビとなり、駅間を走る伝令となって、帝国拡大の原動力ともなる通信網を後に形成するきっかけを生んだのも、彼女達の飛行能力に尽きる。

 飛翔速度の遅さはセントールの健脚に補われ、沼地や山岳、大河と言った人馬の地形対応の欠如はスプライトの飛行によって克服する。

 余程印象的だったのか、今でも、帝国でのスプライトのイメージは郵便屋さんになってしまったし、実際その職に就いている者も多い。

 

「まぁ、そんな訳で私達はカン国(汗国・藩王国)と言う形で帝国の一翼になってるんだけど、エメット。貴女、お嫁に行く気ない?」

「え?」

 

 唐突に言われて、頭がそれを理解するのに暫く掛かった。

 姉は「相手はウルタイ・カン国の第三王子よ」と続ける。

 

「まだ女王陛下とも相談する必要があるけど、ウルタイとブダイの二国は知ってるわよね?」

 

 エメットは頷く。

 近年、帝国内で勢力争いを続ける有力国家であり、両国共に『大カーンの後継者である』を標榜して、どちらが次期大カーンになるか権力闘争を繰り広げている。

 

「我が国はウルタイに付くのですか?」

「いいえ、ブダイにも別の姫を送ります。こっちはモーリン辺りを予定してるけどね」

 

 モーリンは姉だ。第三十王女。生まれたのは同じ歳である。

 スプライトの王族種は普通、年間に数人しか育成されない。女王が体内で製造するロイヤルエキスが稀少なので、数が揃えられない事情もある。

 

「では……」

「二股外交って非難は承知よ。貴女には人身御供になって貰うけどね」

 

 婚姻関係を結び、同盟を締結して双方に顔を立てる。

 外交手段としては古典的な手である。だが、相手が第三王子と言う所からも判るが、輿入れ先の国での扱いは低いだろう。

 それに加え、女しか生まれる事がないスプライトと言う異種族。正妻では無く側室であろう事は目に見えていた。

 

「相手も遊牧国家だから、都は持っているとしても生活はこっちと変わらないと思うわ。

 って、ゴメン。何の慰みにもなってないわね」

 

 ゴーダー大帝の下、アムダリア一世は一つの汗国として産み出したスプライト達を纏めた。

 それは大帝が約束した『国を与える』の履行であり、実質的な妻として大帝を支えたい女王の意向でもあった。

 だが、それはスプライトとして見れば異常な状態であった。

 普通のスプライトは家族は作るが、部族以上の集団は作らないからである。

 実際そうだ。中原に生きる人間以外、スプライトの国家なんて存在するとは露にも思わない。気ままに生きて、自由奔放に遊んで子を産む。それがスプライトであって、組織化なんか出来ない物なのであると考えられていた。

 だが、アムダリア一世はこれを実現してしまったのだ。

 

「向こうへ行っても乳搾りですね」

 

 エメットはクスリと笑う。我が国は典型的な遊牧国家である。王女だって羊を追って、乳搾りするのが当然の田舎っぽい牧歌的な国だ。

 

「いや、流石に王妃になったら、それはないんじゃないかしら」

 

 希望的な観測。いや、案外、第三王子の側室だったら、それも有り得るかも知れない。

 遊牧民なら、王族だって牧羊に従事するのが当たり前な事は多い。この二人の姫だって、王女でございと宮廷で、優雅なお姫様生活出来る環境に育ってないのだから。

 

「第三王子ってどんな人ですか?」

「顔は悪くないわね。でも、乱暴者で鼻つまみ扱いかな」

「うわぁ……」

 

 実を言えば、当初スプライトが遊牧民族になれるとは誰も思っていなかった。

 無理も無い。追う羊や牛の方がスプライトより遙かに大きいのだ。しかし、アムダリアはゴーダーと共に実際の遊牧生活を体験して、彼女らでも無理ではないとの確信を持った。

 牧童犬が羊を制御出来て、スプライトが同じ事をやれない訳はない。

 自前で食料を確保出来るなら、何も花の蜜なんか捜して、ふらふらと飛び回らなくても安定した生活が出来るのだ。そして確実に糧を確保出来るなら、大勢の人数を養える。

 かくてスプライト・カン国は誕生した。

 

「ゴメン」

「いいですよ。出来悪いけど私も王女です。事情は分かってます」

 

 ベルガ姉は国の為に働いている。自分も国を背負って立つ王女である。これは覚悟を決めて輿入れすべきであるとの考えは、理性では理解出来る。

 ただ、感情面では……。だから、一つだけ無理を言ってみた。

 我が儘っぽく、「でも結婚前に、その第三王子にひと目会いたいですね」と。

 

「あー、うん」

「ウルタイって海があるのでしょう。訪問してみたいわ」

「そうね。何とか機会を作ってかの国へ行く手筈を整えるわね」

 

 この申し出は後に了承された。

 スプライト・カン国王女、エメット・アムダリアは半年後、ウルタイ・カン国へと赴いたのだ。

 ほんの小さな出来事であった。

 しかし、これが中原で、一つ歴史が動いた瞬間であったのを予測した者は誰もいない。

 

 

〈FIN〉




エルダ世界のスプライトは寄生蜂です。
気ままに飛んで、獲物を見付けたら誰彼構わず卵を産み付けちゃう。
だから魔物として、恐るべき殺戮者として恐れられています。
中から食い破られて、相手はたちまち白骨になってしまいますからね。

国を作ってからのエメット達は、家畜を飼いながら遊牧してます。卵は害獣とか家畜に産み付けます。だから、中原では無慈悲な殺戮者的なイメージは余りないのです。
代わりに郵便屋さん的なイメージになっちゃってますが(笑)。
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