ひとみを朝の運動を終えた連中がたむろっている居間に投げ捨てる。
うげっと女性が出してはいけない声を出しながらソファーにぐったりと倒れこむ彼女をふたば――青鬼の相方である赤鬼がぺちぺちと顔を叩いている。
いくらか純情な彼女がのぼせただけでないことに気付くのにどのくらいかかるのかはわからないが、任せておいて間違いはないだろう。
それよりも、と朝からの空腹に紛らわさなくてはならない。台所に忍び寄るとメイドが一人せわしなく動いていた。いつも誰かしらいるものだけれどたまにこういうことがある。
「おはようございます。旦那様」
振り向かずに、手も止めずに返事をした彼女の名前はベッキー・K。もちろんリングネームではあるが通りがいいのか、外であまり本名を呼ばれるのを好まないことも相まって普段はベッキーと呼んでいる。
目元がすっかり黒髪で隠れてしまっているのにてきぱきと澱みのない手はさすが熟練といえる。本業は別ではあるけれど。
置いてあるサンドイッチを食べ、文句が飛んでこないということは許されるのだろうと自己弁護をしつつも彼女の後姿を見つめる。
彼女は本業はメイド、もとい護衛らしく今もまた仕込み武器を体中に仕込んでいる。彼女の得意技のジャックナイフホールドも、本来ならば体を抑えた時点で刃物を滑り込ませているのだろうかと恐ろしく思う。
そんな彼女は当初とある金満家から仕事の一環という不思議な理由で派遣されてきた。
よくわからない理由に女性関係のもつれかとも思ったが愛妻家で有名な、いや有名すぎて少し夫人以外へのあたりが強いとまで言われていた人物であるから同性愛か何かかと疑ってしまった。
もちろんすぐに誤解は解けた。ただ、夫人が少々おてんばだったというだけである。
オフィスでの彼女はまさにメイドらしく、彼女をライバル視するような人も多かった。お茶の温度が、などと口を出すのは何とも古めかしい姑さながらであったが彼女自身とっつきにくさで言えばなかなかの上位であったと思う。
彼女との触れ合いはメイドと主人のような、やや頼り切ったものだったといえる。欲しいものは出てくるし、喉が渇けばすでに用意されていた。仕事も練習も文句を言わずこなす彼女に報いようと人間関係での気配りは最大限行った。生活用品や、雑貨はもう何人も世話をして手慣れていることに違和感があるほどである。
それから皆と打ち解けたたかなと談笑しているのを陰で見ても、なんとなくメイドらしい振る舞いに少し笑ってしまった。偉そうにしている連中のほほえましさもまた。
それでも時間があるときはなぜかそばにいて、それが普通になっていた。
そしていつか帰るんだろうという寂しい気持ちを忘れようとしていたころ、二人っきりのときにいつも以上に真剣な表情を見た。
そこで何か衝撃的な、ちょっと彼女らしくない、聞き直したときに忘れてほしいと肩をみしみしと捕まれながら念を押されるような告白を受けたことだけは覚えている。そして迷いなく返答したことも。
せっかくだからとそのことを料理中の彼女に投げかけるとがたんと、持っていた皿を机に軽く音がする程度に落とし、深く深く深呼吸をして、何事もなかったようにふるまい始めた。
続けて初夜のことを話すと全て終わったのかベッキーはくるりとロングスカートをふわりと舞い上げながら振り向き、笑った。
「もちろん覚えています。旦那様は抵抗のできない私の手を取り、ベッドに引きずるように――」
朗々と語る彼女にぽかんと口を開けてしまった。捏造である。
実際は息を荒げた彼女がメイドらしからぬ強さで主の手を引っ張り、と思ったところでベッキーの手が、こちらの手を握りしめていた。
「では、思い出させてください」
瞬間、あのときのように期待で股間が膨らんだ。前髪で隠しきれない眼光が、ちりちりとこちらを焼いている。
ぺろりと唇を舐めるしぐさは、緊張ではなく準備だろう。まずはと、がやがやとした欠食児童の声が聞こえるほどの距離の場所で、キスをした。
「……ふ……は……ちゅっ……はぁ……ふぅ……ごちそうさまです」
彼女とのファーストキスは寝室だった。本名を呼ぶとびくりと頭を跳ね上げ、照れたように笑った。わざと髪をかき上げて、目を見ながらのキスはやっておきながら少し気障だったと思う。
そのまま残しておけば勝手に食べるだろうというひどい考えのまま寝室に行くと、いつの間にかそこは綺麗になっていた。
彼女を見るとふっと自然体で笑い、当然ですと一礼した。
メイド服は長いスカート、手首までの袖、顔も半分は隠れている。初夜を思い出す。後片付けを考えずそのままするのはよくなかっただろうが、あえてそのまま抱きしめ、キスしながらベッドに押し倒した。
脱がせないというのが狼藉のようで、苦労してスカートをたくし上げてなぜかガチャと音がする重いスカートをめくると。むっちりと肉と筋肉が付いた足が見えた。
私服に頓着しないという彼女ではあるが下着は黒で、上品なレースのところどころ透けたようになっているものだ。機能性をやや失しているそれに嬉しくなる。
「あっ……」
音がする。するすると下ろす音だけでなくわずかな水音が彼女を恥じらわせた。何度あっても慣れないようで。前髪では隠しきれないほどの赤みが見えていた。
大陰唇をぐいと広げると以前よりもこなれたピンク色の肉が見える。複雑な肉はうねっている。むしゃぶりつくと長いスカートに長時間蒸らされた濃厚な臭いにくらくらした。
「あの……臭いは……」
彼女は常に武装しているせいか汗もかきやすく、初夜は正直のところもっと、いやもう少しだけきつい匂いがしていた。機能性を優先した下着に、金属が埋め込まれた靴、膝用のプロテクターもつけているとなるとさもありなん。
べろりとわざとらしく舌を伸ばし、舐めまわすと抜群に濡れる。メイドという立場がそうさせるのか彼女は奉仕されるのに弱く、丁寧にすればするほど汁が満ちていく。
足を持ち上げての挿入はスムーズであった。一息に入れてもじゅくじゅくと濡れ切った性器は包み込み、ひだで歓迎してくれている。
濡らすのに苦心した初めてのときはそれでも表情一つ変えずになぜすぐに腰を振らないというふうで、彼女の手と指を絡めて動かさないでいると無理やり騎乗位になろうとしたほどである。
「暖かいです……旦那様……ふふ」
キスを繰り返すと髪が左右に分かれ、潤んだ瞳が見える。痛みではなく情欲の瞳が。
こわばっていた顔は今は柔らかく受け入れ、唇同士を合わせるだけの動きでも興奮を得ていた。
「ん……ちゅっ、ふっ……ちゅう……はぁ、今日はご奉仕は……はい、お任せします」
腰を振る。無粋な音が聞こえないようにゆっくりと二人の体をこすらせると、手に入る力が強くなっていく。
彼女の目が見られる正常位はたまらなくいい。レスラーとしてはともかくプライベートで、美しい目を独り占めすることができる。ちゅうとまたキスをして、目を見続けてそらされるまでのいじわるは彼女には通用しなかった。
「……ふっ……はぁ……いえ、もっと……お手付きを、ふふ」
信子、と本名を呼ぶと歯を一瞬食いしばった。手と肌を合わせ、唇を首筋に這わせて耳元での不意打ちに一度、震えた。
初夜は彼女のメイドとしての扱いをすべて捨て、愛情をひたすら注いだ。愛撫をし、彼女を姫のように扱うととろとろにとろけていった。
「あっ……ぁんっ……ふぅー……そんな、髪ばかり、あっ」
美しい髪をいじる。一部は汗で彼女の顔に張り付いて、余計煽情的に飾っている。普段まとめてある分がベッドに広がり、存在感を示している。
「そろそろ、ですね。あっ……ぁは、お情けを、どうか」
前と同じ言葉はより情念が籠っている。こなれた膣はペニスへ密着し、指ともども絡みついて一つのようだ。
そして何かで重い足を持ち上げると腰を、思い切り振った。
「ふぁっ、あっ……ぉ……んっ、くぅ……はっ、これではっ、私が、さき、にぃっ」
腰をぐちゃりと叩きつけるたびに仕込み武器がガチャガチャと鳴る。無粋なそれは非日常を演出して、まるで仕事中に催したからと抱いているような、そんな感触がする。
上から叩きつけるようなどすどすと、クリトリスごと押し付けるような動きは彼女の額に玉の汗を浮かばせ、体勢が苦しいのがむぎゅと絞り出すような息をこぼした。
「あ゛ッ! ……ふっ……く……ぎっ……手を、は、あっ!」
そして射精した。愛していると言いながら何度も子宮口に叩きつけながら、膣内でこそげ落とすようにゆっくりとこすりながらどっく、どっくと長い長い射精を。
「わたしっ、もっ……ひっ……っは……ぁ……は……」
彼女の目は見開き、かふっと呼吸なのか喘ぎ声なのかよくわからない声が漏れて、恥じていた。
最後に全部、と彼女を押しつぶしながらこすりつけ、キスをしながら長い時間をかけて吐ききった。初夜の焼き直しのように、たっぷりと。
「はぁ……ありがとう、ございます……はい、お慕いしております」
いつまでもそうしていたかったが朝ということを思い出し、抜き取ると彼女は舌をべえとわざとらしく伸ばした。疲れてそのまま一緒に寝ている彼女はおらず、優秀なメイドとして奉仕をしようとしている。
急いて汗が浮かんだ顔に亀頭を寄せると嫌な顔一つせず、笑みを浮かべた。
「ちゅっ……ちゅう……ん……ふ……ふぅ……あむ……ぷは、ひどい臭いです」
吸い付き、白く濁った液体が浮かぶ竿をなぞりあげた。丁寧で素早いその作業は興奮を沸かせ、彼女の股間から漏れるぶびという下品な音に本人も気付いていながら知らんぷりをしていることがまた助平に思えた。
「……ん、はぁ……あの……いえ、なんでも、あむ……ないれふ……」
髪をかきあげながらのフェラは完全に力を取り戻すまで続いたけれど、そっけなくぷはと、やめてしまった。
思わず抗議の視線を送ると彼女はふふと笑った。
「私も朝食はまだでして。……それで、旦那様は私に精液を含んだまま食事をしろとおっしゃるのですか? 今日の新鮮な野菜に使ったドレッシングなどよりもよほど濃い、これを」
べえと伸ばした舌に残り汁が、白濁液が泳いでいる。わざとらしく小刻みに揺れて、舌の上を精子が揺れている。
ごっくとわざとらしく音を立ててまた舌を伸ばし、まだ残っている粘液を見せつけてくる。
「髪をまとめる時間もなしに、乱れた姿のまま、皆様の前に姿を現すことになるでしょう。口にたっぷりとお情けをいただいて、そのまま」
舌をもう一度出し、べろぉとわざとらしく唇を舐め、濁ったコーティングを施した。
思わず彼女の頭に馬乗りになるとじっとりとした視線で見上げてくる。
「……旦那様?」
それから口の中に2発、先ほどと遜色のない量を吐き出した。