※この作品はR-18です。

Kaleid/Burn Out   作:てんぞー

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幕間コミュニケーション3

 全てが燃えている。

 

 世界が、空気が、大地が、水が、命が―――星が。

 

 全てが燃えている。この惑星という存在そのものが炎の中で終焉を迎えていた。星を、その命を支える巨大な樹は紅蓮の中、焼かれていた。悲鳴を上げながら世界そのものが炎に包まれ、惑星の中心へと向かって縮小を開始していた。それにつれて炎に焼かれた命が見え始める。原初の炎が、滅びの炎が世界そのものを覆い、中心点へと向かって行進を進めていた。既に頂の神鳥は焼き尽くされて命を奪われ、そして多くの神々が炎に焼かれて死滅していた。

 

 それは一つの神話の終焉だった。起源の記録、或いは記憶。起源そのものから引きずり出された炎の色。そこに焼き付いた過去の景色。それが彩るのは神話の滅びだった。

 

 美しい。一言で表現するならそれに尽きた。積み上げられた文明。築かれた文化。そして奏でられた物語。何度も何度も積み重ねられてきたそれが今、炎の中で焼けて消えて行く。この神話という名前の惑星は今、終焉を迎えている。積み上げられた全てが一つの滅びによって完全に破壊を迎えようとしていた。炎の中に焼き付けて、痕跡だけを残して星その物を滅ぼし、次の時代へと進む。

 

 完全にすべてを焼き尽くし、星その物を消去し―――新たな星と神話の終わりを始める。

 

 そうやって世界は回る。それが神話の時代。それが混ざらない物語の真実。それぞれがどこかで終わり、混ざり合い、そして星へと繋がる。地球へと繋がる。神話の世界は複雑怪奇である。だがそれは確かに存在していた。神々が滅ぼし、世界が燃え尽きても、その痕跡は、神話の片鱗は受け継がれる―――次の星へ。

 

 そうやって今の世界はある。

 

 それを見ている。そう、見ている。この目で。この肌で。心で。魂で。剥き出しの精神で焼けて行く世界の景色を見ている。それは焼き付く記憶。起源そのものが見せているモノだった。実在した事の再現―――そこに巻き込まれている。それを今、見ていた。そして炎が世界を呑む様に、そこに己も呑まれる。今までのとは違う。魂を燃焼させる炎。

 

 それに触れてしまえば一瞬で死を迎える。

 

「―――とはいえ、そのエンディングは少し乱暴すぎやしないかな? 僕としてはこんなところでリタイアされても困るしね、ちょっと余計だったかもしれないけど待ったをかけさせて貰おうか」

 

 気が付けば見える景色が変わっていた。解放された鋼の鳥かごの中に居た。周りには一面の花畑が。鳥達は鳥かごを囲む様に舞い、歌い、そしてそこは一面の楽園を展望できる場所だった。だが、それはどこまで行っても鳥かごであった。逃がさない為の場所。そこは楽園に用意された囚人の居場所だった。星の終わる夢はもうなかった。そう、夢は終わった。

 

「ここは夢界か」

 

「流石は鏡界の魔術師と言ったところかな? 或いは最新の魔法使い候補生とでも呼ぶべきか」

 

 気づけば椅子に座っていた。いや、ここは夢だから当然だ。そして夢であると理解したからこそ、自分の夢で何が起き、何が発生しようとしたのかを理解し、一瞬で顔を青ざめた。先ほどまで自分が見ていた景色は―――レーヴァテインの霊基に残された記録だった。つまり起(・)源(・)の(・)情(・)報(・)そ(・)の(・)も(・)の(・)だ。そんなもん、人間が耐えられるように出来た訳じゃないと自分に説明するのはこれで何度目だろうか。

 

 寝ている間に回線不良で死ぬとかマジで笑いものにならない。

 

「ま、軽率にシステムを弄ろうとした報いだよ。発想は悪くないけど。バックファイアの対策がおろそかだったのさ」

 

「初めて弄るシステムなんだから許してくれよ……」

 

 そう言いながら、自分の喉から溢れる声が女の物ではなく、男の物であるというのに気付いた。いつの間にか座っていた椅子、肘を乗せていたテーブルから顔を持ち上げ、視線を正面へと向ければそこには長い白髪をした少年の様な青年の様な、女の様な男の様な、或いは少女のようで老人の様な―――そんな魔術師の姿があった。その膝の上にはこれもまた、犬か、リスか、猫か、判別のつきづらい生物が体を丸めている。

 

 夢のルールでここに居る以上、自分がこれを夢だと自覚した時点で目の前の魔術師は拳の中に握られ、捕まっている様な状況である筈だった。だがそれを自覚しながらも、魔術師は涼しげな表情を浮かべている。

 

「お前は……」

 

「僕かい? 名乗る事に意味はあると思うかい? ほら、こういうのって直ぐにばらすよりもある程度引き延ばしたほうが受けがいいしさ、大体はアタリを付けていてもぼかして話を進めるのがマナーというものじゃないかな?」

 

「こいつ、性根が爺とどっこいレベルだわ……」

 

 流石伝承の時代から生き続けている魔術師は肝が違う、と溜息を吐いた。

 

「それで、なんでこんな事を?」

 

「うん? あぁ、言ってしまえばちょっとしたアフターケアだよ。ヒースロー空港で君がバーサーカーを呼び出した時、あの炎を放置していればそ(・)の(・)ま(・)ま(・)ブ(・)リ(・)テ(・)ン(・)を(・)覆(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)からね。アレに対処してセイバーと君の鬼ごっこが始まるまで時間を稼いだのは僕さ」

 

 ……そういえば、あの時なぜか救急車の中目を覚ましたことを思い出した。タイミング的に爆心地に居たし、マスターだけを綺麗に焼かないなんて器用な真似がバーサーカーに出来る筈がない。そして空港がクレーターだけを残して消えているのを考えれば、確かに誰かがあの時、介入していなければそのままグラウンドゼロと共に消し飛んでいただろう。しかしそこに準魔法級の魔術師が関わっているとは思わなかった。

 

 そもそも、彼、或いは彼女が本当に自分の思うような人物なら、モルガンによって楽園に幽閉されているはずだ。それに人間に干渉するような人物でもない。

 

「まぁ、そうだねぇ」

 

 そう言って魔術師は笑った。

 

「だけど流石の僕でも彼女が愛したこの大地を、そのまま灰にされるのを黙ってみていられる程無責任な訳でもないのさ。一応、こう見えてもウーサーと共に計画を進めてしまった事に対しては反省しているんだよ……今考えれば、やり方を変えるべきだったんだろうけどね。これもまたブリテンの為に必要な事だったのだろうけれど」

 

 ま、と魔術師は言葉を放った。

 

「アフターケアさ。実際、今のを放っておいたら全自動放火マシーン化していただろうしね。流石の僕も何かが出来るのにそれを見逃すのは心が痛む。僕たちがあれだけ苦心して守ってきたブリテンなんだ、そう簡単に滅んでもらっては困るからね! ま、逆に言えばそれ以外の事では僕も働こうとは思わないんだけれど」

 

 中々、物語で描かれる様な隠者らしい性格をしていた。それはともかく、先程の夢界から助けられたのは非常に感謝している。起源の影響で夢であるというのは自覚できるのだが、そこから抜け出せるかどうかで言えばまた話は別だ―――それはそれとして、起きたらパスとフィルターの確認をしなくてはならないだろう。もう一度、寝ている間に焼き尽くされない様に。

 

「さて、あまりこうやって長く顔を突き合わせているのも良くないからね。君はそろそろ君の現実へと戻ると良い。出来る事ならこの一瞬の邂逅さえも忘れて貰った方が良いんだけれど―――うん、無理そうだね!」

 

 そりゃあな、と言葉を口にする前に現実と夢の境界がぼやけた。一瞬、視界の全てがぐにゃり、と歪んだ。

 

 そして気づけば自室の天井を眺めていた。

 

 頭の下には枕の感触、そして腹の上にはレーヴァテインの頭が乗っていた。サーヴァントは睡眠が必要ではないらしいが、このサーヴァントに限っては何故か寝ていた。色々と謎の多い少女だったが、幸せそうに眼を閉じて、体を丸めながら眠る姿は邪魔が出来なかった。

 

「……ふぅ、伝説の花の魔術師か。良く見えなかったな」

 

 或いは夢と言う領域だったから当然だったのかもしれないが。あの夢界での出来事は終始、完全に花の魔術師が管理、制御していた。夢の中に導かれたものはそれが夢であると自覚した瞬間、その夢に対しては絶対強者になるというルールが存在するのだが、あの魔術師はそれを無視していた。それこそたぶん、あの魔術師を超える圧倒的な怪物でもない限りは相性差なんてひっくり返すだけの実力があるのだろう。

 

「羨ましいもんだ」

 

 そう呟く声は女の声だった。手を胸へと持っていけばそこには女らしい、大きな膨らみがあった。夢の中では男の姿をしていた、という事は自分のアイデンティティがまだ男であることを証明している。それが崩れる前に何とか元の姿を取り戻さなくては、と思いつつ、ベッドの横の空間へと視線を向けた。

 

 鏡を砕くイメージで魔術回路を起動させ、魔力を生み出す。そこに《万華鏡》を組み込むことで半永久的に魔力を生み出し続ける事が出来る為、効率を大幅に短縮しつつ魔術を発動させる。イメージするのは楽園の花々―――それが咲き誇る景色。

 

 現実さえも騙す程の美しさ、それをイメージして出力する。それに従う様に部屋の床から一面の花畑が出現し、甘い匂いが室内を満たし始めた。夢の中でお手本ともいえる最高位の幻術を見せて貰えたおかげか、なんとなくだが幻術の使い方が解った―――馴染んだような気がする。

 

 そのほかにも、あの短い会話で盗み見れた術があった。

 

「まぁ、お土産って事で貰っておこう」

 

 溜息を吐きながら目を瞑った。窓の外から僅かにだが光が差し込んでいる。既に朝を迎えていた。再び眠って夢に殺されるのも嫌だし、ちょっとだけ目を瞑って頭を休ませているだけだ。それを十数秒間ほど続けて、漸く目を開ける覚悟を決める。

 

 はぁ、と溜息を吐く。

 

 謹慎が解けてから一週間が経過した。ゼルレッチに振り回されるばかりの一週間だった。あの爺さんに言われるまでもなく、最近は体を積極的に鍛えている。おかげで魔力と足の速さに関しては中々、他人に自慢できるレベルで上がってきている。

 

 それでも筋肉がつかないのはやはり女の体だからだろうか?

 

 まぁ、嘆いたところでしょうがないのは事実だ。結局は持っているものを使って戦い続けるしか自分には出来ないのだ。聖杯戦争、此方の準備とか関係なく進行してくるからまったく困ったものだ、と溜息を吐く。

 

 まぁ、伝説の楽園は実際に存在していたし、困ったらブリテンを焼くぞ、と脅迫して引きずり出せばいいや、と思いつく。

 

 使えるのなら死にかけの婆ですら使えと最近のブラック企業は言うのだ、なら引きこもりの魔術師一人ぐらい死ぬまで使っても問題ないだろう。ブリテンを人質にして。

 

「……良し、馬鹿な事を考えてたら眼が冴えてきたな」

 

 まだ味噌が残っていたから味噌汁を作って、ついでに高菜とご飯を一緒に出して、後は昨夜の余りものでも食べよう。それが終わったらソシャゲのログボ回収してから朝のジョギングだろうか。

 

 時計塔、メシに気を遣う連中が少ないから自炊が出来ないと本当に地獄を見る辺り、人間の住む環境だとは思えない。ともあれ、

 

「もうそろそろ、聖杯戦争に進展があってもおかしくなさそうだし」

 

 頑張りますか、そう呟きながら新たな一日を始めた。

 




・《幻術》の習熟度が大幅に上がった
・《英雄作成》を取得した (習得判定c結果
・アヴァロンの存在を知覚した
・星の終わりの夢を見た

 という訳で有能スキル2個分強化と習得で花の屑野郎コミュ。コミュ相手で熱烈引いて、そして習得でcが出たので出さざるを得なかったという。

 これで3連コミュは終了。次回から聖杯戦争2シナリオ目だけど、しばし時間かかるかな。
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