体が熱い。
ゆらゆらと燃え上がる炎の様に、体が熱い。信念は炎の様だ。覚悟は精神力を糧に燃えて輝く。情熱は燃え上がる。そして血液はその熱で沸騰する。魔力が燃焼されている。覚醒された新たな起源―――否、共有し、融合状態で追加される新たな起源によって炎という性質が追加されている故に燃えている。意思が、魔力が、決意が、情熱が、覚悟が、信念が、血液を沸騰させながら概念的に燃焼している。それはつまり損耗するという事でもある。燃えるという行いには薪が必要になってくる。それがないのならひたすら使い潰すだけの自滅の疾走になるのだが―――。
……が、その心配はいらない。平行世界から無限のリソースが供給される。新たな起源、所有するスキルと技術、経験、魔力を起源の炎にくべて燃焼させる事で爆発的なエネルギーを生み出す。だがそれだけではない。組み合わせるのは自分が保有する全ての起源、その可能性。燃え上がりながらも燃焼させ、一時的に自分を
魔術師の根本的な思想、それは
未来の己を使えば良い。
勝てないのなら勝てる己の可能性を手繰り寄せる事をすれば良い―――それが魔術であり、魔法だ。
様々なスキルを融合させ、統合させ、格納させ、自分だけの一つのスキルを生み出す。一々複数のスキルを管理する方が時間がかかるからこれが良い。何より専用の技術は自分のみ、という概念が生み出され存在率を補強する。《Detonate》は強くなるためのスキル。《夢幻召喚》と《英雄作成》をベースに自分の可能性を引き寄せ、《起源覚醒》でリソースを無限焼却して強化する。相手に勝てる自分に肉体を改造するような行い。
誰のものでもない、俺だけの力。鏡映しから生み出した真。俺自身という骨子。
両手剣を後ろに流す様に構えながら、正面のアサシンを見た。この狭い空間に押し込まれてもほとんどダメージらしいものは見えない。油断なく、ナイフを逆手に握ったまま、徐々にだが霧を生み出しながら此方を待ち構えるのが見えた。その姿が今までになくクリアに見えた。両手で剣の柄を掴みながら、
床を強く踏んだ。そのステップに火の粉が舞い、炎がまた新しく地下室に滾る、それによって霧が焼かれ、その中に紛れようとするアサシンの姿が映し出された。その姿へと向かって頭を越えるように剣を振り下ろす様に踏み込み、落とした。敏捷が此方を遥かに超えるアサシンがそれを横へと避けながら踏み込み、首を落としに来る。敏捷という切っ先を制する為のステータスで敗北している以上、絶対にアサシンのカウンターに対しては対応できない、
―――筈であった。
「だが
そこら辺の経験は不足していたからこそアサシンとは戦えず、どんな英霊と戦っても敗北するだろう。だからこそその不足を補うためのスキルを生み出した。
振り抜いた姿勢から体を更に落としながら剣の腹をズラし、勢いを止めないで流しながら威力の流す方向をズラし、左手をフリーにする。刃は振りぬかれた状態で加速を得て踊る様に動く。左腕はフリーハンドの状態で迫ってくるアサシンの刃を、
平手ではたく。
「!?」
これがレ・ロイと戦っていた時に最も欠けていたもの、経験と総合技術になる。なんとなく、ではなく総合的な経験から何をすればいいのかを判断する能力。どうやって体を動かせばよいのかを判断すればいいかの能力。そしてそれを正しく無駄なく運用するだけの能力。
それが今は見えていた。完全な覚醒ではなく、魔法の領域、その切れ端を掴んでいるだけの状態。魔道元帥の様に無尽エーテル砲を放てるわけでもないし、世界を渡れる訳でもない。だが今、この状況においては十分すぎるものだった。やる事は見えている。
その小さな体で素早い動きを利用できない戦いを押し込めばよい。
漸く―――本当の意味でレ・ロイの剣術を生かしきれる。
アサシンの接近に対して更に詰め寄りながら両手剣を刀に変える。鞘を左手に、抜身の刀を右手に。零距離から遍在しながら斬撃を放てば、斬撃と姿が違う方向へと分裂する様に分け身を行い、半透明な斬撃がアサシンへ四方から同時に襲い掛かる。接近を行っていたアサシンが一瞬で逃れる為に後ろへと向かって飛びのいた。その瞬間を狙って刀を剣へと戻し、相手距離を薙ぎ払う様に剣を振るった。
地下室の逃げ場のない空間に熱風と炎の波が出現し、アサシンの逃げ場を封じるように、その速度を殺して追いつめる。強制的な耐久勝負へと。それに合わせアサシンが防御を固めるように両手を交差させるのが見える。再び刀へと武器を戻しながら一気に踏み込んで―――炎の壁を突き破ってアサシンの前へと到達する。放たれる鞘を持ち上げてからの振り下ろし、それと同時に斬撃が左右へと遍在と共に抜けた。
漸く、まともなダメージがアサシンに刺さった。傷口が開かれ、幼い体に斬撃が入り、勢いよく出血しながら切り口から炎が侵入する。アサシンというサーヴァントの体内へと炎が入り込み、その体を内部から焼き始めた。
「ああぁぁぁああぁ、おかあ、さん―――!」
「助けを求めるぐらいなら最初からやるなよ。気持ち悪い」
直後、アサシンが全力で炎を突き破って、出口へと向かって逃亡しようとした。それに合わせて腰裏の銃を手元へと転送し、引き金を引いた。吐き出されるのは血液を金属と混ぜ込んで作った軽起源弾―――にレティの《起源覚醒》を乗せた物。一瞬で吐き出された弾丸は起源の炎となって僅かな出口から逃亡しようとしたアサシンの太ももに突き刺さり、その足を吹き飛ばした。片足を失って更に出血をひどくしながら、絶叫と涙がアサシンから漏れ出る。
「泣くなよ……お前が殺した相手はもっと苦しんだし、俺もクソ痛かったんだぞ」
銃をベルトに戻しながら歩いて片足のアサシンへと近づき、這って逃げようとするその無事な片足を掴んで引っ張った。床に爪を突き立てて逃亡しようとするその姿は―――あまりにも哀れで、ただの子供にしか見えなかった。
だけど違う。
こいつは殺人鬼だ。
「殺人鬼、ジャック・ザ・リッパー。年貢の納め時だ。罪には罰を―――なんて殊勝な事を俺がいう訳ないだろこのクソガキ! お前のせいで内臓を焼く羽目になったんだよ!今もクソ痛ぇ、どうしてくれるんだよ……いや、教えてやるよ! 体を内側から解体され、焼かれるって事の痛みをな!」
笑いながらジャックの体を壁に投げつけて叩きつけ、そのままレティを槍の形にしてジャックに投げつけた。壁に叩きつけられたレティがジャックの肩に突き刺さり、その動きをピン刺しにして止めた。そのまま体内に侵入した炎はジャックの疑似神経を焼き焦がし、動きを完全に殺して封じ込める。
「や、だ、おかあさん、おかあさんおかあ―――」
「後悔するなら俺に火を付けたお前自身を呪え。ガキであろうと敵なら―――」
防御も出来ないジャックの腹に目がけて手を叩き込んだ。指が腹を貫通し、そのまま内臓に突き刺さり、子宮を掴んで容赦する事無く引き抜いた。それをそのまま、レティの炎を叩き込んで内側から一気に燃焼させる。苦しみは一瞬。それが終わった直後にはジャック・ザ・リッパーというサーヴァントは内外から完全に燃焼され、苦しみと共に消滅していた。
もはやジャックの霊核は跡形もなく消し飛び、その存在の欠片だった魔力だけが残留している。それに手を伸ばして、吸収し、リソースへと変換させる―――まだ戦いは終わっていない。自分を強化する為のリソースとして必要なのだ。貪るように取り込み、肉体の強化を図る。先ほどまでの戦いを考えて……速力、敏捷の強化を行い、ジャックが死んだ場所から視線を外し、背を向ける。
口の中に溜まった唾を血と一緒に混ぜて吐き出しながら、上へと繋がる扉を蹴り飛ばす。
頭がガンガンと痛みを訴えてくる。突然の成長と覚醒に肉体の方がまだ追いつかない。その上にジャックとの連戦によるダメージがまだ体から抜けきっていないのもある。槍だったレティが少女の姿になり、横までやってくる。覗き込む視線は此方を心配するようであり―――前よりも少しだけ、肉体も中身も成長している様な、そんな気をさせる。レティの頭を軽く撫でる。
「まだ大丈夫だ。まだこれぐらいじゃあ死なない。レ・ロイの時のがもっと酷かったし」
笑顔ではなく、不安そうな表情をレティは浮かべていた。単一の感情しか見せていなかった彼女がなぜこうなったのか―――此方が覚醒を経た影響だろうか? そんな事を考えながらレティを再び剣へと戻し、地下室を出た。
炎は既に地下室から家全体へと広がっていた。燃える家屋の中、もうしばらくすればここが焼け落ちて、この外へと強制的に飛び出す必要が出てくるだろうというのを自覚していた。そうなった場合、アーチャーが狙撃してくるだろう。或いはアサシンが落ちたのを察して逃げているだろうか? どちらにしろ、考える時間は短い。
ここで逃げるか、それともアーチャーを狙うか。
……いや、ダメだ。ここでアーチャーは絶対に殺さなくてはならない。なぜならアーチャーの正体は不明。どんな相手なのか、その真名さえも解らない状態だ。そんな状態でアーチャーを逃がせば、どこでヘッドショットされるか解ったものじゃない。
アーチャーは、ここで、殺さなくてはならない。絶対に。何が何でも。
何をしてでも。
絶対に、燃やす。
俺の命を狙ったクソをここで殺さなくてはならない。相手が男であろうがババアであろうがガキだろうが女だろうが関係ない。どんな理由があるかだなんて興味もない。俺の敵になった。俺の命を狙った。ならぶち殺さなくてはならない。じゃないと
自分自身の為に殺す。
殺さなくてはならない。絶対に。跡形もなく。
燃える家の中に戻った所で、家の裏手の壁を破壊して外へと飛び出し、近くの壁を蹴って一気に跳躍し、燃え盛る家の上に着地した。夜中、どこかから人の声が聞こえる。燃え盛る家を見て、消防車でも呼んだのかもしれない。だがそれを気にすることなく屋根の上から夜のロンドンを見た。寝静まる時間、大きな騒動でもなければ人々は眠ったまま、何が起きているのかを知らないだろう。時計塔のお膝元、多少の騒ぎがあっても揉み消せる場所だ。遠慮はいらない。
思考した次の瞬間、闇に紛れて黒塗りの矢が飛翔してきた。それを迷う事無く剣で切り払い、燃やし尽くした。続けて連続で放たれてくる矢を切り落とす―――が、矢は一方向ではなく、正面の次には横から飛んできた。まるで飛翔の途中で直角に折れ曲がったかのような複雑な軌道で放たれ、向かって来ていた。
まだ、自分の見える範囲に敵はいない。アーチャーは完全にこちらの視界範囲外、知覚範囲外から連続で狙撃を続けている。射手としては最も正しいスタイルだ。一方的に狙撃し続ける戦い方。
サーヴァントには疲労の概念がない、肉体がない体。流れる血液だって魔力を表現しているだけに過ぎない。故に生身の人間とサーヴァントが長期戦を行えば、ストレスと疲労で人間の方が先に参る。
故に、アーチャーとの戦いは素早く距離を詰めて、一瞬で潰す必要がある。だがこの場合、問題は相手の居場所が解らない事だ。とはいえ、アサシンとは違って《気配遮断》を使っている気配はない。という事は純粋に距離を開けて感知されない場所にいるというだけの事だ。
なら目をロンドン全域に広げれば良い。矢を切り払うのと同時に勢いよく空へと向かって飛び上がる。
「私は炎―――全てを焼き尽くし跡形もなく滅ぼす炎」
剣の炎を更に燃え上がらせ、両手剣から大剣へと姿を変更させる。邪魔をするように飛翔する矢を切り払い、炎を周囲に停滞させた。そのまま剣を掲げ、炎を一気に収束させる。町中でこれを使えば
ちょっと、明るい夜になるというだけだ。
「括目せよ、これぞ星の見た終わりの夢」
モードを対人から対城へと切り替える。燃え盛る炎がそのまま天へと向かって伸びて行く。本来であればそのまま振り下ろして、正面に見える対城規模範囲を消し飛ばすのが運用法ではあるが、この武器は、剣は、そして
そして目となる。
「―――
360度、周辺全てを薙ぎ払う様に一回転しながら夜空にレティを広げた。夜空を一瞬で覆いつくしたレティの炎はロンドンから夜空を奪った。元々対神話、対歴史用宝具とも呼べるこの宝具は対人規模に抑え込まれていたが、その本来の用途は惑星規模での破界だ。即ちそれだけのエネルギーが魔力の問題さえ解決できれば発揮できる。無論、人間にそれだけの魔力を用意するのは不可能だ。
だけど《万華鏡》があるのならば、対城規模―――ロンドン全域を覆い、消し飛ばす程度であれば可能だ。元々、それが
破界の炎が一瞬で夜空を黄昏の色に染め上げた。
今、この時だけ、ロンドンは夜を忘れた。
「―――見つけた」
ロンドン上空を覆うレティの炎が感覚器官としての役割を果たす。ロンドン上空を完全に覆ったところで地上を見下ろし、炎から敵を探し―――目視する。それを共有された思考領域で知らされ、迷う事無く空を炎で起爆させて飛ばし、一気に体を炎が目撃した、黒いローブ姿の射手へと向かって飛び込ませる。
その距離は8キロ程。それを詰める為に一気に跳躍した。空から落ちて屋根の上に着地したところで再び超跳躍する。リソースを全て敏捷へとぶち込み、それで脚力を強化して一気に加速する。人間大のスペックを超越し、下級ながらもサーヴァント級の敏捷スペックへと肉体が到達する―――本格的にサーヴァント級の身体能力へと、肉体が突入し始めていた。
だが―――これでもまだ足りない。
「アサシンをぶっ殺せたのはアレがガキだったからだ」
空を燃やす炎によって闇が完全に焼き払われていた。闇に隠れる筈だった矢は今、完全に姿をさらされる状態で空を駆け、飛翔して命を狙ってくる。だがそれはもはや見える軌跡。《変容》で一番迎撃、切り払いのしやすい刀へとレティの形状を変容させ、迫ってくる矢を切り払いながら速度を落とすことなく、魔力を起爆剤として燃焼させ、自己を最高強化し、可能性を手繰り寄せる。
「もっと、力が要る」
対アサシン、ジャックの時は見事なかみ合いだと言えた。跳躍しながら思い出す。まるで欠けていたパズルピースがハメこまれる様な感覚だった。アレが必要だ。
自覚と覚醒。サーヴァントとは、英霊とは
つまり純粋な勝負で必要となるのは
同じ地点に到達するまで加速させて成長・覚醒すれば良い。
都合の良い事に
燃やす。魔力を、可能性を、能力を、人間性を、自分の中にあるなにかを。それを燃やして起爆させる事でエンジンを回す。そして自分の体の中に
前よりも強くなった可能性を手繰り寄せて―――進化すればよい。
それだけの作業だ。
「勝つ」
屋根を蹴る、加速する、燃焼させる、炎を散らす、切り払う―――様々なアクションを織り交ぜながら一気にロンドンの炎空を駆け抜けて行く。空に放ったレティの炎は弱まりつつあり、ロンドンそのものが異常現象に沸き立ち、眠りから覚めつつあった。夜明けが近い。だがそれを気にすることなく駆け抜けて行く。最低限の認識阻害だけを纏って、残りの全てのリソースを《Detonate》と今、保有するスキルを融合させて生み出すもう一つの新しい形へと注ぐ。自分だけの武器を生み出す為に。
その中、残り2キロという距離で矢が更に加速し、凶悪化し始める。
今では弾丸の様な矢雨がガトリングの様な勢いで熱線となって降り注いでくる。一発でも命中すればおそらくこの礼装では耐えきれないであろう、レティに匹敵するだけの熱量を熱線からは感じていた。暴力的な熱のレティに対し、もっと統率された、神性な気配の熱。ただ、食らえば致命的なのは間違いがなかった。故に早く、もっと早く。そして確実に。
勝てる可能性を他の世界から引き寄せる。
それが第二魔法の基本的な戦い方。
まだ、まだ切れ端を掴んだだけだが―――それでも、その副産物が生み出す膨大な恩恵はここにある。
可能性を引き出す事。成長と促進。無限の魔力供給。進化の追及。その全ては所詮第二魔法にとっては
覚醒させる。
「
食いしばりながら更に加速する。見える。自分の死ぬという未来の可能性が。《千里眼》を通して次のアクションが、どれが命中するかというのが見えてくる。屋根に着地する瞬間に当たる様に設置された熱矢が、回避した先にぶつかる様に放たれ設置されたのが、そもそも逃げられない速度で放たれた矢が。それらの可能性が見える。そしてそれに追いつくために魔力を燃やし、屋根を踏まず、最速、最低限の動作で切り払う。炎と熱が接触、爆裂の花が連続で夜空に咲く。
高速の移動と共に発生する連続の迎撃動作が空に線の形に連続で爆発を産んで行き、爆音を響かせながら道を形作る。
早く、もっと早く―――敵の所へと。
殺すために。燃やすために。映す為に。破界する為に。
もっと、力を。
貪欲に貪るように可能性を飲み込んで行き、逃亡するローブの射手に追いつこうと体を動かす。漸く見えてくるその姿は此方よりも早く、余裕をもって逃亡に移れている。握っている弓は巨大で、人間の筋力で引けるようなものには見えない。魔力は同じぐらい―――と言っても無限供給状態の此方に匹敵するだけのリソースを保有しており、感じられる存在強度は遥かにこちらを上回っている。
全要素で敗北している。だったら話は簡単だ。
勝てる俺の可能性を用意すれば良い。そして俺に勝てない相手にすれば良い。それだけのことだった。相手が強いのなら俺よりも弱くなれば良い。その認識が意識を切り替え、情報の更新を行う。彼我の距離は相手の逃亡によって2.5キロへと開いた。
相手の方が能力が上回っているから当然だ。故に空で炎を爆破させて踏み飛ばしながら、
―――アーチャーの背後へと出現した。
「《F:Memories》」
魔術による転移の完了によりアーチャーの背後へと出るのと同時にレティは両手剣へ、空いた片手でトランプを抜いて振るっていた。だがトランプの絵柄は覚醒に引き摺られる様に変質しており―――その絵柄は槍兵の姿を描いていた。片手で握り潰しながら焼却するのと同時に、ジャックに匹敵、或いは超える敏捷性を保有していたアーチャーの速度が一瞬で此方と同等、或いはソレ以下の領域に落とされた。
そして場所は都合よくロンドン郊外―――家屋のないエリアだった。
「
「梵天よ」
零距離から放たれた破界の炎と、そしてアーチャーの宝具らしき一撃が一瞬で衝突した。凄まじい熱量超爆発が間に発生し、生み出された熱と破壊力はそのままお互いに横へと逸れて大地にクレバスを生み出しながら両方向に炎の壁を夜空まで伸ばした。空を覆う炎が消えた瞬間の出来事である為、再びロンドンは夜を失う事となった。
「
「加護を」
再び供給の終わらないリソースから破界の杖による一撃が放たれ、アーチャーがそれを零距離から迎撃した。恐ろしい事実に、その弓による一撃には宝具としての宣言が存在しない―――つまりは宝具ではない、生前獲得した技術、あるいは宝具化されていない奥義の類だった。いや、梵天よ、という言葉は聞こえた。それで大体の国は絞れた。だがそれ以上詮索する事に思考を割くだけの余裕はない。
燃焼し、燃焼させ、両手剣を振るう。
対城と対城級の砲撃が衝突する。もはや互いに一歩も下がる事なんてできなかった。手元がわずかでも狂えば一瞬で獄炎に飲み込まれる連打し続けるだけの簡単なチキンレースの中、女の声がする。
「……早すぎます」
一切動きを停止する事無くアーチャーは呟いた。動きによどみはなく、歴戦の武人である事を証明していた。だがその小柄な体格と声は、ローブの下に隠れる姿が女であるという事を証明していた。
「
「……あ゛?」
炎と炎が衝突し、お互いの間に亀裂を生む。そこに見えない大穴を大地に生み出しながら、互いに大きく後ろへと飛びのいて、距離を作った。レティを両手剣の形状で構えつつ、正面、片手で大弓を握ったアーチャーを見た。
「どういう事だテメェ」
「いえ、キャスターの予知ではそもそもライダーが見えているはずでした。その時点で流れが変わっていました」
「おい、人の話を聞け」
「となりますと―――」
話を聞かない。であるなら、遠慮する必要はない。情報は会話するから生み出されるものだ。今度は前よりも早く宝具をぶち込む。一発命中さえすれば致命傷だ―――ジャックみたいに、当たりさえすればそれが致命傷に発展する。故に一発、肌に触れるだけで良い。魔力を叩き込みながら踏み込み、上段からレティを振り下ろす。同時に《F:Memories》を発動させ、相手に対応させる為の敏捷ステータスを除外する。
勝負は二撃目―――相手が一発目を相殺してからになる。
「……私は用無し、です、ね」
「は?」
―――それをアーチャーは避ける事もなく受け入れた。
世界を滅ぼす炎、それに対して迎撃をする訳でもなく、真正面から一瞬で呑み込まれた。その一瞬だけ、ローブの下に隠された口元が何らかの言葉を生み出そうとしたのが見えたが、それが音になるよりも早く酸素が燃焼し、その空間諸共全てを焼き滅ぼした。ロンドンの外へと向けて一直線に走る炎は大地を焦がさずに液状化からの蒸発までをノータイムで行い、まるでスプーンで掬ったかのような綺麗な破壊痕をまっすぐ、数キロ先まであらゆる物質を蒸発させながら刻んだ。
振り下ろした後で、そこにはアーチャーの姿は欠片もなく、殺害に成功した為の魔力だけが残されていた。
「……は? いやいやいや、何だよそれ。困らせるだけ困らせて用事が済んだらすぐに死ぬって―――」
ありかよ、そんなの、と今まで滾らせていた闘志が全て霧散して行く。ここまで燃え上がらせて、火を付けた所で一気に肩透かしを貰ったようなもんだった。ないだろ、これは、と両手をだらり、と落としながら息を吐く。アーチャーを殺害した分で自己強化を図れるのはいいのだが、
「納得できねーわ……」
ガンガン覚醒を繰り返して力を引き出して、それでここは拮抗しつつぶっ飛ばすシーンだろう、とは思うが、どこかにある声が世の中、そんなに甘くないぞ鏡司マン……と、囁いてる気がした。
「……覚醒が早すぎる、か」
燃え盛るロンドン郊外で、レティを大地に突き刺しながら空いた手で頭を掻く。どうにも、アーチャーはレ・ロイやジャックとは違う感じがした。最終的に一度も宝具を使わなかったし、その真名を確認する事だって出来なかった。読み取れたのは《千里眼》、そして生身である以上は習得しても無駄な《単独行動》のスキルだった。流石にそれだけでは正体は絞れ込めない……地域は解っていても。
あの国、弓なんて標準装備だし。
というか英雄の類は標準で弓がEXランクとかだしあそこは。
「……なんかこれ、調べなきゃいけない流れだよな」
何故襲われるのか、狙われるのか、相手の目的とか。そもそも最初の空港の襲撃にしたってそうだ。不明瞭なところが多すぎる。なんか、ただ聖杯戦争をしている、という感じではない気がする。勘弁してほしい、ただの魔術師であって探偵じゃないのだ。
はぁ、と溜息を吐いて魔術回路を切る。途端に凄まじい疲労が体に襲い掛かってくる。本気で戦わなかったアーチャー、どこか踊らされていたアサシン、問答無用で殺しに来ていたセイバー、そして背後で何かを知るキャスター。
どうやら、一筋縄で終わらないようだが―――その前に、
「この惨状、どうしよう」
焼野原と化したロンドン郊外。魔法でどうにかならないだろうか、そう思いつつ逃げる準備を始めた。
シナリオ2をRTA疾走した感じ。開幕2連ファンブルによるライダー喪失、そこから始まる戦闘敗北、そして覚醒判定をクリティカルし、次の判定でも連続で勝利。本当ならアーチャーを前に1回撤退して後日仕切り直す予定がそのまま討伐完了に。
という訳でリザルト
・アサシンとアーチャー分の成長点合計8点獲得
・シナリオクリアで4点獲得(短期クリアボーナス)
・借金が増えた
・保有していたスキルのほとんどを消費して最終スキルを二つ作成
・レティとの融合/浸食率の向上
https://www.evernote.com/shard/s702/sh/bf4af59d-b4d7-4011-b9a8-8d32c13320de/bce1cded751f709fb9422869091c795d
そして蒼桜氏がキョウジ兄貴姉貴を描いてくれました。デフォルメってなんか愛嬌あるよね。
また読んでFate
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