※この作品はR-18です。

Kaleid/Burn Out   作:てんぞー

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EXシナリオ
一の界


 ハンマーで殴られたような衝撃だった。しばらくは眩暈が続き、そして瞬きをしながら徐々に、徐々に自分の末端の神経に感覚が戻って行く。それは自己という存在を明確に自覚する事で自分という存在を完全に確立する方法だった。つまり、自分という存在がその世界には存在するのだ、という事を証明するプロセスでもある。普通の魔術師にはそんな事は出来ないだろう。だが出来るのだ、

 

 魔法使いなら。

 

 言い換えればこれは魔法使いE-。本当に最低限の魔法に届いただけの状態。その最後のプッシュをゼルレッチが行った。そのおかげで魔法と言う領域についに、踏み込むことに成功したのだ。問題は()()()()()()()()()()()()()という点だった。ゼルレッチは魔法使いになれば自分の使う魔法が一体どれなのか、すぐに解ると言っていた。それは直感的で本能的なものだそうだ。だから俺も、自分の魔法がなんなのかが解る筈なのに、未だにその正体が掴めなかった。

 

 だとしたら、実はまだ至っていないのか?

 

 とはいえ、体には魔術とは違う法則が巡っているのを感じる。このロジックの通じないむちゃくちゃな力の覚醒―――これこそが魔法だと思っている。そしてその力を感じつつ、目を開ければ空が見えた。澄み渡る様な冬の空だ。そしてそれを見てうん? と首を傾げた。

 

「……あれ? なんで空がこんなに近いんだ?」

 

 現実逃避したくてそんな事を呟きながら凄まじいまでの風を体に受けていた。空を見上げるように体が下から来る風を受けていた。つまり言葉として表現するのなら、

 

 落ちていた。

 

 空から。

 

「ボーイミーツガールの基本的なオープニング……となるアレか、俺が攻略されるのか? 男に? ないわー。まだバイブとディルドで遊んでないんだぞ! いや、そんな馬鹿な事を話している場合じゃないな、これ」

 

 高所落下したら人は死ぬ。とてもシンプルな事であった。いや、そんな事を考えている場合ではない。

 

「は、いや、え、なにこれ? なんで俺空から落ちてるんだ!?」

 

 その困惑と疑問が一瞬で脳を満たした。なんで落下しているんだ、と。先ほどまでゼルレッチの執務室で《千里眼》の習熟を行っていた筈なのに、いきなりこんな空へと飛ばされるとは思いもしなかった。いや、ゼルレッチではない。それにしては魔力そのものも、魔法も感じ取れなかったからだ。とはいえ、こうやって空に投げ出されているのは事実だ。どうしたもんだこれ。

 

「なぁ、レティ」

 

「……?」

 

 試しにレティを呼び出してみればちゃんと姿が出現した。あ、良かった、と軽く息を吐きながらもレティが手元にあるという事は何らかの事態に対しても戦闘して応戦できるという事でもある。なければないもので対応するのだが、それはそれとして手元にレティがあるのは非常に頼りになり、心強くもあるのだ。実際、掠りさえすれば必殺する武器なんて凶悪以外の何物でもないのだ。だからこれは持っている武器の中でも一番優秀なもので、俺の半身的な存在でもある。

 

 ()()()()()()()()存在だ。

 

「っていや、考え事してる場合じゃねぇ―――! ひゃっほぉ―――! 地面だぁ―――!」

 

 レティを短剣にして口に咥えて両手をフリーにしたところで即席で魔法を使って、反動と衝撃を燃焼させる。そのまま事故死の確率を操作して燃焼させ、自分の身体能力を魔力任せに強化、着地に備えて華麗な姿を見せようとしたところで、

 

「あ、なんでこんなところにお城―――」

 

 足元にお城があったのに気付かず、そのまま屋根を貫通して突っ込んだ。とはいえアサシン、アーチャー、セイバーとの戦いを通して比較的に経験を取得した今、それに即座に対応できる程度には体が動く。突撃する城の屋根にそのまま勢いを殺すのは難しそうなので一瞬で刀を振るって下へと通じる道を切り開き、そこに落下しながら突き抜けて数階突き抜けて一気にグラウンドフロアまで落下する事に成功する。

 

「ふぅ! これがヒーロー着地! 膝をダメにするってデップ―が言ってたな!」

 

 まぁ、それはどうでもいいのだ。いや、どうでも良くはないのだが。人間としては結構高い耐久力を手にしているつもりではあるが、それでも無理をするとぽっくり逝く程度の耐久でしかない。今の着地、結構膝にじーん、と来たのでもう二度とやらないぞ、と誓った。というか普通に転移で着地すればよかったじゃねぇか、と激しく後悔する。なんで落ちている間に思いつかなかったのだ。

 

「……で、ここどこ?」

 

 鞘を握ったまま腕を組み、周囲へと視線を向けた。天井を切り裂いてぶち抜いてしまった為にやや埃と瓦礫によって汚れてしまっているが、着地した場所は玄関ホールだった。豪華に飾られており、自分が汚した場所以外は清潔に保たれている。生活感のなさを感じるが、それとは別に常に掃除されている様な気真面目さを感じる場所だった。エーデルフェルトの優雅ながらも活気を感じる屋敷とは別の感じだ。

 

「えーと……マジでどこだ」

 

 息を吐けばそれが白く染まる。つまりそれはここが冬である事を証明するのだが―――イギリスに居た頃は決して冬ではなかったのだ。季節がおかしい。その上でなんでこんな自分も知らぬ場所にいるのだろうか、という疑問が沸き上がってくる。

 

「Ah……とりあえずお邪魔しましたー」

 

 家主が出てくる前にさっさと退散しよう。そう思った瞬間、足音が聞こえた。

 

「あら、もう帰ってしまうなんて意地悪ね、ミス」

 

 屋敷の中に響く声に足を止め、振り返った。振り返り見たのは長大な赤いカーペットの敷かれた階段の上に立つ一人の少女の姿だった。雪の様に白い髪に色素の薄い肌、そして紅玉の様な赤い瞳はまるで精巧な作り物の様な姿をした少女の姿で、その特有の気配は人間よりもっと純粋なものを思わせる。

 

 ホムンクルス―――にしてはどこか、人間らしさを感じるから断定できないが、それに似たものを感じる。どこかズレているというか、どこか壊れているというか。だが同時にその中から感じられる魔力量は今まで見てきた存在を遥かに凌駕している。

 

 ゼルレッチクラス―――つまりは実質的に無限の魔力を保有しているレベルの猛りを感じる。

 

 なんで最近エンカウントするロリっ子はどこか全部怖いんだろうか? レティ然り、ジャック然り、これ然り。それはともあれ、間違いなく戦いたくない類の相手だ。どこからか感じる視線は殺意と闘気に満ちている。ここまで敵意が存在しないのに純粋な殺意と闘気で満ち溢れている視線も珍しい。ただそれは律されている、或いは手綱を握られている様な殺意だ。

 

 ……どっからか、狙われている。

 

「いやぁ、天井の事は済まない。とはいえ、いいリフォームになったとは思わない? ほら、上を見たらいつでも冬の青空が見えるし。これはこれで新しい……建築……には……見えない?」

 

「……」

 

 その言葉に少女は笑顔でニコリ、と笑みを浮かべ、

 

「やっちゃえ()()()()()()

 

 言葉と共に壁が粉砕された。

 

「■■■■―――!!」

 

 戦車。一言でその暴力を表現するならそれに尽きる。一度動き出したらそのエンジンを握る存在が言葉にしない限り停止しない。英雄でありながら狂気にいる。それが両立している狂気の戦士。鉛色の肌は見る者の心臓を恐怖に染め上げ、その鍛えられた肉体はどうしようもない肉体的な差を絶望と共に脳に叩き込まれる。

 

 大英雄。

 

 狂戦士として呼び出されたこと以外はほぼ完ぺきと言える大英雄の顕現だった。魔法の領域に入った《千里眼》は一瞬で目視範囲に入ったバーサーカーの姿を見て、その絶望的なスペック差を見抜いた。【幸運】を抜いて全てのステータスがAランクに到達しているというどうしようもない事実。唯一勝っている点は魔力ぐらいだろう。そしてそれ以外に関しては《変容》からの合算上昇ボーナスを適応しても届かない。

 

 死―――なない。

 

「Access」

 

 此方を遥かに超える敏捷を持ちながらも此方が先手を取れたのは最近まで奇襲され続ける戦闘を連続で経験していたからに過ぎない―――だけではなく、《千里眼(魔法)》で攻撃の予兆ともいえるものを事前に察知していたことに過ぎない。故に突然出現した鉛色の巨人、バーサーカー相手に即座に動き、反応できた。

 

 やる事はシンプル。

 

 ()()()()()だ。

 

 此方へと向かってくるバーサーカーではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。炎の斬撃が少女のいる空間に発生する。走るのではない。彼女のいる空間を指定して発生する炎の斬撃だ。結果のみをその場所に転移させている様なものだ。そしてそれをおそらく一瞬で理解したバーサーカーが此方を無視して少女を一瞬で持ち上げ、飛び退いた。

 

 階段を粉砕しながら飛び上がった大英雄の姿。その片手に握られる石の様な斧剣。あんなもので殴られたら一瞬でミンチになる。故に大英雄が跳躍し、階段の上から2階のバルコニーへと飛び移る間に大きくバックステップを取り、刀を両手剣へと変化させた。

 

「ヘイ、リトルプリンセス。非は認めるけどいきなりジェノサイドモードは少しオイタが過ぎるんじゃないか? パパとママからは他人には優しくしろ、と学ばなかったのか?」

 

「へぇ……なら淑女っていきなり屋根を突き破って領域に飛び込んでくる存在の事を言うのかな? どちらにしろ、聖杯戦争中のアインツベルンに飛び込んできたという事は死にたいって事なんでしょ? いいよ、お兄ちゃんに会いに行くのも我慢しててストレスの限界だったし……ここで叩き潰して全部吐き出させてもらうね」

 

「話を聞かねぇクソロリだなこいつ」

 

 頭の中が殺すという殺意でいっぱいになっている。初対面の時点で失敗したのが原因か、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だろう。聖杯戦争、アインツベルンと中々興味深いキーワードを口にしているだけそれが口惜しいが―――今はそれを嘆いている場合ではない。

 

「Fuck、やるしかねぇか。頼んだぜレティ。一発強いのをぶちかましてどうにか切り抜ける」

 

 両手剣の表面を炎が撫でた。レティが反応した。それを心強く思いながら両手で握り剣を後ろへと引き、左半身を前にするように構えた。ポケットの中には最近吸い始めた煙草のパックが入っている。魔法でそれを口元に呼び寄せながら魔術で火を付け、先端に火を灯した。

 

 上から見下ろす大英雄の姿を前に《千里眼(魔法)》でその能力を確認しながら予測を立てる。相手は間違いなく大英雄だ。ここがどの土地かはわからないが、サーヴァントという括りで【幸運】以外のステータスがAオーバーという事はそれだけ偉大で強力な英雄であったという事を証明している。そのステータスだけを見るならまず間違いなくオールラウンダーだろう。だけど観察すればそうではないのが解る。

 

 鍛え上げられた褐色肌と登場の時に破壊を見ればパワーファイターであるのが一目瞭然だ。高い【耐久】、【敏捷】、そして【筋力】。この三つのステータスに合わせた超接近戦からのごり押しがおそらく一番強く、そしてメインの戦法になるだろうと思う。少なくとも【魔力】ステータスはほとんど死んでいるだろう。バーサーカーであり、吠える様に言葉を放つレベルは言語障害だけではなく理性をほぼ全て失っている状態だ。そして魔術の行使には理性がどう足掻いても必要なのだ。故にこの状態では魔術を使用出来ない。つまり相手は接近戦を主体にしてくるだろうと予測できる。

 

 あのマスターの少女がどう動くかはわからないが、魔術師である以上は怖くない。サーヴァント級であればまた恐ろしかっただろうが、魔術と魔法では存在としての格が違う。その為、彼女が魔術で援護を行ったとしても、此方が【魔力】で劣っていてもそこまで恐ろしくはない―――相手のバーサーカー諸共、この要素だけは上回って勝利出来る。

 

 恐ろしいのはその【魔力】を使える《魔力放出》の様なスキルを保有している場合だ。保有されている場合、おそらく純粋な魔力勝負では此方の分が悪くなる為、最優先排除対象だろう。《Detonate》で誤魔化せるのにも限界はあるし、今の所《F:Memories》で焼却できるステータスは一つだけになる。それ以上は成長の為の(スキル)が足りない。

 

「あー、怖い怖い。考える暇さえないな」

 

 火があると落ち着くな。煙草の先に灯る火を見てそう思考し―――大英雄の姿が2階を粉砕しながら消えた。直後、転移を行いながら《千里眼》で先読みした展開に沿って一瞬で移動を完了させ、先ほどまでいた位置を薙ぎ払うバーサーカーの背後へと出現する。

 

「その一番厄介な速力には燃え尽きて貰おうか!」

 

「させる訳ないでしょう!」

 

 床を突き破って炎で編まれた骨の腕が出現し、それがバーサーカーの足を掴もうとする。それを守る様に発生した魔術を―――魔法が貫通し、バーサーカーに触れた。筋力と耐久に任せた動きで強引にそれをバーサーカーが引き剥がすも、接触した時点で既にその速力は体から失われている。

 

 故に踏み込む。両手剣を握りながら踏み込み、バーサーカーよりも早い剣速で攻撃を叩き込む。それに素早く反応するバーサーカーの動きは此方の動きを先読みしている、故にその大きな胴体を薙ぎ払う様に放たれた両手剣は斧剣によって防がれ、火花を散らしながら凄まじい衝撃を手首に通す。

 

―――あと3合もやりあったら手が動かなくなる……!

 

 それほどまでに【筋力】Aというのは化け物的な力を持っていた。此方が片手で林檎を易々と握り潰せるなら、このバーサーカーはダイヤモンドでも片手で握り潰すだろう。そういうレベルの違いだ。《変容》と宝具補正で一時的な筋力の強化が無かったらまず間違いなく手首が千切れていた。まともに切り合ってはならない。

 

 弾かれた剣を振り抜きながら、踏み込み、

 

 背後に出る。無論、転移だ。速力を潰した今、完全に瞬間的な移動が行える転移による攻撃には対応しきれない。背後に出現したところで素早く横薙ぎに、確実に一撃を叩き込む速度で振るう。それをバーサーカーは前へと踏み出しながら這いつくばり、片手で地面を握り締めながら腕の一本で体を支え、それで()()()()()()()回避する。そのまま、速度を筋力で補うかのように体を筋力任せに加速して叩きつけてくる。

 

 的確に削れたところを長所で補ってくる。

 

「今まで戦ってきたどのサーヴァントとも格が違う……!」

 

 飛び上がって回避したところで石斧が狙ってくる。転移で横へと飛び込みながら反対側に遍在でもう一人の己を生み出し、一気に《変容》で双剣へと変形させたレティを振り抜く様に飛び込む。交差する様に駆け抜ける斬撃が炎のクロスを描きながら空間そのものを焼いて行く中、

 

 足元に斧剣を突き立てたバーサーカーが倒立する様に逆立ちし、両側からの斬撃を受け止めた。そしてそのまま、床を引き剥がす様に体が中空のまま、斧剣を一気に振り払った。

 

「バーサークしてるとか絶対嘘だろ」

 

 巻き上げられた床板などの衝撃を切り払う様に体の方向を強引に捻じ曲げつつ、視線をバーサーカーの瞳へと合わせた。そこには理性は感じられないが、明確な知性を感じる。狂化を行ったところで完全に奪えない染みついた経験と技術の賜物なのかもしれない。どちらにしろ、長引けば長引くだけ不利だ。

 

 なるべく速攻でケリをつけるのが上策だ。

 

 となると手札を一気に開示する以外ないだろう。素早く体を動かしながら見上げるバーサーカーの動きは鈍い。あくまでも筋力を利用した殴り飛ばすような動きで速度を稼いでいるからだ。だが概念的な敏捷能力は焼却し、此方で優位を掴んでいる。となると対応できない攻撃を一回、突き刺せばよい。

 

 一発通せば勝ちだ。

 

「Access―――《Detonate》

 

 手札を切る。魔力を燃焼させ、一時的に【筋力】を【魔力】で代替し、バーサーカーを相手に互角に演じられる能力に引き上げる。それを通して一気にバーサーカーへと向かって飛び込んだ。片手の剣でバーサーカーの斧剣とぶつかり合い、そのまま逆の剣を一気に振るう。

 

 一閃―――短時間だけ匹敵する筋力の鬩ぎ合いに勝利し、炎が振るわれる。

 

 バーサーカーの横を抜けながら着地すれば、横一線に伸びた炎がまるで斬撃の様に一瞬だけ軌跡を生んで瞬いた。反応は一瞬だ。傷口を焼くのと同時に侵入したレティの炎が血管の血液も骨も肉も全てを焼き尽くして蒸発させる。その後には影も形も残さない。

 

「燃え尽きろ」

 

 口の端から煙を吐き出しながら呟くのと同時に背後で燃え上がる轟音が聞こえた。振り返れば全身が炎に包まれ、融解する体が見えた。短期決戦以外では間違いなく勝ち目がないな、と冷や汗を浮かばせたところで、

 

―――少女が全く焦っていないのが見えた。

 

「ふふふ、やるじゃないお姉さん。無礼で粗暴で乱暴だけど少しはやるようね」

 

「ヘイプリンセス、目上への喋り方は気を付けな。それよりもマッチョなボディガードが今地獄の責め苦を受けているんだから少しは焦ってもいいんだぜ?」

 

 此方のその言葉に2階から見下ろす少女はあら、と声を零した。

 

「何故かしら? 私のバーサーカーはまだまだ健在よ? 霊核を一回蒸発させた程度で満足されても困るわ」

 

「……は?」

 

 災厄の炎に包まれるバーサーカーの姿を見た。レティの生物を、存在を一切の容赦もなく焼き尽くす炎はバーサーカーの肉体を焼いている―――その内部から全てを蒸発させる筈だった。霊核さえも一瞬で消え去るほどの熱量の中で、バーサーカーは少しずつ、少しずつだがその姿を再生し始めていた。その景色に思わず口に咥えた煙草をぽろり、と落としてしまった。

 

「……なんじゃそりゃ」

 

「でも驚いたわ。まさか人の身でバーサーカーを―――ヘラクレスを一度に3回も殺すなんて。よほど良い武器を使っているのかしら? それとも神性に対する特攻能力持ち? まぁ、どちらにしろもう通じないけれどね」

 

「なんて英霊を呼び出してやがるんだこのロリっ子は」

 

 汗が背中を濡らす嫌な感触を感じつつも、ヘラクレスという名前を取得した瞬間、《千里眼》を通して相手サーヴァントの完全なる情報開示が行われた。そうやって見たヘラクレスの保有宝具を見て思わず吐き気を覚えた。

 

 十二の命。B以下の宝具無効。そして()()()()の取得。

 

 死因に対する耐性を取得する事で次回以降、同じ手段や原因によるダメージをほぼ無効化する宝具。そのステータスを含め、規格外の一言に尽きる。というか勝ち目が見えない。いや―――レティを対城モードで放てばバーサーカー・ヘラクレス諸共この少女と()()()()()()()事が出来る。だがこれは最終手段だ。振るった先に何があるのかが見えない、解らない今の状況では振るえない。対人モード以上の解放は()()調()()()()()()()のだから。

 

 つまり勝つためにはここでレティを対城モードで放てばよい。

 

 だがその結果、ここを中心点に街規模で更地になる。ロンドンで使ったときはアーチャーが迎撃したのと、郊外へと向かって放ったという点があったから使えた。だが外の様子を良く見えていなかった事から、今、この状況で放つ事も出来ない。

 

「ふふふ、どうやら絶望してきたようね? さ、それじゃあ死んでもらおうかしら? どこのだれかは解らないけど、ちょうど良い暇潰しだったわよ」

 

「―――■■■■!!!」

 

 燃えたままの状態でヘラクレスが再生を完了させた。未だにしつこくヘラクレスを焼いている炎はその肌を焦がし、徐々に溶かし始めているのが見える。レティそのものに備わった神性に対する終焉の概念が神性を保有するヘラクレスへと作用し、相手の宝具能力に軽減されながらも通じているのかもしれない。

 

 とはいえ、それが致命傷に届くようには見えない。炎に焼かれながらも狂戦士はしっかりと二本の足で立ち、そして武器を握り締めていた。

 

 手札を切った状態でこの結果なのだ―――絶対勝てない事を悟る。

 

 それと同時にヘラクレスが一気に飛び込んできた。封じた敏捷能力は既に一度死亡した事で回復していた。それに干渉する前にヘラクレスが此方へと到達するだろう。迎撃は間に合わない、そう知覚した時には双剣を杖へと変形させ、持てる魔力をほとんど全てつぎ込んだ。

 

 直後、真正面から斧剣が叩き込まれた。注ぎ込まれた魔力で一瞬で炎の障壁を生み出し、衝突と共にそれを爆発させた。だがそれで人外染みた一撃を相殺する事も出来ずに肉体は一気に叩き飛ばされる。

 

 城の入口へと向かって。

 

 そのまま停止する事無く扉に叩きつけられ、外へと飛び出す。殴り飛ばされた体は痛みを感じつつも真白の雪に衝突し大地に一回バウンドしながら軽く転がり、

 

 扉の向こう側から斧剣を振り上げながら跳びかかるヘラクレスの姿が見えた。しかし、

 

「三十六計逃げるに如かず―――!」

 

 ヘラクレスが跳びかかる間のわずかな時間、無防備を晒しても無事な時間となっていた。その瞬間に迷う事無く残された魔力を全部魔術回路へと叩き込み、

 

 全速力の魔法行使によって転移した。

 




・ヘラクレス殺害で経験点2点を獲得しました
・ヘラクレスのレーヴァテインによる殺害が不可になりました
・《勇猛》を取得しました。《Detonate》に統合されます
・???と??が大爆笑しているようです

 成長:魔力A+(6)→魔力A++(7) 2点消費

 あと4点で魔力のEX見えて来たなぁ、って感じで。ただ相変わらずワンパン即死状態な上に魔力判定以外ではほぼ敗北するから安定しないんだけど。完全な概念的なメタが来るとどうしようもない感じ。なお戦闘判定におけるスキルのそれぞれの役割。
 《Detonate》:勝利・有利ステで敗北ステを入れ替える
 《F:Memories》:相手のステ&スキルを1個除外
 《千里眼(魔法)》:戦闘時相手のステ公開、戦闘傾向が解る

 という感じで。システム自体はそれぞれのステータスを幾つか選択、スキルを適応しつつそれを比較しつつ最終的な勝利数で戦闘結果を出すというもの。この場合、ヘラクレスはでバフ耐性がないので普通に上記のスキルが通ります。なので、

 魔力vs魔力 勝利
 敏捷vs敏捷 勝利(《F:Memories》による除外化
 筋力vs耐久 勝利(《Detonate》による魔ステ再利用

 という形で勝利するけど、ヘラクレスは蘇生ある訳で、次回から疲労ペナ入った上で再戦という形で。なおヘラ君は《戦闘続行》の影響で疲労ペナルティが入らないので、必然的にすりつぶされるという事で……。

 ちなみに登場判定・着地判定・交渉判定でファンブルと失敗繰り返した結果がこれだよ。
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