杖の一振りによって空間が拡張された。
そこは流石第二魔法の使い手・ゼルレッチだとでも言うべきだろうか。半径100m程度の空間は半径数十キロメートルの空間へと一瞬で拡張された。空間の拡張やコントロール、操作に関しては完全に第二魔法の専売特許である。真似できなくもないが、解釈を挟む必要がある以上、第一魔法はそこらへんは不慣れだ。第一魔法の得意とするのは否定、つまり消去と破壊になる。操作や拡張、空間への干渉は特技ではないのだから、同じ事を真似しようとすれば手間が少しだけかかる。故に素直にそれがシングルアクションで行えるゼルレッチは凄いと言っても良い。
そんなゼルレッチを相手に片腕で相対していた。服装は何時もの姿。だが戦闘行動中にまで幻術を張るだけの余裕はないし、戦闘の動きに幻術の腕ではついて来れない為、結局は片腕に戻る。そして残された腕には武器ではなくカードが握られている―――サーヴァントのクラスが描かれたクラスカードだ。これが今の武器になる。レティは応じない為、使用する事が出来ない。そして自分も今はそれでよい。彼女に顔を合わせるだけの自信がない。だからカードを武器に、空間の拡張が終わったところで、
彼我の距離は数百メートル程度。
カードを掌の上で浮かべ、一気に握り潰した。
「まずは小手調べだ―――!」
握り潰すのと同時にゼルレッチを含めた周辺の空間が第一魔法によってその存在を否定されて消滅した。まるで光で上塗りされたかのようにゼルレッチがいた空間が無色に塗り潰された。世界から否定されたその存在は戦闘を行う前に除外され、そして消失する―――その前にゼルレッチの存在率が100%へと固定された。
否定による消去が存在の確定によって意味をなくした。
出現するのと同時にゼルレッチからのカウンターが飛んでくる。確率操作によって勝率を0%へと変動させながらそのまま、戦闘に関連する確率の数々を操作してくる。それに対して自分への干渉を否定する事で消去し、完全に環境と干渉から独立する事を完了させる。
お互い、相手が魔法使いとなると自分のやり方で干渉と干渉遮断が出来てくる―――不毛な争いになる。そう判断したら持っているクラスカードをぱらぱらと手放す様に大地へと落とし、それが燃え尽きながら大地の中へと沈んだ。合わせるように大地が隆起し、その下から焔の骸骨が大量に出現する。それは平行世界における
それに対してゼルレッチは動かない―――取り出すのは宝石剣。それを振るえば発生するのは無限射程の光の斬撃。光と言う概念に触れる以上物質が取れる最速の速度で斬撃が発生する。
「カレイドスコープ」
戦闘が始まって放たれた最初の言葉だった。だがそれが放たれるのと同時に宝石剣の斬撃は偏光した。プリズムを通したかの様に斬撃は分岐した。分岐した斬撃は押し寄せる津波の亡者に対して正面から一歩も動く事無く分岐しながら、その太さを分岐するたびに補充しながら迫った。まるで紙の様に亡者を切り裂きながら放たれた閃光は全方向へと展開されながら逃げ場を無くすように亡者を切り抜け此方へと迫ってくる。
相対する様に、カードを捨てた。燃え尽きる絵札はバーサーカーの絵を描いている。それと共に背後から巨大な腕が出現する。無数の亡者が燃え尽きながら組み合わさり、それが巨大な骸骨へと変貌し、その腕が光の斬撃を
「さて、これは耐えられるかのう」
そう言ってゼルレッチが指をパチン、と弾いた。突如空を闇が覆い、天から光を奪った。見上げれば平行世界から呼び出された巨大隕石が数百メートル上空の位置に呼び出されているのが見えた。
「滅茶苦茶だな……」
「なぁに、貴様程ではないさ。少なくとも破壊力や殺傷性では第一の方が上じゃろう」
「その代わりに応用力とかはそっちだけどな。正直コールメテオとか俺もやってみたい」
ぼやきながら自分の燃える屍を一瞬で組み上げて、それを巨大な塔へと変形させ、それを空から召喚して隕石の横っ面から叩きつけた。絡み合う亡者と炎が隕石を侵食し、対消滅を起こす様に空の中で消え去る。その瞬間、隕石の中に隠されていた術式が起動する。無限の平行世界から呼び寄せられる真エーテルを収束し、それを放つ無尽エーテル砲が空から拡張空間全体を薙ぎ払う様に、逃げ場もなく放たれた。カードをそれに合わせて振るって燃え尽きさせる。降り注ぐエーテルをそれで遮断否定し、安置を生み出す。そして同時にエーテル砲の範囲を否定によって縮小させる。
後はその直撃を否定し、術式を燃焼させて否定する。
「む」
だが術式とエーテル砲を否定しきれない―――出力で此方が劣っているのだ。魔力ランクで言えば此方も彼方もEXランク、お互いに互角―――かと思ったが、あの爺の場合、平行世界の自分の魔力を現在の自分の魔力に合算してそうだな、と思う。となるとそれに匹敵するだけの出力を、能力を発揮する必要があるだろう。
否定の概念でそれを行うには―――。
「こうするのがいいか」
「これで魔力も軽く2倍だ―――」
魔力によるごり押しで一気に干渉を続行、エーテル砲と術式を、否定して一気に消し飛ばす。そのまま落ちてくる隕石の破片を投げたカードの中へと封印して、それをゼルレッチの周辺へと再召喚して降り注がせる。ゼルレッチの至近で隕石が雨の様に爆裂しながら発生する。一瞬で舞い上がる埃と瓦礫の中にゼルレッチの姿が消失する。
……とはいえ、それでゼルレッチがダメージを受ける訳がない。指先でカードを浮かべ、それを回転させながら埃が晴れるのを待っていれば、傷どころか汚れ一つすらかかっていないゼルレッチの姿がそこに見えた。うーむ、あの爺をあそこから一歩でもいいから動かすのは中々に骨が折れるな、とその余裕そうな様子を見ていると思えた。
「干渉合戦に入るとお互いに魔法の使い手だから千日手に入りやすいんだよな」
「そうなってくるとお互いに魔法以外の手札が必要になってくる。無論、ワシにはこの肉体、そして魔術師としての研鑽がある。だが果たして貴様はどうだ」
「そこらへんは俺も解っている……とはいえ、簡単にあーだこーだ出来る訳でもないんだよ、爺」
「解っているなら良い、クソガキめ」
戦闘はその言葉で終了した。戦いの損害や被害を否定する事で消去し、そしてゼルレッチが魔法と魔術でその干渉範囲を広げる。魔法と魔法の合わせ技―――普通の魔術師が見れば絶頂しそうな光景を後始末の為に行使し、一瞬で場所を元の姿へと戻す。そうやって戻したところで溜息を吐きながらゼルレッチが此方を見た。場所の空間が元の広さへと戻ったため、ゼルレッチとは数メートルの距離しかない。
「なんで貴様は第一なんぞに目覚めるんだ……」
「お、俺のせいじゃないから……」
全部沙条愛歌って奴が悪いんだ。いや、だけど、まぁ、って声を零す。
「
「それに介入する為に貴様を魔法使いとして育て上げていたのにのぉ……」
グランドオーダー。この先発生する世界の危機、人理を取り戻すための戦い。その戦いに参戦するには一つの条件がある―――つまりはレイシフト適性だ。これが
千里眼でシナリオが視える今、その意味や行動の中身が良く解る。
とはいえ、それは沙条愛歌と言う上位者によって崩された。花の屑が接触する事で覚醒が数段階早まったまでのは良かった。だが愛歌の接触による魔法の方向性の固定化でまさかの第二魔法失敗というのはゼルレッチの誤算だった。上位存在である根源接続者相手に千里眼はあまり意味がない。だから唯一プロットを崩せる相手が偶発的にそれを崩してしまったのだ。
そりゃあゼルレッチも呆れる。
「とはいえ、
「ワシの後継者を育てるという意味もあったんじゃよ。……まぁ、ここに至っては失われた第一が再び蘇っただけでも喜ぶべきじゃろうな。破門は解かんけど」
「いや、庇護してよ。マジで。有象無象がほんと鬱陶しいから」
その言葉にゼルレッチが応えずにはっはっは、と笑い声を向けて来た。この爺、マジで一回ぶち殺してやろうか、と思いたくなる。まだ、この爺を殺すだけの実力がない。と言うよりは決定的な武器が足りていない。それを手にすれば1回か2回ぐらいはゼルレッチを殺せそうなんだけどなぁ、と、そう思いつつもはぁ、と溜息を吐く。それを見てゼルレッチが笑う。
「憂鬱そうじゃのう?」
「あぁ、割とな」
「ふむ……場所を変えるか」
言葉と共に風景が一瞬で変質し、ゼルレッチの執務室へと場所が変わる。ゼルレッチは自分の椅子へ、俺は適当に椅子を引っ張ってきて、そこに肘をつきながら座り、溜息を吐く。それを見て、ゼルレッチが言葉を贈る。
「……どう振る舞えば良いか解らんか?」
「うん……まぁ、正直千里眼を取得してから色々とあってな。視えている以上なんというか……」
「新鮮味に欠ける、か」
その言葉に頷く。千里眼がある以上、大体の事は予習した状態で挑んでいる様なもので酷く退屈なのだ。そう簡単に封印できるものでもないし、星と人理の未来を考えたら千里眼を手放す事も出来ない。それゆえに倦怠感が襲い掛かっていた。何をやっても既知感を感じる。そんな状態になっていた。全能とはきっと、全てを知っているのだから
千里を見通すだけでこれなら、
俺は
千里眼でさえ余分なのに。
「ふむ……なら破門した弟子に対してワシから一つ、先達としてアドバイスを送ろう」
ゼルレッチが言葉を紡ぐ。
「追求できる楽しみを見つけろ」
「追求できる楽しみ」
あぁ、とゼルレッチは零す。
「千里眼を手にし、超越者の視点を手に入れた時点で大まかな流れは視えてしまう。それゆえに我々は常に既知感との戦いが待っている―――だがそれは大河の流れを視る術だ。その底にある小石は視えない物でもある。それを見つめる楽しみを見出すのが良いじゃろうな。大局には影響せず、個人の趣味の範疇で収まる、千里眼には引っかからない
「大筋は視えてもどうでもいいことは視えない、か」
「あぁ、花の魔術師辺りはその流れそのものを視るのを楽しみにしている変わり種だが―――英雄王には会っていたな。アレを見ればわかるだろう? 全体ではなく個人の生きざまに楽しみを覚える。そうやって退屈を紛らわせておるのじゃよ」
「はぁーん……」
ゼルレッチはどうなんだ、と言葉を向ければ、
「ワシか? 適当に大筋に絡まない事件や弟子の育成をしておるよ。お前も、その何かを探せばよい。弟子の育成でも世界旅行でも、研究でもよければそうじゃな……前は女を口説いていたのじゃし、それでもいいんじゃないのか?」
あぁ、成程、とゼルレッチの言葉に頷く。
「確かに美味い飯を食べに行くってのを視ても、それを味わって経験している訳じゃない……視ているだけの状態だから視たとしても平気なのか。うん、ありがとう爺さん。少しだけ日常に希望を見い出せたよ」
となるとアレだ、と呟く。
世界を旅行感覚で歩くか、と思う。それで美味しい物を食べよう。
「そしてついでに可愛い子ちゃんも口説こう。出来ればベッドインアリの方向性で」
「その姿でもやるのか……」
ゼルレッチの言葉にいや、まぁ、と言葉を置く。
「解除するだけなら別にできるんだけどなぁ……ほら、俺ってば真名を常に晒している状態だし。だとしたら本当の姿を隠している方がまだ呪い対策になるし」
それになんだかんだで女の体の楽しみ方にハマった、とかは口に出来ない。いや、別に口にしていいのだけれど、その原因となったのは目の前の魔法使いだ。それを正面から言うのもアレの様に感じる。とはいえ、
第一魔法を使って服装の姿を変えれば男になったままスカートとかもないし、流石魔法だぜ。
ま、披露する相手は目下、同じ
なにせ、聖杯戦争はまだ終了してないのだから。
「……悩んだってしゃーないか。とりあえず女風呂に飛び込んでくるか」
「いろんな意味で突き抜けたな、貴様は」
「もうこうなっちまえば男か女なんて大した差でもないしな。元師匠は人間じゃないし」
或いは諦めと切り替えがついた、とも言える。自分の意思で出来るのなら怒る必要も焦る必要もない。それを楽しめばよいのだから。だからとりあえずは女風呂へと飛び込み、合法的に覗きをし、ついでに可愛い子の一人か二人をお持ち帰りしたい。そしてそれをカルデアで出会う美女英霊たちを口説く前哨戦とするのだ。
「そう、解った。俺の人生の目的は美女の英霊を口説く事と美味い飯を食べる事―――!」
「今千里眼ホットラインが大爆笑しておるが大丈夫か?」
おそらくはもうダメだ。部屋に戻れば半分レイプ目のロリっ子が待っているし。とはいえ、これも自分の選んだ選択だ。それを甘んじて受け入れ―――楽しむとしよう。もう善だとか悪だとか、そういうクソくだらない事を基準に考えるのは止める。ゼルレッチの言葉で吹っ切れた。
この千里眼、視えるのであれば利用しよう。
人理の焼却も好きにしてくれ、こっちも勝手に利用させて貰うから。カルデアと言うIFの坩堝であれば東西南北の美女が集まる筈だ。となるとお誘いが出来る相手だっているに違いない。その出会いの為に俺は人理焼却と戦うのだ―――。
使命感でも何でもなく、自分の欲望の為に。
それが俺という魔法使いの形になる。
・ゼルレッチに最後の修行を付けて貰った
・修行の成果で任意のステを二つ選び1上昇させる
【敏捷】C(3)→B(4) 【幸運】C(3)→B(4)
・第二魔法との戦いを通して《F:Memories》《N:Joker》が成長しました
・千里眼との付き合い方を覚えました
・愛歌、ゼルレッチとの接触で自己中心的な方向に性格が固定されます
・キョウジが前向きになりました、自重を完全に止めました
と言う訳で段々性格的部分、スタンスも固まって来た感じで。エロ入れたい入れたいと思いつつまったく入らない不思議。それよりも先に目玉抉ったり子宮引っこ抜いたりしてる。
なんでだろうね。もっと、こう、エロエロ……R18の意義とは……うごごご。