僕が目覚めた時、頬を優しく撫でる手。心配そうに覗き込んでくる瞳。そして優しく僕を呼ぶ声。
何で戻ってきちゃったんだろう。
何で……また辛いだけかもしれないこの場所に戻ってきちゃったんだろう。
どうして。どうしてそんなに優しく撫でるの? なんで優しく僕を呼ぶの? そんなことされたら僕亮輔兄ちゃんにだけは馬鹿なままだから勘違いしちゃうよ? 亮輔兄ちゃんも僕の事好きなんだって。
ゆっくりと涙が落ちる。それを優しく名前を呼んでた唇が
「大丈夫? 優夜」その唇は大事な人を呼ぶように優しく囁く。
「亮輔兄ちゃん? ここ何処? んと、なんでここに居るの? 」聞きたい事は山ほどある。
でも、今はまだ言っちゃいけないこと、口に出してしまえば全て壊れてしまう事も一杯あるのだ。
下手に口を開くわけにはいかない。
「ここはね、一緒に遊園地に遊びに来たんだよ。そして一緒に遊園地の近くのホテルにいるの。判った? 」優しく不安がらないように注意しながら言ってくれるのが言葉の節々に見える。
「ふーん。そっか。亮輔兄ちゃんと一緒なら何処でも良いや」ニッコリ微笑みながら夢心地のままの僕は告げる。
そこで僕の異変に気付いたのだろう。僕が亮輔兄ちゃんを呼ぶ時の呼び方が違う事を。
そっと僕は抱き起こされた。昨日までの僕なら嫌そうな顔しながら、それでも静かに耐えて居たはず。
(え? 僕一人で起きれるよ! でも、夢ならいいよね? 抱きついても夢なら誰も怒らないよね? )静かに亮輔兄ちゃんに手を差し伸べ大好きな亮輔兄ちゃんの匂いに包まれながらその体を二度と離したくないと告げるようにそっと、そして力強く抱きしめる。
「お帰り、優夜。ずっとずっと寂しかったんだからな! これ以上心配させるな! お前はここに、俺の隣に居ていいんだから」静かに流れる涙、初めて亮輔兄ちゃんが泣くのを見た。その涙を見たとき僕の心がキューっと告げてくる。二度とその大事な手を離すんじゃないんだぞと。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」ボロボロに泣きながら一番欲しかった口から一番欲しかった言葉を聴けた。たとえ兄弟としてと言われてもそれでも今だけは幸せな勘違いをしたいと真剣に思う。例えその幸せな勘違いが一瞬だったとしても。
それからその日はひたすらに泣き続ける僕を宥めるだけで一日が費えてしまった。
それも仕方が無い。僕は永遠に戻れないと思っていた安らぎに戻ってこれたのだから。
翌日電話で両親に僕と亮輔兄ちゃんで泣きつき旅行の延期を依頼する。
当然両親は両手を上げたように即時許可を出し、仮保護者? である亮輔兄ちゃんの通帳に追加の金額を振りこむのだった。
その日から思いっきり二人でじゃれあいながら色んな乗り物をひたすら攻略?いや乗り回していった。
僕は何処に行こうと何処に居ようと亮輔兄ちゃんが隣に居てくれさえすればどんな所でも楽しめる自信満々で、でも、どこか成長した僕を少しだけ寂しがるような亮輔兄ちゃんは二人とも満足のいく旅行だった。
ただ、二人とも楽しむ理由が違う気はするが。
僕は当然亮輔兄ちゃんと二人だけの楽しいデートとウキウキワクワクのデートなのだ。
亮輔兄ちゃんはそんな僕をハラハラドキドキの旅行だったのだろう。
それほど僕は落ち着きがなく、はしゃいでいたのだ。
ホテルに戻れば、他の誰も居ない二人だけの世界。
でも、カップルみたいな雰囲気は何処にもなく、一人で寝たいと言っている亮輔兄ちゃんに僕がいじけて泣きついて、亮輔兄ちゃんにしがみ付いて離さないまま寝てしまう。
本当に以前以上の甘えん坊になってしまったかもしれない。
楽しい日が過ぎるのは早い。
帰宅前日ともなれば僕も少し落ち着いてきたのか、ふと話し始める。
「ねー。亮輔兄ちゃんぇー。僕が一ヶ月記憶無い時って何してたの? 」当然の疑問である。
やはり好きな人の行動は
僕と出会う前の事は何があったとしても今更と、僕自身も思うのだが、僕自身が記憶の無い眠っている間は別! 絶対確かめて浮気してないようにしないと。亮輔兄ちゃんかっこいいんだから! ってな具合に意地で聞き出そうとする。
それでも答えない亮輔兄ちゃんにだんだん焦れてきた僕はここにぬいぐるみが無いので仕方なく代理でシングル二つの枕を両手に握り締める。
その光景が懐かしかったのか、それとも変わってない僕を
「何で笑うの? そんなに僕が子供っぽい? 」プクッと頬を膨らませ、あと一回笑ったら枕で叩いてやると腕を上げる。
「はい。子供っぽいです。まるっきり駄々を捏ねる子供です。多分貴方はそこから抜け出れないでしょう」ボソッと呟く作者にダブルの鉄槌が降ってくる。
「僕は亮輔兄ちゃんに聞いてるの! アンタはすっこんでろ! 二度と出てくるな! あほー! 」
「悪いけど今回ばかりは出るところ間違えたね? 以前の助け確かに感謝だけど今回は俺も許さないよ! 」
「ギャフッ」不気味な声を残して作者は潰れた。
それから亮輔兄ちゃんは少しづつ話し始める。