そんなこともあったなと懐かしく俺は思い出から戻ってくる。
あの後は家に帰っても口開かなくて、亮輔から土下座までされたから許してやったけどさ。
俺って亮輔には甘いのな。
さてと、修学旅行の荷物なおしてたんだった。
こんな思い出に浸かるなんて俺の頭って何処を切っても亮輔の事しか浮かばない。
明日は平日だけど休みだし、兄貴とどこか遊びにいこうかな。
そろそろ受験勉強しないと俺では受かる事はない途轍とてつもなく高レベルな学校が第一志望なのだ。
第二志望と第三志望?そんなもん知らねー。俺は亮輔から離れてやる気なんて殊更ことさらないんだから。第一志望だって亮輔が居るからに決まってる。亮輔の居ない学校なんてつまんないんだよ!
一生だって引っ付いていってやる。
何処から来るんだ?その自信は……
そんなこんなで翌日。
俺は亮輔の部屋の前まで来ていた。
何故、部屋の前に居るかって?
それは鍵が掛かってるからに決まってんだろうが!!
わかんねー奴はこの物語のはじめの方読み直して来い!
(読者様にそんな失礼な言葉を言うんじゃない! この我侭プーが! )
んで、その鍵をどうやって開けようか考えてる所だ。
どうやっても無理なんだろうけど、さっき窓の外を何とか伝って確認したんだけど亮輔ってば窓までご丁寧に鍵掛けてやがんの。
仕方ない。今日は諦めて退散か。
近頃多いな。
諦めて退散ってやつ。
両親共に昨日から夫婦旅行とかで海外行っちゃってるし。
帰ってくるのは今日から一週間後。それまでどうやって兄貴を誑たぶらかす。いやいや、落とそうかな? なんて悠長な事を考えながら自分の分と兄貴の分の朝食を用意して一人虚しく食べる。
その後ずっと小さい時から気になってた住民票を取りに行く為、腰を上げた。
「あのー。自分の出生知りたいんですけど」ついに知る時が来た。
母が何故見せてくれなかったのか。
「それならそちらの住民票申請用紙ではなく、こちらの戸籍謄本の申請をされた方が確実ですよ。お金は結構掛かりますが……」
金なんてどっちでもいいんだよ!
どうせ兄貴の誕生日とかでしか使わないんだから。
毎年お小遣い貯めて兄貴の誕生日の時にウン百万する時計だの筆記用具セットだの兄貴が好きそうな指輪だのそんなのにしか遣う気がしねーんだから。
戸籍謄本の申請用紙に必要事項を書き、さっさと受付のねーちゃんに差し出す。
「すみませんが、身分証などはお持ちでしょうか? ご本人が確認できるような」
「はい」ぶっきら棒に言いながら中学校の生徒手帳を差し出す。
さっさと確認とって早く渡してくれよ。
俺だってギリギリで心臓持ちこたえてくれてんだから!
数分経ち書類が出てきた。
それを持ったまま、家に帰りまだ寝ているであろう亮輔の部屋の前まで行く。
やはり独りで見るのは怖い。
静かに封筒を開け、ゆっくりと中の紙を引き出していく。
続柄の所だけ目を向け、確認していく。
父 養父
これは事実だからどっちでもいい。
亮輔 義兄
これも事実。
母 義母
え?
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
なんで?
・・・・・・・
今まで母さんの子供だと思ってたのに。
何で母さんが義母なの?
んじゃ、俺は誰の子なの?
おれは
ダレノ
コドモナノ?
後のことはあんまり覚えてない。ただ、俺は手に書類を持ってないから亮輔の部屋の前に置いてきたのだろう。
今乗ってる新幹線は何処に行くんだ? スペースワールド?
そっか。ここしか無いもんな。亮輔と初めて会ったホテルは国久の思い出もある。
でも、ここだけは、この場所だけは国久も親父も母さんも一緒に来た記憶なんてない。
ここに来たのは亮輔と俺だけ。
他の誰とも来てない。
亮輔はまだ寝てるかな?
それとも起きたかな?
俺は何をするために向かってるんだろう?
「次は、スペースワールド駅 スペースワールド駅です。お降りのお客・・・」
着いたんだ。
思いっきり考え込んでたら到着しちゃうよ。
ねー、亮輔? 俺って何者なの? 俺って必要なの? 何処の馬の骨とも判んないのに……
俺の本当の両親は俺を捨てたんだろうか?
俺は不必要で邪魔な存在だったんだろうか?
俺は一体……
スペースワールドの入り口まで行くと、人は殆ど居なかった。
でも、中は賑やかで、家族の声とか羨ましい位に聞こえてくる。
(こんな時ばかり聞きたくない音が聞こえて聞きたい声は聞こえない。それって何だか酷いよな)
本当に俺って必要とされてないんじゃねーの? 亮輔からも部屋に入れてくれねーし、抱きついたとしても困ったように笑ってすんなり腕を外そうとするし。俺って疫病神やくびょうがみなんかな?
ノンビリ地べたに座り空を見上げながら考える。
その時間だけ優夜はゆっくり自分を見直す。
答えがあるか無いかに問わず。
ただ、亮輔にとって自分がどんな存在なのか?
母親にとって自分は必要とされているかどうか?
俺の両親は何してんだろう? なんて無駄な記憶も欠片すらないまだ見ぬ両親を還り見、そして記憶の無い両親に感謝する。
自分を捨てた事を。自分を生んでくれた事を。そして亮輔に出会わせてくれた事を。