空は澄んだ蒼あおから朱色に変わり、そして静かにそしてゆっくりと暗くなっていく。
「ガキだった頃のあの闇と比べるとまだ可愛い方か」なんて事を言いながらそっと息を吐く。
吐いた息は白く、気温の低さを教えてくる。
寒くてカタカタ震えてくる体を擦り暖めながらそれでもアミューズメントの入り口に留まり続ける。
大事な人を待って、待って、待ち続けて。
約束をすっぽかされたかのようにそれでも大切な人を信じて待ち続ける。一人の恋するだけの人間。
行く末も、未来も判らず、ただただ今現在の自分が見つけた真実。それにどう対処したらいいのか判らず震えているだけの人間。
(そっか。ここは作者居るんだ。ってか福岡に住んでるとか言ってなかったっけ?)
仕方なく離れたくは無いものの作者からとりあえず夜間だけ過ごせるだけの服をこそぎ取るため、作者の家を目指す俺だった。
ピンポーン
「誰だ? こんな時間に……」
中から声がする。
(てーことは居るんだろ? さっさと出ろや)イライラしながらドアが開くのを待つが一分もしないうちに俺は切れた。
ピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンポーン
「おいこらぁー! 出て来んかい! おい! 今まで散々と邪魔してくれたよなぁー! さっさと開けろや! ゴラァー! 」これでは殆どヤクザの取立てですから……
「なんだ。我侭プーか。どした? あれ? お前のいつも隣に纏わり着いてる
俺の手がスーと静かに近寄り、作者の首元に静かに冷たいものがあてがわれる。
「それ以上言うなよ? 亮輔の悪口言ったら殺すぞ! そして服は何処にあるんだ? 早く言った方が身のためだぞ? 」低くそう告げ、作者がガタガタ震えつつ指を指した方向にストトトトと足早に向かう。
全く詰つめが甘いんだよな。昔から。オメーはよ。作者はほくそ笑み静かに俺の背後まで忍び寄り、今度は俺の首元に静かに刃物の柄側えがわを突きつけた。
「殺すんなら殺せよ。別に今死んでもかまわねーし」いきなりの言葉にさすがに尋常じゃないと思ったのか静かに作者は包丁を直した。
とりあえず大人しくなった俺をリビングに連れて行き、何があったのかを聞き出す。
「おい! オメーが仕組んだんだろ? 俺が養子だって事」一際怖いように睨みつけながら作者に詰め寄る。
「んー。お前の母親と亮輔の父親が結婚した時点でお前は養子だろう? 」コイツぜってー俺の事馬鹿にしてんな!
益々怒り沸騰の俺は逃がさん!とばかりに作者の胸倉を捻り上げる。
「そんな事聞いてんじゃねーよ! そんな事はじめっから判ってる事だろうが! 俺が言ってるのはな! 俺と母さんの事だよ! 」捻り上げた胸倉をそのまま押し飛ばし踏ん反り返る。
「その事か。少し待ってな。ちょっと初期設定用紙見てくる」そのまま自室へと引き返す作者は何か企んでそうで妙な威圧感があった。
それから数分後。
作者は戻ってきたが、数枚の紙と、何故かロープを持ってきてやがる。
「何だよ? そのロープは。それにその紙寄越せ! 」数枚の用紙を奪い取り目を走らせる。
その用紙には以下の文章が綴られていた。
「んー…ぁんっ…ぅんっ…ぁ、あぁ〜…」高められてはギリギリの所で落ち着かせられるこの苦しさは快楽を初めて経験する僕にとって「生き地獄」、もしくは「快楽の蟻地獄」状態。
「お…願…い…んっ…イカ…せて…んふぅ…もう…駄…目…あぁん…」うわ言の様に呟くが僕自身何を言ってるのかもう判ってない。ただ、この苦しさから開放して欲しい。それだけを願っていた。
ユルユルと触っていた小さな性器が少しずつラストに向けて早くなっていく。
「あぁっ…ぁんっ…んっ…んー…」もう理性の欠片すら残ってない僕はただ、首を左右に振る。
「優夜、気持ちいい? 」僕の耳元に優しく囁く亮輔自身も、もしかすると理性が飛んでいるのかもしれない。
「ぅん…気持ち…イイ…あぁ…んっ…何か…出そう…痺れ…る…ぁんっ…怖い…よ…あぁっ」初めての射精の恐怖からなのか亮輔の胸に必死にしがみ付いて来る。それがまた亮輔からしたら可愛いのか薄く笑いながら「大丈夫だよ」と耳元で囁きながら僕の頭を自分の胸に抱きしめる。
僕の体が一際大きく四肢を突っ張らせて、大きく撓る。
「あぁーー!」次の瞬間には、僕の性器から勢い良く精子が飛び出し、僕の胸辺りまで濡らしていく。
……………
一気に俺の顔が湯気を出し、真っ赤に染まる。
そう。これは紛れもない自分の初めてチョメチョメした時の事の筈はず。
何でコイツが……
ってそれも仕方の無い話である。なんせ今俺の目の前に居るのは、俺たちを逐一書いてやがる作者なのだから。
「何が要求だ! さっさと言え! 言いやがれ! 外道!
「要求? そんなものあると思うのか? 俺が言いたいのは要求じゃない。強制だ」それだけ冷徹に言い放つと、そのまま持ってるロープで足を結び、手を後ろで交差させ縛ってきやがった。
「テメー! これ以上何か変な事しようもんなら開放された時判ってんだろうな?! 」このままじゃ俺、俺、亮輔と結ばれる前にこんな下衆野郎に犯されちまうのか?
「全く。お前を敵に回すなんてごめんだな。さてと、携帯持ってこなきゃ」それだけ言うといい終えたと言わんばかりに携帯を取りに戻っていく。
(今のうちに逃げねーと。それこそ貞操の危機って奴か? )モゾモゾと蓑虫みのむしみたいに動きながら必死で出口を目指す。
「おい! 何やってんだ? 我侭プー」冷たい声が響く。
(コイツ後ろにも目があるのかよ! 冗談じゃねーこんな所来なきゃよかった)
「おいおい。酷いな。後ろに目なんてないよ」笑いながら奴は俺の方に振り向く。
(何でコイツ俺の思ってること判ってんだよ! マジで妖怪なんじゃねーのか? )
「はー。まだ判らんのか? 我侭プー」長い長いため息を付きながら俺の事を馬鹿かと言いたそうに言いやがる。
さすがの俺も切れたぜ!
「おい! さっきから聞いてりゃ我侭プー我侭プーって俺は我侭プーなんて名前じゃねーんだよ! それにお前が妖怪染みてるなんて俺にはわかんねーの! 俺は妖怪じゃないかんな! 」あームカつく! コイツ後で絶対絞め殺してやる!
「はいはい。妖怪はさすがに嫌だからネタ晴らししてやるよ。お前の考えてる事とか行動ってのはすぐに俺の小説に出てくるの。だから絞め殺すとか物騒な事考えんなよ」それだけ言うと俺から目を離そうとはせず、どこかに電話し始める。
「おい! 鈍感の意気地なし野郎! お前は一体何やってんだ? は? 優夜が居ないって今更気付いてんのか? ってか優夜ならここに居るぞ。お? もうそろそろ優夜が騒ぎ出しそうだから切るな。俺の住所は優夜にしか教えてなかったし、お前は優夜の事……だろ? なら自分で必死に探して迎えに来い! 頓痴気」フーとため息を付きながら携帯を放り投げる。
って……
鈍感で意気地なし、んで? 頓痴気?
って事はこの馬鹿野郎は亮輔に電話してたって事かよ!
「おい! もしかしてさっきの電話亮輔じゃないだろうな? 」もし亮輔に電話してたとしてあの口の利き方してたりしたら絶対許さん! 亮輔が許しても俺が許すまじ!
「ははは。だとしたらどうする? オチビちゃん? ってそんな事言っててもはじまらねーし、こっちに居る間位ゆっくり観光でも行かないか? 金はねーけど」
とりあえず開放して欲しくて頷いちまったけど。
亮輔兄ちゃん今何してるんだろう?
あれから2日。
ずっとこの作者って威張り散らしてる馬鹿は連絡してない。
こっそり電話しようにも、起きてきて紙持ったまま目を通し、俺の携帯も奪って行く。
亮輔。早く助けに来てよ。