それから早五日過ぎちまった。
簡単に言うと、亮輔と離れて一週間。
飯はこの糞作者が脅迫してくるから仕方なく食っちゃいるけど俺の気持ちは干からびて死にそうだよ。
お? 何電話してるんだ? 自分だけ!
「おーい。亮輔? お前一体何処をほつき歩いてるんだ? は? どうしても俺の家が判んないって? はぁー。 仕方ない奴だな。んじゃ、スペースワールドまで今日の4時までに来い」こそーっと見てたけど、どうやら自分だけ亮輔のあまーい声を独り占めしたらしい。
ムッカー!亮輔の優しくてカッコいい声を自分だけ聞きやがってー!
「おい! 作者! 俺にも亮輔の声を聞かせろ! 寄越せ! 俺の携帯! それに4時って言ったらあと二時間しかないじゃないか! そんなの無理だろ? 無茶言って亮輔困らせるな!」酷いよコイツ。俺の大事な亮輔なのに。確かに俺はただ飯食わせる気はないって言われて食器洗い命じられ、何百枚近く食器割ってしまって迷惑掛けちゃいるけど、それを亮輔に当たらないでくれよ。
「さてと、今度はお前か。大人しくこの旅行鞄に入るか、縛られて入れられるかどっちがいい? 」ニッコリ笑ってロープ手にして……怖いっつーの。
判ったよ! 入ればいいんだろ!
大人しく無理やり入ってって狭っ。
やっとこさ中に入れたって思ったらこの馬鹿チャック閉めやがった。
ガタガタと揺れながらどこかに向かってる。
何時間経ったのかもわかんねーし。
それに暗くなりすぎて眠くなってきた。
少し寝ようっと。
いきなり横倒しにされ肩撃ちつけて目が覚めた。
(いってー。何だよいきなり)
「おい優夜を何処にやった! 返答次第じゃただで済むと思うなよ? 本気で殺すからな! 」
(あれ? 亮輔兄ちゃん? ここだよー! 助けて! )狭いけどそれでもバタバタ暴れる。
それに気付いたのかチャックが開けられて朱色の空が眩しい。
「ぷはー。きつかったって亮輔どうしたんだよ! その痩せ方! おい! 作者。どう言う事なんだよ。頼む教えてくれよ。何で亮輔がこんなに元気ないんだよ! 」この馬鹿(作者)に頼りたくはないけど、この際仕方がない。
「お前ら二人とも馬鹿の集まりか? まず、優夜。お前は確か言われてなかったっけ? 亮輔から隣に居ろって。そんで、亮輔? なんでしっかり捕まえとかないかな? おかげさんで俺の家、食器無くなったっての。その分のお金出してね。それに交通費も」あっけらかんと言い放ちやがる! ぶん殴ってやろう。ってうまい事亮輔が俺のぬいぐるみ持ってるんじゃん。
貸せって亮輔からぶん取って……
バフッ
「うごっ…」
よし作者倒れた。
バフバフバフバフバフバフバフ
「ゲホッゲホッゲホッ」
よし。この位で勘弁してやろう。
とりあえず亮輔を何とかしないと。
振り向いて亮輔見たらニッコリ微笑んでた。
嬉しそうに。
楽しそうに。
「良かった。優夜が無事で」そっと俺に手を差し出してくる。
その手を握り返す。
「亮輔ご飯食べてないの? それに母さん達は? 確か今日帰ってくるはずだろ? 」
「優夜くーん? ゲホッ これ何かな? 」ヤバイ! 奴が目を覚ましたってかあの紙束。俺の純情もろとも入った文字の塊?
「寄越せ! 」よし奪った。
これで奴も用済みっと。
「あ。それ直接書いてる方の原稿じゃないから。お前の気持ちとか行動とか書かれないから安心しな」っておぃ!
あっと言う間に逃げやがった! 逃げ足だけは以前より速くなってるな。
「それ何? 優夜」背後まで亮輔が来てて、貸してって手を伸ばす。
「う。ごめん。無…」え? 亮輔顔近いって! 心臓壊れちゃうよ。こんな人が一杯居る所でするのか? するのか?
固く目を閉じ、少し上を向く。
心臓がバクバク早打ちして、緊張して体が強張る。
ドキドキドキドキ……
耳元にいきなり掛かる声。
「優夜。それ見せて」うわー。こんな事言われたら嫌って言えないの判ってるんじゃないの?
そっと耳朶みみたぶに甘噛みされて首が竦みながら、女の子がラブレター渡すような感じで勢い良く亮輔に渡してた。
スペースワールドの中に入り、ちらちら亮輔見ながら買ってくれたジュースのストローを齧る。
亮輔は俺の事なんてどうでも良さそうに紙の束見ながら微笑む。
それが嬉しかったり寂しかったり悲しかったり。
複雑だ。
「なぁ、お母さんたち帰ってきたんだろ? 」思い出したように亮輔に聞くものの返事なんて来ない位に集中して読んでるし。
「うんー。帰って来たよー。心配してたから連絡しな」それだけ言うと紙の束から目も離さず俺を見る事もなく言ってくる。
(うー! くっそー! なんかムシャクシャしてきた! なんで俺の方見ないわけ? )涙溜まってきてるのを気にせずズボンのポケットをいつも通りに探る。
(あれ? そういえばあの馬鹿から取られてなかったっけ? 携帯……)何故かちゃんとある携帯電話。
何故に気付かなかった俺!
仕方なしにアドレス帳から母さんの電話番号を選択して掛ける。
何度かの呼び出しベルがなって母さんが出た。
「優夜? 大丈夫なの? 亮輔は? ちゃんと隣に居る? 」少し位落ち着けよ。
「大丈夫。それに亮輔も隣に居るよ。でも……」やっぱりすぐに元通りみたいに話せない。
だって俺は家族の誰とも血が繋がってないんだもん。
「よかったー。優夜が無事で。とりあえず落ち着いたら帰ってきなさい! 落ち着くまでは亮輔の口座にお金振りこんでおくから。判った? 」半強制? 母さんよ。いつの間に。
「わ、わかった」電話を切り、亮輔兄ちゃんの方をチラッと垣間見ると、デレデレいやらしい笑い顔をしてた。
「亮輔! お母さんがね! 落ち着くまでこっちに居ろって! わかった!? 聞こえた!? 」いやらしい笑いを何とか止めさせたくて亮輔の耳元、大音量で叫んでやった。
(フン! 僕の事ほったらかして、そんな紙にデレデレしちゃってさ! まさかあのいやらしい笑いは……もしかして……いや、もしかしなくても……初めてのチョメチョメなんじゃ……)ってそれはだめー!
無理やり亮輔の手から紙の束を取り上げさっさと破り捨てる。
「優夜! 折角読んでたのに何で破り捨てるの? ってなんで泣いてるわけ? 」
「破り捨てるの当たり前だろ? だって亮輔俺の事なんてどうでも良いいみたいに見ることだけに集中しちゃってさ」もう涙なんて止まんないよ。
「わかった。わかったから泣くなって。優夜」慌てふためきながらギューっと抱きしめてくれる。
とりあえず泣き続ける俺を連れて近くのホテルに連行された。
ホテルの部屋に着き、ナデナデされながら、ゆっくりと話しされる。
「優夜。これ見て出て行っちゃったんだろう? 」
「うん」コクンと頷く。本当の事だから。
「こんな事気にするなよ。俺は血が繋がってないからって優夜の事嫌いになったりしてない」しっかりと俺の目を見ながら言ってくる。だけど、だけど、普通に避けられてたのは何故?
「本当に? 」多分今の俺は恐怖を感じた目をしてたんだろうと思う。
「本当」ニッコリ笑いながら言ってくれるけど、どうしても納得できない。
嫌いになってないんだったらどうしてあそこまで避ける?
なんで部屋に鍵掛けてまで避ける?
「亮輔? 嘘言ってる。嫌ってないなら俺の事避けなくて良いじゃん。部屋に鍵しっかりと掛けて避けなくて良いじゃん」グズグズなりながらそれでも言わなくちゃいけなかった。
もう全部見ちゃったんだから。
見えちゃったんだから。
隠せないんだから。
血が繋がってない事も、俺が亮輔好きな事も。
全部。
全部知られちゃったんだから。
嫌われたって仕方がない。
その時は亮輔の前に居れないから、でも、死にたくないから作者の所にでも逃げ込んでやる。
(勘弁してくれ。来るな! 二度と来るな! )作者の声が聞こえたような気がするけどこの際無視するね。
「嘘なんて言ってない。部屋に鍵掛けないと夜の間にお前入ってくるだろ? 」ため息混じりに返されるけど、俺からすれば当然! としか言えないだろ。
「うん」これも事実なので素直に頷く。
どうせばれてるんだから良いだろ!
「はぁー。だからだよ。鍵掛けてたのは。お前が隣に居るとオチオチ寝てられないの」
……
……
……ほらね。やっぱり。俺が嫌なんだ。
涙が途端に滝になり、洪水を起こすかの如く涙が溢れ出す。
「ちょ、ちょっと待てよ! 何か勘違いしてないか? 俺はお前が横に居ると欲情して寝れないって意味で」途端亮輔の顔が真っ赤に染まる。
(え? って事は俺の事好きなの? 俺と同じように? 恋人みたいに? )
キュッと亮輔の袖を掴み下からお願いするように見上げる。
「だー! わかったよ。白状します。俺は優夜の事好きなんだよ! 兄弟以上に! セックスしたいって思う位に好きなんだよ! 」何か文句あるか! とでも言わんばかりに俺の方見てる。
「俺も……大好きだよ」
ずっと、何年間も封じていた言葉。
ずっと、言いたかった言葉。
ずっと、言えないだろうと思ってた言葉。
ずっと、永遠に大好きだよ亮輔。