二人ともお腹がグーとなり始めてしまってはムードも何も無い。
折角愛の告白までいっても結果的にグーじゃどれだけいいムードでもぶち壊し。
「とりあえずご飯食べようか」苦虫をかみ殺したように笑いながら亮輔が言う。
「う…うん。って亮輔? 俺が居ない間飯食ってねーの? 」さすがの俺も吃驚する。
「当然だろ? お前探す事で大変だったんだから」俺の額を抱え込み頭にグリグリ拳を押さえつけ捻る。
「イタイ、イタイ、イタイってば! 」全然痛くないけどやっぱり好きな人には可愛い反応見せたくなるじゃん?
何にも反応無いより、ちょっと突けばすぐに反応あるほうが良いような気がする。
二人でじゃれ合いながらホテルの備え付けレストランへと向かう。
亮輔が腹減りすぎてるだろうから当然ながら、バイキング。
高かったけど。
でも、それ位は俺の貯金で何とでもなる。
そうそう。俺の貯金皆しらねーだろ。
えっと、貯金だけで、一億三千五百万飛んで一円
貯めようって思ってなかったんだけど使うのは兄貴の誕生日だけで他は使わなかったから勝手に積もっただけ。
んで、財布の中身は確か十万位入れてたはずなんだけど。
財布を取り出しお札入れを覗く。
あ・・・・・あれ?
「ない! 俺の金! 十万! 何処消えた!ってもしかして」財布のお札入れの中に一枚だけ白い紙切れが。
紙には確かに書いてあった。
ミミズ字で……
「優夜! お前が割った皿の代金含め交通費代占めて十五万程掛かってるんだがお前と亮輔のお祝いで十万にまけてやる。ありがたく思え。恩にきれ。一生な」
…………
「作者お前かーーーーー! 」俺の怒声はレストランだけでなくホテルいや福岡全土を
「優夜。ここはいいよ俺のおごりで」クスクスと笑いながら言ってくれるが、俺は断固拒否!
「いいよ。今から貯金下ろしてくる」クルリと反転してATMまで行こうとする俺の手を亮輔が止めた。
「わかってない? 俺が言いたい事。折角一緒に居れるのに離れたくないって言ってるの」カーと顔だけでなく全身赤くなり、やがてボンと大きい音をたて、俺の頭がショートした事は言うまでもない。
何とか現実に戻ってきた俺は亮輔と一緒にご飯を食べ、そしてドキドキの部屋へと向かった。
ねだるのは得意じゃないが、この際仕方ない。
告白してキスもしないままグーだから、俺としてはキスの一つも欲しくなって当たり前。
部屋に入った途端亮輔の服を両手でキュッと握り締める。
「どうした? 優夜」振り返る気配がする。
何で気配かってのは皆はもうわかってるよな?
キスして欲しいのに目を開いたままキスなんてしたくないだろ?
なんでこんな風に言ってるのかは当然読者が居るって俺自身がわかってて、尚且つ、サービスだ。
五万程度で作者に借りなんて作りたくないから仕方ないけど、俺と亮輔のラブシーンを見せてやる。
それで五万はチャラだ。
「ふふっ」絶対笑った! 亮輔笑った!
俺なんて一生懸命だってのに笑った!
折角俺はムード全開で迫ってるってのに笑った!
「笑うほど嫌なんだ。俺の事嫌なんだ。告白したのにキスするの嫌なんだ」もう拗ねてやる。
亮輔なんて知らない!
プクーと俺の頬が河豚ふぐみたいに膨れ、その頬からは棘とげがでているとかいないとか。
「可愛かったからなんだけどな、でも、わかったよ。そろそろ限界だったんだろ? 」なんて言いながら甘い甘いキスをくれるのだった。
もう甘くて甘くて吐きそうな位甘くてって食事中の人ごめんなさい。
って食事中の人は居ないか。
いるとすれば……ナニしてる人と、欲情してる人?
とにかく、すんごく嬉しくって。
した事はあるけど、俺の方から二回だけだし。
亮輔からしてくれるなんて。
「優夜。一緒に入る? 」クスクス笑いながら聞いてくる。
(え? 入るって。なんで脱衣所に一緒に居るわけ? )
掴んでた亮輔の服。キスした後、余韻もなく、そのまま脱衣所に亮輔は来た。
んで、俺は亮輔の服を掴んでるから半ば強制的に脱衣所にノコノコと入ってきた。
って事で合ってるのか?
「い…いや、遠慮しとく」さすがに、お風呂で服を着るわけじゃないだろう。
間違いなく真っ裸同士?
それは、それは、それで滅茶苦茶恥ずかしい。
恥ずかしすぎるー!
ってか俺もしかして勝負下着なんて着てるわけじゃなく、普通のブリーフ。
あぁー!
なんで持ってこなかったかな!
あの日の俺!
昨日の俺!
だーーーー!
シャワーの音が鳴り響く時間とき。
少し大きめの声で聞いてみる。
「亮輔ぇ。ちょっとだけ出かけてきてもいい? ほんの少しだからさ」出かける許可をくれ。
どうしてもくれ!
今の俺は何の変哲もない白のブリーフなんだから。
頼む。今だけは、無理でも許可をくれ!
俺は自分の事だけで頭一杯で、シャワーの音が止まってる事に気付きもしない。
「別に出る必要ないだろ? バスローブあるんだから」俺がいる部屋と脱衣所を繋ぐドアが開かれ、バスローブを羽織った亮輔が姿を現した。
(でも、普通にバスローブの下は普通下着履くだろ? それじゃ意味ないんだよ! 頼むから何も聞かず今だけは外出許してくれ)もう本当に泣きたい。
涙を目に貯めながら、再度お願いしてみる。
「亮輔。お願いだから、少しだけ外行かせて」亮輔にしがみつき上目遣いで懇願する。
「はぁー。何か肩透かしにあった気がする。でも、優夜からそんな可愛い顔でお願いされちゃ断れないよ」項垂れながらでも許可を渋々くれる亮輔。
「やたー! 亮輔だーい好き! 」亮輔の首に手を回し、その唇にそっと口付けた。
亮輔は一瞬にして真っ赤になり、ポリポリと頬を掻く。
何とか部屋を合意の下で抜け出せた俺は、ATMで順番待ち。
おぃ! さっさと出て来い! おせーんだよ!
「はぁー。優夜。もうちょっと口良くならないか? 地が出すぎてるぞ」何となく聞き覚えのある声。
そう、その声は作者だった。
「ここで逢ったが百年目! 速攻で潰してやるから覚悟しな! 」拳を握り締めファイティングポーズをとる。
「ここでやりあう気はないよ。それよりいいのか? 他の人ATMに入っていくぞ? 」さっきまで順番待ちしてたATMを親指で指差しながら素っ気無く言い放つ。
「あー! だめー! 次俺の番! どけ! 親父! 」知らない中年の男性を弾き飛ばし、間一髪でATMを確保する。
(んーと、何万位出せば足りるかな? わかんないから適当に五十万位出すか)
ATMでお金を引き出せた俺はホクホク顔で外へ出てさっさと5万返そうと作者を探すが、逃げ足がピカイチなだけあってもう既に姿は無かった。
(仕方ないか。下着屋さんはっと)近くの商店街を歩きながらパンツの売ってそうな洋服屋さんを探す。
男が着る服が置いてあればフラフラァ〜と立ち寄って下着が無ければさっさとおさらばする。
十分位探してると、漸く見つけましたぜ! 下着!
それも俺の好きそうな勝負下着!
んと、金額は?
値札に目を向け、唖然。
俺ってこんなに金銭感覚無かったっけ?
兄貴の誕生日云百万使ってたのは普通だろ?
なんで下着がこんなに安いの?
金額一万二千円。
安すぎだろ。
この位だったら二十万は固いと思ってたのに。
安くて嬉しいような悲しいような複雑な顔をしながら下着を買い、しょ気たままホテルへと戻っていくのであった。