※この作品はR-18です。

東京キングダムでイき抜く魔族さん   作:ヤトラ

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●本日の予定
・イ・グーへ帰還
・月影永夜を労働奴隷として拉致
・ロージィ・ザ・ファントムの対策


●登場する原作キャラ
・ロージィ・ザ・ファントム(魔族SR)

 活動報告のアンケありがとうございます。キリシア・オズワルドの人気っぷり(笑)流石恒常ガチャ出身。
 今回もエロは控えめ、しかし作者の変な欲望を詰め込みました(ぉ)

10/8:誤字修正


予告:ロージィ・ザ・ファントム

 対魔忍による襲撃が終わり、主犯である月影永夜を壊さぬ程度に凌辱した翌日の朝。

 二階が黒焦げになった屋敷の前で、寝起きなのか髪が跳ねまくっているアネモネは呆然と眺めていた。

 

「イッチニ、サン、シー」

 

『ゴー、ロク、シチ、ハチ』

 

 そう―――オスカーを筆頭に行われている謎の儀式だ。木漏れ日が差し込んでいるからか異様度が倍増している。

 

「何やっとるんじゃ妾の屋敷の前で」

 

「ラジオ体操です」

 

「らじおたいそー?」

 

 森でひっそりと暮らす貴族のような魔族にラジオ体操という習慣は知らないようだ。まぁこんな魔族が犇めき合う森の中でラジオ体操する奴などいないだろうが……。

 

 オスカーらイ・グーは月影を凌辱した後、夜襲を考えて屋敷の前で野宿をしていた。凌辱でボロボロになった月影を、ご丁寧に湯で体の汚れを洗い流してから預かってもいる。

 今の月影はイ・グーが用意したテントの中で泥のように眠っている。アネモネはあの凌辱の後に殺すべきだと言ったが、勿体ない病を抱えるオスカーがなんとか説得して生かしといたのだ。

 

 その説得の理由が「なるべく長く生かしてジワジワと反省と調教兼ねた労働奴隷に」というのだから魔族らしく性質が悪いが。

 

「ボス、アジトから連絡が入ってましたぜ」

 

 ラジオ体操を終えた頃、置きっぱなしの武装車両に向かっていたはずのオータがやってきた。

 

「こんな早朝から珍しいですね」

 

「いえ、昨夜から着信履歴がめっさありましてん「チェストォ!」あべしっ!」

 

 通信をサボっていたオータに脳天触手チョップ!頭頂部をぶっとい触手で叩きつけられてオータは一発でダウンした。アーメン。

 

「アネモネ嬢、私達は急いでアジトに戻らなくてはならなくなったので、早い目の支度をお願いします」

 

「了解じゃ。ちぃと待っておれ」

 

 そうオスカーに促されるとアネモネは欠伸を掻きながら屋敷へと戻っていく。屋敷の二階は焼かれてしまったが、一階と地下は無事なので私物がある程度残っているのだ。

 アネモネを見送った後、オスカー達も中庭に広げていたテントや調理器具を片づけ、テントの中で眠っていた月影に拘束具を取り付けてから起こす。散々凌辱された後か、すっかりオーク相手に怯えている。

 

「あ、おはようございます月影さん。朝食はそこにありますからね」

 

「―――ッ!」

 

 まぁオスカーが姿を現した途端、滅茶苦茶怖がられたわけだが。オスカーの恐ろしい気配を正確に察知できる自分の体質を軽く呪う月影であった。

 

 

 

―――

 

 オスカー達を乗せた武装車両がイ・グーのアジトに到着。車で向かうとアネモネ宅から片道1時間だ。

 

「ただいま戻りましたー」

 

「……お帰りなせぇボス」

 

 アジトの玄関先で待っていたオークボは気にせず彼らを出迎える。足元で四つん這いで待機しているフィルは目を点にしていたが。

 

―――蜘蛛姫アネモネが高級車から降りてきても、続いて降りてきた淫魔メイド2名が軽々と天蓋付ベッドを運んでいても、両手両足を棒で拘束されガニ股で歩く全裸の女が武装車両から降りてきても、オークボは気にしないったら気にしない。

 

「アネモネ嬢の屋敷が対魔忍によって半壊したので、暫く彼女ををイ・グー(うち)で預かる事になりました。あ、これお土産の対魔忍です、労働奴隷としてコキ使いますんで」

 

「ご丁寧な説明ありがとうございやす」

 

 オスカーの丁寧な説明は毎度のことながら端的で解り易い。アネモネも「よろしく頼むぞ」と言ってオスカーの横に並び、オーク達は重傷から軽傷まで様々いれど全員生きて戻れたようだ。

 そしてオークボは「うひょー」と声が出る。何せ全裸でガニ股になっている対魔忍の女はシュレイを越える程の爆乳で、目が見えないのか首輪を引かれる度にオドオドと歩くのだから加虐心をくすぐられる。

 

「あぶっ」「いでぇっ!」

 

 そんなデレデレしているオークボの脛に噛みつく牝犬奴隷ことフィル=リード。すっかり飼い主大好きっ子になったものである。

 

「それよりもオークボ、通信記録で見ましたが早く会議室に集まりましょう。時間が惜しい」

 

 嫉妬してくれていると理解しているが故にフィルの尻を軽く叩くだけのオークボに声を掛けるオスカー。

 キャンキャン鳴くフィルを宥めてからオークボは了解し、オスカーとアネモネを会議室へと案内し、内部放送でオーク達を呼び集める。

 

 

―――

 

 会議室。オーク十数名が入れる程の広々とした個室であり、その中央に置かれたテーブルを取り囲むようにオーク達はパイプ椅子に座る。

 そんな彼らのボスたるオスカーは社長椅子に座る……はずだが、彼はパイプ椅子に座っており、来客であるアネモネが社長椅子に座っている。妙に様になっていてオーク達の眼差しを集めていた。

 この時ばかりはフィルもシュレイも、首輪と手枷を付けながらも直立して彼らの背後に立っている。何せ此度の問題は彼女達の問題でもあるのだから。

 

 静かに黙っている中、会議室のドアが開かれる。入ってきたのは鎖を握るオークと、鎖付き首輪に引かれて歩く全裸の月影だが……。

 

「……お茶を、ひぐ……お持ち、しまし、たぁ……っ」

 

 乳首は洗濯バサミで留められ、そこから伸びる「ヘ」の字の金属棒が御盆の端と繋がっており、爆乳が御盆の重さで引っ張られ月影に苦痛を与えている。両手は後ろ手に拘束されていた。

 その御盆は特殊な形状をしており、前方が乳首を挟む洗濯バサミとチェーンで繋がれ、後方は布団バサミとなっていて月影の腹を挟み込んで固定されている。だが乳首の洗濯バサミが外れでもすればバランスが崩れ、上に載っている急須と人数分の湯飲みが床に落ちることになろう。

 更に両足首は先ほどと同じように棒で固定されており、強制的にガニ股で歩かされている。上記の状況もあって月影は道中で何度を足を止めるが、鎖を引くオークが歩みを強行させた。

 

 特殊な御盆により常に乳首責めを受け、盲目で見えない急須と湯呑を案じながらガニ股で盆を運び、恐怖と痛覚に苛まれながら嘲笑うオークに引かれてヨタヨタと歩く。

 そんな状態なら零れるなり落とすなりしても仕方ないと言えるだろうが、労働奴隷と認定され仕事をさせられた月影に、拒否も失敗も許されなかった。

 

「ご苦労様です」

 

 そんな月影とオークに一瞬だけ気を向けて声を掛ける。オークは震える御盆から急須をテーブルの上に置き、一人一人に湯呑を手前で置く為に月影を歩かせる。

 よたよたとガニ股で歩き無様な恰好で御盆を運ぶ全裸の対魔忍。そんな彼女が後ろを通る度にオークらが侮蔑し笑う。彼女は涙を零しながらも、御盆を落とさないよう慎重にガニ股で歩くのだった。

 

(うわぁ……あたい達より扱いが酷いね……)

 

(対魔忍はタフだからアレぐらいーってボスが言っていたけど……私達がああならなくてよかった……)

 

 目の前を横切った月影を横目にヒソヒソと話し合うフィルとシュレイ。聴覚も優れた月影には駄々漏れな為、悔しさで静かに嗚咽を漏らす。

 

(ボスったら意外な趣味してやすなぁ)

 

((オークボさんですら知らなかった!))

 

 イ・グーを纏め上げるボスの意外な一面を目の当たりにした留守番組であった。

 

「さて、配っている間にアネモネ嬢について説明しましょう」

 

 ヨチヨチガニ股歩きの月影だと湯呑を配り終えるのに時間がかかる。その間にアネモネと淫魔メイドについて留守番組に軽く話す事にした。

 

 アネモネは貴族のような魔族だ。数多くの配下を連れ富を蓄える高飛車な魔族であるアネモネは、その地位と美貌に目が眩み自分の物にしたがる敵が存在している。

 屋敷が半壊し対魔忍に手痛い仕打ちを受けたと知れば、アネモネを目の敵にする連中や、アネモネを平伏させたい欲望で満ちた野蛮な男達に狙われる可能性が高い。

 

 それを心配したオスカーがアネモネに、屋敷を立て直す間イ・グーに滞在しないかと相談を持ち掛けた。

 半壊したとはいえ屋敷としての機能は衰えていないし蜘蛛魔族の包囲網もあるが、先の対魔忍襲撃もあって用心に越したことはないと、オスカーの案に了承し今に至る。

 決してオスカーと同伴できるのが嬉しいとか思っていない。淫魔メイドが暖かい目で見ているがきっと気づかれてはいない。そう信じるアネモネであった。

 

 追加報酬も支払うという事でイ・グーへのお泊りが決まったのは良いが、新たな問題に気づいてしまった―――魔族怪盗の予告状である。

 

「まさかイ・グー(ウチ)のような中小企業に予告状が届くとは思いませんでしたよ……」

 

「あっしの牝犬調教で目ぇ付けられたんでやしょうか」

 

 囚われた美女を盗むという魔族怪盗ロージィ・ザ・ファントムの噂はオーク達とアネモネの耳にも届いている。

 彼女が盗む対象は、当然ながらフィルとシュレイの2人の事だろう。特にフィルはオークボの露出調教で連れ出す事が多い為、そこで漏れたのかもしれない。

 下手をすると今日連れてきたばかりの月影も対象になるかもしれない為、オスカーは勿論、せっかくの肉奴隷を手放してなるものかとオーク達も気合が入っている……しかし。

 

「俺らってボスを盾にして撃つだけの脳筋っすからねぇ。怪盗相手とかどうすりゃええんだよ」

 

「ノマドに報告するっぺか? あの魔族怪盗が相手ならマシな奴を寄越してくれっかもしれねっぺよ」

 

「ノマドの監視付きってだけの小さな組織だべ? 大型の人身売買組織や娼館と比べちゃ放っとかれるだろうよ」

 

「ベルベットの姐ちゃんから情報聞けっか?」

 

「一応聞いてみたんだが、全部事後ってことで大した情報は得られなかったぜ。強力な催眠だとか幻覚とかは解ってんだが、その手段が解ってねぇとよ」

 

「せめてイングリッド様に直接報告できりゃいいんだが、下のもんが情報歪めるだろうしなぁ……」

 

「つーか、この場にはいねぇが重傷者いるだろうが。そいつらどうするよ?」

 

「地下室にでも押し込んどくか? 奴隷用の牢屋とは階は別だしよ」

 

 オスカーが黙って見ている事もあってか、オーク達はあーでもないこーでもないと意見を交わす。時間が無いので出来る事は限られているし、無駄かもしれないが、それでも論議を重ねていく。

 

(な、なんかオークが知的な意見交換をしてるよシュレイ……)

 

(あたいもオークとは何度か遭遇したことあるけど、ここまで考えるオークって中々ないよ)

 

(こいつら、本当にオークなのか?)

 

 元は外部の人間である肉奴隷達が会議しているオーク達に驚くのも無理はない。

 オークは多くの人間や魔族から発情豚と卑下される程に短絡的思考をしているが、オスカーの教育と組織指南の結果、それなりに考え対策を練るだけの知恵を得ていた。

 

「はい、一旦止まってください」

 

 オスカーが手を叩いて鳴らすと騒めいていたオーク達が静かになり、彼に注目が集まる。何か名案が?という期待の眼差しだった。

 

「皆さんも随分と考えるようになりましたね、ボスとして嬉しいですよ。……ですが大丈夫です。その為に(・・・・)彼女が来てくれたのですから」

 

 微笑みながらオスカーは手を彼女……社長椅子に座り無い胸を反らす蜘蛛姫アネモネに向けられる。

 蜘蛛姫アネモネはイ・グーにとって最も馴染みのある上級魔族だ。ふんぞり返っている彼女の性格や能力は十分把握している。エナジードレイン、魔素を用いた糸による罠や攻撃、眷属たる蜘蛛を用いたネットワーク……。

 

 ふとオークボは、後ろでシャーっと天井に向け威嚇するフィルに気づき、何なのだと自身も上を見上げ……顔が引きつった。遅れて他のオーク達も天井を見るが、皆して小さく驚愕する。

 

「依頼料はしかと払う故……此度の協力(・・)は貸しじゃぞ?」

 

 自信に満ちた笑みを浮かべたアネモネが手を翳すと、上から落ちてきた小さな蜘蛛が彼女の手の甲に着地する。

 会議室の天井に蔓延る無数の蜘蛛は、全て屋敷から連れ出した彼女の眷属であるようだ。どこから連れてきたんだというツッコミは置いといて。

 手の平サイズとはいえ魔界生まれの危険極まりない蜘蛛だ。これら全ての蜘蛛がビルの内部を埋め尽くせば、少しでもロージィ捕縛の糸口に繋がるだろう。

 

「とても大きな貸しですね……期待していますよ、アネモネ嬢」

 

 オスカーに借りを与えたことへの優越感に浸りながら、アネモネは得意げに頷くのだった。

 

「……あのさボス、こんなこというの言うのは、あたいでも変だとは思うけど……」

 

 隣で苦手な蜘蛛に威嚇しっぱなしのフィルを置いといて、シュレイはオスカーに声を掛ける。

 

 

 

―――

 

 夜11時―――魔族怪盗ロージィ・ザ・ファントムの犯行予告まで残り1時間を切った。

 

「ちょーっと、これは面倒かなぁ」

 

 暗闇の中、高層ビルの頂上で高級オペラグラスを掲げるのは、蝶のようなペルソナを被る有角の女魔族……ロージィ・ザ・ファントムであった。

 彼女は、カッコイイとエロいを掛け合わしたような派手な恰好をしているにも関わらず堂々と直立し、オペラグラス型の暗視スコープに映る光景を見ている。

 因みに彼女の背後には、このビルの警備員であろうオークや魔族が幻惑によって虚ろな目でオナニーをしている。よほど強い催淫効果を与えたのだろう。

 

 そんな下品な魔族を放っておいて、ロージィは緑色に映る景色を見て困ったように溜息を零す。

 

 眼下には小さなビル……イ・グーのアジトがあり、入り口と屋上には警備員と思わしき、ガスマスクを装着したオークが数名。武装や身体つきこそ通常のオークに比べれば優秀だろうが、それは問題ではない。

 問題なのは壁や通気口といった至る処に張り付いている蜘蛛の群れだ。小さくて見えづらいが、確か相当危険な種であったはず。昆虫の類は自分の異能が発揮できない為、コレが一番の厄介所である。

 以前の偵察や仕入れた情報には全く無かった存在だが、今日中に仕入れた新たな情報と重ねれば一致する。ロージィには怪盗らしく独自の情報網があるのだ。

 

「だからこそ燃えるんだけどねぇ……新しく入った美女も、あたしの好みだし♪」

 

 そんな逆境に燃えているのか或いは大した事ではないと侮っているのか……いや、イ・グーに新しく入った対魔忍と魔族を美味しく頂く事への期待かもしれない。オペラグラスを懐に入れたロージィは笑みを浮かべ、唇を舐めた。

 

「こういう時は……」

 

 そう口にした途端、ロージィは高所ビルにも関わらず一歩足を出し、そのまま直立姿勢のまま空中へ落下。姿勢を正す為に調整するも、重力と風圧に任せて下へと落ちていく。

 そして地面へと激突……するかと思えば、慣性を無視するように優雅に着地し、そのまま着地の為に折りたたんだ脚に力を籠め、一気に跳躍。低空飛行と思える程の速度で前進する。

 

―向かう先は……なんとイ・グービルの正面!

 

「な、なんでぇっ!?」

 

「正面突破に限るね♪」

 

 弾丸の如く迫ってくる奇抜な恰好をした女を眼前にして驚愕するガスマスクオーク2名に対し、ロージィは楽しそうに呟く。

 跳躍の速度を維持したまま、ロージィはフワリと手を振う。オークが銃器を構える頃には振った手から蝶のような霧が幾つも舞い、ロージィよりも早い速度でオークに向かっていく。

 霧の蝶は銃器を構え発砲しようとしたオークの眼前に停止、弾幕の如く連鎖的な小爆発を起こす!

 

「ぼげっ」

 

「げばっ」

 

「Good night♪」

 

 ガスマスクを粉砕する程の爆発。そして爆発の際に飛び散った幻惑の粉がオークの嗅覚を伝って浸食し、オークは糸の切れた人形のようにその場に倒れ込む。

 ストンっとロージィが倒れ込んだオークの直前で着地すると、今度はビルの壁を伝っていた大量の蜘蛛が雨のように襲い掛かる。ガンシューティングで見るような光景だ。

 しかしロージィは落ち着いて上を見上げ、再び手を振って爆薬の蝶を作り出す。蜘蛛に比べると少ない蝶は壁を作るように連鎖爆発を起こし、爆破で蜘蛛どもを蹴散らす。

 

 その隙にロージィはビルの玄関を潜り、堂々と侵入していった。

 

「うっはぁ……」

 

 下賤なオークのお出迎えかと思っていたロージィだが、目の前の光景に思わず声を漏らす。

 ビルの内部はこれでもかと言わんばかりに蜘蛛の巣が張り巡らされており、人間の頭ほどもある蜘蛛がガサガサと蠢いている。赤く光る8つの目が十数匹もいるから、暗闇の中で赤い点ばかりが光る。

 ロージィを睨む蜘蛛達は、警告音の代わりか甲高い音を出す。さらにはロージィに近い蜘蛛が糸をバネに跳躍し一斉に襲い掛かってくるではないか。玄関口から入り込む蜘蛛の群れも合わさり袋の鼠だ。

 

「こんな事で怯む怪盗ロージィ様じゃないよっ!」

 

 こういう時にも自分の異能は役立つ。フィギュアスケート選手のようにスピンして両手を振う事で、幻惑の粉が舞い、蝶が彼女を包み込む。

 蝶は飛びかかってきた蜘蛛達を蹴散らし、煌びやかに光る粉は蛇のよう群がって奥へ舞っていく。幻惑の蛇に当てられた蜘蛛達が次々と爆発を起こし、巨大な蜘蛛の巣を一網打尽にする。

 

 煙が止む頃には蜘蛛の巣は消え、奥にいるであろうオーク達が幻惑の粉で倒れているだろうと、玄関ホールで蜘蛛達を蹴散らしていくロージィは余裕の笑みを浮かべていた。

 

 

 

―しかし、その余裕は脇腹を掠って伸びるワイヤーによって驚愕に変わる。

 

 

 

「―――んぇ?」

 

 間抜けな声を上げる僅かな間にアンカーが弧を描き、ぐるりとワイヤーが取り囲み、気づけば右腕を巻き込んで拘束されてしまった。

 しまった、と声を漏らし右腕ごとワイヤーで巻かれた自分の状況を知り、いつの間にか足元に群がり粘着糸を張り付ける蜘蛛達に驚愕する。

 

「あたいのハープーン・アンカーは自由に操作できるんだ」

 

 蜘蛛を追い払おうと思った矢先に掛かる声。もがく中で振り向けば、ガスマスクに覆われ、悩ましいボディを米連製のスーツに押し込んだ女性が右腕を突き出していた。

 恐らくこのワイヤーを射出したのは彼女……情報で手に入れたイ・グーの奴隷だったはずのシュレイ=ディアックその人だ。何故、助けに来た自分にこんな仕打ちをするのかと思いつつ、咄嗟に幻惑の粉を放とうとする。

 

―だが!

 

「チェストーッ!」

 

「ふげっ!?」

 

 天井裏より現れたフィル=リードが、ロージィの脳天に竹刀を叩きつけた! 角にもダメージを与えた威力を持つ一刀は、ロージィの意識を見事刈り取った!

 

「うちとったりー!」

 

「お見事!」

 

 ガスマスクを被っているので表情は解らないが、蜘蛛達に群がれたロージィを足場に竹刀を掲げる様は明らかに喜びの顔だろう。シュレイも群がる蜘蛛達も、ワーワーとフィルを賛美する。

 

「さ、油断は禁物だよ!」

 

「おっけーシュレイ!」

 

 目を回して気絶しているとはいえ相手は怪盗と称する魔族。ガスマスクを外すことなく、そして敗北を味わったが故に油断することなく、持っていた拉致道具を掲げ蜘蛛達と協力していく。

 

 

 

―ロージィ・ザ・ファントム、最大のピンチ!

 

 




●本日の成果
・月影永夜
・アネモネ護衛の報酬
・アネモネ及び蜘蛛魔族の臨時雇用
・ロージィ・ザ・ファントム

月影「あんな惨めな仕打ちは初めてだ……次は何をされるというのだろうか……」

オスカー「あ、アレは思い付きでやっただけですので毎度はしません。盲目ですしやることは限られてるでしょうし」

月影「思い付きかよ……(TへT)」

アネモネ「それより妾より奴隷2人が仕留めるとかどうなってるの」

 後半かなり詰め込んだ感。いつもの事です(汗)
 ロージィの能力って地味に凶悪ですよね(対魔忍世界じゃよくあるのかもしれませんが……)

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