1
支那大陸には山東半島の北に河水及び済水、南に淮河、そして江水が流れている。その内の河水──黄河の沿岸に位置する
名族、名家があるのは人間にも優劣があるからだ。有能と無能、働き者と怠け者の評価、待遇が異なるのは当然だった。
優れた氏族は周囲に影響を与える。名族を生む土壌は受け継がれ、偶然では無く必然的に名だたる名士を排出していた。荀氏や陳氏はその代表格とも言える。それが努力では越えられない才能を継ぐ血統と言うブランドで、
人は一生に一度は絶対にモテ期が存在する。この場合、恵まれたスタートであり、恋は探さずともやって来る。
陳氏の嫡男はプレイボーイで後世の文学『好色一代男』『肉蒲団』等に影響を与えており、快活な性格から周囲に好まれ、当代一の男嫌いで難攻不落と目される荀氏の息女とも情事を交えていた。正に
「はぁはぁ……もう良いのか?」
リビドーの旋律に震え、寝台の上で絡み合った男女が一組居た。
虚脱感と激しい動悸、何度も肌を重ねた余韻を切り捨てる様な青年の言葉に相手の女性は表情をしかめた。
「まったく、あんたはもう少し情緒と言う物を考えるべきよ」
「お互いに割り切った関係だから良いだろう」
一回で終わるには勿体無い。だからこんな関係を続けていた。納得した付き合いだった。
青年は覚めた口調で答えると枕元の水差しに手を伸ばす。
女性の表情が陰った。
二人は夫婦でも恋人同士でも無い。やりたくなったらやる。肉体関係だけだ。
「ふん!」
女性の機嫌を損ねて青年は寝台から蹴り落とされた。青年の出した白濁とした体液を溢しながら女性は櫛、手鏡を投げて追撃をして来る。
「痛っ! おい、物を投げるのは止めろ。茶碗は洒落にならないから!」
茶碗を投げようとした腕を掴んで女性の顔を見た青年は目を見開く。
涙ぐむ視線と目が合った。幾らドライな関係と言っても、泣かれるのはこたえる。
「……悪かったよ。
真名を囁かれた女性はそっぽを向く。肩に触れ抱き寄せようとしたが、「ちょっと……もう、止めてよ!」と拒否された。
「……あんたの言う通りよ。
冷たく名前を呼ばれた青年は、これ以上今夜は話しても拗れるだけだと悟り諦めた。愛の証明には言葉こそが大切だが、雰囲気も重要だった。
考え無しで放つ無神経な言葉こそ諍いの火種に成る。自分の言動を反省した。
「じゃ、帰るよ……」
いくら快楽の為とは言っても、愛が無ければ交わろうとは思わない。
「一刀の馬鹿……」
桂花は愛しげに陳羣の真名を呟いた。
一刀が屋敷を出る時、外はまだ暗かった。家人の門番は怪訝そうな表情で門を開けた。
「今日はお泊まりでは無かったのですか?」
「ああ。だけど桂花のご機嫌を損ねてしまったよ」
関係を進めたい桂花の気持ちを
「
一刀は荀氏の屋敷を振り返った。桂花が見送っている様な気がしたからだ。代わりに門番が見張りに立っている。
頭を振って一刀は馬を家路に向けた。
「
桂花の名を呟く一刀の表情は複雑な物があった。
世間では高嶺の花と呼ばれる名家の娘。容姿も好みに合ったので
いつも真面目な桂花。好きな物を好きと言えない、素直に甘えられない彼女の性格も理解してる。
もう会いに来ないでと言われないだけ、まだ縁は切れていない。
(ただの幼馴染み、利用する積もりだった。だけど情が移った)
一刀は古代中国の後漢時代、おそらく末期──しかし何処か違う世界に転生していた。
2
漢の国は元いた世界と似た歴史を辿っている。春秋、戦国、秦、楚漢戦争と言った大筋はそのままだが、男女の性別や文化、技術は微妙に違う。気にしなければほとんど同じ世界である。
(荀彧と桂花、イメージが合わないけど、そう言う事なんだよな)
年齢から考えても、女性の社会的地位が高い事も、一刀の知る歴史と違う。改めて認識した。
(まあ身体の相性は良いんだが嫉妬がヤバイ。付き合ってる訳じゃないのに悪い事をした気にさせる。どこのヤンデレだ。おかげでうちの親も向こうの親も俺達をくっつける気だ)
一刀は涼しげな男でいわゆるイケメンであった。その事は後世に伝わっており、『水滸伝』の二次小説である明代に書かれた『金瓶梅』には密通を成就させる条件の一つとして『陳羣の様な顔』と書かれている。
今も色々な女と遊んでいるが、一刀にとって幸いだったのは、桂花が一刀の顔目的や陳家を利用したりする為に身体を差し出して来た訳では無い事だ。
(口はキツイけどあれで可愛い所もあるし、手放す気は無いんだけどね)
この出逢いを運命と受け入れる。
避妊具も無いので一刀も妊娠したら認知はするのだが、他にも妾を囲っている。この時代、子孫を残し家を繁栄させる事は務めだ。腰を振るだけで楽だから良いかと一刀は考えていた。
祖母、
桂花の機嫌を損ねたままだが、知識欲の方が大きかった。
(急な事で別れを告げれないけど、皆には手紙を残しておこう。誰にも迷惑をかけないけど、これはやり逃げと思われるかな)
「しっかりと学んで来なさい。それと荀家には此方から話を通しておくから心配はいらない」
「それは母上、御手数をお掛け致します」
今回の旅は、
「本当にお前は女にだらしなく
母、
女尊男卑な風潮で男の社会的地位は低い。そうなると親の勧めで結婚する御時世だ。まともに恋愛も経験した事の無い女性ばかりだ。口説かれる体験はそれだけで刺激的な物だろう。過程さえも楽しめた。
(親父も爺ちゃんもそっち方面は淡白だって聞いたけど、婿養子で立場が弱いってのも遠慮の理由だろう)
一刀には予感があった。この世界の著名人はほとんど女性だ。時の流れが淀んでいるのか若々しく美しい。これから現れる三國志の英雄も、間違いなく美しい女性であると。淫らな関係を期待するのも無理は無かった。
「それじゃ、行ってきます!」
挨拶を済ませると一刀は旅立った。
賊と言えば就職活動に失敗した男が多い。可憐な女は獲物に成るが、女性の社会的地位が高い以上、婚活問題からハイエースでお持ち帰りされるのは男の方と言える。
今回、一刀の供回りに従うのも女性だ。陳紀が手配した護衛と供に幽州に向かう。
近頃は
「休憩にしましょうか、一刀様」
「そうだね、
東東は一刀の身の回りを世話する為に陳家から付けられた侍女で、夜の世話にもなっている。
一刀の許可を得て東東は護衛の指揮官に休止を伝えた。
「東東が来てくれて助かったよ」
そう言うと一刀は東東を背後から抱き締めた。
「そうですか」
素っ気ない態度だが東東は一刀の腕から逃れようとはしない。
時代劇で座敷女中が飯盛女の真似事をするのは定番だが、この場合は合意の上だった。
性に対して退廃的でもそれは現代人の主観であり、この時代、子供を作り子孫を残す事は健全な事だった。
それに一刀は、化粧をしていないスッピンの顔を可愛いと言ってくれる。
「ああ。一人旅なんて寂しいじゃないか。東東と一緒なら楽しいからな。まあ、夜は夜で楽しめるだろう?いつもは中々、二人っきりに成れないからな」
一刀は東東の頬に手を添えると唇を重ねた。護衛の目もあるのに舌を滑り込ませ絡める一刀の大胆さに東東は呆れるが、その間も一刀の手は東東の身体をまさぐり攻めは止まらない。
「んぐっ……ちゅる、んっ……」
情欲を掻き立てる接吻を交わし東東の頬が火照る。東東が子宮から疼きを感じた時、一刀は唇を離した。
「あぁ……」
唾液が糸を引きトロンとした目で切なげに吐息を漏らす東東に一刀は優しい声で言った。
「続きは宿に入ってからだ」
「……はい、一刀様」
一刀が乗る馬は良馬で200万はする。これは一刀の妾全員を養う費用より高い。陳家にはそれだけの財があり、一刀の女遊びも容認されていた。
それでも護衛を雇い、幽州程の遠方まで遠出する機会は多くない。これも勉学の為と言う理由があってこそだった。一刀は東東との旅をしっぽりと楽しんだ。
3
一刀が幽州に落ち着いて勉学に励んでいた頃、都では大尉や司徒の椅子を巡って現職者を引きずり落とそうと高官達が政争に励み策謀に暗躍していた。
宦官の中でも呂強は清廉潔白な人物として知られていた。君側の奸を討ち、罪人を解き放てと持論を展開し帝に影響を与えている。
しかし大多数の宦官はあざとく、小狡く、しぶとくやっていた。
他にも異民族の問題がある。東胡の鮮卑が毎年の様に漢を脅かしていた。
生きるとは闘争であり、男女の交わりもより優秀な遺伝子を残す為の闘いと言える。即ち告白した方が負けであり『かぐや姫は告らせたい』な駆け引きのやり取りがあった。
結果、勝者は相手の身体を貪る事が許される。
……パン。パン。パン。学舎から離れた森の中で単調な音が鳴り響く。熱い性器を打ち込み抉る様に腰を動かすのは一刀だ。
「はふっ……。んっ、ん……あぁ……!」
万が一、人に見られたら等と気にする事も無く、力業で貫かれる女が居た。本当はしたかった。だけど社会的な立場から貞淑さが求められていた。
「んぁ……はぁっ、激しいよ。ああぁ……一刀んっっ!」
始めるとたがが外れた。一回も千回も変わらない。誘ったのは女からだった。
健全な育成を目的とする学舎でも欲は発散されない。
初めは冗談、今は本気で楽しんでいる。こんなに気持ち良いならもっと若い頃から楽しんでおけばよかった、と失われた機会を取り戻す様に快楽を貪っていた。
名士である
一瞬だけ師としての責任感を思い出すが、快楽に流されてしまう。知性と理性は一刀の持つ雄の魅力に抗えなかったから。
「せ、先生。もう出そうです」
喘ぐ孔融の腰を掴んで背後から突き上げる一刀は熟れた肉体を堪能していた。
九歳にして侍女と経験した早熟な一刀は女性との経験も多い。一刀の胆力はこの程度では尽きないが、
「我慢……っ、しなさい」
イクとはどう言う事か。地に足の着いていない浮いている状況を言うのかもしれない。
精神の抑止力を外界から解き放った先だ。本当は容易く気持ち良さは手に入る。
「はぁ、くぅ……」
艶っぽい吐息が一刀をたぎらせる。
一刀はこれまで色々な女を抱いて来た。自分より社会的地位が高い名士は初めてだった。今のような理屈っぽい相手も居たが、同い年か年下だった。年齢を重ねた分だけ傲慢さは厚化粧の様に本性を覆い隠しておる。閨でも取り繕っている。
偽物、紛い物では興醒めする。何故抱いているのか。何故抱かれているのか。矛盾する。
年上のオトナな女もさらけ出せば、甘えさせて貰える。
蜜液は溢れ噴き出していた。一刀は主導権を取り戻すべくラストパートに向かい腰の角度を調整する。
「ええええっ!?」
叫び声が聴こえた。振り向くとピンクブロンドの髪をした少女が腰を抜かした様にへたり込んでいた。
「あら、桃香ちゃん。どうしたの?」
───ちょっと出た。
女は
一刀は苦笑を浮かべる。
「ろ、盧植先生がお呼びで……」
とりあえず二人は慌てず騒がず身嗜みを直すと、腰砕けな少女に声をかけた。
「桃香ちゃん、大丈夫?」
「ええっ!? ええ、は、はい!」
くすっと笑い声を漏らした孔融とは対極的に少女───桃香の頭はぐるぐると混乱していた。
「大丈夫です! 私、大丈夫です!」
孔融は顔を火照らせた桃香の反応に気を良くした。まだ男を知らない少女を前にして、恥じらいとは正反対の感情、女としての優越感から桃香の口止めをしない余裕を見せた。
「それじゃ私達、行くから」
「は、はい」
二人は学舎に戻り、その場に桃香は座り込んだまま残された。
4
「先生。そろそろ手を放して下さいよ。皆の目がありますので」
「あら、そう? 私はこのままでも良いけど」
男女七歳にして席を同じゅうせず、と言うが孔融は年下の一刀との関係を楽しんでいた。
生徒の中でも数少ない男である一刀は普段から周りから注目を浴びている。孔融と指を絡めながら手を繋いでいる所を目撃されれば噂が広まるのも早い。
せっかく好意を向けてくれている少女達が居るのに自ら機会を潰す真似はしたくなかった。……バレたらめんどくさいし、騙してる訳でも無い。男の性である。
そんなやり取りがあった数分後、森を抜けて学舎に到着した。
盧植の私塾は儒学の思想に基づいた教育カリキュラムで運営されている。それ以外に、九江太守として行われた
実績をあげた元太守の発言は重宝されている。私塾の運営はほぼ私費で賄われており、それ故に縁故を重んじられ才能を認められた者しか入門出来なかった。
「子幹殿、お呼びと伺い参りました」
「久し振りの歓談をお邪魔して申し訳ありません」
男女の機微に疎いと言うか潔癖な所がある盧植は、可愛い服や綺麗な服を好むのと同様に、他者にも清い交際を求める。その為、一刀と孔融の関係を、教え子の様子を気にして訪ねて来た美しい師弟愛として見ていた。
「いえ、大切なのは供に過ごした時間では無く密度ですから」
情事の途中を邪魔されながらも孔融は余裕を持って受け答えをしていた。
「そうですか」
盧植は柔らかい笑みを浮かべる。
幼女から人妻まで守備範囲の広い一刀はそんな二人に視線を向けていた。賢者として名高い二人は見目麗しく、若い一刀にとって目の保養だから。
盧植は酒を嗜む。一刀は自家製の酒を入門の手土産に進呈した所、お世辞では無く気に入ったそうで感謝された。
───相手が喜ぶなら嬉しい。それが美しい人であれば、笑顔を手に入れたく成る。花を手折る気持ちと同じだ。
「痛っ」
一刀は、盧植に注ぐ邪な視線に気付いた孔融に足を捻られ、苦痛の声を漏らした。地味に痛む箇所だ。
久し振りに再会した孔融の糖蜜パイを楽しむはずだったが、盧植の用事があるらしい。
「それで、用件を伺いましょうか」
「同じ儒学を学ぶ者として一刀君や周囲の評判を聞き、実際に貴女を知る事で、朝廷に推挙したいと思いました。いかがでしょう?」
学問と教養は身を立てる。それは知ってるが、孔融と一刀の関係は儒学に真っ向から逆らう物だった。
儒学では未婚男女の交際を認めていない。極端な女性上位社会であった為に、ななじ
詩で恋を語る事はあっても、有識者にとって夫婦関係以外での恋は論じられず快楽は否定されていた。
この世界における文化も儒学の教えに逆らう物だった。
(禁欲的な割には露出の高いファッションやエロ本、BL本も店で売ってるし、どうなんだろうな)
朝廷では品行方正な人物が求められる。外面は良いが、一言で言えば
5
孔融が盧植の話を聞いていた頃、桃香は森の中で一人、動けずにまだ居た。
桃香は姓を劉備、字を玄徳と言い、
桃香は中山靖王劉勝の末裔を名乗っているが、その暮らしは貧しく
元々、漢は多文化が入り乱れており、都や大都市を除けば文化水準は不均一な物が見られた。かつての燕に当たる幽州は、異民族と接する事から非常に開放的で、専業娼婦──遊女以外に一般女性による売春行為が見受けられた。
つまり生きる為に盗みと殺人以外は何でもやったのである。
桃香にとっての転機は叔母の援助で盧植の私塾に入門出来た事だ。
「良いかい桃香。お前は見た目も悪くない。将来、うちの倅の妻に成るんだ。その為には学を身に付けておいで」
そう言う叔母に「はい、わかりました」と返事を返す他に選択肢は無かった。
知らない事を学べる。授業は楽しく新鮮だった。
授業が休みの日は、街で道行く男に声をかけて小遣いを稼いだ。
「おじさん、おじさん」
「何だい、お嬢ちゃん」
青年育成条例違反の心配も無い時代だが、大人が少女相手だと外聞がある。人目を避けて路地裏に誘った桃香は、少し手や口で処理してやるだけだ。満足した男は多目に小遣いをくれたりもする。だから桃香は胸を寄せて挟み込んで、ぱくりと口に咥えると技巧を駆使して奉仕した。
「ちゅぱっ、んっ……ちゅっ」
「んほぉ! お嬢ちゃん、その歳にしては激しいねぇ」
───頑張ったら頑張っただけ幸せになれるから。
愛撫を続行して射精を促す。
すっきりした男は小遣いには十分な額を渡してくれた。
「また頼むよ」
口元を拭い路地から出て来た桃香は本屋の前に差し掛かった。店頭にはジョージェット・ヘイヤーの様なロマンス小説からハーレクインに類する物、山川純一の様なBL本まで並んでいる。
(阿蘇阿蘇の最新刊、出たんだ)
年頃の少女らしく桃香もファッションに興味を持っていた。華美な服装に憧れを感じるが先立つ物は無い。
(叔父さんに援助して貰おうかな)
叔父は恐妻家で叔母に隠れて浮気をする度胸も無い。幼い頃から桃香と関係を持つ事で便宜を図ってくれていた。
そんな事を考えていると従者を連れた青年が店に入る姿が見えた。
「ここからここまでくれ」
青年が棚を指差し大人買いをしていた。
(格好良い!)
それが一刀を初めて見た瞬間だった。
桃香にとって男は生活の糧を得る手段、その一つでしかなかったが、桃香は初めて男に憧れを感じた。
私塾での一刀はモテた。男女関係を臭わせる物は無かったが、桃香から見て経験者である事は分かった。
一刀の事を考えると桃香は身体が熱くなるのを感じた。他の男との行為では感じた事の無い何かだ。他の少女達に向ける笑顔と同じ物を向けられた時、トクンと鼓動を感じた。
いつしか一刀を目で追う毎日だった。
そして一刀の師である孔融がやって来て、二人は森に入って行った。まるで恋人達が逢瀬を楽しむかの様に───そう考えた時、嫉妬してる事に気付いた桃香は驚きを感じた。
恋に恋をする前に男との行為を覚えた。そんな自分が、一人前に嫉妬をしている。まるで恋をしているかの様に。その事に衝撃を覚えた。
「桃香、文挙殿は一刀と一緒かしら」
「はい先生」
「丁度良いわ。二人を呼んで来て」
大切な話がある。盧植にそう言われて桃香は二人を追って森に入った。
(何か美味しい物でも食べてるのかな?)
森には食材となる生き物が幾らでも居た。以前にも猿を捕まえ、毛を焼いてぶつ切りにして鍋で煮た事があった。臭みが強いが密かな楽しみに成った。
他にもおやつとして芋虫を焼いて食べた。蛇を焼いて食べた時は、硬かった。
(んー。私にも分けて欲しいなー)
でも二人は情熱的に森の中で激しく行為を行っていた。
「はぁ、はぁ……んっ……」
一刀に身を任せる孔融は、桃香も驚く程の艶やかさを見せていた。愛撫する一刀は、桃香を一方的に蹂躙する男と違い親密な情愛を感じ取らせた。だから───ズキリと心が傷んだ。
一方で桃香の身体も恥ずかしく反応していた。内股を伝う感触にはっとした桃香は思わず叫んでしまった。
振り返った二人に対して桃香はばつの悪い物を感じた。───二人の行為を見て濡らすなんて。
身嗜みを直した孔融が優しく手を差し伸ばしくれた。だけど桃香は慌てて手を振って断った。火照った身体がひやりとする。穴があったら入りたい恥ずかしさだった。
孔融はそれを、男を知らない少女の反応だと勘違いしていたが、桃香は卑しい女だった。
6
孔融が申し出を受け任地に向かった頃、一刀は引き続き勉学と人脈の構築に励んでいた。
「政において大切な事は義と利です。皆が情に流されれば混乱するだけです。その事を忘れない様に」
師の言葉を赤い髪が美しい少女は熱心に書き写していた。その横顔を眺めて居た一刀は授業が終わるのを待った。
「本日はここまで。以上、解散」
少女に近付くと一刀は声をかけた。
「なぁ、伯珪。ムラムラしたから一発やらせてくれないか」
その言葉に少女は目をぱちぱちと瞬きさせた。そして叫ぶ。
「はああああっ!?」
人は一人で生きていけるが、情熱的に求められる事に憧れもあった。独り身は寂しすぎる。───だけどストレート過ぎて驚いた。
「な、何を」
一刀は少女の手を優しく握り締めた。
「手より貝って言うだろう。高官のジジイに迫られるよりは俺に捧げた方が伯珪も楽しめると思うぞ」
「ええっ! ……そう言うのは、もっと雰囲気を大切にだな。……あ、私だってお前の事を、嫌いじゃないし」
ごにょごにょと顔を下に向けて言うが、有無を言わさず一刀は伯珪を馬小屋に連れ込んだ。
顔が良く家が裕福であった為に、歪んだ倫理観で育った一刀は釈然としない女の感情に気が付く事ができない。
自分が出会った女達に仕出かした事が、どの様な結果をもたらすかを知識としては理解している。大抵は相手が好意を持っていたり、そうでなくても家の財力や影響力で上手く抑えられた。だから一刀はいつも強気に攻めた。
傍らに積み上げられた飼葉の傍らに腰かけて一刀は、少女の首筋に接吻をする。
「ひぁ!」
少女は甘く痺れる様な感触に背筋を震わせて、寄り添っていた一刀に体重を預けた。
「伯珪」
一刀は少女の背中を撫で下ろしながら、しっかりと隆起して自己主張する少女の胸に手を這わせ様とした。
「こう言う時は真名を呼べって……んっ!」
少女の唇を閉じると一刀はニヤリと笑い、真名を囁いた。
「白蓮」
震えながら息を吐く白蓮は緊張していた。授業が終わって胃袋は空腹を覚えていたが、乙女心が好意を抱いている男性とのチャンスに頑張れと訴えていた。
「あっ!」
花弁を開いた一刀は蜜壷に指を挿入する。白蓮は怯えと歓びの混じった声で求めた。
「優しくして……」
巧みな指使いの愛撫で一刀が白蓮を焦らしていると、楽しい時間は唐突に終わりを告げた。
「公孫賛殿!」
外から白蓮を呼ぶ声が聴こえた。一瞬、邪魔をされたからか白蓮の目が虚ろになった。
「あわわ!」
その後、一刀を突き飛ばして白蓮は馬小屋から飛び出していった。
戻ってくるかも……なんて甘い期待はしない。
「ふーん。惜しかったな」
実家から迎えの馬車がやって来た白蓮は、別れの挨拶も慌ただしく私塾を出て行った。
「先生、白蓮はあんなに慌ててどうしたんですか?」
見送りの時、白蓮は悲しそうな表情を浮かべていた。
盧植は真名を預けられているならと一刀に説明した。
「朝廷から赴任の辞令が届いたそうよ」
中央では太尉の
一刀は驚いたが、朝廷の命令ならあの慌ただしさも仕方が無いと納得する。
「白蓮の赴任先は幽州ですか」
頷く盧植。
過去は振り返らないが、愛した女は忘れない。結ばれた縁は切れない。
タイミングを逃すと関係は遠退くが、近ければまた会える。もっと親しく成れる。むしろ自分から会いに行こうと一刀は考えていた。
今は自立した女が多い時代だ。男を養ってくれる女が最低、七人居れば、日代わりで週を過ごせる。だけど一刀は逆に女を囲える男だった。