※この作品はR-18です。

十二連合国   作:氷野心雫

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精霊使い

「ねぇ、ちょっと」

 ガディアに背負われたシーファーが声を掛ける。耳元で話し掛けられ、背筋がぞくりとするガディア。

「……何だ」

「どこに向かっているの?」

 問われたガディアは歩みを止めず、視線を一度シーファーに向けると、また前を向く。

「お前はいない事に、護衛兵が気付かない訳はないからな。お迎えが来てる筈だろ?」

 そう言って、迷う事無く森の中を歩き、いきなり目の前が拓けた。そこは、断崖絶壁の崖の上。シーファーは驚き、背筋が凍る。

「どうするつもり?」

「さあ?どうしようか」

 含み笑いをするガディア。シーファーはガディアから降りようと暴れる。しかし、がっちりと足を掴まれ、降りられない。

「降ろして!」

「……お前、何か勘違いしてないか?」

「……え?」

 シーファーの間抜けな表情にガディアは溜め息をつく。

「俺はお前をとって食おうなんて思ってない。俺は、お前を護衛兵がいる所に連れて行っているだけだ。」

 ガディアの言葉に目を丸くするシーファー。

「……なら、どうして笑ってたの?」

「笑ってた?俺が?」

 問われたガディアは戸惑う。自分の手を口元に触れると、少しだけ口角が上がっている事に気付く。今後はガディアが目を丸くした。

「……」

 ゆっくりと崖の近くに近付くガディア。シーファーは慌てた。

「ちょ、ちょっと!このまま行ったら落ちるわ!」

 シーファーの抗議に、耳を貸さず、ガディアはどんどん近付く。そして、崖からまるで軽くジャンプする様に飛び出た。シーファーは恐怖のあまり、目蓋を閉じ声にならない悲鳴を上げる。

 

(私、死ぬのね)

 

 ところが、一向に衝撃も落ちている感じもない。シーファーは恐る恐る目蓋を開けた。目蓋を開いて驚く。シーファーを背負ったまま、ガディアは空中を飛んでいた。もう何度目の驚きだろうか。シーファーはガディアを見つめる。それに気付くガディア。シーファーの驚いた表情に微かに笑った。

 

(こんな表情も見せるのね)

 

 ガディアの笑顔にシーファーは見惚れる。

「……貴方、一体何者なの?」

 疑問が自然と口から溢れ。

「お前から見て、俺は何者に見える?」

 そう言った。その表情はどこか妖艶だ。シーファーはゴクリと生唾を飲み込む。しばらくガディアは飛び、小さな丘に建つ小屋へと降りた。

「ここ、ギルの家だわ」

 それを聞いたガディア。シーファーを背負ったまま、小屋の中に入る。小屋の中には、ギルとレン。護衛兵が数人と獣達を退けた精霊が二人いた。

「姫様、どうしてすぐにいなくなるのですか!」

「おお、シーちゃん無事じゃったか」

『ガディア、姫様と何やってたんだ?』

 三者の言葉が重なる。ガディアはシーファーをゆっくりと降ろし、小屋の外へ向かう。

「ガディア、どこに行くんじゃ」

 すぐさまギルがガディアを止める。ガディアは面倒臭そうに振り向く。

「森だよ。そいつのせいで、色々出来なかったからな」

「そいつとは何じゃ。シーちゃんは、王女じゃぞ」

「俺には関係ねぇよ。もういいか?」

 ガディアの態度にシーファーの鼓動が軋む。それに気付いたのはレンだった。

「貴方、何の権限があって、そんな言い方をされるのですか?」

 言われて、ガディアの視線がレンを捕らえる。鋭い視線が全身を貫き、レンは震えた。

「俺は、やらなきゃいけない事があるんだよ。邪魔してるのは、おたくの王女様だ。」

「まぁまぁ、レンちゃん落ち着いて。ガディアもそう怒るな」

「ギル殿」

 ギルの仲裁で、二人は口を閉ざす。シーファーがその様子を黙って見ていた。

「ねぇ、ギル。彼空を飛んでいたの。どうして?それに、そこにいるのは、風と地の精霊でしょ?何故精霊がここにいるの?」

 疑問をぶつけるシーファー。ガディアの表情を見ながら、ギルが口を開く。

「ガディアは精霊使いじゃ」

「……っえ?」

 ギルの言葉にシーファーは固まる。ガディアと精霊二人は小さな溜め息をついた。シーファーの思考は混乱している。ガディアの顔を見て、その表情を窺った。すると、ガディアもシーファーを一瞥。そのまま背を向け、扉に手を掛けようとした。

「待って!」

 咄嗟に呼び止めるシーファー。ガディアの前に立ち塞がる。

「貴方、精霊使いなのね。」

「だから何だよ」

「私と戦ってくれない?」

「……はぁ?」

 呆れた表情のガディア。シーファーの方は、目を輝かせている。対称的なガディアとシーファー。

「私、強い人と戦いたいの。精霊使いは、この世界で一番強いって聞いた事があるわ。だから、私と戦って」

「……はぁ?何で俺がお前と戦わないといけないんだ。面倒くせぇよ」

「お願い、戦って」

「嫌だ。面倒くせぇ」

 お互い平行線で話が進まない。二人の言い合いをその場にいた全員が呆れていた。

「ガディア、ワシからも頼む。一戦だけで良いから、戦ってくれんじゃろうか」

 ギルが頭を下げた。ギルの行動にガディアは困惑する。育ての親が、他人の為に頭を下げたのだ。そんな行動をさせた相手、シーファーはガディアをアツい眼差しで見つめている。ガディアは大きく溜め息をつく。

「分かった。一戦だけだ」

「本当?やったぁ!」

 シーファーは飛び上がり喜ぶ。破れたドレスの胸元が飛ぶ度にフルフルと揺れて、ガディアは視線を反らした。ウェントゥスがそんなガディアをニヤニヤしながら見ている。

「それじゃあ、試合は二週間後」

 話が決まったのだった。

 

 二週間後

 

 挫いた足も完治し、シーファーは意気揚々でギルの小屋へと向かう。レンも一緒だった。小屋の外ですでにギルが待っている。しかし、ガディアの姿はなかった。

「ギル、彼は?」

「ああ、ガディアなら、もうそこの丘で待っておるぞ」

 そう言って、小屋から少し離れた丘を指差す。シーファーは駆け足でその場所へ向かう。少し明るめの緑色の作業服を着ているガディア。明らかにやる気は無さそうだ。その場に腰を降ろし、胡座に頬杖をついている。ガディアがシーファーを見た。そして驚く。シーファーの姿はTシャツを少しまくし上げ、お腹が見えていた。そればかりではなく。Tシャツ自体が全体的に小さく、シーファーの胸元を強調し、下の方はお尻が見える位の短パン姿だったから。一気にガディアの顔が真っ赤に染まる。目のやり場に困り、視線を反らした。シーファーの方は、ガディアと一戦交える事に、身体がウズウズしているようで、準備体操をしている。

「……お前、その格好で試合するのか?」

「え?ダメかしら?この方が動きやすくて良いんだけど」

「……」

 呆れて言葉が出てこないガディア。開いた口が塞がらない。

 

(こいつ、ワザとか?それとも天然か?)

 

「ねぇ、早く始めましょ」

 目を輝かせシーファーは言う。ガディアは腹を括った。徐に立ち上がり、シーファーを見据える。

「お前が負けたら、俺に関わるなよ」

「……分かったわ。でも、私が勝ったら何でも聞いてくれる?」

「お前が勝ったらな」

 そう言って、審判役のギルに目で合図する。頷くギル。

「では、先に一本取った方の勝ちで良いな」

「ああ」

「ええ」

 ギルの言葉に同時に返す二人。視線がぶつかり、シーファーは構えた。

「では、始め!」

 ギルの言葉で、先に動いたのはシーファー。素早くガディアの懐に飛び込み、鳩尾目掛けて拳を振り上げる。ガディアはそれを意図も簡単に避けた。シーファーの拳が、今度はそのまま勢いよくガディアの頭上に振り下ろされる。それもガディアは避けた。連続攻撃でシーファーの拳がガディアに向かうも、ガディアは全て流す。そして、ガディアの反撃。シーファーの腕を掴み、後ろ手に回す。シーファーはそれを返し、ガディアを投げた。一旦、間合いを明ける二人。

「ちょっと!本気で来てよ!」

 シーファーは不貞腐れていた。本気を出していないのがシーファーには分かっていたからだ。言われてガディアは面倒臭そうにする。

「本気出したらお前、怪我するぞ」

 その言葉にシーファーはキレた。ガディアに向かって、飛び蹴りをする。すかさず、ガディアはシーファーの足首を掴み、押し倒す。そして、拳をシーファーの眼前に突き付けた。

「……俺の勝ちだ」

『さあ?それはどうかな?』

 その言葉と共にガディアの身体が吹き飛んだ。驚くガディア。

「ウェントゥス、どういう事だ!」

『どういう事も、俺は姫様の味方するぜ』

 風が刃の様になり、空を切る音と共にガディアの服を切り裂いていく。衝撃で後ろに倒れ込むガディア。

「アルバ!」

『……』

 ガディアの言葉に、アルバは反応を示さない。

「……くそ!」

 ガディアは起き上がり、ウェントゥスに向かおうとするが、いきなり足元に何かが当たり転ける。

「……い、いてぇ」

 起き上がろうとして手をついた。温かく、柔らかな感触。ガディアは手に触れる感触を何度も確認する。

「貴方、どこ触ってんのよ……」

 視線を少しだけ上に移動する。目の前には顔を真っ赤に染めたシーファーの顔があった。冷や汗を掻くガディア。手元を見ると、そこにはふくよかな膨らみが。それは、シーファーの胸だった。

「…………エッチ~~!!」

 シーファーの平手打ちが炸裂し、シーファーの勝利が確定したのだった。




 次回は、ちょっとムフムフあります!
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