※この作品はR-18です。

十二連合国   作:氷野心雫

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忍び寄る魔の手

 レオ国城内

 

 

 

 

 ガディアは暗い地下牢で手枷を付け、天井から吊るされていた。側には、木刀を持った兵士がガディアの身体に打ち付ける。

「……がぁ!」

 苦痛の表情で声を押し殺し、ガディアは無言でその痛みに耐えた。ガディアがこの様な状況になったのは、数日前に遡る。それは、シーファーとガディアが初めて身体を繋げた日だ。二人は眩しい朝陽を浴びながら、目を覚ます。しばらく見つめ合い、キスをする。

「私、そろそろ帰らないと」

「ああ、そうだな。」

 互いの服を着せ合い、まだ、城内の人間は起きておらず、ガディアは護衛兵に見付からないよう自室まで送った。しかし、目撃者がいたのだ。

 

 その後、シーファーが公務の為、レオ国にいない間に、フォル王から城へ呼び出されたのだ。ガディアは謁見の間で、フォル王と初めて対面する。鋭い眼光がガディアを見下ろした。

「お前がガディアか?」

 息さえ容易に出来ない程の重苦しい空気。フォル王の身体から黒いオーラが見える。ガディアは、少しだけ頭を下げて、口を開いた。

「……はい」

「愛娘の純潔をお前が奪ったそうだな」

「…………」

 誰かが密告したのか、誰も知らない筈の事をフォル王は言っている。ガディアは目を伏せた。

「分かっているだろうが、極刑は免れないぞ」

 つまり、死刑である。ガディアは口を開こうとしたが、すぐに閉じた。突如、謁見の間の扉が開く。ギルが息を切らし、ガディアの側に駆ける姿が。

「フォル王、何かの見間違えでは」

「護衛兵が目撃したのだ。間違えはない。」

「王、どうか極刑だけは。私に免じて」

 そう言って深々と頭を下げるギル。フォル王は深い溜め息をつく。そして、ガディアを睨んだ。

「……王族の女性に手を出したのだ。しかも、我、愛しのシーファーに。だがしかし、ギルには恩義がある。よって、地下牢にて鞭打ち等の痛みに耐えれば許そう」

 そう言って、フォル王は謁見の間から出ていった。二人きりになるガディアとギル。ガディアはギルの顔を見れなかった。

「ガディア、本当の事を言っておくれ。シーちゃんと」

「……ごめん、ギル爺。嘘じゃないんだ。俺は彼女の純潔を奪った。でもそれは、彼女の意思を聞いてから。合意だったんだ。」

「な……なんじゃと……」

 ガディアの言葉に愕然とするギル。足元がフラフラと覚束ない。その場に座り込むギル。ガディアは側で腰を下ろした。

「彼女が何で俺に純潔を捧げたのか。彼女の気持ちを聞いていないから分からない。気の迷いだったのかも知れない。でも、俺は彼女の事が好きなんだ」

 ギルはガディアの目を見る。その気持ちに偽りは無いようだった。

「ならば、ガディア。その気持ちはシーちゃんに伝えたのか」

「……言ってない」

 言って、視線を落とすガディア。ギルはガディアを見据え。

「ガディアよ。その気持ち伝えるべきじゃ。」

 ギルの言葉にガディアは頷く。そして、兵士と共に地下牢へ向かったのだった。

 

 

 

 

 森の中

 

 

 

 

 ウィルゴ国からの公務を終えたシーファーが、レオ国へと向かっていた。侍女のレンと、楽しく談笑する。

「姫様、最近女らしくなりましたね」

 唐突なレンの言葉。シーファーは頬を染めた。

「え?いきなりどうしたの?」

 レンは微笑んだまま。

「前の姫様は、女らしさの欠片も有りませんでした。しかし、ここ数日で女性らしさっとでも言いますか、色気を感じます。もしかして、あの精霊使いの青年と何かありましたか?」

 ガディアと身体を繋げてから、シーファーの表情や仕草は、誰から見ても変化していた。以前の様なTシャツ、短パン姿はなくなり、鍛練の時は武具を身に付ける様に。城内で歩く時もきちんとドレスを着て、夜は下着姿のまま寝なくなった。それだけではなく、時折見せる女の顔が、周囲の者達をより一層惹き付けている。

「……レン、私ね」

「はい」

「ガディアの事が好きなの。」

「……やはり、そうでしたか。」

 レンの反応にシーファーは目を丸くする。

「知ってたの?」

「……はぁ、姫様。ご自身は自覚ないかも知れませんが、分かり易いですよ」

「……ええ!そうなの!?」

 シーファーの驚く表情にレンは溜め息をついた。

「それは兎も角、そのお気持ち、ガディア様にお話しましたか?」

「そんなの話せないわ」

「どうしてです?」

「……だって、身分が違うもの」

「それ、本気で言ってます?」

 レンは怒っていた。シーファーは目を伏せる。

「姫様、例え身分が違っても、お気持ちだけは偽らず、正直に話された方が良いと思いますよ」

「……分かったわ。」

 言葉が切れたと同時に馬車が止まる。シーファーとレンは顔を見合わせ、窓の外を見た。すると、覆面の男達が馬車の中に入ってくる。

「何者ですか!」

 レンがシーファーを背に庇いながら男達の前に立ち塞がったが、白い布切れで鼻と口を塞がれる。そして、意識を失った。シーファーがレンの身体を抱き起こそうとするが男達に拘束された。

「私が誰か分かっているの?」

「レオ国の第一王女だと知っている。さぁ、王女様。我々について来てもらおう。」

「嫌って言ったら?」

「無理矢理でも連れて行きます。あのお方がお待ちしておりますよ」

 そして、レン同様、白い布切れで鼻と口を塞がれ、シーファーの意識は落ちた。

 

 

 

 

 レオ国城内

 

 

 

 

 城内が慌ただしい。公務を終えたシーファーが帰ってこない。もうすでに夕刻を過ぎている。フォル王は広間で右往左往していた。シーファーの状況が掴めないからだ。

「シーファー。どこに行ったのだ」

 焦るフォル。リュイも青ざめ、オロオロしている。そこに、ギルが入ってきた。

「フォル王、お話があるんじゃが」

「ギル、悪いが私はそれどころではない」

「シーちゃんの居場所なら、分かるぞ」

 ギルの言葉で、その場にいた者達がギルを見た。フォル王はギルに駆け寄る。

「本当か!シーファーはどこにおるのだ!」

「それはワシには分からん。分かるのは、ガディアじゃろうな」

 その人物の名に、眉を吊り上げるフォル。

「ガディアを出してくれぬか?」

「断れば?」

「シーちゃんの行方は分からぬままじゃな」

 苦虫を噛み潰した様な表情のフォル。

「…………ガディアをここへ」

 フォル王の命令に兵士が地下牢へ向かう。全身血に染まり、満身創痍のガディアが広間に入る。兵士に支えられながら、床に座るガディア。ギルはガディアに近付く。

「ギル、この者にシーファーの居場所が分かるのか?」

「ああ、分かるぞ。ガディアは精霊使いじゃからな」

 表情が一変するフォル。ガディアをじっと見つめた。

「……精霊使いだと?」

「話しは後じゃ。ガディア、良く聞け。シーちゃんが行方知らずになった。お前の力が必要じゃ」

「…………」

 ギルの言葉に無言のガディア。フォル王はガディアに向かい頭を下げる。

「頼む。シーファーの居場所を見付けてくれ!」

「……ウェントゥス」

『おう。姫様の居場所だろ?』

「どこだ……」

『……ピスケス、しかもちょっとヤバイ状況だ』

「シーファーの身に何が?」

『ピスケスの次期国王、ジュギがシーファーの服を無理矢理』

 その言葉でガディアが立ち上がる。目は怒りでギラつぎ、光っていた。フォル王、ギル。その場にいた者達がその殺気で身動きが取れない。

「イグニス、アルバ。すぐにシーファーの元へ行け。ウェントゥスとカエルムは俺と来い!ヴァッサー援護頼むぞ!」

『『『『『仰せのままに』』』』』

 瞬時に精霊達が集まり、命令を実行にうつす。ガディアは怒りのオーラを纏い、レオ城を出たのだった。




 次回は、ちょっと戦う場面ありです。
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