ピスケス国城内
誰かに頬を触れられ、目を覚ますシーファー。微睡む目に映る人物がガディアに見えた。
「……ガディア」
その人物を抱き締めるシーファー。しかし、身体は拒絶反応を示し、悪寒がはしる。シーファーはすぐに意識を覚醒させた。ガディアと思っていた人物は、ジュギだった。気持ち悪くなる程の笑顔。それは、明らかにシーファーを犯そうという意思を表し、シーファーは飛び上がる様にジュギから離れようとする。シーファーの背後で誰かが立っていた。シーファーはそちらに振り返る。
「……あ…貴方…」
そこにいたのは、シーファーがピスケス国に行く時について来ていた少年兵だった。青ざめるシーファー。少年兵がシーファーに近付く。
「シーファー様、どうして逃げるのですか?」
「………貴方、ピスケスのスパイだったのね」
シーファーの言葉にニタリと笑う少年兵。
「そうですよ。僕はピスケスの兵です。」
「……私をどうするつもり」
シーファーはゆっくりと二人から離れ、扉の前に立つ。ジュギの方はベッドの横に腰掛けたままシーファーを見つめていた。少年兵が口を開く。
「逃げられませんよ。部屋の外には兵士が見張っています。それに、地下牢には侍女がいますからね」
言われて、シーファーはレンの事が気になった。それを察知する少年兵。
「心配はありませんよ。彼女には手出ししていません。……貴女がジュギ様に抱かれれば、ですが」
「貴方の目的は何?」
「僕の目的ですか?」
少年兵の目の色が変わる。
「目的は、貴女にジュギ様の子供を妊娠させる事ですかね」
そう言って、シーファーに素早く近付き、逃げようとしたシーファーの腕を、後ろ手で縛った。すぐさまベッドに押し倒されるシーファー。抵抗を試みるも、後ろ手で縛られて身動きが取れない。その間に、ジュギがシーファーのドレスを剥ぎ取り、袖の所をナイフで切り付け、破り取った。下着姿にされたシーファー。ジュギの息が荒くなり、シーファーの髪をいきおい良く嗅ぐ。それだけで、シーファーの不快感が増していく。
「ああ、シーファー。ようやく君を抱けるんだね。」
シーファーの唇を指でなぞり、恍惚とした表情でジュギが語る。
「触らないで!」
シーファーが声を上げても、ジュギはそれすら幸せに感じ、シーファーの胸を下着越しから揉みし抱く。悪寒がはしる。気分が悪くなりそうだった。身動ぎするシーファーを、ジュギはじっと見つめる。そして、唇にキスをしようと近付く。シーファーは必死に顔を反らした。少年兵がシーファーの顔の動きを止め、ジュギが唇を塞ぐ。
(いや!ガディア!)
部屋を照らす炎が揺らめいた。ジュギの手がシーファーの下肢に向かう。足を閉じ、力の限り抵抗をするシーファー。
「侍女がどうなっても良いのかい?」
ジュギがシーファーに言う。シーファーの脳裏に、レンの顔が浮かんだ。同時にガディアの顔も浮かび、シーファーの瞳に涙が溢れた。身体の力を抜いた隙に、ジュギの手が、シーファーのショーツを剥ぎ取り、秘所を撫でる。
「まだ濡れてないな。早く入れて中に出したいのに」
「ジュギ様。それならこれをお使い下さい」
言って、少年兵は瓶を差し出す。
「これは?」
「これは、媚薬ですよ。これを彼女の秘所に垂らすと、すぐに濡れて、ジュギ様のここを欲しがりますよ。」
指を指した先には、天を仰いだジュギの分身。ジュギは生唾を飲み込み、シーファーの秘所に媚薬を垂らす。急激に身体が火照り出して、シーファーは見悶えた。ジュギの目がギラギラと輝き、シーファーの秘所に指を這わせる。グチュリと濡れた秘所。
「凄い、もうこんなに濡れて」
「さあ、ジュギ様。ご存分に愛を注いで下さい。」
ジュギの分身がシーファーの秘所に宛がわれ、シーファーの顔が青ざめる。
「いや!誰か、助けて!」
「無駄ですよ。誰も助けに来ません。ジュギ様の子供を妊娠するまで、朝も昼も夜も、ジュギ様に愛を注がれるんです。」
シーファーが動けないように、少年兵はシーファーの足を掴み、持ち上げた。覆い被さるジュギ。
(ガディア……、私、貴方以外の人に抱かれて汚される。ご免なさい。……ちゃんと気持ち伝えれば良かった)
目蓋を強く閉じ、奥歯を噛み。シーファーは絶望した。
『ダメだよ。貴女は主の女なんだから』
どこからか、女性の声がした。ジュギと少年兵は部屋を見渡す。しかし、声の主はいない。
『その女性を返してもらうよ』
同時に部屋を照らしていた炎が燃え広がり、人の形を形成する。紅蓮の髪を揺らめかせた姿は女性。顔は炎で燃えて見えない。その炎がシーファー達に近付く。少年兵が立ち塞がった。炎の手が少年兵に触れる。すると、一気に全身に燃え広がり、少年兵は断末魔の声を上げながら絶命。それを見て、ジュギが素早くシーファーから離れ、扉の前に逃げた。
『お迎えに上がりました。』
シーファーの前で膝をつく炎の女性。シーファーはベッドからゆっくりと身体を起こし、その女性を見つめた。
『お初にお目にかかります。私は炎の精霊、イグニス。主であるガディア様より、貴女の護衛に来ました。』
そう言いながら、ベッドのシーツを掴み、シーファーを包む。シーファーは驚いた。手を差し出すイグニス。
『私に触れても燃えませんよ』
その一言にシーファーはイグニスの手を取る。
「ここから出る事は許さない!侍女が死んでも良いのかい?」
不適な笑みでジュギが言う。しかし、イグニスには効かない。
『そんな事言って、引き下がると思う?人質になった侍女の所には、すでにアルバが行ってる。』
シーファーの顔が明るくなった。反対にジュギは怒りで身体を震わせていた。そこに、一陣の風が吹く。風が強く一瞬目を閉じる。シーファーとジュギ。次に目を開けると、そこにはガディアとウェントゥス、そしてもう一人の精霊の姿があった。
「ガディア!」
すぐさまガディアの側に駆け寄るシーファー。ガディアもシーファーの身体を抱き寄せ、力強く抱き締めた。お互いの鼓動を肌で感じ、二人は吸い寄せられるように唇を重ねる。その光景をジュギは苛立ちながら見つめ、精霊達は微笑む。唇を離したのはガディア。シーファーは名残惜しそうにガディアの唇を見つめる。ガディアがジュギを見据えた。
「…………」
無言で睨み付けるジュギ。
「お前がピスケスの次期国王?」
「……そうだ。シーファーは俺の子供を産むんだ。彼女から離れろ!」
「お前の子ね……悪いがそれは無理だな」
「無理だと?お前こそ、彼女の事何も知らないだろ」
ジュギの言葉に、吹き出すように笑うガディア。
「彼女のナニを知らないって?知らないのはお前だろ?」
「……何が言いたい」
「彼女の純潔は俺が貰ったんだよ。」
ガディアの言葉で愕然の表情のジュギ。ヨタヨタと後ろに下がり、扉に背をぶつける。
「……そ…そんな…バカな、王族でもないヤツに純潔を捧げるなど」
「王族じゃないと、好きな女も抱けないのかよ」
反応するシーファー。ガディアはシーファーを見つめ、その唇を再度重ねる。媚薬で身体が火照っているシーファーは、甘い声を溢した。ガディアの身体に、自ら身体を密着させ貪る様にキスをする。
「……殺す」
ジュギの目付きが変わる。殺意が渦巻く視線。ガディアは唇を離し、イグニスにシーファーを預ける。ジュギが近くに置いてあった剣をガディアに突き付ける。
「……殺す、殺す、殺す!」
言って、駆けながら、大きく振りかぶり、ガディアの脳天目掛けて、剣を振り下ろした。微動だにしないガディア。ジュギが振り下ろした剣は、ガディアの頭、数センチの所で止まっている。一度間合いを取って、何度も何度もジュギは剣を振ったが、ガディアに掠りもしない。息が上がるジュギ。元々、部屋に閉じ籠っていた為に、体力はないに等しい。すでに疲労困憊だ。ガディアはウェントゥスに目で合図する。ウェントゥスの周りに空を切る音がし、次の瞬間には、ジュギの全身に風の刃が身体を切り付けた。
「…………お前、精霊使いか」
「そうだ」
「……あの人の他に、精霊を使える人間が」
一人言を言うジュギ。ガディアが怪訝な表情を見せる。口を開こうとした瞬間。
『ガディア、アイツは戦意喪失したんだ。帰ろうぜ』
ウェントゥスが言う。ガディアはシーファーを見た。顔を上気させ、今にもガディアを押し倒しそうな、切羽詰まった状況だ。ガディアは無言で頷き、ピスケスの城を後にした。
湖の畔
「ここまで来れば大丈夫だろう」
空からゆっくりと降り立ち、ガディアは言った。シーファーを柔らかい草の上に降ろそうとする。しかし、シーファーはガディアの身体にしがみついたまま、ガディアを見つめる。
「……何だよ」
「…………ガディア」
月明かりで潤んだ瞳がガディアを映す。シーファーはガディアの手を、自分の胸に押し当てた。驚くガディア。
「……ガディア、私ね。アイツに無理矢理されそうになって、怖かった」
「…………」
ガディアの胸の鼓動が五月蝿いほど高鳴る。
「もう、ダメなんだって思ったら、死ぬほど後悔したの」
小刻みに震えるシーファー。ガディアはシーファーを抱き締めたまま、草の上に座る。
「ガディア、私、貴方の事」
ガディアの指がシーファーの唇を塞ぐ。
「その先は、言ったらダメだ」
「どうして?」
「……俺は、自分が何者か。親がどんな人で、どこで生まれたのか。分からないんだ。そんなヤツに、心を許したら、お前が傷付く」
シーファーは微笑んだ。ガディアの胸が高鳴る。
「そんな事。私は気にしないわ。例え、国を裏切る事になったとしても、この気持ちに嘘は付きたくないの」
ガディアの頬を優しく包み込む。唇を近付け。そして。
「ガディア、貴方が好きよ」
唇を重ねた。
次回は、またムフムフからです!