みなさん、おはこんばんにちは
作者のセインツです
今回運営から必須タグの報告を受けまして、今作はR-18作品になりました
誠に申し訳ありませんが、これからも今作品を読んでください
では、始まるよ!!
「ん・・・」
翌日、一は寒さに身を震わせながら起き上がる
「・・・夢じゃなかったか・・・くそ・・・」
今までの『地獄』が現実だということを実感し、一はため息を吐いた
周りを見渡し、眠りにつく前と違うことに気が付く
まず最初に、この部屋にあった死体には大きな布がかけられていたこと
もう一つは床に描かれていた紋章が消えていたこと
導かれる答えは一つーー
「(誰か・・・ここにいる・・・!)」
一は戦慄する
自分が眠っている間に、誰かが来たことに
だが、おかしいことがある
「(何故、自分を殺さなかった・・・?)」
この部屋から一旦外に出れば『地獄』が待っている、そんな状態で正気を保てる人間がどれほどいるか
一はそう考えながらも、矢を何時でも放てるように構える
ゆっくりと隣の扉のドアノブに手をかけ・・・一気に開け放つ!!
そこにいたのはーー
「む、目が覚めたか。マスター」
そこには、窓際に座った女性がいた
一は思わず惚けてしまう
その女性に見惚れてしまったからだ
美しい緑色の長髪、時折動く頭に生えた耳と腰から伸びている尻尾
そして誰もが振り返るような綺麗な顔立ち
その全てに、一は見惚れてしまった
「どうした?マスター、吾のかおをじっと見て」
「ハッ!!」
女性の気まずいそうな声に、我に返った一
戸惑いを隠せないまま、女性へと尋ねる
「・・・あの、どなたですか?」
「ふむ、吾が何者か説明する必要があるな」
女性は立ち上がり、凛とした立ち姿で自己紹介する
「吾はアタランテ、汝の召喚に応じて参上した。よろしく頼む、マスター」
「俺は武部 一だ・・・って、アタランテだと!?」
女性ーーアタランテの名前に目を見開く一
アタランテは目を見開き、驚愕する
一は興奮を抑えきれずに言う
「アタランテって、あのギリシャ神話に出てくる狩猟の女神『アルテミス』の加護を授かった純潔の狩人じゃないか!!その弓の腕は超一流!!狙った獲物は決して逃さない!!まさに狩人の中の女王!!まさか、本人に出会えるとは!!光栄です!!・・・って、どうしたの?」
「なっ・・・なっ・・・!!///」
一の言葉にアタランテは口をパクパクさせながら顔を真っ赤にさせ、一は不思議そうに首を傾げた
それもそのはず、アタランテは第三者から見れば貴人の如く滑らかさは欠片も無いため一見すると粗相な女性に見える
そんな女性があそこまで褒められるのは慣れないこと、要するに盛大に照れているのだ
「わ、吾は・・・そんな、大それたことは・・・していない・・・///」
「いやいや、俺にとっては貴女は憧れだ。まさに俺の中で一番弓を習いたいなと思う程、貴女の腕前は素晴らしい。是非、参考にさせて欲しい!!」
「っ〜〜〜!!///」
目をキラキラと輝せる一の嘘偽りの無い言葉に、アタランテは撃沈する
顔を俯かせながらも、尻尾はブンブンと正直に喜びを表していた
閑話休題
なんとかアタランテを落ち着かせ、一は気まずそうに頭を掻く
「悪い、憧れの存在が目の前にいて止まらなかった」
「ま、全くだ!!・・・だが、悪くなかった///」
「そりゃよかった」
照れを隠そうとそっぽ向くアタランテに、一は可愛いなと思った
アタランテはわざとらしく咳払いし、改めて一を見る
「すまない、少し取り乱した。マスター、現状を確認させてくれ・・・この街で、何があった?」
「・・・この街は一昨日まで活気のある街だった、だけど昨日・・・状況が一変した」
一はその目で見てきたことをアタランテに包み隠さず話した
アタランテは驚きながらも、一の話を聞き逃さないように静かに聞いた
「・・・これが、俺が昨日見た全てだ」
「・・・死者が生者を貪る、か・・・厄介なことこの上無いな」
「全くだ・・・俺がこの部屋に辿り着くまでに倒した死者の中には、顔見知りの人達もいた・・・みんな、一昨日までは笑顔で笑いあっていたのに・・・どうしてこうなった・・・」
一は苦い顔をしながら、手を握りしめる
そんな一を見て、アタランテも辛そうに顔を歪める
初めて召喚された際の光景が頭から離れないからだ
燃える街、鳴り止まない悲鳴・・・そして、生きて食われる子供の姿
子供好きなアタランテにとって、それは耐え難い苦痛だった
そんなアタランテを見て、一は察しがついた
「・・・アタランテも見たんだな、外の光景」
「・・・ああ、見た。まさに『地獄』の光景だった・・・吾のことを知っているなら、吾の出生は知っているな」
アタランテの問いかけに、一は頷く
アタランテは生まれてすぐ、山中に捨てられた
己の二の舞を踏ませないように子供を慈しみ、優しさを持って接する
まさに『母親の鏡』の存在であるアタランテ
そんなアタランテがあの『地獄』で耐え切るのか?
否、耐え切る訳がなかった
怒りを露わにし、宝具まで打ち出した始末
その経緯は先ほどアタランテから説明を聞いている一
普通は咎められるところだが、一は咎めなかった
それが正しいと思ったからだ
だから、一はアタランテを責めない
「アタランテ、貴女は何も悪くない。当然のことをしたんだ、死して尚彷徨い続ける人達の魂を救ったんだ」
「マスター・・・」
「だから、自分を責めるな。貴女は、何一つ間違っていない」
そう言い切った一に、アタランテは罪悪感から救われた
「・・・ありがとう、マスター」
「どういたしまして。さて、アタランテ。俺はこの街で起こった『地獄』の『真実』を知るために死地に飛び込む。だから頼む、貴女も協力して欲しい。この通りだ」
一はアタランテに頭を下げる
アタランテは突然のことに戸惑いながらも、一の頭を上げさせる
「マスター、頭を下げるな。元より吾はマスターに召喚された身、マスターが行くなら吾も付いて行く」
「・・・ありがとう、アタランテ。準備が済んだら、此処を出て行こう。生存者を探しながら、『真実』を掴もう」
「勿論だ、吾の弓に捧げて誓う。共に『真実』を掴もう、マスター」
「ああ!!」
一とアタランテは改めて誓い合い、準備を整えて『地獄』へと躍り出る
2人の長い夜がーー幕を開けた