満を持して登場
反公孫賛連合。
天の御遣い、つまり俺をかくまっていた白蓮を殺そうぜ。と息を巻いた狂人共の集いだ。
こしゃくにも袁紹という女郎は、白蓮が俺をチンコ奴隷にし、欲望のままにセックスでなぶっている。だから可哀想な俺を救ってやろうなどと、張りぼての大義を掲げて音頭を取ったのだ。
あながち間違ってない。
しかし、どうしてこんな事になったのかと言えば、至極単純に俺の存在が世間にばれたからである。
そんな身バレの元は、二年半くらい前に起こったある重大な事件が引き金となった。
桃香ら四人が全員、妊娠したのだ。
しかも月日を逆算すると、どうにも一発目のセックスで孕んだとしか思えないタイムスケジュールである。
おかげで独身貴族だった俺の人生はボッシュートされ、人生の墓場に投獄されてしまった。
これから没落主夫な毎日だと、マジでブルーになる俺に、桃香らはさらに一年半前。とんでもない出産で世に混乱を招いたのであった。
何で全員、男児を出産するんだよ。
こちらでは雄が希少価値な生物となる。
するとそれを種付けした男って、天の御遣いじゃない。と勝手に真相をついた流言が随所に出回った訳だ。
この時点で世界中の女が幽州に殺到するイメージが浮かんだ俺は、二度目の死を覚悟した。
一度目? こっちに来て開幕レイプをされかけた時だよ。
それでも四子の誕生に、俺のシマじゃ今のノーカンだから。偶然だから、本当にたまたまだったと言い張って、どうにかけむに巻いたのだ。
なのにあいつら、出産してすぐに妊娠しやがる。
まただよ(笑)。
とか笑って済まされないので、今度は事前に対策を打った。
次の赤ちゃんが全員女児ならばよし。よしんば仮に全員男児だったとしても、今回は女だったと発表して周囲を騙し凌ぐ戦法だ。
場当たり感が強い。
だとしても世界一位の御遣いになるよりはましと思い、極秘裏に桃香らは二回目の出産をしたのだが、結果は五人の男児。
三と四はどこにいった。
一発必中で双子を産んだドヤ顔の趙雲に、一年間の避妊休暇を与えた俺は悪くないだろう。
二年目で九人の息子だぞ。四人でひーひー言ってたのに、さらに倍でプラスワンとか、もう俺もびーびー泣くわ。
当然、子育ての手が足りない。
これだけ増えると、ちょっと目を離すと一人くらいさらわれそうで怖いし、子守りを手伝ってくれる人材の確保は急務だった。
新生児五人の秘密をばらさず、なおかつ育児に明るく、俺に色目を使ってこない。
そんな聖母を求めて人を募ったが、やはりこの世界に実装しているはずもなく。
妥協で回した雇用ガチャで、そこそこ優秀なメイドの素質を持つ女を引き当てただけでも、俺の運はいい方であろう。
そのメイド見習いは子育ての経験はなく、月一で不幸になるという、緑髪のメガネをかけたドジっ子ではあったが、真面目によく働いてくれた。
何よりINTが高い。
彼女はみるみると頭角を現し、少しだけ時間に余裕が出てきた俺は、異様に妊娠しやすい桃香らについて、あれこれと聞き取り調査を開始するのであった。
これ以上、ぽこじゃか赤ちゃんを作られても困るからだ。
それで手に入れた情報をくみ上げ、俺は一つの仮説を打ち立てた。
まずこちらの男は、俺がいた世界の男よりもチンコが貧弱で、出がらしみたいに精液もあっさりとしているらしい。
一日一回セックスが出来れば、性豪を通り越して奇跡とまで呼ばれるそうだ。
そんな男と子作りに励んでも、排卵日とかの知識が伝わっていないこの時代では、完全に物欲センサーとの戦いになってしまう。
しかも、かなり部の悪い賭けだ。
ブサチンで弱いのね、嫌いじゃないわ。とか言って喜ぶゲテモノがいるかもしれないが、種として全体がそうでは人類の存続が危うい。
そこで退化を続ける男とは逆に、ここの女は過剰な進化をして、バランスを取っているのではないかと俺は分析する。
それがあの、搾取マンコだ。
さらに愛を囁くと女は母乳が出るのが当たり前とされているが、現代日本にそんな常識はありえない。
俺が国内に在住の頃。若さに任せて色んなエロ系統の話題をネットで調べていたが、基本的に母乳は出産とセットになっているのだ。もっとも、妊娠中に似たような液が垂れたりするみたいだが。
つまりこれらを総括すると、桃香らはセックス中に懐妊している可能性もありうるのだ。
そこで実際に、愛紗と白蓮はラブラブセックス。
桃香と趙雲はラブラブアナルファックのグループに分けて検証をすると、愛紗と白蓮は母乳を噴き出してまた身ごもり。桃香と趙雲には母乳が確認されず避妊にも成功した。
医学的に俺の考えが証明された瞬間だ。
でも搾取マンコの受精率を計る為に、愛紗と白蓮には外だしで観測中だったのに、どうして妊娠しているのやら。
先走り汁でも百パーセントアウトとか、ちょっとマンコの審判は厳しくないですかね。
たぶんこれは俺だけに適用される、例外の産物だとは思うのだが、三年目で十一人の父親になるのは辛い。
二十四時間ねなくても、愛紗や趙雲みたいにケロリとしていられるほど、俺は頑丈な肉体じゃないんだぞ。
それでも子供たちの第一声がパパになるのを楽しみに、まいにち睡眠時間を削って世話をする事、一年半。
そろそろ愛紗と白蓮が三回目の安定期に差し掛かりそうなタイミングで、反公孫賛連合が組まれた訳だ。
どうやら卑劣にも誰かが幽州に間諜を送り、隠していた五児の性別をすっぱ抜きやがったみたいだ。
汚いなさすが忍者きたない。
これで疑惑の御遣いから確定の御遣いへと悲しくもランクアップした俺は、ご近所付き合いもなかった国々へ狙われる豪華報酬となったのだ。
ちなみにスパイの正体は割れている、あのドジっ子メイドだ。だって彼女がしばらく無断欠勤してこうなったら、俺でもわかる。
優秀だったから裏切られないように、三年経ったらセックスしよう。と、未来に棚上げした約束も結んだはずなのに、やはり幼馴染でもない緑はダメだな。
こうなると一日でも早く劉備に、はやくきて~はやくきて~と俺は泣き叫ぶしかないのだが、きょうきょ窮地に陥った幽州へ救いを差し伸べてくれる奴がいた。
董卓である。
「誰だよそいつ?」
「ご主人様、知らないの?」
まっったく身に覚えのない俺に、桃香が優しく教えてくれた。
まず初めて聞いたのだが、ちょうど桃香ら一回目の妊娠が発覚した時くらいに、俺のエセと皇帝が結婚したそうだ。
そうして国人総出で世継ぎを待ち望んでいたら、俺のファインプレーが飛び出したのである。
俺的にはオウンゴールだけどな。
でだ、エセはやっぱり偽物じゃない。みたいな疑念が日増しに膨れ上がって、不穏な空気にビビった朝廷が、皇帝の身辺を護衛するのに招集されたのが件の董卓となる。
しかし董卓はかなり野心が強かったみたいで、エセが皇帝を孕ませられないどころか、俺がさらに五人の男児を作ったの嗅ぎ付け。あろう事か皇帝を追い出し、あげくには占拠した首都の洛陽に重税を課し、左団扇で暮らしているらしい。
「って、いうのが噂だったんだけどね」
こっそり送られてきた董卓からの密書には、いよいよ身の危険を感じた皇帝ご一行が、ひとまず後方の長安へと避難したそうだが、なぜか自分が洛陽に圧政を敷いている悪評が流れて、涙目になっている模様。
だから俺に洛陽まで来てもらって、天の御遣いの名で皇帝と渡りをつけ、呪われた称号を消し去りたいと希望していた。
その交換条件として、洛陽に進路を変える反公孫賛連合の連中は、董卓が責任を持って追い返すと断言している。
困った俺にはまさに渡りに船。このまま董卓さん家に引っ越しするのもよさそうだと判断するが、桃香は微妙な反応だった。
「密書にはこう書かれているけど……どうしよっか、ご主人様?」
「行くの一択じゃないのか。俺が洛陽に向かえば、少なくとも幽州は安全だろ」
「ご主人様が連合の題目だからね。留守の間に息子を奪って人質にするとか、恥知らずな真似もしないはずだし……」
ああ、男が貴重だからあまり乱暴な手段は使えないのか。
「でもこの密書が本当なら、董卓さんの悪評って朝廷の人達が流していると思うよ」
「真っ黒だな」
ドロドロ過ぎて、鼻水が出そうになったわ。
「でないとご主人様を引っ張ろうとしないしね。たぶん董卓さんだけだと会ってもらえない感じなのかな」
「ええ……何でそんな事に」
「ご主人様の偽物の失敗をなくすのに。って気がする」
桃香の見解では、俺らが董卓の庇護下に入れば、朝廷としてはそこから色々と交渉がしやすいのだとか。
これが董卓でなく、反公孫賛連合が相手でも一緒で、あいつらが俺を手にしただけでは片手落ち。皇帝に天の御遣いと認められる事で、実質的な天下人になれるっぽい。
だから長安の壁になっている洛陽の董卓は絶対に潰すだろうし、そこからやっぱり朝廷は話を持ち掛ければいい。
どう転ぼうとも美味しいのだ。
そしてどちらも向こうが俺に望む内容は、きっと皇帝の新しい旦那さん。
はよ皇帝と子供を作れってか。
「政治の道具まっしぐらじゃん、俺。それは困る」
だって俺、言いなりになるしかないし。
そんな腹黒いところで、腹芸する度胸も技量もないわ。
もちろん今さら、バツイチの新しい奥さんも不要だ。
「それに董卓さんの密書が真実の証拠もないしね。これが嘘で、噂通りに暴君だったら大変だよ。こういうの、何だっけ。くそげーで当たってる?」
「合ってる」
「わーい、くそげー」
「楽しめる要素が一つもないんですけど」
まさにクソゲー。
むかし桃香から、俺が天の御遣いだとばれたらヤバいと話されたが、あれって脅しでもなくマジだったんだな。
「どうするんだよ、この四面楚歌」
しかもご丁寧な地雷付き。身動きのとりようがないし、クリアできるのか。
半分、諦めムードになってコントローラーを投げ出す俺に、もう一つのコントローラーを繋げた桃香が、協力プレイを申し出た。
「逆転する一手が私にあるんだけど、ご主人様。する?」
「あったのか。やるやる、やっちまえ桃香」
「じゃあこれから、私と反公孫賛連合の人達を蹴散らしに行こう」
「……はっ?」
そんなこんなで、数週間後。やってきました幽州の砦。
この時代だと関と呼ぶのだが、砦の方がまだ馴染みがあるので、俺はずっと砦って言ってる。
そしていよいよ反公孫賛連合の屑共と対峙したのだが、いるわいるわうじゃうじゃと。
その数、連合発表で十五万。
「我が幽州軍の総数は?」
「八万五千。無理してかき集めたよ」
「比率だいたい一対二か。籠城で勝てなくね?」
あれだろ。籠城って三倍の兵力がないと落とせないって有名じゃん。
そう思って提案した俺は、実に短慮だった。
「補給や援軍の当てがない籠城って、じり貧だよ。それにあっちはまだ余力を残しているし。減った分だけその内、補充されるんじゃないかな」
ボスが全快の回復魔法を唱えるとか、チートだろ。
「ずるくないか。それやられたら、どうやっても俺らに勝ち目ないって」
「だからこそ、ここで勝利したらご主人様の格が上がるね。天の御遣いはおちんちんだけでなく、戦上手ってみんなに褒めてもらえるよ」
「チンコだけの床上手でいいから、平和に家族と暮らしていたかった……」
でもここまで事態が煮詰まると、どうあがいても開戦は避けられまい。
なら一度、お互いの戦力を分析しよう。
幽州軍からの主だったメンツは俺と桃香のみ。
趙雲には身重(みおも)な愛紗と白蓮。そして九人の息子の護衛にと、万が一の保険で残して来た。
劉備の子供を救った趙雲ならば、必ずや任務を果たしてくれるだろう。
対する反公孫賛連合のDQNは、元凶である号令をかけた袁紹。
袁術と子飼いの孫策。
さらに曹操もいれば馬超に、他もろもろといた。
誰なんだよ、こいつら。
曹操はもちろん知っており、馬超も朧げに名前だけ聞いた事があるような。
袁紹と袁術は血の繋がりがあって名前が似ているので、孫策ってのは、孫権の親戚か何かでいいのか。
そんなレベルだ。
そうしてここでもハブられる劉備。お前、マジでどこにもいないよな。
早く登場して、俺を大徳してくれ。
「これほど戦力差で正面から攻めるならば、俺と桃香の力をパワーにして乗り切るしかない。桃香ならあいつらと、どうやって勝負する?」
「私。私なら突撃かな。ご主人様は?」
「斬首戦術」
「だったら、突撃して斬首だね」
「負けたな」
それやって勝ち切れるの、桶狭間の織田信長だけだから。
「だから、とっておきの秘策を使うよ。ご主人様、耳かして」
「おう……おう。おうっ!」
それで伝授された内容は、第六天の魔王もたまげる物であった。
「すげえよ桃香は」
「えへへ。そうかな」
「とでも、いうと思ったか!」
「うあうあ、あうわっ!」
俺は桃香の頭を鷲掴みにして、ぐわんぐわん揺さぶった。
バエルがあれば全てが成功すると信じた、アグニカ・カイエルを信仰する信者みたいな奇策を言い渡しよって。
やべえよ桃香は。
「気でもふれたか」
「ひどーい。私はまともだよ、ご主人様」
「まともなら、あんな事は口が裂けても言わない」
「そうかな、とても効果はあるはずだよ。一回だけしてみようよ。ね、ね、お願い」
「……しょうがないな」
まさか代案があるはずもなく、俺は桃香に押し切られる形で、アグニカ・カイエルごっこをやる羽目になった。
まぁ成功すれば儲けものだし、失敗してもまだ命は保証される。
確実に俺のプライドは殺されるが、可愛い息子達を思えば、こんくれぇなんてこたぁねぇ。家族を守んのは俺の仕事だ。
なので久しぶりにローブへと着替え、俺は原稿をチェックする。
そしてこれが最初で最後の戦場参戦になるよう祈り、俺は砦の屋上に出撃した。
「……人。えっ、あれってひょっとして……」
モブの声が騒がしい。
ポッとすっぽり全身をローブで覆った俺が姿を現せると、下にいる反公孫賛連合のカス共がざわついた。
俺は空気を目一杯すい込んで腹に溜めてから、ガバッとローブを脱ぎ去って叫んだ。
「聞けい、反公孫賛連合ども!!!」
「きゃああああ、男よ男。それも全裸。眼福だわぁああ!」
「ちょっとあんた、しゃがみなさいよ。見えないでしょ!」
「俺こそが貴様らの求めている、天の御遣いと称される男だ!!!」
「……あれが御遣い様……そのおちんちん……ありがたや、ありがたや」
一目で男と判別できるよう、ローブの下はマッパだった俺は、利き腕を隠しつつも、余すところなくフルチンで一世一代の大演説を行う。
「貴様らが口にする、不当な扱いを俺は公孫賛より受けてない。このように、不自由なく暮らしている。故にこの争いに大義はなく、早々に軍を引き下げるといい!!!」
「よかった。おちんちん奴隷にされる、可愛そうな天の御遣い様はいなかったんだね」
「わからないわよ。公孫賛が天の御遣い様を脅して、言わせているだけかも」
「そんな事より、天の御遣い様と早く性交したい」
まぁ、そうなるな。
信じようと信じまいと、ここはごめんなさいで終われないだろう。
ならばこそ、奴らにとって最大の急所をつく。
後ろ手に握っていた短剣をチンコに突きつけ、俺は連合を脅迫する。
「もしも引かぬのであれば、いいだろう。義のなき欲望のままに、幽州へと進撃するといい。しかしその時が最後。俺の第二の故郷である幽州に貴様らが害を成すというのであれば、俺はこのチンコを切り落とす!!!」
桃香の練った台本で、ハッタリはここまでだった。
だが俺は、レッドカーペットを歩くハリウッドスターも顔負けな主演男優。
アカデミー賞も真っ青なアドリブで、チンコの根元を軽く刺した。
こう、サクッとな。
「ぎょえええ、御遣い様の御遣いちゃんがあああああああ!」
なんだよ、結構いてえじゃねぇか。
やっぱり自重すればよかった。
「ぐう、ぐすっ……しかし、幽州へと攻め込まないのであれば、チンコは無事だ。さらに俺の願いを聞き届けてくれる者がいれば、率先してこのチンコを味わう権利を与えよう!!!」
本気で泣いてふさぎ込みたいたいけど、この作戦はここからが肝だ。
俺は血が滴るチンコの痛みを振り切って、八つ当たり気味に反公孫賛連合のボケ共を扇動する。
何もかもこうなったのは、袁紹が悪い。ついでに袁術も。
「この度の不当な幽州への侵略は、元をただせば己の私欲を満たさんと画策した、袁紹に責がある。同じ血筋の袁術も同罪だ。諸君らの胸に正しき心が宿るというのであれば、俺にその心意気を示して見せよ!!!」
どうしてこの二人を名指しにしたのかと言えば、勢力がどちらも大きいからだ。
ここで潰してしまえば、こんなふざけた連合は二度と組めなくなる確率は高い。
と、カンペに書いてあった。
いよいよ正念場である。
「さあ、選ぶがいい。チンコを切断し、血まみれになって泣きわめく俺と無理やり口づけをするのか。あるいはチンコを勃起させ、俺に愛を囁かれながら口づけをされるのか。決めるのは諸君らだ!!!」
途中から静まり返って、俺の演説に耳を傾けていた反公孫賛連合のバカ共は、この特典で明らかに戸惑っていた。
「こっ、これ。どうすればいいの。教えて痴女の人!」
「そんなのわかるはずないじゃない!」
「どうしよう、二粒とも美味しそう。じゅるり」
こいこいこいこい、こっちに来い。
やべー奴が混ざっているけど、ひとまずは俺に着け。
後はその後の俺が何とかするはずだから。
どちらに転んでもおかしくない戦況を、俺は自分の絶対有利を念じて見守った。
そうしてざわめきが収まらぬ中で、運命を決定づけたょぅι゛ょの声が響き渡る。
「りっ、鈴々は袁紹と袁術をやっつけて、お兄ちゃんとちゅっちゅするのだ!!」
そんな気合いのこもった性癖を暴露し、クルリと旗が翻る。
するとどうだろう。
パタパタパタパタっと、次々に袁紹と袁術に手の平を返す軍が続々と出てくる。
これに最も慌てふためいたのは、とうぜん諸悪の根源である袁紹その本人だった。
「ちょっ、ちょっと。これは一体、どうなっていますの!」
「あれっ。ひょっとしてここであたいが姫を倒したら、一番の手柄が立てられる?」
「さすが文ちゃん。あったまいい!」
「へへへ、そうかな」
「きぃいいい、何をお馬鹿な事を言ってますの。いいからあのお馬鹿さんらを、華麗に倒してしまいなさい!」
「いや、姫。あれはさすがに数が多いって。むり」
何を言っているのかわからないけど、混乱のほどは眺めているだけでも伝わった。
とばっちりな袁術も、同様である。
「ひっ、ひぃいいい。な、七乃。どうすればいいのじゃ!」
「大丈夫ですよ、お嬢様。孫策さん達がいるじゃないですか」
「お、おお。そうじゃ。ここは孫策らに任せて、妾は逃げるのじゃ!」
「さすがお嬢様。よっ、鬼、悪魔、ちひろ」
「うむ、もっと褒めてたも~」
「それで私達が素直に肉壁へなると思っているのかしら。相変わらず、めでたい頭をしてるわね」
「なっ、お嬢様に剣を。まさか孫策さん、私達に刃向かうつもりですか!」
「元よりその予定だ、少し早まったがな。どうせ最後になるだろうから言っておこう。貴様らの趣味は、吐き気を催すほど最低だった」
「あんたたちねぇ、どうして男にはつみつをかけるのよ。男は酒をぶっかけて犯すものでしょ!」
袁術のところ、もうすでに内輪で揉めてない?
や、俺にとってはそっちの方が都合がいいんだけどさ。
そうこうしている間に、袁紹と袁術いがいの軍が、俺側に回る。
形成は完全に覆ったのだ。
これって、反袁紹袁術連合にでもなるのだろうか。それとも真・幽州連合。
語感がよければどっちでもいいか。
とにかく俺は、仮初の大将として号令をかけた。
「全軍、突撃。袁紹と袁術の首を上げよ!!!」
雄々しい掛け声で走り出した真・幽州連合は袁紹と袁術の軍に殺到する。
その先に俺がいると信じて。
「だからよ、止まるんじゃねぇぞ……!」
そうやってフルチンのままポーズを決めていると、控えていた桃香が駆け寄ってローブを被せてくれた。
「お疲れ様、ご主人様。成功したね」
「し過ぎというか。終わってから、酷いぞこれ」
大盤振る舞いで白紙の手形をばらまいたせいで、俺のチンコが赤玉かくごの自己破産しそうだ。
「平気へいき。袁紹さんも袁術さんも、自国まで敗走して、寸前までは降伏を突っぱねるだろうし、時間は稼げるよ」
「ここで打ち取られるんじゃないのか。さっきそんな勢いだっただろ」
「二人とも名家だからね。男の人もいっぱいいるし、下手に殺して後を追われるのはみんな嫌だと思うよ。たぶん、限界まで締め上げてから絞ろうとするんじゃないかな。きっと分配で荒れるね~」
「そ、そうか」
「でね、その間に私達が董卓さんと同盟を組めば、戦力的に誰も逆らえなくなるよ。ご主人様が矢面に出たらどうなのか、みんな身に染みたはずだし。楽しみだね、董卓さんや朝廷とのお話合い」
「……えぐくない?」
「ひひひひひひ」
家の嫁さんが一番腹黒だった件について。
ううん、だから袁紹と袁術を排除しようとしたんだな。
二大勢力としての軍備があり、それを支える財源と潤った人材が詰まっている。
完璧に宝箱だな、鍵が開いたらもぎ取り放題だ。
「なら別に、俺からの報酬は渡さなくても済むのか」
「ううん。それは絶対に必要」
「どうしてだよ。袁紹と袁術から男も仕入れるのなら、俺はもういらないだろう」
「ご主人様。それはそれ、これはこれだよ」
やっぱりチンコにがめついな、こっちの女は。
「それに私の夢の為にも、ご主人様には他国の人と、ちょっとくらいは交わって欲しいかな」
「夢。そんなのあったのかよ?」
「うん。みんな処女喪失が出来る、優しい世の中を作りたかったんだ」
「ムリだろ」
女の絶対数に対して、男の割合が少なすぎる。
ついでにチンコも貧弱だし、まずお話にならない。
「何年……否、何十年かけても厳しいって」
「……そうだね。だからこの夢は、子供達に託そうと思う」
本気でその気概があるのか。
桃香は両腕を広げ、壮大な計画を自信満々に語った。
「私達とご主人様との間に出来た子供は、みんな男の子。それならご主人様の息子と結ばれた女性の孫は。これも全員、男の子だったら――そうしていずれ男性の数が女性より多くなれば、処女の人はいなくなるよね」
「ぶっ飛んだ思考してんな……」
しかし、ただの夢物語として流すには、桃香の言葉は俺に重かった。
これまでの出産経歴から、マジでありえそうなのが。や、でもさすがにそこまで……うーん。
三国志で生き抜く為の、必須のスキルが皆無な俺の、たった一つの才能が男児を孕ませるものだとすれば、あまりにも悲しい。
だってそんな才能だったら、いずれ世界を滅ぼすし。
「仮に桃香の夢が叶ったとしても、ずっと先の時代はどうする。今度は男が溢れて、女が足りなくなるぞ」
誰にもわかる算数に、桃香は天文学で対抗する。
「大丈夫だよ、ご主人様」
そう言ってニコッと俺に笑いかけながら、桃香は空を指さした。
「その時はまた、天の御遣い様が降ってきてくれるから」
「他人まかせかよ」
「てへっ」
ベロを出しながら、コツンと自分の頭部を桃香は叩く。
俺も裏拳で軽く額を小突いてやってから、その手を桃香へ差し出した。
「バカやってないで、そろそろ帰ろうぜ。子供達のおしめを替えなきゃならないし」
ついでにここ、わーわーうるさくてバイオレンスだし。ぶっちゃけ長居したくないんだよ。
正直、ちびりそう。
「ご主人様、本当に育児が好きだよね。私達に任せて、何日か休んでもいいんだよ」
「お断りだ」
お前らに任せて、取り返しのつかないド助に息子らが成長したらどうするんだ。
絶対に俺の息子達は、真面目な好青年に育ててみせる。
その教育方針を胸に、俺ら夫婦が手を繋いでそろって歩くと、チラチラと桃香がローブの下にある俺の股間に目をやった。
「ご主人様がそれでいいなら、私はもう言わないけど……ところでおちんちんに異常はない。演説中に気にしていたみたいだけど」
「至って正常だ」
こっそりまだ、痛みで疼いたりするのだが、それを口にすれば最後。
チンコに過保護な手当てをされるのが丸わかりなので、俺は強がって何でもない風を装う。
けどこの判断が、完全に裏目った。
翌日になり。発熱でダウンした俺は、放置すべきではなかったと後悔する。
風邪の線はなさそうなので、たぶん刃物に付着していた細菌で、感染症でも引き起こしたのだろう。
そうだよな。このご時世、品質管理はおろか、衛生面もあんまり重要視してないよな。
だから再び健康を取り戻し、予定よりも遅れて幽州へと帰還した俺は、真っ先に刀狩りを開始した。
好奇心から子供達が触れたら、本気で危ないからだ。
だが誘拐を目論む気合いの入った犯罪者から子供達を守る為にも、護衛にはある程度の武器は必要とする白蓮と意見が対立し、俺らは家族会議で熱い議論をぶつける。
それからしばらくは互いの妥協点を探り、ようやくすり合わせから妥当な線引きが見つかった頃には、まもなく俺が洛陽へと旅立つ日時が差し迫っていた。
桃香が新しい仲間として、三人のロリを連れてきたのも、ちょうどそんな時期だった。
元気なロリ。
はわわなロリ。
あわわなロリ。
一気に家の女性陣によるスリーサイズが、一般的な平均値へされてしまいそうな幼さ具合であるが、何気なくそのロリロリロリズの名前を尋ねて俺は仰天した。
「張飛、孔明、ホウ統……」
さらに俺の驚きは止まらない。加速する。
この流れから導き出される答えに従い、まさかと思って桃香らにも確認したら、そのまさか。
嘘だろう。と信じられない俺は、もういちど指差し確認を行った。
「劉備?」
「そうだよ」
「関羽(せきは)?」
「関羽(かんう)です」
「私は趙雲です」
「知ってる」
「ご主人ちゃま。私は、私は?」
「悪いな。公孫賛は本気でわからない」
「何で!」
それとすまない、ホウ統も実はわかってなかったんだ。見栄を張った。
てか、真名って趙雲の設定とかではなく、風習としてあったのかよ。だったら学校の授業で教えてくれ。
おかげで桃香と愛紗は劉備と関羽じゃなくて、俺の中で完全に桃香と愛紗で独立されてしまったぞ。
趙雲?
あいつは自分を趙雲だと思い込んでいる、趙雲だから。
なので張飛と孔明には、その愚を犯してはならない。
君らそんななりでも、張飛と孔明なんだろ。なら張飛さんに孔明さんだよ。
ああ、ホウ統だけはこっちに来なさい。お菓子を上げよう。
愛でるロリはホウ統だけと決めた俺は、彼女に子供達の遊び相手になって欲しいと頼み込んでから、桃香と二人で董卓と同盟を結びに洛陽を目指した。
そうして新天地で、俺は新たな騒動にまき込まれるのだけど、それはまた別の話。
さらに数十年後。俺は増えすぎた嫁と、その倍以上の息子と男の孫に見守られ、天に召すのは、もっと別の話。
ただ死ぬ前に、これだけは俺も言っておきたい。
「三国志、いつやるの?」
三国志の世界に住んでいるはずなのに、俺の三国志は、一向に始まらないんですけど。
赤壁の生ライブが拝めないのは、地味にショックだった。
次回。感動しない、真・最終回に続きます