※この作品はR-18です。

遠距離通い妻ちゃん、東京へ行く   作:やーみ

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R15かもしれません


遠距離通い妻ちゃんの手入

 小鳥のさえずりが朝の訪れを告げている。東京にもこの朝の音があることに妙な感慨を覚えたことも今は昔。あっくんと一つのお布団で朝まで過ごすこの時間はとても幸せだ。いつか話した「あっくん抱きまくら」で夜を明かしているのだが、十月にもなるとさすがに朝は冷える。私とあっくんとの体温で温められた布団の中はそのような意味でも心地良い空間だ。

 あっくんが私の腕の中でもぞもぞと動く。あっくんの腕も私の背中に回されており、お互いがお互いを抱きまくらにしている。もともとあっくんが私を抱きしめていると私のやや高めの体温のせいか穏やかに眠ることが出来るとのことで始まったこの寝相だが、私も二週間分のあっくんを補充したく、この密着度合いは渡りに船だった。

 私の顔はあっくんの胸元にあって耳を当てればちょうど彼の鼓動が聞こえてきそうだ。私はくんくんと彼の匂いをかぐ。彼の寝汗のせいか少しだけ匂いを放っている。えへへ、あっくんの匂いだ。くんくん、すーっ。

 彼を鼻で感じていると徐々に私の意識も冴え渡ってくる。寝起きの状態から完全に目が醒めたのだろう。外の明るさを鑑みるに六時手前といったところだろうか。そろそろあっくんの携帯電話がアラーム機能を発揮する頃合いだろう。彼の朝は早い。高校生の頃彼はコンビニさをとめでアルバイトをしていた。さをとめは朝夕の通勤通学客を主たる客層にしているため、不夜城よろしく朝は早く夜は遅くまで開いていた。彼はその開店作業であったり、飼い犬のコタちゃんの朝夜の散歩であったりも担当していた。高校を卒業するまで立派にアルバイトを勤め上げたあっくんは進学を期に東京へ出ていってしまったものの、彼の生活リズムに染み付いた早起きの習慣はあちらでも崩れることはなかったようだ。「コンビニの荷降ろしが無くなった。身体を動かさなくなって鈍りそうだから、適当にランニングでもするわ」とはあっくんの弁で、一人暮らし大学生の男の子は怠惰に朝寝坊をするものだと思っていたので少し驚いたと同時に、私はそんな彼を改めてカッコイイと思ったものだった。

 あっくんの枕元で携帯電話が震えている。六時にセットされたアラームだ。専用の目覚まし時計もなくあくまでも携帯電話で代用するあたりは、物が少ないあっくんらしいと思ったりもする。

「む」

 彼は私の背中に回していた右手でアラームを止めた。そしてまた私を抱きとめると驚いたことにあっくんは私の髪の毛に鼻をうずめ、そこで深呼吸をし始めた。

「やぁっ、あっくん、くすぐったい」

「沙夜って少し甘い香りするよな」

「こーら、朝だよ。起きる」

 はーい、と素直にあっくんが応じる。抱きまくら状態の終了であり、彼のぬくもりが私から離れていく。少し寂しさを覚えるのは事実だ。そして彼が布団を持ち上げると冷えた明朝の外気が私の身体を撫でていく。寒さと同時に体の一部分が酷く冷たさを覚える。あっくんとお付き合いをするようになって秘密の展望台でエッチをした時に初めて知ったことだったのだが、男性の精液は一般に出した直後は粘稠度が高くやがてサラサラとした液体に変化していく。つまり昨夜散々私の中に出されたあっくんの欲望が、夜寝ているうちに液体化して私の大事なところから垂れ出てきているのである。通い妻ちゃんとしてお泊まりをした翌朝には必ずこれのせいで寝ていたときの下着が汚れてしまう。汚れた下着は手洗いが必要で確かに手間ではある。対処法として女の子向けの雑誌を見るに彼氏とエッチをした後お手洗いなどにすぐに移動しポーチに忍ばせておいた専用の洗浄液で洗うという手もあるようだ。私としてはせっかくあっくんでお腹がいっぱいになったのに、即洗い流してしまうのは勿体無い。だからこれは仕方のないことだ。あっくんが外に走りに行っている間に洗ってしまえばいい。あっくんもこのことを判っているからこそ、私が通い妻しに来たときにもランニングで家を開けてくれるのだ。

 大事なところのベタつきなど素知らぬ顔で私はあっくんが寝間着からジャージに着替える様子を眺める。昨日の夜といいバレンタインデーのあのデートの帰りといい私を軽く持ち上げる程度にあっくんは力持ちであるにも関わらず、その身は引き締まっている。やはり私の彼氏はカッコイイ。

「じゃ、行ってくる。三十分くらいで戻るから」

「いってらっしゃい、あ、な、た」

 吹き出したあっくん。そして寝起きだと感じさせない生き生きとした様子で扉の向こうへ消えていった。私はそんなあっくんに手を振って見送る。旦那さんを見送る新妻のようで、なんだか少し照れる。この姿はいつかの未来の姿であって欲しいと思う。

 見送りを済ませ玄関の扉が閉まると、外の寒い風の流入が止まった。さてこれ以上大事なところを冷やしてしまう前に色々と私もシャワーを浴びて身仕度を整えなければ。私は一旦リビングに移動しほしのなかから持参しリビングの片隅に置いておいた通い妻キットが入ったカバンから、着替えの類一式を取り出して脱衣場へ急いだ。

 案の定脱衣所はリビングよりも寒い。早くしようとをとまずはパジャマの上下を脱いだ。

「うぅ、冷たい」

 直接外気に晒された下着は一気にその冷気の影響を受ける。すっかり冷えた体液が付いた下着も脱ぎ捨てた。水音とともに私の身体から布切れが離れ、瞬く間に私は生まれたままの姿になった。いくら誰も居ないと言えども脱いだ直後の下着をその辺に放っておくことは女子としてのプライドが許さない。私は汚れた下着のたぐいを浴場からすぐ手が届きかつパッと目につかないところに隠してシャワーを浴びた。温かいお湯が身体をつたい、かいていた寝汗が流れ落ちていく。

「ふぅ」

 お湯のぬくもりでひと心地ついたところで、私はシャワーヘッドを自らの秘部に向け放水した。

「あうぅ」

 精液には独特のコシがあるので丁寧に洗わなければいけない。温水で流した後身体についている体液を自らの手で拭う。大事なところに石けんを使いすぎると、常在菌まで洗い流してしまっていけないとのことであるので、そこには気をつけている。

 十分程度で身体も流し終わった。そしてシャワーの温水から立ち昇る湯気によって洗い場も暖められた。私は生まれたままの姿で汚れた自らの下着を洗っていく。水が跳ねても大丈夫という合理性からだ。自分のお気に入りの下着である以上、あまりシミなどが残したくはない。通い妻の日には私はあっくんに隅から隅まで見られてしまう。お気に入りのかわいい柄の下着は二週間に一回の勝負下着だ。

 洗い場から出て、大方洗い終えた下着類を洗濯機に入れる。女の子の嗜みとして彼氏の家の洗濯機で下着を洗ってもらうことはどうかと思ったのだが、お気に入りの下着を生乾きのままカバンにしまっておく方がなんとなくいやだ。せっかくの通い妻の機会だと思い、あっくんの昨夜の寝間着や早朝ランニングをこなした後のジャージ類も私がついでに洗濯している。あっくんと結婚した後を想像させてくれて楽しくなるのだ。

「ふふっ」

 笑みをこぼしながら私は身体の水滴をタオルで吸い、用意しておいた着替えに袖を通した。お腹を空かせて帰ってくるであろうあっくんのために、朝ごはんを用意しておこう。冷蔵庫の中身を確認していつもの食材があることを確認した。。冷凍うどんと冷凍ほうれん草、濃縮白出汁と卵はあっくんの家に私のお願いで常備されている。彼がもしカップラーメンで食事を済ませるとしても卵とほうれん草が入れば多少栄養的にマシだと思うからだ。白出汁と卵とを混ぜて適切にレンジで温めれば簡単な茶碗蒸しにもなる。お夜食にちょうどいいだろうと思ってこれも常備をお願いしている。今回の朝食は単なるうどんでしかないのであっくんが帰ってきてシャワーを浴びている間に作り終わってしまうだろう。

 昨日も使ったエプロンを着ているとインターホンが鳴った。あっくんが出かけてからちょうど三十分程度が経っていた。はーい、と返事をして扉の覗き窓から外の様子を確認する。十月の明朝は寒い。外にはあっくんが全身から蒸気を出しながら立っていた。今日もランニングが捗ったようだ。出かけていた旦那さんをお迎えする様子はさながら新妻のようで、私は鍵を開けながら必ずある言葉を口にしている。

「おかえりあっくん。お風呂にする? シャワーにする? それとも湯、浴、み?」

 大変クオリティの低いギャグではあるのだが、あっくんご所望のフレーズだから仕方がない。「目も醒めるような美少女が下らないオヤジギャグを言っているのが面白い」というのがあっくんの弁である。かわいいと言ってくれるのは嬉しいけれども色々とどうなのか。今では慣れたものだが、このギャグを言っている私も結構恥ずかしかった。とにかくランニングの汗で濡れ鼠になっているあっくんにはお風呂場に直行してもらおう。

「ふふ。湯浴みで」

「うぅ……。わかった。ご飯と着替え用意しておくね」

 吹き出すあっくんと赤面する私。そしてあっくんがそそくさと脱衣所に消える。あっくんの着替えによる衣擦れの音を聞き流しながら私は衣服の類を棚から取り出す。やがてシャワーの水音が聞こえてくるようになったタイミングで脱衣所にそれらを置いて、台所に戻ってくる。部室に住んでいた頃あっくんの洗濯物を私の家で洗ってあげてせっせと差し入れていた頃をなんとなく思い出す。私のアイデンティティと化している通い妻の始まりだったと思うと感慨深い。

 さて朝ごはんを作ろうと台所に立ったものの、昨日のミネストローネの洗い物が全部残っていた。あれから私はあっくんに醜態を晒し、そのまま愛し合ってしまったため後片付けがなおざりになっていたのだ。昨夜のあられもない様子が頭のなかでフラッシュバックしてきそうであったため、頭を振りそれを払いのけた。朝からそれではいけない。昨日使ったペアルックのどんぶりだけさっと洗う。ペアルックと言っても二個ワンセットのそう高くはないただの陶器だが。残りの洗い物は食後でいい。どんぶりが調達できた頃には鍋に沸かしておいたお湯が沸騰していた。割った卵をそこに投入する。ある程度卵に火が通ったらほうれん草と冷凍のうどんを入れる。うどんが充分温まれば茹で汁を切って器に上げ白出汁と別のお湯を入れて出来上がりだ。

「おお美味そう」

 後ろからあっくんの声がかかる。お風呂上がりのあっくんからは石けんの香りがしていた。

「えへへ、うどーん」

 おでーん、のテンションで言う私である。このイントネーションは好きだ。

「あっくん、あっちに持っていってもらっていい?」

「おう、任せろ」

 二つのどんぶりを持ってリビングへと消えていくあっくん。私は箸やコップを持ってその後を追いかけていった。

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