※この作品はR-18です。

Evening Lovers   作:わんこたいちょー

4 / 8
お待たせしました。…なんか毎回言っているような気もします。

真魚ちゃん編続きです。ちなみに時系列的には、病院事件はまだ起こっておりません。


真魚・路地裏にて

 その時、彼の頭にあるのは目の前の雌を犯したいという、食欲にも似た性欲のみであった。

 その衝動に突き動かされるままに、鞄から何かを取り出そうとした少女の足首を触手腕で掴み取り、宙吊りにする。その際、少女が着けていたヘッドフォンが外れ、音を立てて少女の元いた辺りに転がる。しかし、少女に其れを気にする余裕は無い様で、触手から逃れようと必死にもがく。

 

「やっ…!はな、してっ…!」

 

 掴まれた足に力を入れて触手を振り解こうとする少女。しかし、その両手は鞄から何とか出せたタブレットPCを落とすまいと抱えている状態である。そもそもが非力な少女だ。全身を使っての抵抗が出来ない以上、触手の拘束からは逃れられないのが道理である。

 

 先ずは剥かねば話にならぬと、少女の着ているパーカーを脱がそうとする。…が、宙吊り状態で上下が逆な上、未だに触手そのものの操作に慣れていない。内側に骨が通り、関節が出来ればやり易くもなるのだろうが、と思ったすぐ後に、作り方が何となく解る。

 どうやら、此の身体は何(・)に(・)で(・)も(・)成れる様だ。現在少しばかり大きく感じているこの図体の大きさも、先程目や口を作り出した様に形も、更には色や質感、硬さまで自由に出来るときた。先程までならいざ知らず、其れを唯便利に思える現状であれば、躊躇う必要も無い。

 彼は、触手腕の先に、少女を脱がせる為の『腕』を作り出した。形は、人間の肘から先を再現した。触手の先から腕が生えている光景は気持ち悪いが、そんな事より少女だ(今は然程気にならない)。

 これで脱がすのも容易い…かと思いきや、少女が暴れる為になかなかファスナーに指が掛からない。もう面倒になってしまって、パーカーの前を一対の触手腕で掴み、スナック菓子の袋を開ける様に左右へと引っ張る。プツツツツッという音を立てて、ファスナーの継ぎ目が強引に開かれた。その拍子に、金具が何処かへ飛んでいってしまう。

 

「いやぁ…ッ!」

 

 少女の顔が羞恥に染まる。それもその筈、何故か少女はパーカーの下には何も着ていなかったのだ。その結果、慎ましやかな胸を隠す可愛らしいブラジャーが見えてしまっていた。

 思わず身を捩る少女に、弥(いや)が上にも興奮が高まる。さあその脆弱な守りすらをも剥いでやらんと触手を伸ばし…

 

 

 >>魂切りの剃刀

 

 

 不可視の斬撃が、その触手をズタズタに切り裂いた。

 

『…あぁああああああぁぁぁっっっっ!!!!』

 

 一瞬、何が起こったのか分からなかった。燃える様な熱さ(いたみ)を感じて、伸ばしていた触手を思わず引っ込めてしまうと共に、少女を掴んでいられなくなり、取り落とした。切断面からは緑色の体液が流れ落ち、しかし既にジュクジュクと音を立てて泡立ちながら肉が元の形を取り戻していっている。

 

「っつぅ、…回復してる…流石ショゴス、でもそれなら」

 

 不安定な体勢からの落下だったが、幸いにも地面からの距離が其れ程高くなかった事から、左肩を強く打ち付けた程度で済んだ少女。

 先程迄の羞恥心(演技)は剥がれ落ち、淡々と手元のタブレットを操作する。それを新たに作り出した視界に収めながら、しかし初めて感じる種類の痛みに戸惑う。既に殆ど傷は治っていることもまた、その戸惑いに拍車を掛けていた。

 

『あぁぁっ…あ?いた…くない?傷は…無い?』

 

 傷を負った箇所を覗く様に眼を作り、傷の程度を確認しようとするも、既に傷は癒えている。その事が確認できた段階で、ショゴスは負った傷をそれ以上気にしない事にする。それより、少女の操作するあの端末だ。

 自らの危機にも手放さず、今も尚ショゴスの目の前で操作をしているという事は、恐らくあれが少女の生命線なのだろう。だとすると、先程の痛みの原因もあの端末であった可能性が高い。思い返せば、触手を少女の胸に伸ばしていた時も操作をしていた様な気もする。全く気にする事は無かったが。

 これ以上痛みを負いたくないと、少女の手に持つ端末を下からかちあげる様に触手ではたく。狙った通りに端末は宙空へと身を躍らせる。頑丈であったのか触手の攻撃で傷がつく事は無かったが、あの高さからそのまま落ちれば其れなりのダメージが見込めるだろう。…が、其の儘傷が付かない可能性もある。万に一つもあの端末を無事なままに少女へと返してはならないという決意と共に、バレーのスパイクの様に近くの壁に向かってはたき落とした。

 

「あっ…!いやぁッ!おとうさん…ッ!」

 

 先程迄の無感情とは打って変わった様に、今にも壁に叩きつけられようとしている端末を見て悲痛そうな顔を浮かべる少女。余程大事な物なのか、その目尻には涙まで浮かぶ程だ。

 その涙を見て、その言葉を聞いて、ショゴスの胸に一つの言葉が思い出される。寡黙だった彼の父が、酔っ払った時にだけ聞く事が出来る言葉だった。

 

 “いいか、水瀬…女ってのはな、絶対悲しみでは泣かせちゃいけねぇんだ…いいな?俺との約束だ…”

 

 その言葉を思い出し、性欲に茹だった頭が冷水を浴びせられたかのように覚め、青年の意思が戻ってくる。

 

(やっべぇ、親父にどやされる!)

 

 少女の大事な物を傷つけ、泣かせてしまったともなれば父親に顔向けが出来ない。そう思ってからの行動は早かった。

 叩きつけられる寸前の端末と壁の間に、伸ばした触手を割り込ませ、厚さを増し、布のような形状へと変化させる。そうして勢い良く飛んで来た端末を、傷が付かない様に優しく受け止める。

 そうして受け止めた端末を、二本の触手で捧げ持つようにして、ぎゅっと眼を瞑る少女の前へとそっと差し出した。

 

 

 

 どうやら食欲でなく、性欲が勝る個体のようだ…そう思ったのが、何処かで油断に繋がってしまったのかもしれない。

 捕らえた自分を其の儘貪り喰らうのでは無く、服を剥ごうとするそのショゴスを見て、真魚は其処にショゴスの油断を見た。どうも宙吊りにしているせいで、ファスナーを上手く掴めないらしい。ならばその時間を有効活用させてもらおうと、タブレットPCにインストールしてある魔術をローディングしようとする。

 確かネクロノミコンを最近インストールした筈だ、現在解読できている中には見当たらなかったが、未解読のファイルの中にもしかしたらショゴス召還の呪文があったかもしれない。身体に気をとられている隙に、少しでも解読出来れば…。そう思っていた矢先、脱がせる事を諦めたのか、パーカーの前をファスナーを無視して強引に開かれた。肌着も一緒になって破られてしまったのか、下着が見えてしまっている。

 

「いやぁ…ッ!」

 

 これくらいは、以前にされた事を思えば何も感じない。だが、性欲にて動いているこのショゴスには、多少反応を見せた方が食い付くのではと思ってやってみた。すると、予想以上に興奮したらしく、胸元に人の腕の様な触手を伸ばして来た。其の儘下半身に移行する物だとばかり思っていたので、これは誤算だった。

 胸元を触手で弄られてしまうと、両手で持っているMythosX5が触手で見えなくなってしまう。しかし、片手では何かの拍子に落としてしまえば取り返しが付かない。

 判断は一瞬だった。真魚はローディングを中断し、プリインストールされている魂切りの剃刀を此方に伸ばされる触手に向かって発動した。

 

 

 >>魂切りの剃刀

 

 

 不可視の斬撃がショゴスの触手を襲い、その体液を撒き散らす。本来は剥き出しの魂のままに現世を彷徨う悪霊に対して有効打を与える魔術であるその特性から、物質的な肉を持つ相手にはあまり効果が無い。しかし、直ぐに使える魔術がこれしか無かった為、仕方無しの使用であった。

 

『…あぁああああああぁぁぁっっっっ!!!!』

 

 苦痛の声を上げ、真魚を取り落すショゴス。しかし、その身体の修復は既に始まっており、ジュクジュクと泡立ちながら肉が盛り上がる様は気持ちが悪い。

 落ちた時に頭とMythosX5を庇う様に落ちたか、左肩を痛めてしまった。しかし、操作に支障はない。ショゴスの様子を伺うも、体を丸めて呻いている様で未だ動く気配は無い。

 取り急ぎ、中断していたファイルのローディングを再開し、魂切りの剃刀よりも強力な魔術を使用出来るようにしなければならない。このショゴスを外に出す訳には行かないので真魚が処理してしまうしか無いのだが、魂切りの剃刀ではどう見ても有効打を与えた様には見えないのだ。どうも人間味を感じるショゴスなので、マインドブラストが使用出来る様になれば何とかなる可能性はある。そう思い、画面を注視してしまったのが良く無かったのだろう。

 

 突然手元に衝撃が走り、持っていたMythosX5が宙に放り出される。何が起こったのか戸惑う間も無く、ショゴスは触手を宙空に浮くMythosX5に叩きつけた。その方向は…横にある建物の外壁である。

 

「あっ…!いやぁッ!おとうさん…ッ!」

 

 幾ら真魚専用に作って貰ったタブレットPCとはいえ、建物の外壁に叩きつけられて無事で済むとは思えなかった。父の遺してくれた其れを喪ってしまう事への悲しさに、思わず声と涙が零れてしまう。壊れてしまう瞬間を見たくなくて、ぎゅっと痛いくらいに眼を閉じてその時を待つ。待つ。

 …待てども、その破砕音(いやな音)は聞こえては来ない。自らが触手に浚われる感触も無い。恐る恐る眼を開くと、何故かショゴスが壊そうとした筈のMythosX5を二本の触手で持ち、此方に差し出していた。

 

「…ふぇ?」

 

 思わず間抜けな声が出てしまったが、これは仕方がないと思う、と、真魚は誰にともなく言い訳した。

 

 

 

 

「…えっと、話を纏めるとこういうこと?あなた…水瀬さんは此処に倒れてた人を助けようとしたら、その人がスマホを弄りながらブツブツ言ってたと思ったら黒い渦に吸い込まれて、気が付いたらその身体だった、と」

「いやぁ、そうそう、そうなんだよ!何だ嬢ちゃん、話が分かるじゃねぇか!」

 

 真魚が上半身を手とタブレットPCで隠す様にしながら拙い青年の話を纏めると、青年は嬉しそうに手(・)で真魚の背中を叩く。叩かれている真魚は、少し痛そうに顔を顰めている。ちなみに、真魚も初めは敬語だったのだが、堅苦しいのを嫌った青年がやめさせた。

 

「でもほんと良かったわ。ショゴス、だったか?あんな化けモンになっちまった時はもうどうしようかと思ってたんだが、こうやって元の姿に戻れたんなら万々歳、一件落着って訳だ!」

 

 そう、今の青年…水瀬の姿は、此処に来る前と同じ人間の姿を取る事が出来ている。元は人間である事を真魚に説明した際、「ショゴスはどんな姿にでもなれる筈だから元の姿にもなれる筈」という指摘を受け、試したところ、無事に元の青年の姿に成れたのだ。

 

「正確には、元の姿に戻(・)れ(・)た(・)訳じゃなくて、元の姿に成ってるだけ。あなたの本体はショゴスのままだし、擬態能力も気を抜けば戻ってしまう、筈。…それがどの程度大変なのかは分からないけど」

「大丈夫だって!今だってそんな大して気合い入れてる訳でもねぇしな。…それよりも嬢ちゃん」

 

 水瀬が真魚に向き合う。その面持ちは真剣で、相対する真魚も自然と背筋を正してしまう様な雰囲気があった。

 

「すまなかった。服をダメにしちまったし、オヤジさんから貰ったその、エミュレータだったか。それもダメにしかけた。オヤジさんが遺してくれたモンを、だ。…この通りだ」

 

 水瀬はそういうと、頭を下げた。其処には相手が自らよりも幼い事で誤魔化したり茶化したりといった様子は無く、唯純粋に一人の人間として真魚に謝罪していた。

 

「…頭を上げて。壊されそうになったのは怖かったけど、無事だったからいい。服だって、また買えばいいし」

「…そうか。なら、服代くらいは出させてくれ。俺がダメにしちまったんだから」

「ん。ならよろしく」

 

 ふぅ、と気を抜く様に息を吐く水瀬。そういえば、と、今は亡き魔術師(おっさん)がいた場所に残っていたスマホを拾い上げる。運良くショゴスとなった水瀬に踏み潰されずに済んだらしい。

 

「おっさんのこのスマホでショゴスは召喚されたんだよな?って事は、これにもエミュレータってのが入ってんのか?俺もこれを使えばそういう魔術的な事が出来たりすんのか?」

「それは見てみないと分からないけど…使いたいの?」

「もち、使いたいね。男としちゃあ、そういうロマンは追わずにはいられねぇからな」

「男の人って、ほんとそういうところがバカみたいだよね」

「辛辣だなぁ、おい」

 

 そう言いながらも笑う水瀬に呆れながら、真魚はスマホを受け取り内蔵されていた魔術エミュレータを起動させる。

 …が、その中身は悲惨なものであった。

 

「…何これ。そもそもインストールされてるのがサセックス草稿だけしかないし、その記述も歯抜けだらけで自分で埋めてる箇所の方が多い…しかも、元の記述がある所ですら改変された痕跡があるって…」

「つまり?」

「これで魔術を使うのはやめた方がいいと思う。下手すると旧支配者の前とか外宇宙に逆召喚されかねないし…頭がおかしくなりたいなら止めないけど」

「マジか…魔術使って見たかったんだが…」

「…あなたの身体がもう魔術…というか、神秘の塊みたいなものだから、気にしなくていいと思う。というか、何で今も正気なの?」

「…どういう事だ?」

 

 ともすれば侮辱の様に聞こえる言葉を、大真面目に水瀬へと問いかける真魚。その言葉に込められた真意が読めない水瀬は、何を指しているのか分からずに聞き返した。

 

「人間が神話生物と融合する研究は、神話生物の存在が裏社会に知られ始めた段階で既に始まってた。これは解る?」

「まぁ、な。人間を辞めてまでって気持ちは分かんねぇけど、ショゴスの力がすげぇのは身を以て実感してるし。回復力とか、便利さとか」

「そう。人の脆弱な身体と比べて、その身体の頑強性、特殊能力の強力さ、身に宿す魔力量…それらは圧倒的に神話生物の方が上だった。それを従えるだけじゃなく、自分の力にしたいと思うのは多分、普通のこと 」

 

 人は誰もが、空を飛びたい、超人的な力が欲しい、透明になってみたい、などと思った事がある筈だ。そして、それらの能力を合わせ持つ神話生物がいる。ならば、その力を得たいと思うのは人間らしい欲望の発露なのだ、と真魚は語る。

 

「でも、その殆どが失敗した。元々その神話生物が持つ意思や種としての本能が強すぎて、人の意思が塗りつぶされたり、その悍ましい外見や身体の感覚に耐えられずに発狂したりという事が多かったらしい…。唯一明らかになっている成功症例は、体が深きもの(ディープワン)になりながらも人としての精神のままで200数年生きている、ジョンという男だけ。…それでも、最近い(・)い(・)夢(・)を見始めた、と言っているらしいから、そろそろダメかもしれないけど」

「…ちょっと待ってくれ。神話生物ってのは200年も生きられるもんなのか?つか、そんだけ生きててもそっからダメになっちまうもんなのか?」

「個体差はある筈だけど、モノによっては地球が生まれた頃からとか、人類が誕生する前から生きてるのもいるから…寿命については多分相当長いと思う。あと、深きものはクトゥルフとか先祖の深きものが出すテレパシーを受け取っちゃうと、普通の人間からの覚醒が肉体と精神の両方共が進行しちゃうらしいから。一回二回の覚醒には耐えられても、200年かけて何十回何百回繰り返される覚醒衝動には耐えられなかったのかも」

 

 そのスケールの大きさに絶句する水瀬。そして、今人としての精神を保てているのが奇跡に近い事なのだということを、やっと理解する。

 

「じゃあ、あれか?俺もそのうちに頭がおかしくなるかショゴスの本能に飲み込まれて、ダメになっちまうのか…?」

「んー…どうだろ。ショゴスはディープワンとは違って、元からショゴスとして造られた存在だから、覚醒衝動とかは多分無いと思う。あと、ショゴスの主の『古のもの』は、殆どが人工冬眠してるし、ショゴス自体が『古のもの』に反乱を起こした事が有るから、主からテレパシーが飛んできて其処から覚醒するって事も無いと思う…。ただ、さっき触手を操作してたみたいな、人に無い感覚を感じ過ぎると其処から発狂する可能性が微粒子レベルで存在する…?いや多分、可能性的にはもっと有るだろうけど」

「あー、そういや成り立ての時はすげぇ気持ち悪かったな…。自分の行動全部が人間じゃない事を押し付けられてるみたいな感覚だったわ。いや、考えてみりゃショゴスなんだからそりゃそうなんだが」

「その感覚、今もある?」

「いや、いつの間にか消えてたな…何でだ?」

「…わたしに訊かれても…わたしが見つけた時にはすごく混乱しているように見えたけど」

「…そうだ。そうだった。嬢ちゃん見つける前迄は何やっても気持ち悪くて、でも嬢ちゃん見つけてからはヤりてぇって気持ちの方がデカくなって、身体の調子が気にならなくなったんだ…。つか、思い出したらすげぇムラムラしてきた…」

 

 股座の勃起してしまった陰茎を思わず隠すように抑える水瀬。真魚はそれを気にする事なく、その性欲の原因について考えていた。

 

「…水瀬さんのその性欲って、元からそんなに強かった?」

「いや、んな事ねぇけど…もうちょい自制は効いた筈なんだが…」

 

 水瀬の息が荒くなり始める。その目線は、自らが破いた真魚のパーカーの隙間…あまり日に焼けていない白い肌が眩しい胸元を捉えていた。

 

「ショゴスが性欲の強い生き物というわけでも無いし…だとすると、生贄になった術者のおじさんがショゴスに影響する程に特別性欲が強かったのかな…。水瀬さんの意識が主体としてあるって事は、多分召喚するショゴスの意識はかなり希薄になってた筈で…書き換えられてた記述の影響?でも、自力で書き換えても狙った影響が出るとは限らないし…あ、だから術者のおじさんは消えちゃったんだ……何してるの?」

 

 いつの間にか、水瀬は人としての擬態が半分解けたような状態で、触手を伸ばして真魚の胸をブラジャーの上から揉んでいた。あまり大きくは無いものの、ブラジャー越しでもその柔らかさは伝わってくる。

 

「すまん…すげぇムラムラして、止めらんねぇ…今にも嬢ちゃんに襲いかかっちまいそうだ…」

「既に手は出してるけどね…んっ…もしかしたら、その性欲衝動が水瀬さんにとっての覚醒衝動の代わりになってるのかも…?」

「…嬢ちゃんが本気で嫌ならさっきみてぇに抵抗してくれ。自力では止められそうにねぇ…』

「…んー…代わりになってるなら抵抗しちゃうと逆に発狂しちゃう可能性もあるし…うん。いいよ。セックス、しよ?」

『…は?おい、自分で言うのもアレなんだが、ほんとにいいのか?乱暴になっちまうかもしんねぇのに…』

 

 殆どショゴスへと戻っていた水瀬の動きが一瞬止まる。しかし、真魚は誘うように身につけた衣服を脱いでいく。

 

「そういうのには慣れてるから…それで水瀬さんの意識が消えないなら、街に被害も出ないし。だから、遠慮しないで…?」

『…あぁくそっ、嬢ちゃんが良いなら遠慮しないからな!』

 

 身体を隠す物が何も無い状態になった真魚に向かって改めて触手を伸ばす水瀬。伸ばされた触手は真魚の四肢を拘束し、抵抗出来ないようにしてしまう。

 

「わ、…ほんとに遠慮無しできた」

 

 あまり動じた様子を見せない真魚だが、その顔は紅潮している。これからされる事への期待に、胸を高鳴らせてしまっているのだ。

 水瀬は興奮からか言葉も無い様で、何処にあるとも分からない口から荒く息を吐く様な音を響かせながら、むしゃぶりつくように新たな触手を真魚の両胸に吸い付かせた。

 

「っ…ふぅ、ん…触手の先でおっぱいだけ吸うって…変態っぽい…」

 

 真魚の言葉通り、水瀬は触手の先に口を作り出し、吸盤のように吸い付いていた。桜色の可愛らしい乳輪を千切れんばかりに吸い込んで擬似的な真空状態を作り出したかと思うと、触手口内に舌を作り、尖った乳頭の先を味わうかのように舐り、突つき、舐め回す。

 

「あんっ!や、乳首、…そんな乱暴に、しちゃあ…んんっ!」

 

 吸盤のようだった口が人間のようになり、できた歯で乳頭をコリコリと噛む。グミのようなその食感を感じながら、舌先を乳頭に当てながら小刻みに動かし、ローターを当てているかのように振動させる。その刺激に、真魚は瞬く間に上り詰めていく。

 

「ん、…んっ、んんぅっ!だめっ、…刺激、つよすぎっ…くるっ、きちゃうっ、…んあぁああっ!!」

 

 少しでも漏れる声を抑えようとする真魚だが、両手が抑えられているために口を抑えることができず、無防備な絶頂の声を上げてしまう。身体はビクビクと痙攣し、触れてもいない秘部からはどろりと愛液が流れ出す。

 

「はーっ…はーっ…ん、もう入れちゃうの…?」

 

 がくり、と身体を脱力させ、荒く呼吸を繰り返す真魚の淫唇に、形を陰茎に似せた触手を当てがう。既にトロトロの其処は前戯の必要が無い程に濡れていた。

 

「いいよ…入れて?…せーしょりどーぐを使うみたいに、乱暴にして…?」

 

 その言葉が引き金となり、当てがわれていた触手が一息に奥まで突き入れられる。その勢いは激しく、子宮まで貫通するのでは無いかと心配になる程だった。

 

「はぁあんっ!…はいって、きたぁ…おっきぃ…」

 

 しかし、真魚の声に苦痛の色はない。あるのは快楽のみで、子宮口に先端がぶつかった時に軽くイってしまう程だった。

 その絶頂により、膣内が触手を絞るように収縮する。挿入直後からイってしまういやらしさに水瀬の興奮は高まるばかりで、触手先端から精液のような物を勢い良く発射してしまった。

 

「ぅあっ、ふああぁぁあぁっ!」

 

 精液が自らに叩きつけられるような衝撃に、再び絶頂してしまう真魚。その膣内は不規則に収縮し、水瀬も再びイってしまいそうになる。しかし、イってばかりでは情けないとぐっと堪え、抽送を開始した。

 

 真魚の膣口からは肉を捏ね回すいやらしい音が響き、胸は触手に啄ばまれる。性感帯を同時に責められ、真魚の身体は軽い絶頂を繰り返していた。

 

「あぁっ、あっ、あっ、あんっ、ああぁっ!」

 

 イき過ぎて、声が枯れてしまうのでは無いかと思う程に喘ぐ真魚を責めながら、水瀬は今迄耐えていた絶頂感が限界ギリギリに達した事を自覚した。抽送速度が早くなり、真魚にもそれが伝わる。

 

「あっ、あぁっ、イくのっ?イっちゃうのっ?イって、イってぇ!あ、くるっ、きてるっ、すごいのくるからぁっ」

 

 仕上げとばかりに胸の触手口で乳首をガリッと強く刺激し、ドチュッと真魚の最奥に突き入れる。そしてそのまま、音が聞こえてきそうな程に激しく精を吐き出した。

 

「っああああああああぁぁぁぁっ!」

 

 四肢に無意識に力が入り、深い絶頂を味わう真魚。そのお腹は精を吐き出される毎に目に見えて大きくなっており、吐精の凄まじさが伝わってくる。

 その絶頂は、真魚にはとても長く感じられた。実際は、其れ程に長くは無かったのだが。

 

「はぁ……はぁ……ぁ…」

 

 くたり、と力が抜け、目を虚ろにさせる真魚。そのお腹は、まるで臨月の妊婦のようにポッコリとした大きさになっていた。

 それに満足し、水瀬は四肢の拘束を解き、触手をマットのように変化させ、その上にそっと寝かせるのだった。

 

 

 

「わ…すごい魔力量」

 

 真魚が股から吐き出された物を手に掬い、弄びながら呟く。もうその大半は触手を抜いた時に流れ出てしまったが、真魚のお腹はまだ少し食べ過ぎてしまった程度には膨れている。

 

「恥ずかしいからあんまいじくんなよそれ…つか魔力?ってのは?」

「…文字通り、不思議な力の源。わたしの魔術も、魔力を使って発動してる。普通の人間の精液には魔力がこんな多くはない。…ショゴスになった影響?何にしても、これはわたし的にはラッキー。空のペットボトルか何かって持ってる?」

 

 問いを投げられるが、それには答えずにパーカーを差し出す水瀬。その顔は紅く染まっており、真魚を直視しないように目は逸らされていた。それもそのはず、真魚は未だ何も身に着けてはいなかったのだ。

 

「持ってるけど、先にこれ羽織ってくれ。…いつまでも裸のまんまでいるんじゃねぇよ。身体冷やすぞ」

「…また、あっためてくれてもいいよ?」

「ばっ、馬鹿言うんじゃねぇ!いいから、さっさと羽織りやがれ!」

 

 ばさり、と投げられるように真魚に被さるパーカー。それを億劫そうにもぞもぞと着る真魚だが、ふとある事に気付いた。

 

「…パーカーのファスナー、直ってる。金具が壊れてた筈なのに…」

「あー…直しといた。ショゴス(触手)の身体なんだが、どうも切り離せるみたいでな」

「そう…ありがとう」

 

 直っているならとファスナーを上まで上げる真魚だが、パーカーを纏っても尚顔の紅い水瀬が少し気になった。

 

「…どうしたの?」

「…えーと…お、怒んなよ?切り離した身体なんだが、感覚がある…っつーか、そっちも好きに出来るみたいで…。すまん、パーカーで暗くなった中でぼんやり見えてる胸が、すげぇ色っぽい」

 

 後ろめたそうに視線を逸らしながら謝る水瀬を、感情の読めない瞳で暫く見つめる真魚。

 

「……えっち」

 

 呟かれた言葉に責める響きはなく、どちらかというと揶揄いを秘めていた。

 

「悪い!いや、あんな事しといて今更だとは思うんだが…えーと、俺に出来る事なら何でもする!荷物持ちでも肉壁でも、何でも言ってくれ!」

「…ん?今、何でもするって言った?」

「言ったぞ。何でも言ってくれ」

「…じゃあ、これからも精液ちょうだい?」

「…はっ?」

 

 言われた事の意味が分からず、思わず聞き返す水瀬。

 

「だから…これからも、わたしが呼んだら精液ちょうだい?…べつに、ついでにセックスしてくれてもいいから」

「いや…意味が分からん。つか、あれ精液じゃないし」

「…そうなの?」

「多分。出す時に、子供が出来るのは不味いと思って咄嗟に出したから、多分精子が入ってねぇ精液にすげぇ近い何か」

「…まぁ、魔力が多いのには変わらないから、何でもいいけど。…で、どうなの?お願い、聞いてくれる?」

「…あー…」

 

 困ったように頭を掻く水瀬。しかし、何でも言う事を聞くと言った手前、断る事も出来ない。

 

「…分かった。しゃーない。いいぞ、呼んでくれりゃあする。…あんま突拍子もない時間に呼ぶなよ?」

「善処する」

 

 そう言った真魚は、すっと右手を差し出す。

 

「これは契約。わたしは貴方の性欲衝動を発散するし、貴方はわたしに精液を渡す。ギブアンドテイク。…よろしく」

「…おう、よろしく」

 

 水瀬がその手を握り返す。そうして、二人の間で契約は交わされたのだった。




今後起こりうるであろう事
真魚探索中、水瀬授業中

(真魚がファスナーに口を寄せる)
「水瀬さん…エッチしよ」

「ブフォッ」
「せんせー、水瀬君がー」
「ゴホッ、ゴホッ、な、何でもない!」


あると思います。

真魚ちゃん編、出会い編でした。多分ラブラブ編と特殊プレイ編が待っているはずです。変わるかもしれませんが。
真魚ちゃんの裸パーカーは公式…公式なのです…!(ざわ…ざわ…)
大変エロくてよろしいかと思います。すばら!

ちょっと分かりにくかったかもなので、解説をば。
水瀬君は発狂を性欲衝動によって抑えています。なので、あまりに性欲を我慢した場合発狂します。
性欲を発散させる事によって、正気を保っている、という状態です。それもこれも、おっさんの性欲が強すぎたのが悪いんです。おのれおっさん!

次はユーリヤ編の予定ー。わんわんプレイにはならないかもです…(※なりませんでした)
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