女子高生准査ヌルデバと萌える寄生虫の共生捜査本部 作:ぬるでば
「デブって言うなし!」
8月の大洗海岸。
黒地に白いセーラー襟を模したビキニを着た白川茶々が口を尖らせた。
照りつける太陽の下、茶々は同級生の龍生と海水浴に来た。
大洗は、戦車をモチーフにした学園もののアニメがヒットした影響もあり、たくさんの人でごった返していた。
「大洗っていうか、芋洗いだなこりゃ」
茶々がくわえ煙草で同級生の龍生につぶやいた。
白川茶々は、17歳の県立高校2年生。
茨城県龍ヶ崎市在住。
身長153センチメートル、体重51キログラム。
背はやや低い方か。
体重は軽くはないが、決して太ってもいない。
ぴったりフィットしたビキニのボトムにウエストの肉が軽く盛り上がって乗るくらいの肉付きで、見た目は健康そのものだ。
身体全体にほどよく脂肪がついているため、バストも十分に発達した。
セーラー襟を模したトップスからは、乳房が今にもこぼれそうになっている。
同級生からは「八街のスイカ」と言ってからかわれる。
歩くたびに茶々のスイカは上下に弾んで人目を引く。
男子は、からかいながらも健康的で肉感的な茶々の身体に興味津々だ。
学校ではよく男子に目で追われている。
茶々の髪は、茶髪のショートボブで左目を隠している。
無造作に毛先を遊ばせ、ふわっとした柔らかさを出すようにしている。
目を隠していない右サイドの髪をかき上げて耳にかける。
左右のイヤーロブ(みみたぶ)にはピアスが2つずつ、右耳のヘリックス(耳殻の軟骨)にはキャプティブビーズリングが2つ着けられている。
なにより特徴的なのは、褐色に輝く肌だ。
一見すると黒ギャルのようだが、茶々はギャルではない。
単に日焼けが趣味で、日焼けサロンに通いつめているだけだ。
目鼻立ちは、はっきりしている。
目は、ぱっちりと大きい。
しかし、目つきが悪い。
これは茶々の責任ではないが、普通にしていると睨みつけているように見えてしまう。
褐色の肌に睨みつけるような目の組み合わせは、なかなかに凶悪だ。
初見では必ず怖がられる。
そして、凶悪な顔つきと笑顔のギャップが大きい。
茶々が笑うと凶悪だった目がふにゃふにゃの垂れ目に一変する。
この笑顔の方が茶々の性格をよく表している。
普段は口が悪く傍若無人に振る舞い、どちらかというとSっぽく見られている。
ところが、茶々は被虐願望が強く、一旦心を許した相手にはとことん隷属的になりいじめられることを乞う。
茶々は、誰に対しても被虐的なわけではない。
信頼関係の中で心と身体を相手の意のままに弄ばれたいと願っている。
その気持を隠すために普段は強気を装い、意に反して自分のエリアに踏み込まれないようにしている。
茶々は、派手な出で立ちの割に化粧っ気はない。
唇の血色を良くするために色の付いたリップを塗るくらいで、他に手を加えているところはない。
それでも十分かわいいことを自覚している。
本当は、化粧が面倒くさいという理由のほうがウエイトが高いのだが。
「ねえヌルデブ」
龍生が茶々を呼んだ。
「デブって言うなし!」
茶々は、龍生の呼びかけに腹を立てていたのだ。
「しかもヌルデブじゃねえし。ヌルデバだし!」
茶々が煙草の煙とともに吐き捨てた。
「ああ、そんなことどっちでもいいや。ちゃーちゃんさあ、大洗、芋洗いとかおやじみたいなこと言ってっと、ただでさえ真っ黒けで色気もなにもないのに、今以上に男が寄り付かなくなるよ」
龍生は、茶々の怒りをまったく気にする様子もなく、茶々のおやじギャグにツッコミを入れて毒づいた。
龍生は、茶々と幼稚園のときからずっと一緒の同級生だ。
茶々がぽっちゃりとした丸みを帯びた体格なのに対して、龍生は身長175センチメートルの痩せ型で対照的だ。
おまけに、茶々が黒ギャル風の風体なのに、龍生はいかにも優等生といった雰囲気で、真っ白な肌をして黒髪を七三に分けている。
二人が並ぶと茶々の身体の丸さや遊んでいる風の見た目が引き立ってしまう。
茶々は、それが気に入らない。
龍生は、昔から茶々のことを「ちゃーちゃん」と呼んでいる。
ちゃちゃちゃんだと「ちゃ」が多すぎて言いにくかったからだ。
「なっ、てめー、真っ黒けとか言ってんじゃねえよ。褐色って言えよ」
茶々が龍生に語気荒く言い返した。
しかし、その表情に怒りは浮かんでいない。
むしろふにゃふにゃの垂れ目になっている。
「ねえヌルデブ」
龍生が茶々を呼んだ。
「あ? なに? ていうか、その呼び方やめろよ。何回も言ってんだろ。ヌルヌルに脂ぎったデブみたくてすげえ嫌なんだよ」
茶々が煙草を深く吸い込んだ。
「その煙草だけどさ。身体に悪いからやめなよ」
龍生は、茶々の文句に取り合わず、煙草をやめるように諭した。
「やだよ。なんで彼氏でもないお前に言われなきゃならないんだよ。彼氏に言われたんなら考えなくもないけど……」
茶々はため息とともに煙草の煙を吐きながら龍生の忠告を拒否した。
「なら彼氏作りなよ」
「うるせえなあ。あたしには彼氏を作る必要なんかねえんだよ!」
「あ、もしかしてレズ?」
「はあ? お前バカなの? そういうことじゃねえよ」
茶々は、吸っていた煙草を携帯用の吸殻入れに荒々しく押し込んだ。
「開けて」
茶々が龍生のバイクをあごで指して言った。
「ん」
龍生は短く返事をすると、立ち上がって停めているバイクのところまで歩いていった。
茶々も龍生に続いた。
「はい」
龍生は、スクーター型バイクのシートを開けて茶々を促した。
「あざす」
茶々が軽く龍生の肩をたたいて煙草とライター、それと吸殻入れをメットインの中に放り込んだ。
「どうでもいいけど、これ、こんなところに入れておいて大丈夫なの?」
龍生がメットインの中に入っている茶々の荷物を指差して不安そうに訊いた。
「へーきへーき。今まで盗まれたことないじゃん」
茶々は、右手を顔の前で左右に振りながら涼しい顔で答えた。
「いくぞ!」
ビーチサンダルを脱ぎ捨てた茶々が龍生の手を引き、海に向かって走り出した。
「うわっ、ちょっと待った!」
茶々に手を引かれて体勢を崩した龍生が転びそうになりながらサンダルを脱いで茶々を追った。
「いや、ダメなんだよ、ほんとは……」
龍生は、茶々に手を引かれながら心配そうにバイクの方を何度も振り返った。
「いててっ」
大洗の海岸は、細かい砂浜ではない。
小石混じりの砂浜なので素足で歩くと痛いことがある。
茶々と龍生は、手をつなぎながら海に入っていった。
「おい、あの黒ギャル、めちゃくちゃエロい身体してねえか」
「ん、ああ、あれか。そうだな、めちゃシコだな」
水深がお腹のあたりまであるところで遊んでいた茶々を近くで見た二人組の男が小声で話していた。
「俺、我慢できなくなっちまったよ」
一人の男が顔を紅潮させながら、自分の水着の中に手を突っ込んだ。
「またかよ。お前、このごろやたらオナニーしてんな」
もう一人の男が呆れたような顔をした。
「俺にもわからねえんだよ。前はこんなことなかったのに、最近、どうしようもなくムラムラしちまって、我慢できないんだ」
男は水中で見えないのをいいことに水着を下ろしてペニスを手でしごいている。
「きったねえから俺は上がってるぞ」
そう言い残してもう一人の男は水から上がっていった。
残った男が呼吸を荒くしている。
段々と男の肩の動きが大きくなっていった。
「ほぁう!」
男が小さく息を漏らし、腰を引いた。
男から放出された精液は、波で撹拌され海中に拡散していった。
茶々と龍生は、自分たちの近くにいる男がオナニーで射精したことなど知る由もなかった。
茶々は、決して龍生と密着することはないが、ときどき肌が触れ合う程度の距離から離れることもなかった。
「ふう、さっぱりしたー」
海から上がり、海岸に作られたコイン式のシャワーで身体を洗い流した茶々が髪をタオルドライしながら小屋から出てきた。
ビキニのボトムは、膝上10センチくらいの白いサーキュラースカートに履き替えられている。
トップは、水着の上にTシャツをかぶっただけだ。
茶々は、龍生のバイクのシート下からベルトが巻かれた黒い物体を取り出した。
黒い物体のベルトを解くと、茶々はスカートの裾をまくり上げた。
茶々の褐色でつややかな太ももが露わになった。
龍生は、茶々を周りから見えないようにカバーしながら、ときどき彼女の太ももに目をやった。
茶々は、慣れた手つきで黒い物体を右の太ももに当てがい、2本のベルクロでがっちり締め付けた。
「締め付けられるのって快感」
茶々がうっとりとした表情を作った。
次にメットインの中に無造作に転がされている黒い革製の物をつまみ上げた。
それは、定期入れくらいの大きさで二つ折りにされ、折り目の両端に一本の紐の両端が結着されている。
つまり、紐と黒い物とで輪になっている。
茶々が紐をつまんでメットインから取り出したとき、黒い二つ折りの物が開いて内側に合わされていた面が見えた。
「POLICE」「茨城県警察」
金色に輝くエンブレムには、そう書かれていた。
茶々が取り出した物は警察手帳だった。
エンブレムが付いている反対側の面には、警察官の制服を着た茶々のバストショットの写真が表示されている。
褐色の肌に片目を隠した茶髪のショートボブという、およそ警察官らしくない警察官の写真だ。
しかも、茶々はまだ17歳。
大人っぽく装っていても、あどけなさをごまかすことはできない。
これを見た人は、コスプレかと思うに違いない。
写真の下には、階級と名前の表示がある。
階級は「准査」。
名前は本名の白川茶々ではなく「ヌルデバ」と書かれている。
茶々は、紐の輪に頭を通すと、Tシャツの襟から警察手帳を胸の中にしまった。
ただ、このままだと茶々の巨乳の上に手帳が乗ってしまい、外から手帳の形がはっきりと見えてしまう。
「こういうときおっぱいが役に立つんだな、これが」
茶々は、独り言をつぶやくと警察手帳を縦にして胸の谷間に差し込んだ。
警察手帳は、柔らかな乳房の間に埋没して、始めからなにもないかのような外観になった。
茶々が警察官の身分を持っていることは、彼女の周囲では龍生しか知らない。
茶々の両親ですら知らされていない。
「おう、龍生お待たせ。帰ろうぜ」
茶々は、半キャップヘルメットを頭に乗せ、おじいちゃんから借りたスーパーカブに跨った。
おじいちゃんから借りたスーパーカブを茶々は「ひろちゃん号」と呼んでいる。
おじいちゃんの名前が浩さんだからだ。
ひろちゃん号は、おじいちゃんに内緒で75ccにボアアップして、リミッターも切ってしまった。
改造直後、急に速くなったひろちゃん号に乗ったおじいちゃんが、農道から水のない田んぼに落ちた。
幸い、落ちたのが田起こしをした直後だったため、柔らかくなった土に守られておじいちゃんにケガはなかった。
そのときは、めちゃくちゃ怒られたが、今では当たり前のように農道を高速クルージングするようになり、農協仲間から「農道の星」と呼ばれ喜んでいる。
ひろちゃん号は、ボアアップしたとはいえ、所詮SOHCの4サイクル単気筒エンジンだ。
加速では2サイクルエンジンを積む龍生のスクーターに敵かなうはずもない。
「あたしを置いていくなー! クソ龍生!」
信号のたびに置いていかれる茶々は、涙目で龍生を追いかけるしかなかった。
龍生は、信号グランプリで勝利をおさめると、少し先で徐行したりときには止まって茶々が追いつくのを待っていた。
茶々たちが住んでいる龍ケ崎市から大洗海岸までは、原付だと3時間はかかる。
茶々にとっては、海水浴よりも往復の道中、龍生と一緒に走れることの方が重要だった。
二人は、地元の人間が「ろっこく」と呼ぶ国道6号線をひたすら南下した。
「龍生、おなかすいた」
途中の休憩でくわえ煙草の茶々が龍生に空腹を訴えた。
「なんか食べる?」
龍生がいつもの穏やかな口調で訊いた。
「うん」
茶々がくわえ煙草のままで頷いた。
「臨時収入があったからおごるよ」
「臨時収入があったからおごるよ」
二人の声が完全にシンクロした。
「え?」
「え?」
一瞬の間を置いて、二人が笑いだした。
「すげーシンクロじゃん。それも2回もシンクロするなんてすごくない?」
茶々は爆笑して涙を流している。
「はー、はー、笑いすぎて苦しい。そういえば前にもこんなことあったな。二人で同じ日に臨時収入があったこと」
茶々が苦しそうに言った。
「そうだね」
龍生は簡単に答えた。
「お前、バイトしてたのか? 臨時収入があったって」
茶々は、龍生がアルバイトをしているとは聞いていなかった。
「あ、ああ、まあバイトみたいなものかな。ときどき仕事をもらってるんだ」
龍生はバツが悪そうに答えた。
「ふーん、なんかあたしみたいだな」
茶々がふにゃふにゃの笑顔を龍生に向けた。
「ちゃーちゃんの笑顔は、いつ見てもかわいいな」
龍生が優しくぶつやいた。
「んなっ、急になに言ってんだよ」
茶々が赤面した。
「真っ黒けでも赤面ってできるんだね」
龍生が茶化した。
「ぶっ殺す」
茶々が笑顔を消していつもの凶悪な目で龍生を睨みつけた。
「そうそう、それそれ。その凶悪な顔もいいよ!」
龍生が喜んだ。
「ちっ、お前には何やっても効果なしだな」
茶々がふにゃふにゃに戻った。
「幼稚園のときからの付き合いだし。お尻のほくろの場所まで知ってるよ」
龍生が茶々のお尻を指差した。
「なんで知ってんだよ!」
「当てずっぽうに言ったけど、当たってた?」
「てめー、この野郎! 騙しやがったな」
「ちゃーちゃんはリアルでも守りに入ると弱いよね」
「う、うるせー、バカ!」
「あ、バカって言ったら自分がバーカ」
「そういうお前だって今バカって言ったじゃん」
他愛もない罵り合いが楽しかった。
「で、なに食べる?」
茶々が話題を元に戻した。
「そうだなあ……」
龍生が思案顔をした。
茶々は、くわえ煙草で腕組みをして考え込んだ。
龍生も腕を組んで思いを巡らせている。
「牛丼!」
「牛丼でどう?」
二人同時に言葉を発した。
「うえーい!」
二人は頭上でハイタッチした。
「たまにはもうちょっとこじゃれた店に行ってみたいけど、今さらそういう雰囲気にもなれねえよな」
茶々は、軽い諦めのような気持ちになっていた。
「行くか」
茶々は、自分の気持ちを打ち消すかのように煙草の火を消して龍生に声をかけた。
二人は原付を走らせ、国道6号線沿いの牛丼チェーン店に入った。
「いらっしゃいませー」
店員が元気に挨拶をした。
「並ください」
「特盛りアタマ大盛りで!」
カウンターに並んで座った二人が思い思いに注文を出した。
「相変わらずの食欲だね」
龍生が嬉しそうに茶々に話しかけた。
龍生は、自分が食が細い分、よく食べる女の子が好きだ。
「お前がそうやって喜んでくれるからあたしも食べたいものを食べられて助かるよ。ありがとな」
茶々は、いつも食欲旺盛だ。
「お待たせしましたー」
二人の前に牛丼が提供された。
茶々の前には並盛りの牛丼が置かれ、特盛りアタマ大盛りは龍生の前だ。
「やっぱりこうなっちゃうか」
カウンターの上に置かれた牛丼を見て茶々が苦笑した。
「ほらよ」
茶々は、自分の前に置かれた並盛りの牛丼を龍生の前に移し、龍生の前の肉が山のように乗せられた丼を自分のところに引き寄せた。
「ほれ」
茶々は、口の広い筒に立てられた割り箸を一膳つまみ上げ、龍生の前に放り投げた。
「親切なんだけど雑だなあ」
龍生は、嫌がる素振りも見せず当たり前のように割り箸を拾い上げた。
「お前相手に『はいどーぞ』とか、あり得ないし」
茶々が毒づいた。
「いただきまーす」
茶々と龍生が手を合わせた。
茶々は、豪快に牛丼をかき込む。
一方の龍生は、静かに箸で口に運んでいる。
食べ方がまるで対象的な二人だった。
「あ、ちゃーちゃん、顔上げて」
相変わらず丼からかき込んでいる茶々に龍生が声をかけた。
「んー?」
茶々が口をもぐもぐさせながら顔を上げて龍生を見た。
「ご飯粒」
そう言うと龍生は、茶々の口角に付いたご飯粒を指でつまみ上げ、自分の口に運んだ。
「!!」
茶々の顔が火を吹いた。
「言えよ、バカ! 言ってくれれば自分で取るんだから!」
「言ったよ」
龍生は涼しい顔をしている。
「そうじゃねえって。あたしが言いたいのは『茶々様、美しいご尊顔にご飯粒が付着してございます。つきましては、ご自身でお取り上げになり、そのかわいらしいお口にお運びになってはいかがでございましょうか』っていう丁寧な説明だよ!」
茶々は動悸が収まらず、わけのわからないことを口走った。
「茶々様、真っ黒なご尊顔にご飯粒が付着してございます。つきましては、ご自身でお取り上げになり、その減らず口にお運びになってはいかがでございましょうか」
龍生が茶々を真顔で見て言った。
「誰が繰り返せって言った。しかも一部改変しやがったな」
茶々は、恥ずかしいのか怒っているの分からない顔で俯いた。
「改変は、クラッカーの常だもんね」
龍生がいたずらっぽく微笑んだ。
「ごちそうさまでした」
コミカルな掛け合いをしながら牛丼を食べ終えた二人は、会計を済ませて店を出た。
結局、会計はそれぞれが相手の分を払うということになった。
「二人とも臨時収入があったんだから、お互いにおごるっていうことでいいな」
茶々が提案した。
「俺のほうが損してるような気がするんだけど、どうだろうか」
並盛りの牛丼を食べた龍生が特盛りアタマ大盛りの代金を払うというのは、どう考えても損だ。
「細かいこと言ってると女にもてねえぞ」
茶々が龍生の背中に軽くパンチをした。
「まあ、別にもてなくてもいいんだけどね」
龍生が受け流した。
二人は再び龍ケ崎を目指して走り出した。
「龍生、今日はありがとな。お前と遊んでると楽しいわ」
別れ際、茶々が龍生にお礼の言葉を投げかけた。
「こっちこそありがとう。ちゃーちゃんは最高だよ」
龍生がさらりと茶々を褒め称えた。
「な、なに言ってんだよ」
また茶々が赤面して俯いた。
「じゃあな」
「またね」
二人がそれぞれの家路についた。
茶々は、煙草に火をつけると大きく煙を吸い込んだ。
「うめえ」
〝うめえ〟
「ん? なんだ?」
茶々は、自分の声が二重に聞こえたような気がした。