女子高生准査ヌルデバと萌える寄生虫の共生捜査本部 作:ぬるでば
「なあ龍生」
朝、学校の玄関で龍生を待ち伏せしていた茶々が龍生の顔を見上げた。
「なに?」
龍生は、いつもの穏やかな笑顔を返してくれた。
この笑顔を見ると安心する。
「今度の日曜日、大洗に行くだろ」
「うん、行くね」
「実は、県警からの任務なんだ」
「へー、どんな任務なの?」
「ちょっと前にあたしを拉致ったニクシロンっていたろ」
「あ、県警にぶっ殺されたデブだね」
「デブって言うなし」
「ちゃーちゃんのことじゃないよ。ニクシロンだよ」
「あ、そうか。すまん。でな、そのニクシロン一派が、完全に壊滅したわけじゃなさそうなんだと」
「え、そうなんだ」
「ああ、で、捕まらずに残ったのがニクシロンの狂信的な信奉者で、復讐に燃えてるらしい」
「なにをやろうとしているの?」
「テロをやる計画らしいぞ」
「危ないじゃん。それをちゃーちゃんにどうしろって?」
「なんかな、今度の大洗のイベントで報復テロをやる計画があるらしいんだけど、県警は、それをガセだと読んでる。だから、とりあえずあたしを大洗に飛ばして、ニクシロンの残党がいないかどうかを見て来いって」
「危なくないんだね。ならよかった」
龍生が胸をなでおろした。
「県警のおっさんの言い方だと『いないことを確認して来い』ってことらしい」
「なるほどね。でも、ちゃーちゃん、そいつらの顔分かるの?」
「ああ、顔を見れば分かる。そいつがどこの誰かは知らねえけどな」
「そっか、ちゃーちゃんはニクシロンたちと会ったことがあるんだったよね」
「会わなきゃよかったと思ってるよ。こんな面倒なことなるんだったらな」
「でも、おかげで二人で出かける用事ができたじゃない」
「お前、ポジティブだな。そういうとこ好きだよ」
「俺もちゃーちゃんのこと好きだよ」
「おま、ストレートすぎんだろ。もうちょっと歪曲にっていうか婉曲にっていうかオブラートに包んだようにっていうか比喩的にっていうか、そういう言い方をするもんだろ普通」
茶々が赤面した。
「おはようございます」
日曜日の朝、龍生が茶々を自転車で迎えに来た。
龍生は、玄関で元気に挨拶をした。
「あ、龍生君、おはよう。茶々まだ寝てるわよ」
茶々の母親が申し訳なさそうに奥から顔を出した。
「上がっていいですか?」
「あ、どうぞどうぞ、好きにしてって。ついでに茶々を好きにしてもいいわよ」
茶々の母親は、さらっと言ってのけた。
「いや、お母さん、それは……」
龍生がたじろいだ。
「あはは。さっさとやっときなさいよ。身体の相性は大事よ」
母親は、笑いながら奥に消えていった。
「おじゃましまーす」
龍生は、玄関から茶々の部屋に向かった。
「ちゃーちゃん、おはよう」
茶々に気づかれないように部屋に忍び込んだ龍生は、Tシャツ越しに乳首をつついた。
「んあ? 萌? どうしたのよ?」
茶々が寝ぼけながらニヤニヤした。
「えっとね、萌さんじゃなくてごめん。俺、龍生」
龍生がさらに乳首を指で転がした。
「えっ! おい、お前なにやってんだよ!? 変態かよ!」
茶々が飛び起きた。
「変態はちゃーちゃん。俺は、お迎えに来たの。大洗行くんでしょ」
龍生は平然としている。
「すまん、メガネ取ってくれるか。なんも見えん」
「あ、はい、どうぞ」
「ありがとな」
茶々は、牛乳瓶の底のようなメガネをかけた。
「いま何時だ?」
「8時だよ」
「えーっ!? なんでもっと早く起こさねえんだよ」
茶々の目が覚めた。
「なんでって、いや、なんか、ごめん」
龍生は、自分が怒られている理由が分からなかった。
「すぐ用意するから、お前はそこに座って煙草でも吸ってろ」
茶々がベッドを指して言い放った。
「俺、煙草吸わないし。ちゃーちゃんみたいな不良じゃないから」
龍生はニコニコしながら毒を吐く。
「ああ、どうせあたしは不良だよ。でも、不良だっていいんだろ?」
「うん。不良でも黒ギャルでも前科者でもいいよ」
龍生がさらっと追加の毒を吐いた。
「ったく、お前口が悪いな」
茶々がTシャツを脱いでブラジャーを着けながら文句を言った。
「ちゃーちゃん、もうちょっと恥らおうか。俺、一応よその家の男だし」
龍生が苦笑した。
「なに言ってんだよ。見たいんだろ」
「まあ、見た、い、かな……」
龍生も否定できなかった。
「だろ。だから見せてやってんだ。感謝しろ」
「あ、ありがとう」
龍生が納得いかないという顔で礼を言った。
「顔洗ってくっから」
ブラジャーに脇肉を寄せ集めた茶々は、いつもの紫色のシャカパンを履き、大柄のアニマルプリントをあしらったTシャツを被ると、洗面所に走っていった。
洗面所から戻った茶々は、メガネからコンタクトレンズに変わり、いつもの凶悪な目つきになった。
髪もさっきまでの爆発が嘘のようにまとまっている。
化粧っ気がないのに十分きれいだ。
龍生は惚れ惚れした。
「ところで、お前、なんで学ランなの?」
龍生は、学校の制服だった。
「えっと、特に意味はないんだけど」
「そうなんだ。まあいいけど」
茶々も龍生を東縛するつもりはない。
龍生がどんな服で来ようが気にも留めない。
「さて行くか」
Tシャツの上に龍の刺繍がほどこされた MA-1、通称スカジャンをひっかけながら龍生の手を引いた。
「あれ、ちゃーちゃん、拳銃は?」
茶々のワルサーPPKがベッドの上に放り投げられている。
「今日はシャカパンだからホルスター付けれねえだろ。それに危険な任務じゃねえっていうから置いてっても大丈夫だろ」
「そっか」
龍生は、なんとなく納得していないような雰囲気だった。
「いってきます」
「いってきまーす」
二人で挨拶をして自転車を乗り出した。
少し肌寒いくらいの朝の空気を切って走るのが気持ちいい。
何より龍生と一緒に走っているということが重要だった。
茶々の寝坊で予定の時間より少し遅くなったが、特に問題ないだろう。
「ちゃーちゃん」
「なんだ?」
「ちゃーちゃんのお母さんて、いつもあんな感じだっけ?」
「あんな感じって、どんな感じ?」
「さっきね、ちゃーちゃんを迎えに行ったら、お母さんに『茶々を好きにしてもいいのよ』って言われたよ」
「ママったら」
茶々が絶句した。
「まあ、いつっつもあんな感じよ。セクハラ大魔王だから」
「そうなんだ。なんかいいお母さんだね」
「まあな。あたしのママだからさ」
茶々は家族を卑下しない。
自慢の家族だと思っているし、そう公言してはばからない。
竜ヶ崎駅に着いた二人は、自転車を自転車置場に停めた。
ほとんど乗客のいない竜ヶ崎線で二駅だけの旅に出る。
出たと思ったら終点の佐貫駅に着く。
二人だけの時間は、すぐに終わってしまう。
佐貫駅で大洗までの切符を買ってホームに出る。
ホームには人影がまばらだ。
茶々と龍生は、着かず離れずの距離で佇たたずんでいる。
ホームに下り電車入線のアナウンスが流れた。
藤代方向から銀色アルミボディの電車がホームに滑り込む。
電車が通過するときの風圧で茶々の髪がまき上げられ、隠れている目が一瞬だけ見えた。
外から車内を見たところ、混雑している様子はないが空席も少なそうだった。
「水戸までだからできれば座りたいね」
「そうだな」
電車が止まる直前、二人で話した。
電車が止まり、ドアが開いた。
龍生は、茶々を先に車内にエスコートした。
茶々が車内を見渡したところ、ボックス席に二人分の空席があった。
「お、あそこ空いてるぜ」
茶々があごで空席を示し、龍生の手を引いた。
空いている席は、進行方向に背を向ける側の2席だった。
反対側には、二人の女性が座っていた。
親しげに会話をしている様子から連れのようだった。
窓際の女性は、髪を真っ赤に染め、黒ずくめの服で一見してパンク少女のようだった。
身長は、龍生くらいはあるだろうか。
女性にしてはかなり大きいように見えた。
ファッションはパンクなのに穏やかで優しげな顔立ちが、ミスマッチによるかわいらしさを演出している。
身長が高いだけでなく足も長いようだ。
膝が反対側の座席近くまで迫っている。
通路側に座っている女性は、窓際の女性と対照的な雰囲気だった。
ありふれたジーパンにフード付きのパーカーというおしゃれの要素がどこにもないような地味な服装だった。
おまけに背が低い。
茶々より小さそうだ。
「んー、あたしが奥だなこりゃ」
茶々がすでに座っている二人の足の長さを見て一言つぶやいた。
「失礼します」
茶々が声をかけて窓際の座席に座った。
それに続いて龍生が通路側の座席に腰をかけた。
足の長い者と短い者が向かい合って座る形だ。
これ以外の組み合わせは考えられなかった。
「なあ、水戸まで何分かかんだ?」
席についた茶々が龍生に訊いた。
「えっと、だいたい1時間ちょっとくらいかな」
龍生が腕時計を見ながら答えた。
電車が発車すると、反対側の窓際に座っているパンク少女が子供のように外の風景を見て喜んでいた。
「ちょっと頭足りないのかな?」
茶々は、気の毒に思った。
「この二人、全然雰囲気が違うけど、どういう関係なんだろう?」
反対側に座っている二人の女性は、見れば見るほど不釣合いだった。
電車が土浦、石岡と進むにつれ、向かい側のパンク少女は車窓に飽きたのか、おとなしくなっていった。
〝宿主殿〟
「どうしたの?」
〝軽くご飯をいただきたいんだけど〟
「え、この状況じゃ無理よ」
〝どうして?〟
「だって、すぐ隣に龍生がいるし、反対側にも女性が2人座ってるのよ。ここで発情させられたらバレちゃうよ」
〝楽しそうじゃない〟
萌が意地悪く笑った。
「ダメって言ったってやるんでしょ」
茶々は諦めた。
〝いい子ねえ〟
茶々は、胃の辺りに不快感というか違和感を覚えた。
どうやら萌は胃の中にいるらしい。
萌は耐酸性が高く、胃液程度の酸にはまったく影響を受けない。
違和感が胃から喉元に上がってきた。
吐き気を催す。
しかし、吐きたいと思うような強さではない。
「ひゃっ」
萌が茶々の喉から口の中に顔を出した。
萌が喉を通る感触というか喉ごしが気持ち悪くて茶々を悶えさせた。
「どうしたの?」
龍生が茶々に声をかけた。
「なんでもない」
茶々が真っ赤な顔をして下を向いた。
萌は、口の中と喉の奥を行ったりきたりしている。
茶々は、喉の奥深くに痺れるような快感が沸き立つのを感じた。
今まで快感はおろか感覚があることすら知らなかった場所だ。
そこを萌に刺激されるたびに鳥肌が立つ。
茶々は、俯いて身体を小刻みに震わせながら快感に耐えている。
声を出してはいけない。
表情から悟られてはいけない。
茶々は、必死で無表情を装った。
「また萌のいたずらだな」
事情を察した龍生は、茶々に構わず放置した。
これは、自分が立ち入れない二人だけの世界だ。
結局、萌のいたずらは電車が水戸に着くまで続いた。
茶々は、額に脂汗を浮かべて快感に耐えている。
龍生が先に立ち上がり、茶々を立つように促した。
茶々は、一旦腰を上げかけたが、短く息を漏らすとまた座り込んでしまった。
萌が最後のいたずらを仕掛けたのだ。
口の中にいた萌が、一気に喉を通って胃に落ちていった。
萌が喉を通る気持ちよさに茶々が腰を抜かしたのだ。
「ごめんなさい」
茶々は、反対側のパンク少女に謝ると龍生の腕にすがるように立ち上がった。
「具合が悪いのですか?」
パンク少女が心配そうに茶々に声をかけた。
「あ、大丈夫です」
茶々は、龍生に支えられながら、ふらふらと電車を降りた。