※この作品はR-18です。

女子高生准査ヌルデバと萌える寄生虫の共生捜査本部   作:ぬるでば

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第17話 不審者 (Fase 4)

 常磐線を降りた茶々は、龍生につかまってようやく歩けるような状態だった。

 足を引きずるようにホームを歩いて上りのエスカレーターに乗った。

 龍生は、茶々がこうなるのは萌のいたずらだと分かっているので特に気にすることはない。

 ちょっと萌が羨ましいと思うことはある。

「俺も萌さんみたいにちゃーちゃんの身体を自由に操ってみたいな」

 よからぬ妄想を抱くこともある。

 それを茶々に伝えれば、茶々は喜んで龍生の言いなりなるはずだ。

 しかし、おとなしい性格の龍生が、そんな妄想を口にすることはない。

 需要と供給は一致している。

 どちらかが欲望を開陳してしまえば、一気に事態が進展するはずなのだが肝心なことを二人とも言わない。

 水戸駅は、人でごった返していた。

 おそらく大洗のイベントに行く人たちだろう。

「こんなにたくさん人がいたんじゃニクシロンの残党を探すなんて無理よ」

 龍生に引きずられるように歩きながら茶々が嘆いた。

「ほんとだね。これ全部大洗に行くんだよね、きっと」

 龍生も人の多さに驚きを隠さない。

「あっちだね」

 背の高い龍生が大洗鹿島線の案内板を見つけた。

 案内板を見つけるまでもなく、人の流れに逆らわなければ自動的に大洗鹿島線のホームにたどり着ける。

 それくらいたくさんの人だった。

「さっきまで一緒だったパンクの子はいねえな」

 ようやく正気を取り戻した茶々が辺りを見回しながら言った。

 もっとも背が低い茶々が周りを見回したところで、自分の周囲にいる人しか見えない。

 階段を下りて大洗鹿島線のホームに出た。

 ホームもたくさんの人であふれている。

「これ、全部は乗れねえんじゃねえの?」

 茶々が心配そうに言った。

「まあ乗れなかったら次のやつに乗ればいいよ」

 龍生がのんびりとした口調で言った。

「お前は、いつもマイペースだな」

 茶々が笑った。

「イライラしてもいいことないからね」

 龍生が両手の人差し指を鬼の角のようにして頭に当てた。

 茶々たちは、どうにかホームに停まっていた列車に乗ることができた。

 乗り切れなかった人もいる中で、すぐに乗れたのは幸運だった。

 列車がディーゼル音とともに発車した。

「この音を聞くと落ち着くな」

 竜ヶ崎線と同じディーゼル車の音は耳になじむ。

「でも、ちゃーちゃん、そんなにたくさん乗ってないんじゃない?」

 龍生が首を傾げた。

「まあな。それでも電車よりは多いからさ。やっばりディーゼル車最高だよ」

「そのほめ方が分からない」

 龍生が苦笑した。

 大洗駅は、水戸駅から三つ目だ。

 あっという間に着いてしまう。

 茶々と龍生は、人の波に押されながら列車を降り、手を繋いで改札口に向かった。 改札を出たところは、大勢の観光客でごった返していた。

「やっぱりここも人ごみだな」

 茶々が諦めたようにつぶやいた。

「今日は、どこに行っても人だらけだよ」

 龍生も多少うんざりしたような声になった。

 二人は、改札を出たところにある売店を覗いた。

 売店の中も人がたくさん、というより詰まっていた。

 店の中を思うように動くこともできない。

「こりゃダメだな」

 早々に茶々が退散を決めた。

 二人は、循環バスに乗ってイベント会場を目指した。

「しかし、ほんとすげえ人だな」

 バスの中からイベント会場を見た茶々がため息をついた。

「任務じゃなきゃこの人ごみは御免だよ」

「ほんとに。賑やかなのは好きだけど、ここまで人が多いと疲れそうだね」

 バスを降りた二人が同時にため息混じりにつぶやいた。

 それほど人が多かった。

 イベント会場では、声優によるステージパフォーマンスが繰り広げられていた

 観客席では、たくさんのファンが掛け声や歓声をあげ、思いもいに楽しんでいる様子だった。

「あー、これはダメだ。あたしは耐えられない」

 人ごみに耐えられなくなった茶々がイベント会場を抜け出そうとした。

 龍生も茶々に続いた。

「龍生、ちよっと待って」

 茶々が立ち止まり龍生の学生服の裾を引っ張った。

「え、どうしたの?」

 龍生が後ろにバランスを崩しながら立ち止まった。

「あいつ、見たことある」

 普段でも凶悪な目つきの茶々がさらに目を凝らした。

 茶々の視線の先には、リュックサックを背負い帽子を目深に被った男がいた。

 その男は、周りがイベントに浮かれているのとは対照的に、人ごみの中でじっと群集を見つめている。

「ニクシロンの残党?」

 龍生が恐る恐る訳いた。

「たぶん。確信は持てねえけど、一度会ったことあるはずだ」

 茶々の表情が険しくなった。

「おっさんの野郎、ニクシロンの残党が来ることはないようなこと言いやがって。ものの見事に来てんじゃねえか」

 茶々が忌々しげにつぶやいた。

「ていうことはだよ。あいつがテロを起こすかもしれないってことだよね」

 龍生がびびった。

「びびってんじゃねえよ。 こうなったらあいつをぶっ殺すかこっちが全員ぶっ殺されるかのどっちかしかねえだろ。だったらあいつをぶっ殺すまでだ」

「どうやって?」

「知るか」

 茶々が吐き捨てた。

「龍生、こっからはあたし一人で行く。お前は大洗から離れろ」

 茶々が悲壮感をにじませた顔で龍生に強く迫った。

「え、どうして?」

 龍生は納得いかないという顔をした。

「お前、死にたいのか? あいつがテロリストかもしれないんだぞ。死ぬのはあたしだけで十分だ」

「いや、俺も行くよ。何かの役に立つかもしれないじゃん」

 龍生が食い下がった。

「お前がテロリスト相手に何ができるんだよ。犬死にだぞ」

「そりゃそうかもしれないけど。でも、それを言ったらちゃーちゃんだって同じだよ」

「あたしは違う。非公然かもしれないけどサツカンだ。死ぬことからも逃げないって宣誓もしてる。お前はそうじゃない。危険から逃げることを誰からも非難されねえ」

「生き死にだったらそうかもしれないよ。俺が言いたいのは、あいつをぶっ殺す手段がないでしょってことだよ」

 龍生は、冷静に彼我の力を考えていた。

「だってあたしは拳銃を……持って来なかった!」

 茶々が血の気を失った。

「でしょ。丸腰だよ。無理だって」

「くそっ。どうすりゃいいんだよ」

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