女子高生准査ヌルデバと萌える寄生虫の共生捜査本部 作:ぬるでば
茶々は、ニクシロンに拉致され、共謀罪に問われると脅されたショックを萌に癒してもらったものの、完全には復活できない痛手を引きずっていた。
それでも萌に自分の生き死にを預けきった心地よさが痛手に勝っていた。
茶々は、シャワーを浴びようと思った。
茶々の乳首には、サーキュラーバーベルのピアスが着いている。
このピアスは、視力検査に使われている一部が欠けた円のような形で、欠けている円の両端に丸いボールが付いている。
ボールの一つはリングに固定されているが、もう片方がネジになっている。
ピアスの脱着をするときは、ネジになっているボールを外して行う。
茶々は、ボールを回して取り外すと、ピアス本体のリングをぐるっと回して乳首から抜いた。
ピアスを取ったあとの穴がぼっかりと口を開けている。
茶々は、この穴が大好きだ。
外したピアスは、ていねいに洗浄と消毒をする。
ピアスを外した茶々は、足取りも軽くバスルームに向かった。
全身にまとわりついた生乾きの脂汗をボディソープで乳化させ、普段なら悲鳴を上げそうな熱いシャワーで洗い流した。
シャワーから降り注ぐ熱いお湯が肌を刺す。
見る見る褐色の肌が赤く染まった。
「あっつ……」
茶々は、歯を食いしばって熱さに耐えている。
熱いというより痛かった。
しかし、その表情は柔和そのものでふにゃふにゃの目をしている。
真っ赤に染まった肌の感覚がなくなり、シャワーのお湯が熱いのかそうでないのか分からなくなった。
そろそろ危ないと感じた茶々はシャワーを止めた。
〝宿主殿〟
「なに?」
〝なにをやっているの〟
「昨日の嫌な気分を洗い流してたの」
〝そう。やけどしないようにしてね〟
「うん、ありがとう」
ボディソープを洗い落とした茶々の褐色の肌は、ぱっと水をはじいて落とした。
タオルでさっと拭けば、さらさらの肌が褐色に輝く。
ドライヤーで髪を乾かした後は、乳首のピアスホールを消毒した。
昨日、粘っこい脂汗にまみれた。
ピアスホールにも汗が入り込んでいるはずだ。
ピアス、特にボディピアスは手入れが大事だ。
異物であるピアスを人体は排除しようとする。
どうやっても排除されてしまう場合もあるが、きちんと手入れすることで排除される可能性を減らすことができる。
ピアスホールの消毒をしていた茶々は、あることを思いついた。
「ねえ萌」
〝はい〟
「萌は、私の身体にとって異物でしょ。なんで排除されたり炎症を起こしたりしないの?」
〝いいところに気がつきました。私は、ヒトの免疫系に異物として認識されないようにできているの。だから排除されたり炎症を起こしたりすることがないっていうわけ〟
「えー、それってなんかご都合主義じゃないの?」
茶々が苦笑した。
〝そんなことないもん。私の仲間には、他にも同じように免疫系に認識されない種がいるわよ〟
萌が拗ねた。
「あはは、そうなんだ。ごめんなさい」
茶々が自分の身体の中にいる萌に頭を下げた。
〝いいわ。そういうことを疑問に思うって大事よね〟
「てへっ、ほめられちゃった」
茶々が頬を赤らめた。
茶々は、消毒が済んだピアスを取り上げた。
そのピアスをきれいなピンク色の乳首に刺す。
慣れた作業とはいえ、乳首にピアスを刺すときはいつも興奮する。
「もう片方にも開けようかな」
まだ片方の乳首にしかピアスを開けていない。
ずっと両方に開けたいと思っている。
「誰にも見せないのに何やってんだろう」
ときどき自分がやっていることの意味がわからなくなる。
〝性癖に意味なんてないのよ〟
「そうなの?」
〝そう。たくさんの人の性癖を見てきたけど、意味のある性癖なんてなかったわ〟
「そうなのね。さすがロリババア!」
〝死にたいの?〟
「うん。殺して!」
茶々はにこにこしながら殺して欲しいと願った。
〝こんなにポジティブに死にたがる宿主は初めてよ。やりにくいったらありゃしない〟
萌も苦笑するしかなかった。
茶々は、髪の右サイドをかき上げてピンで留めた。
白いブラウスと黒のジャンパースカートを着る。
軽く色の付いたリップをふっくらと柔らかな唇に乗せた。
女子高生のできあがり。
「行ってきまーす」
昨日とは打って変わって元気な挨拶を残して家を出た。
軽快に自転車を漕ぐ。
今日は気分がいい。
学校がある高台に通じる坂道も苦にならなかった。
この坂道をどう感じるかでその日のコンディションが分かる。
体力が落ちているときは足にくる。
メンタルが弱っていると距離が長く感じる。
今日は余裕で登りきった。
「ちゃーちゃんおはよう。昨日、帰りが遅かったみたいだけど、CTF潜入はどうだった?」
玄関で茶々をみつけた龍生が声をかけた。
「あ、おはよう。CTFは問題なく任務完了。でも、そのあとにちよっと問題があってな。今は時間がないから、あとで相談に乗ってくれっけ?」
茶々がわざと龍生との距離を詰めて、自分の乳房を龍生の腕に押し当て、粘るような視線で見つめた。
龍生の顔が赤くなった。
「問題が? いいよ、お昼休みにいつものところで話を聞くね」
龍生は、茶々の真新しい擦り傷と「問題が」という発言を結びつけて、よくないことだろうと想像した。
二人だけで話をしたいときは、本館ではない別館の屋上を使うのが常だった。
龍生と茶々が「いつものところ」といったら、この別館の屋上を指す。
別館の屋上は、ほとんど人が来ない。
二人だけになりたいときに最適だ。
ときどき怪しい雰囲気になってしまい、気まずくなることを除けば。
午前の授業中、前日にたらふく食事をしていた萌はおとなしかった。
今日の居場所は、みぞおちの皮下。
ハートの形を作っている。
授業中、茶々はブラウスの前合わせから手を差し込み、萌が作るハート型のミミズ腫れを撫でて楽しんでいた。
茶々が撫でるのに呼応するように、ときどき萌が身体を震わせた。
そのくすぐったさと気持ち悪さが病みつきになった。
昼休み。
茶々が別館の屋上に出ると、まだ龍生の姿はなかった。
茶々はフェンス際に腰をおろし、フェンスにもたれた。
柔らかい日差しを浴びて、うつらうつらしていると龍生の声が聞こえた。
「ごめん、ごめん。待った?」
龍生が息を切らしながら走り寄ってきた。
手には売店で買った菓子パンとコーヒー牛乳が握られている。
「見りゃわかるだろ。待ってたんだよ」
茶々は、ふにゃふにゃの笑顔で無愛想に答えた。
龍生は、茶々の横に並んで座った。
茶々は、龍生がわざと空けた二人の間隔を詰めた。
二人の肩が触れ合う。
茶々は肩に龍生の体温を感じて幸せだった。
「問題ってなに?」
龍生がパンをかじりながら話しかけた。
「うん。あたしさ……」
茶々は、昨日のできごとを事細かに話した。
話を聞いているうちに龍生の表情が徐々に険しくなっていった。
「……ていうわけで、そいつが言うには、あたし共謀罪で逮捕されるかもしれない」
茶々は肩をすくめた。
「ぶっ殺す」
龍生が今まで見たこともない鬼のような形相で吐き捨てた。
「えっ!?」
茶々は、凶悪な目を丸くして龍生を見つめた。
普段、汚い言葉を使わない龍生が「ぶっ殺す」という言葉を吐いたことに驚いたのだ。
「ニクシロンの野郎……」
龍生がパンを握りつぶした。
「龍生、怖いよ」
茶々が龍生を見上げた。
初めて見る龍生の姿に怯えていた。
「あ、ごめん」
茶々が怯えていることに気づいた龍生が、いつもの龍生に戻った。
「ニクシロンの顔分かる?」
「顔? 見ればわかるけど、ぼやっと覚えている程度だな」
「そっか。顔が分かれば正体を特定できるんだけど……」
龍生が歯を食いしばった。
「龍生は危ないことしないでくれよ。あたしは県警のおっさんに相談してみるから」
茶々は、龍生が怒りに任せて暴走するのではないかと心配になった。
第一、龍生に何ができるわけでもない。
「あ、ああ、そうだね」
龍生が我に返ったように苦笑した。
「話を聞いてくれてありがとな。お前に話せて楽になったよ」
茶々は、龍生に礼を言って立ち上がった。
「聞くだけでいいならいつでも」
龍生も立ち上がってズボンを払った。
「蛇の道は蛇だ。覚えとけよ」
龍生が茶々にも聞こえないくらいの小さな声でつぶやいた。
その日の夜。
部屋で薄汚い女に戻った茶々は、エージェントとのチャットを開いた。
/dev/null: おい、おっさん
POLICE: 席を外しています。しばらくお待ちください。
エージェントから定型文の自動応答メッセージが返ってきた。
「おいおい、肝心なときにお留守かよ」
茶々が口を尖らせた。
「ん?」
茶々のスマホが振動した。
スマホを取り上げてロックを解除した。
「お、龍生じゃん」
龍生からの着信だった。
「なんだ、珍しいな」
茶々が弾んだ声で応答した。
「あ、夜にごめん。いま予備校の帰りなんだ」
「そうか。どうした?」
「昼に聞いた件なんだけど、県警に言って似顔絵を作ってもらったらどうかな。ニクシロンの」
「そうだなあ。でも、ニクシロンの顔は、あんまりはっきり覚えてねえんだよ。だから似顔絵を作れるほどうまく説明できる自信がねえな」
茶々は、絵心がなく、絵を描くのも絵を説明するのも苦手だった。
「そっかあ。それじゃあ他の方法を考えないといけないね」
「そうだな」
「うん、じゃあね」
「じゃあな」
茶々は、龍生が電話を切るのを待ってスマホを置いた。
「他の方法か……」
茶々は、くわえ煙草で天井を見上げながら思案にふけった。
「あたしは、ニクシロンの顔をぼやっとなら思い出せる。でも、それを自分で絵に起こしたり似顔絵が描けるほど説明できない。なんとかしてこの記憶を絵にできないか」
そんな魔法のようなことができるはずがない。
そう思って諦めようとしたとき、スマホにメール着信のイルミネーションが点いた。
「今日はお客さん多いな」
茶々は、独り言を言いながらスマホを開いた。
「sub: CTF の写真です(添付あり)」
日曜日に参加したCTFで連絡先を交換した女性からのメールだった。
集合写真をメールに添付して送ってきてくれた。
「これだけで終わってくれればよかったんだけど……」
メールを開いた茶々がつぶやいた。
集合写真の画像が霞んで見えた。
茶々は、左手の甲で目をこすった。
手の甲がうっすらと濡れていた。
「あっ! できるかも!」
茶々の目に生気が戻った。
「そうだよ、メール添付だよ! それとセッションハイジャック!」
だらしなく椅子に腰かけていた姿勢を直して、引き出しの中を漁った。
「あった、あった」
引き出しの中からICレコーダーを見つけて取り出した。
「電池は……よし」
ずっと使っていないICレコーダーだったが、電池は消耗していなかった。
「次はこれだ」
茶々は、パソコンで音声認識ソフトを立ち上げた。
このソフトは、音声を認識してテキストに起こしてくれる。
口にくわえていた煙草を灰皿に突っ込んで火を消した。
「萌!」
萌を呼ぶ茶々の声には張りがあった。
〝あら、宿主殿、ずいぶん元気ね〟
萌の声も弾んでいた。
「相談なんだけど」
〝まだ殺してあげないわよ〟
「そうじやない。むしろ逆」
茶々が笑った。
〝え、私を殺そうっていうの?〟
萌が怯えた。
「そっちでもないってば」
茶々が苦笑した。
〝よかった〟
「あのさ、萌は私の言語野から思考を覗き見してるのよね」
〝そうよ〟
「そしたら、私の視覚イメージを横取りすることもできる?」
〝え? 視覚イメージ? どういうこと?〟
「えっとね、私が頭で思い浮かべた絵、具体的に言うと人の顔なんだけど、そのイメージを感じ取ることができるかなーって」
〝やったことないわ〟
「試してみない?」
〝できるかしら〟
「やってみなきゃ分からないわよ」
〝そうね〟
「じゃあ、今から私が人の顔を思い出すから、萌にそれが伝わるか試してみて」
〝はい〟
茶々は、頭の中に人の顔を思い浮かべた。
できるだけ強くイメージした。
〝うーん、なんか言葉と違う何かを感じるけど、それが何かは分からないわ〟
「そうなんだ。でも、言葉じゃない何かを感じたっていうことは、もしかしたらそれが私が思い浮かべた顔のイメージなのかもしれないわよね」
〝そうかもしれない。でも、それが本当にそうなのか確かめようがないわ〟
茶々がニヤリとした。
「萌は、言語化に秀でた力を持っているわよね」
〝そうね。言語化は得意だわ〟
「そうしたらさ、いま萌が感じられた何かを言語化してみない?」
〝そんなことができるの?〟
「わかんない。自信はないけど、萌の言語化能力が私の予想通りだったらできるはずなの」
〝いつになく力強いわね〟
「へへへ」
〝で、私は何をすればいいの?〟
「うん、萌はBASE64ベースろくじゅうよんって知ってる? って知らないわよね」
〝知らないわ〟
「あのね、BASE64っていうのは、バイナリデータをテキストに変換してメールに添付できるようにしたりする方法のことなの」
〝なんかよく分からない〟
「そうでしょうね。私が頭の中で描いているイメージが画像データだと仮定すると、それはバイナリのはずなの。で、BASE64を使えばバイナリである画像データをテキストに変換できるわ」
「これをエンコードっていうんだけど、BASE64形式でエンコードしたデータを今度はパソコンでバイナリデータの画像に戻してあげるのよ!」
茶々は、興奮気味に説明した。
〝なんとなく理屈は分かったわ。で、実際に私は何をすればいいの?〟
「私が思い浮かべているイメージをセッションハイジャック、あ、セッションハイジャックっていうのは横取りのことね。私のイメージを横取りして、それをこれから言う方法で言語化して欲しいの。で、言語化したテキストをあたしの意識に送り込んで」
そう言って茶々は、萌にBASE64のエンコード方式であるRFC2045について説明をした。
〝やり方は分かったわ。でも、このエンコード方式だと恐ろしく長いテキストになるんじゃない?〟
「そうね、だから私と萌がどれだけ長い作業に耐えられるかの問題でもあるの」
〝二人三脚マラソンね。いいわよ、やりましょう〟
「用意はいい?」
〝いつでもどうぞ〟
茶々は、ICレコーダーを録音モードにセットして口元に添えた。
そして、そっと目を閉じて人物のイメージを思い出すことに集中した。
「始めて」
〝はい〟
物音一つしない沈黙が続いた。
聞こえるのは茶々の息と心臓の拍動だけ。
なかなか萌からテキストが流れ込んでこない。
「ダメだったのかな」
そう思い始めた。
〝諦めないで〟
思考を横取りした萌に叱られた。
「ごめんなさい」
萌に謝った茶々は、再びイメージに集中した。
「data: image/jpeg; base64, 」
「来た!!」
萌から茶々の意識にBASE64でエンコードされたテキストが流れ込んできた。
茶々は、萌から送り込まれたテキストを口述してICレコーダーに記録する。
「T4AAQSkZJRgABAQEASABIAAD……」
萌からは次々とテキストが送り込まれてくる。
茶々は、一文字も漏らすまいと必死に口述した。
萌と茶々の共同作業は延々と続いた。
茶々の首筋には、うっすらと汗が浮かんでいる。
「Wr00KcFKc5KKbP/2Aq== 」
〝今ので最後よ〟
長い長い共同作業が終わった。
ここからは茶々の単独作業になる。 茶々は、ICレコーダーで録音した音声をパソコンの音声認識ソフトに与えた。
音声認識ソフトは、茶々の音声を逐一テキストに起こした。
最近の音声認識ソフトは、ほとんど抜けや誤りがない。
長いテキストの読み上げが終わると、BASE64形式でエンコードされたテキストファイルができあがった。
茶々は、できあがったテキストを全選択してコピーした。
そして、それをブラウザのアドレスバーにペーストして、ブラウザでデコードしようというのだ。
アドレスバーにペーストしてエンターキーを叩いた。
すぐにブラウザに画像が表示された。
明瞭とは言えないが、人の顔と分かる。
〝うまくいった?〟
萌には目がない。
元々は目があったのだが、ヒトの体内に寄生する生活をするようになり、いつの間にか視神経の根だけを残して眼球が退化してしまった。
茶々が赤面している。
〝なにを恥ずかしがっているの?〟
茶々の思考は萌に伝わる。
茶々が恥ずかしがっていることは分かる。
「あのね、ちゃんと絵はデコードされたんだけどね、それがね……」
茶々が身問えした。
〝なに悶えてるのよ。どうしたの?〟
「出てきたのが『龍生』だったのよ」
茶々が両手で顔を覆った。
耳たぶまで真っ赤に染まっている。
漠然と人物の顔を強くイメージしたら、龍生の顔を思い出してしまったのだ。
〝あのね、宿主殿。いま私たちがやろうとしているのは、あの憎たらしいニクシロンの顔を絵に起こすことでしょ。そういう甘ったるい話は、あとにしてよ。こっちまで恥ずかしくなるわ〟
「ごめんなさい、ごめんなさい」
茶々は平謝りに謝った。
「今度こそ間違いなくニクシロンの顔を思い出すから、もう一度だけやってくれる?」
〝しょうがないわね。でも、これすごく体力使うから、終わったらご飯もらうわよ〟
ぐにょん
茶々は子宮に疼きを感じた。
どうやら萌は子宮にいるらしい。
「うん、いいよ」
〝ありがとう。じゃあ、いきましょう〟
「はい」
茶々が目を閉じた。
ニクシロンの顔を強く思い浮かべた。
できるだけ明瞭に、言葉で説明できるくらいはっきりと思い出そうとした。
「data: image/jpeg; base64, 」
萌からエンコードされたテキストが送り込まれてきた。
萌から送り込まれてくるテキストを茶々が口述する。
二人の作業がいつまでも続いた。
龍生の画像ができたときよりずっと長い時間を要した。
〝これで終わりよ〟
萌がエンコードの終了を宣言した。
茶々は、ICレコーダーの録音を停止した。
「萌、ありがとう」
〝お安い御用だわ。じゃあ、約束のものもらうわよ〟
茶々は、これから起こることを想像して、息苦しくなった。
茶々は、下腹部が温かくなるのを感じた。
想像していた激しい快感ではなかった。
湯たんぼを当ててもらったような、じんわりと広がる気持ちのいい温かさだった。
「ん、ふ……」
萌が子宮から子宮頸管を通って膣に降りてきたのが分かった。
「いっぱい、 食べて……」
下腹部をさすりながら優しく話しかけた。
〝いただきます。これから作業でしょ。邪魔にならないように感度は落としてあるから安心して〟
萌の配慮だった。
「あはっ、ありがとう」
萌の気遣いが嬉しかったが、ちよっと物足りなさも感じていた。
口述した音声を音声認識ソフトでテキストに起こす。
そのテキストをブラウザにペーストしてデコードする。
「こいつよ!」
ブラウザに表示された顔を指差して茶々が声を出した。
龍生のときよりはっきりと顔がわかる解像度だった。
茶々が必死で念じたため、解像度が上がりファイルサイズも大きくなっていた。
そのため、萌によるエンコードに時間がかかったのだ。
〝大成功?〟
「うん! 萌のおかげよ。ありがとう!」
茶々が興奮した。
「だから、ご褒美をあげる。たくさん出していいよ」
茶々は頬を紅潮させた。
〝出していいよじゃないの。出させて欲しいんでしょ?」
萌が意地悪な笑いを浮かべた。
「んもー、萌はドSなんだからあ」
そう言いながらも茶々は実に嬉しそうだった。
「いじめてください。お願いします」
茶々もすっかり萌に服従することに慣れた。
「んふっ!」
茶々の身体が、がくんと大きくのけ反った。
下腹部が細かく痙攣している。
茶々は、痙攣する下腹部を愛おしそうに撫でている。
下腹部の痙攣に連動して腰が動く。
口を閉じることができなくなった茶々は、だらしなくよだれを垂らした。
意識がはっきりしているのに身体が自分の意思と関係なく動く。
今回は、意識が飛ばない。
萌は、意識が飛ばないような感じさせ方もできるようだ。
意識がはっきりしている分、辛さは飛躍的に増大する。
「ねえ萌、なんで意識があるの? 辛いよ。失神させてよ!」
いっそ失神してしまいたい。
〝私に隷属しているくせに。あなたは願える立場になんてないって分かってるの?〟
萌に一笑に付された。
「萌の意地悪!」
萌に聞き入れてもらえなかったことも茶々の被虐の喜びを倍加させた。
自分で止めることができない快感に襲われる地獄が30分くらい続いた。
快感の波が引いたとき、茶々はぐったりとして自分で頭を起こすこともできなかった。
目は虚ろで視線は虚空をさまよい、どこを見ているのかも分からなかった。
「萌、ありがとう……」
茶々が独り言をつぶやいた。
萌の返事はなかった。
寝てしまったようだ。
もう以前のように萌の返事がなくてもパニックにはならない。
萌も寝ることが分かったから。
茶々は、震える手でマウスを操作して、できあがった画像を保存した。
/dev/null: おっさん
エージェントを呼んだ。
POLICE: 日曜日は災難だったな
/dev/null: ああ、ほんとにな。てか、なんで知ってんだよ
POLICE: 何か用か
/dev/null: あたしの質間は無視かよ。まあいいや。おっさんが知ってるなら話は早いからな。ニクシロンの顔写真作ったぜ
POLICE: 作った? お前が絵でも描いたのか?
/dev/null: 冗談だろ。あたしが絵を描くわけねえじゃん
POLICE: そうだろうな
/dev/null: そこで納得すんなよ
POLICE: で、ニクシロンはどんな奴なんだ
/dev/null: いま送るよ
茶々は、メッセンジャーでニクシロンの画像を送信した。
POLICE: こいつか、ニクシロン
/dev/null: ああ、こいつがあたしを共謀罪に巻き込みやがった
POLICE: 簡単に騙されるな
/dev/null: へ?
POLICE: テロの計画を聞かされただけで共謀罪になどならない。そもそも共謀罪なんていう罪名はない。テロ等準備罪だ
/dev/null: じゃあ、あたしは逮捕されないのか?
POLICE: 逮捕されたいなら逮捕するがな
/dev/null: 悪い冗談はやめろよ。次にあたしが逮捕されるのはお前じゃないって決めてんだ
POLICE: そうか。さて、俺のかわいい手下を拉致したニクシロンは生かしておかない
/dev/null: ぶっ殺すのか?
POLICE: 殺したらまずいだろう。ぶっ殺したい気持ちはあるが、そこは我慢だ。リアルでは法による裁きを与える。そして、表のハッカーとしても、裏のクラッカーとしても生きられないようにする。サイバー空間でぶっ殺してやる
/dev/null: おっさん、今日はずいぶん熱いな
POLICE: そういう日もある。とりま、ニクシロンの顔が分かったらもうこっちのもんだ。あとは任せろ
/dev/null: おっさんのくせに「とりま」とか若者言葉を無理して使うなよ。とりま、よろしく頼んだぜ
茶々は、大きく背伸びをした。